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レポート

【RTU】松嶋こよみがイー・ジャーにスプリット判定負け、中村倫也が野瀬翔平をKO、風間敏臣と決勝で対戦へ、SASUKEが涙の勝利「まだ俺は生きている!」、風間はミンウが体重超過で決勝進出

2022/10/23 19:10
 2022年10月23日(日)午後8時から、『UFC280』に続き、エティハド・アリーナのオクタゴンで『ROAD TO UFC』の準決勝が開催された(ABEMA生配信)。  UFCとの契約を勝ち取るために、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、タイ等から集まった4階級16名のファイターがトーナメントを戦い、決勝進出を決めている。 【写真】バンタム級決勝は、中村倫也(日本)と風間敏臣(日本)に。 【写真】フェザー級級決勝は、イ・ジョンヨン(韓国)vs.イー・ジャー(中国)に。 【写真】フライ級級決勝は、パク・ヒョンソン(韓国)vs.チェ・ソングク(韓国)に。 【写真】ライト級級決勝は、アンシュル・ジュブリ(インド)vs.ジェカ・サラギ(インドネシア)に。  現在UFCと契約中の日本人ファイターは、佐藤天、魅津希、村田夏南子、平良達郎、木下憂朔の5選手(※西川大和は契約確認中)。  さらにUFCを目指し、北米LFAに田中路教、堀内佑馬、河名マスト、CFFCに神龍誠、平田直樹が参戦中。クロアチアから欧州大会を経て、オクタゴン入りを目指す石井慧、日本でもONEと契約更新をせずにUFCを目指す上久保周哉や、PANCRASE王座を通行手形としたい鶴屋怜、2015年のRoad to UFC以降、フェザーからバンタムに落とし、2022年3月に修斗世界王座を獲得した安藤達也、PFL参戦中の工藤諒司、UAE Warriors参戦の吉野光ら、世界を目指す選手がいる。  今回、“負ければ脱落”のUFCへの道を松嶋こよみ、風間敏臣、中村倫也、野瀬翔平は、いかに戦ったか。全試合リポートは以下の通りだ。 ROAD TO UFC Episode 5 速報 10月23日(日)湾岸標準時15時/日本時間20時 ABEMA配信 松嶋こよみがノンストップのタフマッチの末、中国のイー・ジャーにスプリット判定で敗れる ▼ROAD TO UFCフェザー級トーナメント準決勝 5分3R〇イー・ジャー(中国)21勝3敗 145lbs/65.77kg[判定2-1] ※29-28×2, 27-30×松嶋こよみ(日本)13勝6敗 145.5lbs/66.00kg フェザー級の松嶋は、北岡悟率いるパンクラスイズム横浜での練習に加え、岩﨑達也代表の剛毅會・武術空手、マモルのMMAムエタイ、T-GRIPの大塚隆史のMMAレスリング、さらにイー・ジャー対策として武田光司(※同日の10月23日にRIZINでザック・ゼインと対戦)との練習なども行ってきた。  1回戦でホン・ジュンヨン(韓国)に完勝に近いスプリット判定で勝利した松嶋に対し、25歳のイー・ジャーは1回戦でSASUKE=佐須啓祐(MASTER JAPAN)に1R リアネイキドチョークで一本勝ち。ジャーのボディロックテイクダウンに右手をマットに着いたSASUKEが負傷後に極めた形だが、20勝3敗のレコードが示す身体の強さは折り紙付きで、ここ4年間は風間に敗れたマイマイチツォヘチに2R TKO負け以外、黒星はない。オーソから繰り出す打撃は時折頭を下げたパワフルさを持ちながら、LEGEND FCでは跳びヒザ蹴りなどの大技も見せている。  ONEで猛者たちを相手に戦い、契約を更新せずマッチング期間を経てUFCへの道を模索してきた30歳の松嶋にとって、1試合1試合が進化で勝負の一戦だ。