2022年7月31日「RIZIN.37」さいたまスーパーアリーナ大会で、DEEPフライ級統一王者の神龍誠(神龍ワールドジム)が、所英男(リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)と対戦。判定勝利後、リング上で所から説教を受け、神龍が「ヒール卒業します。真面目に生きようと思います」と改心したことを明かした。
前日計量後のフェイスオフから、所の目が「怖かった」という22歳の神龍は、44歳にして約9年ぶりにフライ級に落としてきた所の落ち窪んだ目からの視線に、「正直、威圧されたというか、考えちゃいました。どういう気持ちであの目になったんだろうっていう。何考えてるか分からないから怖いっていう……初めてです、ああいう感覚になるのは」と、恐怖を感じていたことを、試合後の会見で吐露。
試合では、全ラウンドを通して動きを止めない所のサブミッションを防いだ神龍が、3Rに所のヒザ蹴りにカウンターの右ストレートを合わせてダウンを奪取。上から固めて判定3-0で勝利した。しかし、フィニッシュに至らなかった神龍は「やってしまったな」と反省。
試合後に、リング上で所から「君はすごい強くて上に行くんだから、ヒール的な発言を “親父狩り” とかも、本当にそういう目に遭って辛い思いした人がいるわけだから、そんなに簡単に言っちゃダメだよ」と諭され、「僕、ヒール卒業します。真面目に生きようと思う。今回の所さんとの試合で本当に学びました。所さんみたいに応援されるには、ヒールとかダメでしたね、僕センスないし」と、世代闘争のなかで、ベテラン越えのためにヒール役に徹したものの、自身には向いていなかったと、神龍は語った。
一問一答の全文は以下の通りだ。
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所選手は計量から、目がすごい怖くて引いてしまった
──所英男選手に判定勝ちしました。神龍選手の試合後の率直な感想をお聞かせください。
「うーん。“やってしまったな” っていう。全然発言に見合った強さを見せられなかったなって。本当に反省しています」
──「グルグル回っているだけ」と発言されていましたが、実際の「回転体」はいかがでしたか。
「すごい強かったです」
──2ラウンド目に回転しながらキックをしていましたが、あれが試合前に言っていた……。
「あれが “マコトルネード” ですね(下の所に上から回転しての蹴り)。距離感ミスって当たらなかったですけど」
──「やってしまった」というのは、そういう技も出していったけれども……というところですか?
「そうですね、もうちょい磨きます」
──対戦を終えて、対戦相手の所選手はイメージと違うところはありましたか。
「最初からすごいいい人だなと思っていて。やっぱ僕ってすごい無名なので、何だろう、嫌われた方が。所さんはすごいいい人だし盛り上げていって、僕もやっぱプロフェッショナルってそういうものかなと勘違いして、ダメダメな(ヒールの)煽りをしてしまいました」
──試合を終えたばかりですが、今後の展望を教えていただけますでしょうか。
「今回の試合では、まだまだ『すぐUFC』なんて言える試合ができなかったので、怪我はどこにも無いので、明日からでもすぐに練習して、圧倒的な強さを見せられるようにします」
──退場時に見えた涙の意味は?
「単純に悔しかったですね。本当にもっと圧倒的に勝たなくちゃいけない試合で、ダメなところを出してしまって、イマイチで。所さんが、すごい盛り上げようとしているのに、僕がダメだったのかな、はい。それが悔しかったです。もうちょい盛り上げたかったです」
──試合後、リング上でどんな言葉を交わされたのですか。
「『君はすごい強くて上に行くんだから、ヒール的な発言を “親父狩り” とかも、本当にそういう目に遭って辛い思いした人がいるわけだから、そんなに簡単に言っちゃダメだよ、これだけは約束してくれ』って、言われました」
──今後はその約束を守っていく、と。
「そうですね、僕、ヒール卒業します。真面目に生きようと思うんで。今回の所さんとの試合で本当に学びました。所さんみたいに応援されるには、ヒールとかダメでしたね、僕、センスないし、ヒールの。今思えばダメだった。真面目に行きます」
──試合の中で所選手らしい動きも結構ありました。神龍選手はあそこまでやらせたくなかったと。
「そうですね、圧倒的に勝たなくてはいけなかったのかなというところで、盛り上げるシーンを作ってしまって、所さんがすごいいい動きをして。そこがダメだったですね」
──腕なり足なりを掴まれ、「ちょっとヤバいかな?」という場面はありましたか。
「まあ、ズレてるから大丈夫かなという感じはあったです。極められるという感じはなかったです。結構、どこからでも隙があれば狙ってくる選手なので、想定はしていましたね」
──足を取られながら、下からアメリカーナやアームロックを狙っていったのは?
「ああ、V1ですか。極められたら極めようかなって。色々と何回か、極められるシーンが、パンチでもあったと思いますが、狙ってはいましたね」
──大ベテランと戦って勉強になった部分はありましたか?
「全部勉強っスね。計量から、目がすごい怖かったんですよ。僕、計量でああいう雰囲気の人を初めて見て。サイコパス的な目。それでちょっと引いてしまったというか。これから世界に行く上で、この経験は絶対必要な試合だったと思います」
──「目が怖かった」ことで、精神的に威圧された部分がありましたか?
「昨日ちょと威圧されました、正直。威圧されたというか、考えちゃいました。どういう気持ちであの目になったんだろうっていう。逆に、何だろう……、怖い。何考えてるか分からないから怖いっていう。初めてです、ああいう感覚になるのは」
──本来は階級が上で、そこから落としてきた所選手と対戦したことで、階級差を試合中に感じることはありましたか。
「今までで一番デカかったんですかね、身長とかは。だから距離感とかちょっと難しかったというのはありますね。170cmって書いてありましたけど、172cmはありそうなサイズ感ではあって、手も長かったです」
──さきほど「まだ世界には早い」という発言もありました。しばらくはRIZINで経験を積んで行きたいですか。
「うーん、どうなんですかね。タイミングとかもあるんで分からないですね。試合を積んでって、いろんな経験して最終的に僕が一番強くなれればいいと思っているので、そういう感じですね」
──次にRIZINでやるとしたら外国人選手とやりたいですか?
「正直日本人でやりたい選手はいない。僕は海外の人とやったことがないので、呼んでもらえるなら、こんな僕ですけど、呼んでもらえるなら経験してみたいと思いますね」
──所選手は年齢が神龍選手の倍の44歳。キャリアがあるベテラン選手と実際に戦って、あれくらい続けたいと感じましたか。
「それは思わないです。自分は30歳くらいまでやって、引退してプロレス行こうかなって思っています」
──理想とするプロレスラーはいますか? 憧れだったりこういう風になりたいだとか。
「オカダ・カズチカ選手みたいな、カネの雨を降らす感じになりたいですね。僕は小っちゃいんで動かなきゃいけないので、回転しまくるんじゃないですかね」
──そういう意味では所選手の動きは……。
「もう、めちゃめちゃ、プロレス転向する時には弟子入りしようと思います(笑)」