ブラジリアン柔術のIBJJF世界王者(2012年~2016年、2018年~2019年、2022年)8度、ライト級・ミドル級・ミディアムヘビー級・ヘビー級・オープンクラスと5階級を制覇した“最強パスガード”レアンドロ・ロ(ブラジル=33歳)が銃撃され死亡したことで、格闘技界に大きな衝撃が広がっている。
現地からの続報によると、事件が起きたのは2022年8月6日の土曜日の深夜。ブラジル・サンパウロの一等地に構えるスポーツクラブ「クラブ・シリオ」で開催されたパゴージ(ブラジル音楽)のライブに向かったレアンドロ・ロは、容疑者の男がテーブルに近付いて、空のグラスを手渡して挑発、さらにボトルを手に脅すような仕草を始めたため、男を床に組み伏せたという。その後、落ち着いてその場を去るように促したところ、容疑者はテーブルの周りを数歩歩いた後、いきなり銃を取り出し、レアンドロ・ロの額に向けて発砲したとのこと。目撃書の証言によると、銃撃後も容疑者はレアンドロ・ロの頭を2回蹴ったとされている。
その後、病院で数時間後に脳死と宣告されたことを代理人のイヴァン・シケイラ・ジュニオール弁護士が発表。
同氏によると騒がしいクラブで銃声をまともに聞いた客は少なかったという。「クラブ・シリオ」では警察官以外の銃所持は許可されていない。
逃走した犯人は軍警察のエンリケ・オタヴィオ・オリヴェイラ・ヴェローゾ中尉(30歳)だと特定されていた。その後、サンパウロ文民警察が、ヴェローゾをレアンドロ・ロ銃殺の容疑者として拘束したことを発表。
容疑者の身柄を拘束したサンパウロ文民警察長オスバルド・ニコ・ゴンサウベスによると、ヴェローゾは7日の午後に軍警察に出頭したという。
その後、ヴェローゾが拘留されている警察署には、容疑者への抗議と私刑のため身柄引渡しを要求する群衆が詰めかける事態にも発展している。
同容疑者は2017年にもナイトクラブで警官を襲撃した前科があり、9カ月(外出許可あり)の実刑判決を受けていた。また、柔術経験者で自らを「護身術のスペシャリスト」と謳っていたこともあり、事件当夜は、レアンドロ・ロと知って絡んでいった可能性もある。
柔術王者の遺体は8日、サンパウロ南部のモランビー墓地に埋葬され、その葬儀には、多くの柔術家たちが道衣をまとい参列している。
[nextpage]
ブシェシャ「明日が無いかのように、常に一瞬一瞬を楽しみながら、強烈に生きることを教えてくれた」
この痛ましい悲報は、格闘技界に大きな衝撃を与え、多くの追悼コメントも投稿されている。
7日には、米国でグラップリング大会「WNO(Who's Number One)16」が開催され、ゴードン・ライアンvs.フィリッピ・ペナの「時間無制限マッチ」が組まれたが、レアンドロ・ロの練習仲間であるペナは欠場を希望。時間制限マッチも提案されたが、ペナへのリヴェンジにかけてきたゴードンは拒否。ペナは主催者に促され試合に出場したものの、集中し切れず、44分が経過し、ゴードンのテイクダウンにガードポジションになったところで、口頭で試合を途中放棄している。
また、今回の悲報に、2012年のムンジアル・黒帯初挑戦時にレアンドロ・ロと対戦したホベルト・サトシ・ソウザは、「兄弟、私は今でも信じられない。私はあなたと5回戦うという光栄な経験を持っていたことが、どれだけ自分にとって良いことであったか」と、レアンドロ・ロとの試合動画をリポストして追悼コメントを記した。ライト級準決勝戦でレアンドロ・ロと対戦したサトシはロにファイナルへの行く手を阻まれ、3位に終わっている。
レアンドロ・ロのライバル・盟友たちも次々と彼を追悼。
◆マーカス・“ブシェシャ”・アルメイダ「伝説は死なない」