元Road FC王者イ・ジョンヨンら強豪も参戦中の同級で、確実なUFCへの切符獲得に向け、今回も負けられないサバイバルマッチに臨む。  1R、サウスポーの松嶋にオーソのジャー。遠い間合いから思い切り走り込んでタックルのジャー。松嶋はテイクダウンを許すがすぐに上を取りがぶりの体勢、さらに起き上がろうとしてジャーにヒザ。ハイキック、インローは松嶋。右ストレートから前へ出て胴タックルも見せる松嶋に、ジャーはケージを蹴ってのスーパーマンパンチ。  詰めて左フックのジャーに四つで組み付く松嶋だがジャーに投げられてテイクダウンを許す。逃げる松嶋はバック狙いのジャーを前に落としてトップを取り返すと立ちに来たジャーにヒジも当てる。左ミドルで前に来たジャーに松嶋がタックルを合わせてテイクダウン。ジャーが立ったところでラウンド終了となった。  2R、ミドル、インローの松嶋にジャーは伸びのある右ストレート。さらに飛びヒザ。右テンカオに来たジャーのヒザを掴んでタックル狙いの松嶋は四つに切り替えテイクダウンを狙いつつヒザを飛ばす。スタンドとなるとスイッチも入れつつ打撃のタイミングを窺う松嶋。イージャーは組みに来るが松嶋は思い切り払い腰で投げて上を取る。しかしジャーは下から素早く三角絞め、さらに腕十狙い。すぐに松嶋はまたいで腕を抜いて脱出に成功してサイドを取る。立つジャーだが松嶋はすぐにタックルでテイクダウン。下から足を手繰り脇を潜り、松嶋を後方に投げるジャーだが、松嶋はケージを蹴ってスクランブルで譲らずトップを取り返してラウンドを終えた。  3R、二段蹴りのような左ミドルは松嶋。右ストレートに来たジャーにタックルから脇をくぐってバックに付くが、ジャーはスクランブルに持ち込んで逆にバックに付く。松嶋も片足を取って上を取り返すがジャーはヒザ立ちの状態からタックルでまたも上。しゃがみこむような状態の松嶋のバックについてコツコツヒザを脚へ当てていく。長くバックの状態が続くが松嶋は抜け出してスクランブルからトップを奪取。立ったジャーを足払いの様なローでコカし、最後はテイクダウンからパウンドと攻めて試合を終えた。目まぐるしく攻守が入れ替わるタフな展開で松嶋はジャーをテイクダウンも押さえ込み削る時間がどう評価されたか。ジャーは三角絞めも仕掛けたが極まってはおらず浅かったが……。判定は1人が30-27のフルマークで松嶋につけるも、残り2人は29-28でジャー。ジャーが決勝進出を決めた。  試合後、ジャーは「マツシマはベテランで能力の高い選手だった。三角絞めは極められると思ったけど上手く逃げられた。実は肩を痛めていて、欠場も勧められたけど戦えたので、次の決勝も頑張りたい」と語った。 [nextpage] ソングクがグランド+ヒット&アウェイ判定勝利し5連勝 ▼ROAD TO UFCフライ級トーナメント準決勝 5分3R×チウ・ラン(中国)16勝8敗  126lbs/57.15kg[判定0-3]〇チェ・ソングク(韓国)5勝1敗 126lbs/57.15kg  16勝8敗の戦績で昨年11月にはコンテンダーズ・シリーズにも出場(エリソン・フェレイラに判定負け)のチウ・ランとキャリアは6戦と浅いが、現在4連勝中と好調のソングクの対戦。  1R、サウスポーのランにオーソのソングク、互いに前手を伸ばして距離を取る中で左のミドル、ハイと長い蹴りはラン。ソングクも細かくステップを踏みつつ右ミドルを飛ばす。遠い距離を保ちつつタイミングを見て飛び込み、打ち終わりにはすぐ離れるソングクはタックルも見せつつ、前に来たランに右ストレートのカウンターを当てる。左ミドルに右ストレートで組み立てるランだがソングクはそこにタックルを合わせ、脇をくぐってバックに飛び乗る。だがランは四つん這いとなり前へ落とす。  2R、ケージ中央を取りジリジリと詰めていくラン。入って来たソングクにショートの右を合わせる。