僕はマジシャンのようにいつもポケットに何か準備している。楽しませる云々ではなく、僕のゲームはいつもそうなる
──前回の試合前までコロナ禍で15カ月、試合が無い期間がありました。そして今回は、前回の試合から3カ月です。
「パンデミックは世界中の人にとってタフなものでしたし、最終的には南アフリカにも影響がありました。試合をすることが一番の喜びですから、試合をしたくてたまらなかったです。前回の試合は残念ながらジャレッド・ブルックスに負けてしまいましたが、ミノワとの試合のオファーをもらうことができました。もちろん受けましたし、今年の残りの期間もアクティブでいたいですね」
──短い間隔での今回の試合となりました。ファンからの期待も高いのかと思いますが、どう感じますか。
「心から楽しめることといえば、試合をすることですから。パンデミックも終息してきているので、可能な限り多く戦っていきたいし、ファンの方々にもたくさんの試合を見て欲しいですね」
──無敗から記録がストップするというのは苦い思いかと思いますが、前回の試合からの学びはどんなことでしょうか。
「そうですね。でも前に進まないといけないですから。世界のトップファイターと戦って負けるというのは、このキャリアの道のりの過程の一つです。あの敗戦は自分がまだ戦いたいのか、そうでないのかを決断するきっかけになりました。勝っても負けても戦い続けたい、ここに自分の魂があるから。そう実感しました」
──またジャレッド・ブルックスと戦う日が来ると思いますか。
「そうですね。世界のトップファイターの一人ですから。だからONEでもあの立ち位置にいると思いますし。だからまた戦う時が来ると思います。それに、この試合で勝った後にはタイトルマッチを組んでもらえると信じていますから」
──現在ストロー級2位にいますが、この試合で勝てばジョシュア・パシオとのタイトルマッチのリクエストする予定ですか。
「もちろんですね。自分は今も世界のトップファイターの一人だと思いますし、この試合の後は絶対にタイトルに挑戦したいです」
──ランキングを見ると、1位がブルックス、2位がマスンヤネ選手。その後に続くのが、3位の箕輪ひろば選手、4位のグスタボ・バラート選手、5位に猿田洋祐選手がつけています。誰が一番強敵だと思いますか。
「たぶん、多くの人がグスタボのことを過小評価しているのかなって思います。多分身長が低いからですよね。僕も同じで多くの人が僕の身長が低いから過小評価されてきました。でも彼はかなり危険な選手だと思いますね」
──今回の試合に向けて、相手はどんなことを仕掛けてくると思いますか。
「彼は良いファイターですよね。グラウンドゲームが素晴らしいですし、サブミッションのエスケープも長けていますし、適応能力も高いと思います。僕自身のことについて言えば、自分も適応能力がありますし、打撃もグラウンドでも戦える選手です。まだファンの皆さんには、僕が何が出来るかをまだ全部見せてないですから、 今回のミノワとの試合で色々と見せたいですね」
──相手の穴はどう分析していますか。
「彼のレスリングはベストじゃないですね。僕自身のレスリングスキルの方が全然上ですね。トップコントロールも、トップゲームは彼よりも僕が上です」
──いつもダイナミックな面白いゲームをされますが、今回の試合でファンが期待できることはありますか。
「そうですよね。僕はいつもポケットに何か準備していますから(笑)。マジシャンがいつもポケットや帽子からウサギの人形を出すようにね。楽しませようとしたいとか、したくないに関わらず、僕のゲームはいつもそうなるんです」
──ご自身のこれまでの経験でファンの皆さんに伝えたいことはありますか。
「常に簡単なことばかりではなくタフなことも多いですが、一番大事なことは諦めないこと。そして貪欲でいること。夢を追い続けること。時には叶わないだろうって思うこともあるけど、諦めずに追いかければ叶うものです」
マスンヤネが孤児院で出会ったレスリングが、MMAへと繋がった
ひとり親家庭の子どもを応援している箕輪だが、マスンヤネも恵まれない環境にいる子供たちを支援している。
マスンヤネ自身も孤児院出身。南アフリカ共和国に囲まれた内陸国のレソトで生まれたマスンヤネは。4人の兄弟と母親と暮らしていたが、2歳の時に母が逝去。マスンヤネはヨハネスブルグの叔母の元で暮らすことになったが、経済的に余裕はなく、マスンヤネは6歳のときに兄弟とともに孤児院に預けられている。
ONEの公式インタビューでは、「孤児院出身ということで、自分は取り残されたような気がした。人生のすべてから取り残されているような気がした。世の中はどんどん進化しているのに、自分は孤児院と学校を往復しているだけ。現実の世界では、取り残されたような、居心地の悪い状況に置かれていた。実は、自分も他の人間と同じという安心感を得るために、不安と戦わなければならなかった」と、当時を振り返る。
そこで出会ったのが、レスリングだった。
「いろいろなスポーツが得意だった。サッカーが好きだった。陸上競技も楽しかったし、体操もたまにやっていた。孤児院の中には、選べる競技がたくさんあって、自分はレスリングに情熱を見出した。続けるうちに、23の国内タイトルを獲得し、3度アフリカ選手権で優勝し、コモンウェルスゲームにも出場した。しかし、残念ながら、南アフリカのレスリングは、世界に比べて規模が小さいんだ。生計を立てることはできないし、最良の選択肢はMMAだった」
マスンヤネは自身がMMAで成功することで、同じような境遇の子供たちに道を示したいという。
「まず、孤児院の子供たちに、チャンスはある、人生で正しい選択をして、続けていけばいいってことを示したかった。でも、そうしているうち、自然と周りの人たちのやる気も上がっていくことに気付いた。孤児院の子供たちのことは大切に思っている。自分もそのような葛藤や世界から取り残されたような感覚、何かの一部になりたいと思う気持ちを経験してきたからだ。そして、ONE Championshipは世界の何か大きなことをの一部になる機会を与えてくれたと思っている」
『ONE 159: De Ridder vs. Bigdash』
2022年7月22日(金)シンガポール・インドアスタジアム
▼ONE世界ミドル級(※93.0kg)選手権試合 5分5R
ライニア・デリダー(オランダ)王者
ヴィタリー・ビクダシュ(ロシア)挑戦者
▼ONE Super Seriesムエタイ暫定世界女子アトム級王座決定戦 3分5R
ジャネット・トッド(米国)
ララ・フェルナンデス(スペイン)
▼ONEストロー級(※56.7kg)5分3R
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
箕輪ひろば(日本)
▼ONEムエタイ バンタム級 3分3R
ムアンタイ・PK・センチャイ(タイ)
ウラジミール・クズミン(ロシア)
▼ONEストロー級(※56.7kg)5分3R
ツオロンチャアシー(中国)
ダニエル・ウィリアムス(豪州)
▼ONEムエタイ フェザー級 3分3R
ジョー・ナタワット(タイ)
ジャマル・ユスポフ(ロシア)
▼ONEムエタイ ライト級 3分3R
シムサット・クリンミー(タイ)
リアム・ノーラン(中国)
▼ONEライト級(※77.1kg)5分3R
アリエル・セクストン(コスタリカ)
マラット・ガフロフ(ロシア)
▼ONEウェルター級(※83.9kg)5分3R
ヴァウミール・ダ・シウバ(ブラジル)
ジン・テホ(韓国)
▼ONE女子アトム級(※52.2kg)5分3R
リー・ビヴィンス(米国)
セバー・バノ(インド)