クレベルが余裕を見せているかと思うといきなり極められてしまう
──格闘技のキャリアは、最初は何から始めた?
もともと一番最初についていたコーチがオランダ人でK-1スタイル「のキックボクシングから。それからMMAに移行した。その後オーストラリアでセコンドについてくれているロドニーがボクシング技術を高めてくれた。コロナで試合の機会が減るなかでボクシングの試合もキックボクシングもムエタイも試合に出る。真のMMAファイターは皆そうあるべきだと思っている。
競技に関わらず挑戦して自分を試すべきで、その意味では梅野選手とは正反対。彼は自分のルールに合わせて、それで負けると文句ばかり言う。彼が自分とボクシングやキックボクシング、ましてやMMAで自分とやることはないだろうし、いやそもそもMMAで対峙したら30秒で終わるが。ただ、そういうことを恐れずオールラウンドで挑戦することが真の格闘家として自分を確立していけるものだと思っている」
──プロとしてはMMAが最初だったのですか?
「テクニカルに言うと最初はムエタイファイトで、17歳の時。プロMMAは18歳の時。プロボクシングは22、23歳くらい」
──もともとMMAファイターを目指していて、その中で色々やっているのでしょうか? ムエタイを目指していたわけではない?
「自分はただ、“ファイター”になりたかったんだ。どんなルールセットであろうと構わない。真の格闘家というものは、戦う場があるならそこにいって闘う。柔術のトーナメントがあるなら出たいと思うし、柔道のトーナメントにだって出たいと思う。試合があるということで、それだけ世界を旅し世界を見て新しい出会いもあれば新しいい友人もできる。それら全てを含めて格闘家。自分のスタイルはワイルドスタイルだ。どんな格闘技にもアジャストできる」
──では格闘家になりたい、とはどうして思ったのでしょうか?
「子供の頃ちょっと舌ったらずで話しかたに癖があって人と喋るのが好きじゃなかったけど、本を読んだりするのも好きじゃなくて、暴力でしか自分を表現できなかった。スポーツ、フットボールのようなもので自己表現していた。我が家は非常によく働く勤勉な一家なんだけど、16歳のとき、自分は格闘家になりたいと言って学校を退学したんだ。父とは負けたら、復学するように約束していたが、20歳まで負けなかったので、勉学に戻ることはなかった。
格闘技が自分の運命だ。格闘家の道を今ここでやめるわけにはいかないし、自分の望みを実現していかないといけない。40歳、50歳になっても戦うクレイジーなファイターだと言われる、そんな格闘家が自分。勉学は怠ったけれど格闘技から多くを学んで、自分の日々の生活のなかではずっと戦いのことしか考えていなくて心身から自分は格闘家なんだ。ただ、闘うのみなんだ」
──梅野はオールドスクールというが、若いムエタイ選手と何が違う? テンポが違う?
「テンポが違う。彼のスタイルは試合のリズムをコントロールして緩急つけて戦うポイント勝ち狙いの戦い方。若いファイターたちはファイトIQが強く常にフィニッシュを狙いにいく。ポイント狙いのスタイルだとそれは打破しづらい。ムエタイの魅力を使いたいという信念を持ってくるだろうから、もう少しアグレッシブだと思うが自分のパンチに飛び込んでくるだけのことであれば良い判断とは言えない」
──梅野選手が得意なヒジ打ちののほかに、奥足へのローキックは脅威に感じていない?
「ヒジを狙ってくるならヒジの出し合いになるかもしれないし、サウスポーなので奥足の蹴りを試みることは、僕の左ストレートの格好の餌食なのでサウスポー相手にはよくないだろう。梅野は過去の試合でもサウスポーに苦戦していた。自分はサウスポーで、スイッチもできるので奥足への蹴りは危険度が増す。1Rでどうなるか楽しみだしとても興味深いところさ」
──練習仲間のファブリシオ・アンドラージとクレベル・コイケの試合をどう予想しますか。
「ファブリシオは1ラウンドで圧倒的な勝ちをするのでは。レベルが全然違う。スパーリングして肌で感じている。ファブリシオと練習して彼の打撃はすごく強い。それに耐えて戦い続けられるということが自分の自信でもあるから、梅野がどれだけ殴ってきても自分はファブリシオに殴られているので全然効くことはないだろうね。
クレベルについては、彼の柔術は別次元のスキル。リラックスして余裕を見せているかと思うといきなり極められてしまう。そして、クレベルの打撃はユニークで変則的だ、まるでパズルのような。ファブリシオも自分もそう。そういう選手同士で高いレベルでしのぎを削り合っていると、その先に行かなくためには自ずと変則的になっていく。だからこういう人たちと練習することは僕の自信になっている。ファブリシオが勝つし、クレベルも勝つ、そして自分も勝って、みんなハッピーだね」