総合力のモレノと強打のカラ・フランス───異なるベクトルの交錯の末、どちらに傾くか
──続いてコメインでは、フライ級王者デイブソン・フィゲイレードが右手指の負傷で長期欠場になったことで、フィゲイレードと3度対戦して1勝1敗1引き分けの前王者ブランドン・モレノと、カイ・カラ・フランスがフライ級暫定王座決定戦を行うことになりました。この一戦はどう見ていますか?
「UFC最軽量級であるフライ級というのは、他の階級以上に何でもできなきゃいけない階級だと思うんですよ。打撃、寝技、レスリングすべてが高いレベルで必要で、またその要素を高い次元でまとめる力が求められる。そういった意味で、ブランドン・モレノは最も完成度が高いフライ級ファイターのひとりだと思います。
一方で、モレノに総合力や完成度で劣るものの1発で相手を仕留める打撃という面で、この階級随一なのがカイ・カラ・フランス。以前は少し寝技に難があるというか、グラウンドで下になったらそのまま押さえ込まれてしまうことが多かったんですけど。前回、ロシアのアスカル・アスカロフに1R、完全にバックコントロールされながら、2R以降まったく慌てずに挽回していったんで、ここ数年でかなり成長したなという印象です」
――カラ・フランスは、ミドル級王者イズラエル・アデサニヤやフェザー級王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーが所属するシティ・キックボクシングに移籍して覚醒した感がありますよね。
「通常、強打を警戒している対戦相手は“打ってくるな”と感じた瞬間にバックステップで回避したりするので、なかなか打撃を当てるのが難しいんです。けれどカラ・フランスはステップを踏みながら、一度下がられても追い足で強い打撃が打てるようになっている。だから、1回目の踏み込みは相手の動きを見て、2回目の踏み込みで顔面に当てれば倒せるという、確信に近いものを持っているんでしょう。
しっかり踏み込むから逆に組み付かれたり、被弾することもあるんですけど、それもひっくるめて気持ちが強い。元バンタム級王者コディー・ガーブランドをKOした試合もそうでしたけど、被弾を恐れることなく仕留めにいっている。だから見ていて気持ちのいい試合をしますよね」
──両者は2年半前にも試合をしていて、その時はモレノが判定勝ちを収めていますけど、今回は違った展開になりそうですね?
「そうですね。モレノは打撃を散らしたあと、絶妙なタイミングでタックルに入ってグラウンドでコントロールすることで、自分のペースに巻き込んでいくのが非常にうまい選手。それは現王者フィゲイレードに対しても有効でした。
しかし、カラ・フランスの強打や当ててくるプレッシャーというのはフィゲイレード以上じゃないかと思うので、その認識でいかないとモレノも危ないと思います。踏み込めるような状況をカラ・フランスに作られてしまうと、たぶん打撃はガードの上からでも効くんで、そこから一気に仕留められかねない」
――では、モレノがいかに得意のレスリングで、カラ・フランスの打撃を封じることができるかがポイントになりそうですか。
「カラ・フランスは1発当たったら、かなり近い距離で打ち合いにいくと思うんですよ。でも、それはモレノが組める距離なので、お互いの思惑が違うベクトルで交錯することとなる。だから、お互いに悪い状況になりかけたとき、どう対処できるか、巻き返せるかがポイントになると思いますね。
あとはもう一つ、この試合はタイトルマッチなので5R制。たしか、カラ・フランスは5Rをフルに戦ったことがないので、4R目以降が未知数なんですよ。だから、カラ・フランスがあの踏み込んだ強打を4、5Rまで続けることができるのか。それともカラ・フランスは短期決着を狙って、モレノは長期戦を狙って、そのせめぎ合いになるのか。そのあたりも注目してほしいですね」(取材・文/堀江ガンツ)
◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC277 in テキサス 衝撃の一戦からのリマッチ!ジュリアナ・ペーニャvsアマンダ・ヌネス』
7月31日(日)午前11:00[WOWOWプライム]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
8月3日(水)午前8:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
UFC 277:Pena vs. Nunes 2
【メインカード】
▼UFC世界女子バンタム級選手権試合 5分5R
ジュリアナ・ペーニャ(米国)11勝4敗(UFC7勝2敗)
アマンダ・ヌネス(ブラジル)21勝5敗(UFC14勝2敗)
▼UFC世界フライ級暫定王座戦 5分5R
ブランドン・モレノ(メキシコ)19勝6敗(UFC7勝3敗)
カイ・カラ・フランス(ニュージーランド)24勝9敗(UFC7勝2敗)※UFC3連勝中
▼ヘビー級 5分3R
デリック・ルイス(米国)26勝9敗(UFC17勝7敗)
セルゲイ・パブロビッチ(ロシア)15勝1敗(UFC3勝1敗)
▼フライ級 5分3R
アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)24勝5敗(UFC8勝3敗)
アレックス・ペレス(米国)24勝6敗(UFC6勝2敗)
▼ライトヘビー級 5分3R
マゴメド・アンカラエフ(ロシア)16勝1敗(UFC8勝1敗)※UFC8連勝中
アンソニー・スミス(米国)36勝16敗(UFC11勝6敗)※UFC3連勝中
【収録日・収録場所】
2022年7月30日(現地)米国テキサス州ダラス
アメリカン・エアラインズ・センター
【出演】
解説:髙坂 剛、堀江ガンツ
実況:高柳謙一
■生中継前後に出演陣のYouTube配信
『スタジオ裏トークUFC277』
YouTube「WOWOWofficial」
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