ソングクは四つで組み付くとケージに押し込み、外掛けでテイクダウン、後ろを見せて逃げてきたランのバックに付きチョークを狙うがランは1Rと同じように前へ落として脱出。しかしソングクはまたも四つですぐにテイクダウン。今度はハーフでガッチリと抑えるとパスしてクルシフィックスを取りに行くがこれは逃げるラン。インサイドガードからパウンドを落とすソングクは逃げるランのバックに付きチョーク狙い、外れてマウントとなるとパウンドで攻め込む。  3R、ランのノーモーションの右がソングクの顔面にヒット。ソングクはフェイントを多用して揺さぶっていくが手数はあまり出ない。タックルで組み付いて離れ際に右を当てるソングクは遠間からインロー。サイドキックも見せるランは左ハイ、左ストレートを狙うが、ソングクはやや流しに入ったか打撃とタックルを混ぜてヒットアンドアウェイを続ける。  ビッグヒットは無く試合終了となり、判定は3者とも29-28でソングク。序盤のリードを活かして危なげなく勝利をものにした。 [nextpage] インドネシアのサラギが修斗にも参戦のウォンビンを右ストレートで一撃失神KO ▼ROAD TO UFCライト級トーナメント準決勝 5分3R×キ・ウォンビン(韓国)16勝7敗 156lbs/70.76kg[1R 2分41秒 KO]〇ジェカ・サラギ(インドネシア)12勝2敗155.5lbs/70.53kg  修斗やGLADIATOR、アウトサイダーなど日本のリングにも参戦経験豊富で、今年6月のRoad to UFCではスクランブル参戦の鹿志村仁之介をエルボーで1RKOに下しているウォンビン。対するインドネシアのサラギは12勝のうち6KO、4一本と高い決定率を誇る。  1R、出入りの速いワンツやカーフを飛ばすウォンビン。サラギはウォンビンのミドルを掴んで右ストレート、伸びのあるパンチに左ミドルも混ぜてコンビネーションを飛ばしていく。  するとサラギはケージを背負ったところから、右アッパーに来たウォンビンに思い切り右ストレート!この一発でウォンビンが崩れ落ちすぐにレフリーがストップ。見事なカウンターでサラギがKO勝利を収めた。 [nextpage] ミンウが体重超過で風間が不戦勝、決勝へ進出 【中止】▼ROAD TO UFCバンタム級トーナメント準決勝 5分3R風間敏臣(日本)10勝2敗 136lbs/61.69kgキム・ミンウ(韓国)10勝2敗 139.5lbs/63.28kg ※体重超過※キムは規定体重をオーバー。試合は中止とし、風間がバンタム級トーナメント決勝に進出  MMA10勝2敗、柔術がバックボーンの風間は25歳。プロデビュー戦こそ判定負けも、以降9連勝で5つの一本勝ちを誇る。得意のハンマーロックに三角絞め、腕十字とポジションを制しての「寝技」をMMAで見せる稀有なファイターだ。  2022年4月の『POUND STORM』では、齋藤奨司の跳びヒザによるKO負けでデビュー戦以来の黒星を喫するも、「ROAD TO UFC」1回戦では、WFL時代に元UFCのウリジ・ブレンに判定勝ちしている中国のケレムアイリ・マイマイチツォヘチを下からの巴投げでスイープするなど寝技で上回り、判定勝ち。準決勝に駒を進めた。  当初は準決勝で中村倫也と対戦予定だったが、カードが変更され、強豪キム・ミンウ(韓国)と対戦することに。風間は「優勝候補」のキム・ミンウからの一本勝ちを手形に、決勝の結果を待たず一気にUFCとの契約を決めたいと意気込む。  対するMMA10勝2敗のミンウは、1回戦でシャオ・ロン(中国)と対戦予定もロンの欠場により、体重を作るも不戦勝となっていた。ムン・ジェフンを相手に2勝1敗のミンウは、2016年9月のROAD FCで根津優太を1R わずか15秒でKO。2017年4月に“化物”キム・スーチョルに判定負けも、ジェフンに一本勝ちで再起。