MMA
インタビュー

RIZINの隠れた切り札、キム・スーチョルが戦う理由──生まれ来る子供のために「Nintendo Switchで必ずやりたいのは『ゼルダの伝説』と…」

2022/10/27 21:10
 2022年12月31日の『RIZIN.40』(さいたまスーパーアリーナ)にて「RIZIN vs. Bellator 5対5 全面対抗戦」のカードが10月26日、発表された。その会見で、RIZIN陣営が対抗戦で勝負をかけている、と話題になったのが、RIZIN2戦のキム・スーチョル(韓国)の抜擢だ。  RIZINルールでリングを使用して行われる対抗戦で、バンタム級(5分3R)では、現ROAD FCフェザー級王者のスーチョルが、元Bellator世界バンタム級王者のフアン・アーチュレッタ(米国)と対戦することが発表された。  会見では、大一番に向かうスーチョルのリラックスぶりとユーモアが評判となっている。  2022年9月の『RIZIN.38』で「RIZINバンタム級JAPAN GP 2021」優勝の扇久保博正を判定で破っているスーチョルは、「RIZINの代表として参加できることを光栄に思います。今回、代表になれたこと本当に嬉しいです。実は前回、日本で試合をした時、妻が『試合に勝ったらNintendoのSwitchを買ってあげる』と言っていたんですが、買ってくれませんでした。だから今回の試合に勝って、必ず買ってもらいたいと思います」と語り、会見場を和ませた。  本誌『ゴング格闘技』11月22日号(NO.323)のインタビュー後の撮影では、アーチュレッタ戦で勝利した暁に獲得する予定のNintendo Switchで、「ゲームしたいソフト」を問われ、「やりたいものはいっぱいありますけど……『ゼルダの伝説』『スーパーマリオ』『あつまれ どうぶつの森』の3つは必ずやりたいです」と真顔で語ってくれた。  厳しい緊縮財政が敷かれるスーチョル一家だが、扇久保戦前の復帰まで1年9カ月の空白の期間があり、その不遇の時代を「糟糠の妻」が支えていた。  2019年12月の試合後、一度引退したスーチョルは、「当時、病気をしていて治療しながら、試合(※2021年9月にフェザー級で復帰しパク・ヘジンに一本負け)をしたら負けてしまったので、8カ月かけて療養し、復帰しました(※2022年5月の再戦でTKO勝ちでリベンジ)。復帰したのは奥さんがいたから。口座に50万ウォン(約5万円)しかないときから付き合っていて、引退しても支えてくれていたから、復帰する道に辿り着けたと思っています」と、現在の自身があるのは、妻のおかげだと明かす。  そして、スーチョルには負けられない理由がNintendo Switch以外にもあった。妊娠3カ月になる第一子の存在だ。  試合後に扇久保のタフさを問われたスーチョルは、「ひとつの家庭の家長、そして父親というものがどれほど大きな責任感を持っているか、どれほど強いのかということは自分もよく分かるつもりです。自分も妻が子を宿していますから、扇久保選手にせよ自分にせよ、どちらが勝っても、どちらがパンチをもらっても、どちらもできるところまで耐えていたと思います」と、待望の第一子を授かったことが力になっていると語る。  また、Road FCフェザー級王者となり、扇久保戦からバンタム級に戻して戦う減量では、「死ぬかもしれないと、目の前におばあちゃんが見えるくらい追い込まれました。“もう諦めて、やらなければいいんじゃないか”と言われましたが、それを聞かずに頑張りました」と苦笑いした。 [nextpage] アーチュレッタ「『現代の決闘』になる」  一方、今回スーチョルと対戦するアーチュレッタは“アジア三冠王”について、「本当に凄く強い選手だ。これは“現代の決闘”のような試合になると思う。お互いどの局面でも戦えて、素晴らしい技術の打撃、レスリング、柔術、総合的な試合を、ファンが楽しめるだろう」と、高く評価する。  さらに今回が「リングでの戦い」になることについても、「自分は子供の頃からいたる所で喧嘩してきたから、路上、マットの上、リングの上、どこでも戦ってきたので、なんならベッドの上でも今このステージ上でも戦える」と自信を見せた。 「幼い頃から伝統的なマーシャルアーツ=武術に取りつかれて、それは僕の遺伝子に入っていると思う。自分は口では戦わない。身体と心で戦う。喋るのではなく体現して自分の生き様を見てもらいたい」と、スーチョル同様に生き様を見せるという。  アーチュレッタはレスリングをベースに、その組みの圧力を活かした鋭い打撃も併せ持つ。前進のみならず巧みなスイッチ、ステップでのアウトボクシングも可能で、テイクダウンとの融合で相手をドミネートする。  一方のスーチョルも左右スイッチが可能で、右のオーバーハンドに強いテイクダウンディフェンスを持ち、がぶりからのギロチンチョーク、さらに壁レスリングでもダーティーボクシングとテイクダウン&パウンドを混ぜたMMAを武器とする。  両者の戦いは全局面でハイレベルで激しい攻防となるだろう。  スーチョルはRIZINルールについて、本誌の取材に「ROAD FCと比較しても、サッカーキックや四点ヒザなど許される攻撃も多い。このルールで戦うには、“より暴力的にならないといけない”。リングだからこそ使える首相撲、テイクダウンを確認して技の練度を上げていきます」と語っている。  果たしてスーチョルは生まれ来る子供のために、Nintendo Switchのために、そして北米進出も視野に、アーチュレッタを下すことができるか。
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