「畳の上だけでなく、人生について多くのことを教えてくれてありがとう、あなたは私たちに、明日が無いかのように、常に一瞬一瞬を楽しみながら、強烈に生きることを教えてくれました。この痛みに対して、今この瞬間に言葉を見つけるのはとても難しいです。私はいつもあなたを兄弟として愛しています。今日、私は天国がより幸せな場所で、そこであなたはパーティーをしていると確信しています。センセイ、私たちにたくさんの喜びを与えてくれて、本当にありがとうございました。愛してるぜ、ジャウ、そこで休んでてくれ!」「伝説は死なない。『人間の本分は生きることであり、存在することではない』。我々はレアンドロが彼の人生の一秒一秒を本当によく生きたことを知っている。あなたは永遠に忘れられないだろう、私の兄弟、愛しているよ! 安らかに眠ってください」
◆ホドウフォ・ヴィエイラ「あなたの戦い方は独特でした」
「あなたが亡くなったことがまだ信じられません。ここに何を書けばいいのか分かりませんが、あなたと出会い、あなたのそばで素晴らしい時間を過ごし、たくさんの旅、たくさんの大会に参加できたことは、とても幸せなことだと感じています。偉大な対戦相手、BJJがくれた偉大な友人、なかなか目にすることが出来ない素朴さ、謙虚さ、カリスマ性を持った男、あなたに憧れ、好きにならない人はいなかったでしょう。みんなが友達になりたがっていた。私はあなたのそばにいることが大好きでした。あなたのおどけた態度に、冗談に、一緒に笑うことが大好きでした。写真から、あなたと一緒にいることの喜びが伝わってきました。今までも、そしてこれからも、柔術界にはあんな人はいないでしょう。あなたはユニークで、あなたのあり方や戦い方は独特でした。あなたのことを聞いて、『ファンです、憧れです』と言ってくれた皆さん、もしあなたに会えたらこの憧れは1000倍になっていると思います。あなたがいなくなると、とても寂しくなります。天国のパパはお腹が痛いだろうから、大笑いする準備をしておいてね。涙で目が熱くなりながら、この文章を書き終えました。あなたは永遠に私の心の中にいます。Te amo(愛しています)」
◆ルーカス・レプリ「いつも笑顔があった」
「これが今年のワールドカップでの最後の写真となりました。彼との思い出は、いつもそんな感じで、いいエネルギー、いい笑い、いいジョーク……ロは、私のキャリアの中で最もチャレンジングな選手だったと言えるでしょう。彼は、私が今までやったことのないようなあらゆる形の柔術を勉強させ、向上させてくれました。 今、私はこれらの挑戦のおかげで、多くの目標を達成することができました。あなたがいなくなると、とても寂しくなります。私たちのスポーツのために尽くしてくれてありがとう、安らかにお眠りください。神様がご家族を慰め、力を与えてくださるようお願いします」
◆カイナン・ドゥアルテ「いつもあなたのハイライトを見ていた」
「レアンドロ・ロ、私はいつも放課後にあなたのハイライトを見ていました。私が最初に参加したセミナーはあなたのもので、最後のセミナーもそうでした。“LENDA”の安らかな眠りと、ご家族の慰めをお祈りします」
◆オターヴィオ・ソウザ「常に記憶される」
「あなたは私たち全員から、愛情と賞賛をもって常に記憶されるでしょう。R.I.P レアンドロ・ロ」
◆ヴィトー・エスティマ「柔術界は喪に服している」
「今日は悲しい日です。彼の家族と愛する人たちに思いを寄せています。柔術界は喪に服している。R.I.P」
◆グスタヴォ・バティスタ「僕の永遠のアイドル」
「なんて悲しいニュースなんだ、まだ信じられないよ。レアンドロはユニークな人物で、正直で、寛大で、善良で、その喜びはすべての人に伝わりました。僕の永遠のアイドルであるあなたと、たくさんの楽しい時間を共有できたこと、たくさんのことを学べたことに、とても感謝しています。彼は、柔術の歴史と彼を知るすべての人の心の中に永遠に記憶されるでしょう。彼を愛する家族と友人に哀悼の意を表します」