2019年11月の「Road FCバンタム級選手権」では、ジャン・イクファンを延長R判定で下して戴冠を果たした。  そこから、UFCを目指し、今回は2年11カ月ぶりの試合となる。2つの黒星は判定負け。精度の高い左ジャブでイクファンを制し、三角絞めでジェフンに一本勝ちするなど、打撃、組み・寝技とすべてを高いレベルでこなすことが出来るオールラウンダーだ。  同大会でともに戦うキム・ギョンピョやチャ・ジョンファン、パク・ヒョンソンらと、休むことなく練習を続けて来たという29歳のミンウは、公式インタビューで、打撃での圧倒的な自信と、風間が得意とするるグラップリングでも自分が上、と全局面で圧倒すると語っている(※ミンウの体重超過で試合中止。風間が決勝進出)。 [nextpage] SASUKEが中国人レスラー・ラジンとのワンマッチを制して涙の判定勝利 ▼フェザー級 5分3R×パラジン(中国)23勝3敗 146lbs/66.22kg[判定0-3] ※27-30×2, 28-29〇SASUKE=佐須啓祐(日本)9勝2敗1分145.5lbs/66.00k  また、ワンマッチとして、SASUKE(日本)vs.パラジン(中国)が決定。修斗世界フェザー級王者のSASUKEは9勝2敗1分、1回戦でイー・ジャーのボディロックテイクダウンに右手をマットに着いて負傷。その隙にリアネイキドチョークを極められた。   対するパラジンは23勝3敗。ライト級トーナメントでキ・ウォンビンと対戦予定も欠場。現在中国ローカル大会で15連勝中で、ライト級より2ポンド重い157ポンドのJCKライト級王者となっている。現修斗世界フェザー級王者であるSASUKEはUFCへのチャンスを求めてのワンマッチ出場となる。 対するパラジンは23勝3敗。ライト級トーナメントでキ・ウォンビンと対戦予定も欠場。現在中国ローカル大会で15連勝中で、ライト級より2ポンド重い157ポンドのJCKライト級王者となっている。  1R、遠間からジャブを伸ばしつつ右カーフのSASUKEに対し飛び込みざまの左フックはラジン。SASUKEのカーフに左を合わせるラジンだがSASUKEはガード。オーバーハンド気味に思い切り左右を振ってくるラジンだがSASUKEはそこにドンピシャでダブルレッグを合わせてテイクダウン。立ったラジンのバックに付くSASUKEだがラジンは向き直って四つの展開に。  するとレベルチェンジしてシングルレッグに切り替えたラジンが引っこ抜いてテイクダウン。SASUKEは尻餅の状態でニンジャチョークも狙いつつ足を抜いて立つと払い腰で逆にテイクダウン。サイドに付くとラジンの顔からは出血が。ロールして立つラジン、SASUKEはギロチンを合わせるもこれは抜かれる。スタンドとなるとSASUKEのカーフが2発、3発と入る。  2R、ワンツーで前へ来るラジンにSASUKEはストレートを合わせる。タックルに来たラジンにギロチンで飛びついて引き込むSASUKEだが首を抜かれてグラウンドの展開に。インサイドガードから腰を切って腕十字を狙いたいSASUKEだがラジンが上からしっかりプレスをかけて潰す。ケージ際で立ったSASUKEは再び飛びついてギロチン。しかしまたもラジンは抜くと上から腰を上げパウンド、ヒジを落としていく。腕十字を仕掛けるSASUKE、ラジンが腕を抜いて離れた隙に立ってスタンドに。ジャブを突きつつタイミングよくダブルレッグでSASUKEがテイクダウン。ケージ際に後ずさって立とうとするラジンをがぶるSASUKE、最後はスタンドのギロチンを仕掛けた。  3R、カーフからタックル、飛びヒザも見せるSASUKE。ラジンがダブルレッグからケージに押し込み、そこからシングルにチェンジ。SASUKEはギロチンで引き込む。下から腰を切って腕十字を狙うSASUKE、ニンジャチョークも仕掛けるがラジンは防ぐ。