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2021年の大晦日の『RIZIN.33』さいたまスーパーアリーナ大会の第1試合「MMAチャレンジルール」で、ホストファイターのYUSHIと、3分3RのプロMMAデビュー戦に臨んだ三浦孝太(BRAVE)。
試合は1R 3分、サッカーキックによるTKOで華々しく初戦を勝利で飾り、リングサイドの父・三浦知良と熱いハグをかわしたシーンが、お茶の間の話題をさらった。
その後、フェリペ“キングハンター”マソーニとの試合を首の怪我、新型コロナウイルス感染によりキャンセル。2022年8月にタイでのブアカーオ・バンチャメーク(旧ポー.プラムック)とのキックボクシング形式でのエキシビションマッチを経て、2022年10月25日(日)の『超RIZIN』で、MMA2戦目に臨む。
本人が望むと望まさるとに関わらず、地上波放送のなか“キング・カズ”の次男という話題性で、大舞台に抜擢され、結果を残した三浦。地上波が無い今回は『超RIZIN』の「PPV」でメイウェザーvs.朝倉未来に並ぶ注目カードとして、タイのボクサー&ムエタイファイターでMMAデビュー戦となるブンチュアイ・ポーンスーンヌーンと対戦する。
本誌『ゴング格闘技』(NO.322)最新号では、「格闘技が、壊される!?」と題して、メイウェザーvs.朝倉などのエキシビションマッチ、話題先行のマッチメイク、BreakingDownの功罪などを特集。そのなかで、指導者やファイター、関係者たちが「強さを求める格闘技」の在り方について、熱い思いを語っている。
タイのラジャダムナンスタジアムで元K-1MAX世界王者のブアカーオとエキシビションマッチで向かい合った三浦は何を感じたのか、そしていま再びさいたまスーパーアリーナでのMMA2戦目に、いかに向かうのか。三浦は、こちらのすべての質問に答え、ありのままの自分の姿を語った。
ブアカーオ選手とは3Rはエキシビションでやらなくちゃいけなかったのに──
──タイで、ブアカーオ選手とのエキシビションマッチを行って、実際に対峙して見て感じたことはどんなことでしたか。
「めちゃくちゃ怖かったです(苦笑)。リング外で会ったときとはもう様子が全然違ったので。いくらエキシビションで、試合日の前に行ったときにお会いしたときは、“まあ軽くやってやるから大丈夫。本気で来い”みたいな感じで言ってくださっていても、入場でブアカーオ選手が来た時に、ラスボス感が凄すぎて、“ヤバいな”と思いました。実際対峙すると、全然……、いくら軽くとはいえ、やっぱり向かい合ったときの恐怖みたいなのは凄くて。本気モードの雰囲気を出していたのでそこで押されてしまって、ちょっと硬直しちゃったな、と。あとは、キックボクシングをやったことが無かったので、正直、攻め方も含めて、体力の使い方など全部分からくてパニックになってしまったというのがありましたね」
──3R、思ったよりスタミナが持っていたように感じました。
「いや全然、1Rが終わった時点でスタミナが切れてしまっていて。ブアカーオ選手が前に出てくるので、もう何をしたら良いのかとか、外し方とかもやったことないものばかりだったので、頭が混乱して1Rでバテバテになってしまいました。あと、やっぱりエキシビションで、『3Rやりきらないといけない』というのがあったので、途中で止められちゃったんですけど、本当にそれが怖くて。普通の試合だったら、1R目から倒しに行って、どのタイミングで終わるか分からないんですけど、向こうがどんだけやってきても、3Rはエキシビションでやらなくちゃいけないとは思っていたので、どんな形になってでも立っていようとは思ったのですが……それが叶わなかったのが、本当に悔しかったですね」
──エキシらしく、事前の会見で聞いていた通り、「KOするような攻撃は無し」で、ブアカーオ選手も巧みにクリーンヒットは避けてましたが、最後のラッシュでは効かされたものもあったように見えました。
「試合戦前にブアカーオ選手から『避けると危ないから避けないで』と言われていたんですが、最後の方はアドレナリンが出ていたのか、多少当てに来たんで、もう、こっちはどうしていいか分からないというか、咄嗟に避けてしまって、そのタイミングでブアカーオ選手が外そうとしてくれた跳びヒザ蹴りが当たったりすることもあったんですけど、でもダメ―ジ的なものは無かったです」
──ブアカーオが構えるだけでなかなか入っていけなかったり、あるいは自分が打ってもいなされたりする。そういう経験がリング上で出来たことはどう感じていますか。
「そうですね、とても大きな経験でした。ムエタイの選手の距離感だったり、“圧”みたいなのは経験したことがなかったので、向かい合った時の“何もできない感”というのは、やってみないと分からなかったですし、あとはムエタイ選手の……ブアカーオ選手だけなのかもしれないですけど、身体の硬さも。蹴ったりとかパンチを打っても凄く身体が硬くて、打った自分が痛いという経験は初めてで、そういったことは、今後ムエタイの強豪の選手とやっていく機会もあるかもしれないので、とても勉強になりましたね。痛かったです(苦笑)」
──練習ではボクシンググローブを着けてきたでしょうけど、MMAのオープンフィンガーグローブとは違い、それを観客のいる前で対峙する必要がありました。
「対峙できただけでも勉強になりましたし、ボクシングの技術も向かい合わないと感じられないこともあります。練習よりもああいう、お客さんが入った状態の、練習試合のようなものだと思うのですが、それでもあの1試合で得た経験値は大きいんじゃないかと思います」
──自分のなかでこういうことは出せたと感じられた動きは?
「コンビネーションとかステップワークとかボクシングでやっている技術も、全部出せなかったわけではないので、まあ少しだけでもそういうコンビネーションやステップワークが使えたのは、良かったと思います。今回は互いに効かすことは出来ない状況でしたけど、実際の試合だったら、打ち抜けたかもしれない、と感じたパンチは少しだけありました」
──三浦選手にとっても、最初から100パーセントで行けるものではなく、難しいエキシビションでした。
「そうですね。そういう難しさの経験というか。でもブアカーオ選手はプロとして何戦もやってきて慣れていたので、本当の達人というか、ベアナックルの試合もそうですけど、どんなルールにも対応できて凄いなとあらためて感じました。やっぱり、その競技の鉄人的な人になるには、その競技を誰よりも好きでいないと続けていられないと思って。ブアカーオ選手も戦うことが大好きなんだなと感じましたし、自分もそうありたいと思いました」