◆ベルナルド・ファリア「残された家族をサポート出来るように」
「今日、BJJFanaticsのゼンガと電話をしていて、レアンドロ・ロのニュースを聞いて二人ともすごく悲しくて、彼の家族をサポートするために何かできることはないかと話し合っていたんだ。そして、レアンドロの家族に5千ドル(25,000レアル)を寄付し、さらに、より多くの人がこの柔術のヒーローの家族をサポートできるようなページを立ち上げることにした。今日は私の柔術キャリアの中でも最も悲しい日の一つで、これが私ができる最低限のサポートだと感じています。私はここにリンクを残し、また私の経歴欄にも載せておきます」
◆ホムロ・バハル「畳を共有できて光栄」
「サムライは死なない。最高の選手だ。ロと畳を共有できて光栄です。家族のみんなに、たくさんの力を。永遠のアイドル」
◆アンドレ・ガウヴァオン「彼の試合は誰もが立ち止まって見た」
「私たちの偉大なチャンピオン、安らかに眠ってください。寂しくなりますね。今まで出会った人の中で、最も生き生きとした存在感のある人の一人です。特別な男で、彼が戦うと、誰もが立ち止まって彼を見たものだ。彼は常にカードを隠し持っていたから。話すときはいつも、笑いすぎて泣いてしまいそうだから……お腹痛い、顔痛い! って覚悟してました。謙虚で、とても謙虚で……芸術の達人で伝説的で、一緒に過ごしたわずかな時間がとても素晴らしいものでした。神様が彼の家族と友人たちの心を慰めてくれますように」
◆マイケル・ランギ「RIP legend」
また、現在UFC世界女子ストロー級で活躍中の元ムンジアル王者マッケンジー・ダーンは「今日、世界は信じられないような人を失った。レアンドロ・ロー選手、あなたはアスリートとして、そして素晴らしい人間として歴史を作った。ご家族、ご友人の方々のご冥福をお祈りいたします」と投稿。
デミアン・マイアは、「どのように去ったかよりも、どのように生きたかがずっと重要です。そして、なんという人生だったのでしょう。レアンドロさん、安らかにお眠りください」。
ケニー・フロリアンは「BJJ コミュニティにとって非常に悲しい日です。レアンドロは伝説だった」。
ジョシュ・トムソンは「スポーツ界ではレジェンドという言葉がよく使われますが、柔術でのあなたの名前に関しては十分に語られることはありません。レアンドロ・ロ、あなたの家族に祈ります。私の兄弟、友よ、安らかに眠れ」。
ギルバート・バーンズは、「レアンドロ・ローがいなくなったなんて信じられない、レアンドロ・ロが亡くなるなんて信じられない」と多くの涙顔とともに記している。
また、レアンドロにとって「当時、唯一と言っていい立ってパスする名手で、僕の最初のアイドル」というホナウド・ジャカレ・ソウザは、「レアンドロ・ロは、柔術世界選手権で8回、ワールドカップで5回、パンアメリカン大会で8回優勝しています。残念ながら、私が最も愛するスポーツのこの美しい歴史は、今日、残忍な犯罪によって中断されました。畳の上でも外でも、彼がいつも見せてくれた喜び、そして柔術のためにしてくれたすべてのことが、記憶の中に残っているのです。私の友人よ、安らかに眠りたまえ。あなたが残した遺産は、何世代にもわたって受け継がれていくことでしょう。押忍」と、追悼の意を表した。
本誌『ゴング格闘技』でも、多くの試合レポートを掲載し、2014年の来日時には、インタビューとテクニック紹介も行ってくれたレアンドロ・ロ・ペレイラ・ド・ナシメントに、心から哀悼の意を表します。