立ち上がるSASUKEだがラジンはしつこく追いかけてタックル、四つの展開になるとSASUKEはスタンドバック着くがラジンは抜け出す。最後はスタンドとなると追うのはSASUKE。右フックやバックブローも見せてスパートをかけて試合を終えた。判定は2者が30-27、1者が29-28で全員SASUKEを支持。  コールを聞いたSASUKEは、ケージのなかで「前回すごく悔しい思いをして帰ってから、トレーニングを積んで戻ってきました。でも練習したことが100パーセント出せたわけではないです。Still Alive! 俺はまだ生きている! プリーズ・ギブ・ミー・チャンス・アゲイン!」と雄たけびを上げ、涙を見せた。 [nextpage] ROAD TO UFC Episode 6 速報 10月23日(日)湾岸標準時17時/日本時間22時 ABEMA配信 ▼ROAD TO UFCフェザー級トーナメント準決勝 5分3R〇イ・ジョンヨン(韓国)9勝1敗  146lbs/66.22kg[1R 0分42秒 KO]×ルー・カイ(中国)8勝4敗146ポンド/66.22キロ  8勝3敗、現在5連勝中かつ2連続1ラウンドフィニッシュのジョンヨンと、8勝1敗で、6月のRoad to UFCでは2ラウンド、パンチでKO勝利を挙げているカイの対戦。  1R、近い距離でパンチのタイミングを窺う両者。ジャブを突くジョンヨンにカイはローを返す。するとカイのパンチがヒットしジョンヨンが下がる。  しかしジョンヨンはすぐに持ち直し、飛び込んで来たカイに打ち下ろしの右ショート!これでカイがダウンするとジョンヨンは追ってパウンド。  2発3発と叩き込むとカイが失神し、ジョンヨンが秒殺KO勝利を収めた。試合後はケージのなかでイー・ジャーとフェイスオフで火花を散らした。 [nextpage] 中村が衝撃のKO勝利で野瀬との日本人対決を制し 風間の待つ決勝へ ▼ROAD TO UFCバンタム級トーナメント準決勝 5分3R〇中村倫也(日本)5勝0敗 136lbs/61.69kg[1R 2分21秒 KO] ※左フック×野瀬翔平(日本)9勝2敗2分 136lbs/61.69kg  バンタム級では、6月の1回戦でググン・グスマン(インドネシア)に1R アメリカーナで一本勝ちした中村倫也(日本)がLDH martial artsを離れ、フリーとして参戦。当初、同じ1回戦でケレムアイリ・マイマイチツォヘチ(中国)に判定勝ちした風間敏臣(和術慧舟會HEARTS)との試合が決まっていたが、カードはシャッフルされ、準決勝で野瀬翔平(マスタージャパン福岡)と対戦する。  中村は、2017年のレスリングU23世界選手権フリースタイル61kg級で優勝。2021年に『格闘DREAMERS』を経て、プロ修斗でデビュー。LDH martial artsを離れて以降は、フリーとして、パンクラスイズム横浜のプロ練習に参加し、マモルのパーソナル、津田勝憲のミット、KRAZY BEEでの山本アーセンとの練習、タケ大宮司のファンクショナルトレーニングと、出稽古を中心に、自身でそれをMMAのなかに落とし込んできた。すべてを背負う形で人生を賭けて臨む、27歳の準決勝となる。  対する野瀬は柔道出身で25歳。高校2年生のときに、団体戦無差別の試合で重量級を相手に首の骨を骨折。地元の九大病院では手術が出来ないほどの重症のなか、ドクターヘリで福岡の病院に緊急搬送されている。  脊椎損傷センターで足の骨を削って頸椎をつないで固める大手術を行ったが、『殺してくれ』と叫ぶほどの痛みのなか、車椅子に乗るためのリハビリから開始。奇跡的に1年後に痛みや痺れが和らいだものの、1年経っても懸垂1回もできず、腕立て伏せ10回もできない状態から『拾った命・身体だからやりたかったMMAをやろう』とMMAの道を進んだ。  修斗でプロデビューし2分け後、4連勝をマークも、2020年9月に工藤諒司にKO負け、2021年2月のRoad to ONEで吉野光(※10月20日午後11時~「UAE Warriors34」でジャマル・ラステムと対戦)にスプリット判定で敗れ初の連敗も、以降はMMA5連勝中。3月にはRISE WESTでのキックでも1R KO勝ちを収めている。 「ROAD TO UFC」では、1回戦でウリジ・ブレン(中国)に1R TKO勝ち(※ブレンが右足負傷)し、準決勝でキム・ミンウと対戦予定だったが、9月になって中村に対戦相手が変更された。同門の先輩SASUKEとの福岡での練習を経て、レスラー中村との戦いに向け、身体に沁み込んだ柔道、そして、元UFCの弘中邦佳代表ゆずりの柔術もMMAのなかで駆使して戦う。  1R、サウスポー同士の両者。いきなりハイキックで入る野瀬に中村は左フック。これで野瀬が転倒するがすぐ立つ。タックルのフェイントからパンチ、さらに詰めてダブルレッグの野瀬。レスリングエリートの中村相手にも果敢にタックルを仕掛ける。  近距離になると首相撲から中村が左ヒザ、これで野瀬が尻餅を着くようにダウンする。すぐ立った野瀬は前手の右フックを打ち返すが、四つの展開から崩してバックに付いた中村は、振り向いた野瀬に再び左ヒザ! これが効き中村がぐらつくと中村はパンチで畳み込む。左ストレート、左フックを続けて当てると野瀬がダウン。金網にもたれかかり尻餅の状態のまま何とか組み付こうとする野瀬だが、中村がパンチをまとめるとレフリーがストップ。レスラーながら強烈な打撃を見せて中村が風間敏臣の待つ決勝へ進出を決めた。  試合後インタビューで中村は試合プランについて聞かれ「MMAは流れだと思う。臨機応変にアジャストしていかなきゃいけない。何発か打撃をもらった」と話すと、フィニッシュへと繋がった左ヒザが当たった時の手ごたえについては「彼は本当にタフだからあれで終わるか分からなかった。止められるまで集中していた」と最後まで気を抜かなかったと明かした。  そして日本人同士となった決勝戦について聞かれると「決勝で日本人と戦えることは誇りに思うので、風間選手、決勝戦最高に試合にしましょう」と話し、ケージに足を踏み入れた風間と握手を交わした。 [nextpage] ダウン奪われたヒョンソンがトップノイを逆転チョーク葬で決勝進出 ▼ROAD TO UFCフライ級トーナメント準決勝 5分3R×トップノイ・キウラム(タイ)8勝4敗 126lbs/57.15kg[1R 3分05秒 リアネイキッドチョーク]〇パク・ヒョンソン(韓国)7勝0敗 126lbs/57.15kg  RIZINに3度出場し、オニボウズにKO勝利、朝倉海、中村優作に判定で敗れているムエタイファイター・トップノイは6月の前戦で今回のトーナメント本命の堀内佑馬を下して準決勝へ上がって来た。  対するヒョンソンはデビュー以来無敗の6連勝。そのうち5勝でフィニッシュしている。  1R、サウスポー構えからジャブ、ローのトップノイにオーソのヒョンソン。するとトップノイの左ストレート右フック、左ストレートの3連打が全て入りヒョンソンがダウン。しかしヒョンソンは追わずに立たせる。両手を広げて声を上げ挑発するトップノイはパンチで入ってくるヒョンソンにヒジを合わせる。  強い左ミドルを当てるトップノイにヒョンソンは走り込んでタックルからバックを取るとチョーク狙い、外されてもパウンドを入れてトップノイを動かすと再びチョークをセットアップ。今度はガッチリと入りトップノイがタップ。  一本勝ちで逆転勝利し、ヒョンソンが無敗記録を更新。トーナメント決勝でチェ・ソングクとの韓国人対決に挑む。 [nextpage] インドのジュブリがトーナメント本命・元HEAT王者のギョンピョを打撃で完封し判定勝利 ▼ROAD TO UFCライト級トーナメント準決勝 5分3R〇アンシュル・ジュブリ(インド) 6勝0敗 156lbs/70.76kg[判定2-1] ※29-28×2, 28-29×キム・ギョンピョ(韓国)11勝3敗 155lbs/70.31kg  インド出身、元数学教師という経歴を持ちデビューから5戦全勝のジュブリ。対するギョンピョはGLADIATOR、HEATなど日本の団体にも参戦。HEATではライト級のベルトを巻き、2018年には修斗でキャプテン☆アフリカ(出花崇太郎)を1ラウンドTKOで沈めている。  1R、外を周りながらインロー。左フックを当てるギョンピョ。ジュブリはケージ中央を取って長いジャブやボディを飛ばす。互いにタックルを見せるがすぐに離れスタンドに。近距離で左右のフックを振り回すギョンピョだが入って来たところへジュブリは右ストレートを合わせる。ボディも混ぜて上下にパンチを散らすジュブリは、飛び込んで来たギョンピョにカウンターの右ショート。これでギョンピョがヒザを着く。すぐ立つギョンピョはタックルに行くがこれは切られる。ラウンド終了間際もジュブリは相手の打ち終わりに右を当てる。  2R、すぐに長いジャブを突くジュブリ。ギョンピョがフックを振ってくると打ち合いに応じ、ヒザも突き上げる。しっかりとギョンピョのパンチを見てかわすジュブリは伸びるストレートを顔面、ボディへ当てていく。ギョンピョは前手で引っかけるようなフックやボディも見せるがやや手詰まりかあまり手数が出ない。走り込んでタックルに行ったギョンピョが尻餅を着かせるが、ジュブリは跳ね上げるようにして逃げ、スタンドに戻す。ワンツーに顔面へのヒザも混ぜて攻めるジュブリ。ラウンド終了間際、ギョンピョがテイクダウンに成功するがパウンドに行こうとしたところでホーンが鳴った。  3R、近距離で打ち合いを仕掛けるギョンピョだがジュブリも積極的に打ち合いに行きフックを交錯させる。タックルでギョンピョがテイクダウンするがジュブリはロールしてすぐに立ち上がる。パンチで前に出るジュブリ、下がるギョンピョがタックルに行っても余裕を持って切る。離れてはジャブ、近づいてはフック、ヒザとジュブリが攻勢。パンチ、タックル共にジュブリはほぼ全てをしっかりとディフェンスしたまま試合終了。判定は2-1と割れたが、内容的には完封と言っていい勝利でジュブリが、インドネシアのサラギが待つトーナメント決勝へと駒を進めた。 [nextpage] 7戦無敗のムロドフが柔術黒帯のシケイラをドミネイトして一本勝ち ▼非トーナメント戦〇サマンダル・ムロドフ(タジキスタン)7勝0敗 170lbs/77.11kg[1R 4分59秒 リアネイキドチョーク]×ジャン・シケイラ(ブラジル)19勝4敗 175lbs/79.37kg ※※シケイラは規定体重をオーバー。試合は予定通り行われるものの、対戦相手のムロドフに報奨金の30%を支払う  タジキスタンの山岳地帯出身のムロドフはキャリア7勝0敗、コンバットサンボで2018年世界王者の経歴を持ち、ハビブ・ヌルマゴメドフが主宰するイーグルFCで戦ってきた。対するシケイラは柔術黒帯を巻き、19勝のうち15のフィニッシュ勝利(7KO、8一本)を持つ。  1R、右のカーフを蹴っていくシケイラに、ムロドフはすぐに組み付いて四つからテイクダウン。クローズドガードから三角絞めを狙っていくシケイラにムロドフはボディ、顔にパウンドを散らしていく。ヒジも混ぜて削っていくムロドフにシケイラは腕十字を仕掛けるが腕を抜かれる。  ムロドフはしっかりとトップキープしつつパスガードからマウント、そしてバックを見せたシケイラにパウンドを連打。さらにチョーク。あごの上から強引に絞め上げると腕がのどに食い込み、ラウンド残り1秒でシケイラがタップ。圧倒的な一本勝利でムロドフがパーフェクトレコードを更新した。
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