HOOST CUP KINGS NAGOYA 112022年7月10日(日)名古屋国際会議場 イベントホール
▼ダブルメインイベント2(第12試合)63Kg契約 3分3R延長1R△小川 翔(OISHI-GYM/HOOST CUP日本スーパーライト級王者)ドロー 延長R 判定1-0 ※9-9×2、10-8△テーパプット・シンコウムエタイ(新興ムエタイジム/元ムエタイ7Ch スーパーフェザー級王者)※本戦の判定は29-29×2、30-28
好カードが揃った今大会、トリを飾ったのは小川翔とテーパプット・シンコウムエタイによる一騎討ちだった。小川にとっては4度目のタイ人との国際戦ながら、今回は通常のホーストカップルール。つまり組みによる攻撃は1回のみでヒジ打ちは禁止されている。それだけに試合前は「小川有利」という声が大きかった。とはいえ、かつて激闘系のムエタイとして知られる7チャンネルのテレビマッチ王者で、スアキムとも王座を争ったテーパブットの実力はホンモノ。1Rから右の前蹴りや左のハイキックで観客席をどよめかせる。
しかしラウンドが進むにつれ、テープパットは組みによる注意を受けるようになり、2Rになるとついに減点1を宣告されてしまう。これが勝負の決め手になるかと思われたが、テーパブットはタイミングのいい左ミドルやテンカオで試合のリズムを掴んでいた。ジャッジは2名が29-29で、1名が30-28(小川を支持)で延長戦へ。
延長戦はマスト判定だったが、ここでもテーパブットは度重なるホールドで再び減点1を受けてしまう。しかしながら距離を掴んだ左のテンカオや右ストレートで試合の流れを掴んでいた。
果たしてマスト判定では三者ともこのタイ人を支持したが、減点が響いて1-0(小川)のドローに終わった。ヒジヒザありのEXルールで両者の再戦が望まれる。
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▼ダブルメインイベント1(第11試合)ヘビー級 3分3R延長1R×実方宏介(真樹ジムAICHI/Bigbangヘビー級王者)KO 1R 2分28秒 ※右フック〇MAMUTI(ブラジリアンタイ)
K-1ヘビー級戦線で活躍するBigbangヘビー級王者・実方宏介がHOOST CUPに初登場。同プロモーションで3連勝中のMAMUTIと激突した。同じヘビー級とはいえ、リング中央で対峙すると、両者の間には10cmの差があり、実方の大きさが抜きん出ていた。
サウスポーのMAMUTIは右フックを振り回してくる。対照的に実方は右の三日月蹴りを相手のボディに突き刺していく。相手のパンチに合わせて、右のテンカオを合わせる場面も。
そうした中、至近距離になると、どちらともなく激しい打ち合いに。実方は右でMAMUTIをグラつかせる。ここぞとばかりに追い込みをかけると、MAMUTIは逆に右フックをジャストミート。これで実方はダウン。なんとか立ち上がろうとしたが、途中で崩れ落ちた。
1R2分28秒、MAMUTIの逆転KO勝ちだ。当たったら倒れるしかない危険な距離での打ち合いはヘビー級ならでは。文句なしに今大会のベストバウトだった。
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▼トリプルセミファイナル3(第10試合)女子スーパーライト級タイトルマッチ 3分3R延長1R×溝口孝湖(WATANABE GYM/王者)延長R 判定0-3 ※9-10×3〇熊谷麻里奈(DEEP/WSRフェアテックス札幌/挑戦者)※熊谷が新王座に就く。本戦の判定は30-30、29-29、29-30
長らくHOOST CUPの女子部を支えた溝口孝湖が勝っても負けても今回の王座防衛戦を最後に引退することになった。挑戦者は熊谷麻理奈。7年前、J-NETWORK東京大会で両者は初めて顔を合わせ、熊谷が判定勝ちを収めている。
溝口にとってリベンジを果たすとともに有終の美を飾りたいところだったが、熊谷は溝口より身長が8㎝高くリーチも長い。その差を活かし、1Rから左のテンカオを溝口のボディに刺していく。負けじと溝口が前に出ると、パーリングで正面衝突を回避する。
2R、ようやく距離が合ってきた溝口は右ストレートで逆襲に転じる。2分過ぎになると、熊谷も打ち合いに応じ、試合は俄然白熱する展開に。3R、熊谷はパンチを主体に試合をまとめるかかる。溝口も応戦するが、疲れている感は否めない。
判定は30-30、30-29(熊谷を支持)、20-29で試合は延長戦へ。開始のゴングが鳴ると、いきなり打ち合う両者。時間が経つにつれ、熊谷のワンツーによる攻撃が目立つようになる。結局、ジャッジは3名とも熊谷の手数を支持し、札幌出身で現在は千葉に活動の拠点を置く熊谷が戴冠した。
試合後は苦しい時代に自分を支えてくれたWSR札幌の木戸代表の名前を出し感謝を述べていた。
戴冠式後はそのまま溝口の引退セレモニーが行なわれた。四十路になる直前にリングを下りることになった尾張の重戦車は「HOOST CUPがここまで私を成長させてくれた。人にも恵まれたし、今日も思い切り闘うことができた。最高のキック人生でした」と締めくくった。
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▼トリプルセミファイナル2(第9試合)日本ライト級王座決定戦 3分5R延長1R×HIRO・YAMATO(大和ジム/NJKFスーパーフェザー級王者)判定0-3 ※48-50×3〇平塚大士(チームドラゴン/RISEスーパーフェザー級4位)※平塚が新王座に就く。
マキ・ピンサヤームの王座返上により、絶好調同士の王座決定戦が組まれた。HIRO・YAMATOは去る5月2日のNJKF川崎大会で梅沢武彦を撃破してNJKFスーパーフェザー級王者になったばかり。対する平塚大士は昨年2月にYA-MANを撃破したことで知られ、その後出身地(愛知県)を拠点とするHOOST CUPに参戦すると4連勝をマーク。今回のチャンスを掴んだ。
両者は昨年昨年10月のHOOST CUP京都対決で初めて拳を交わし、平塚が勝利を収めている。1Rは平塚が左のインローを中心にHIROの下半身を削っていく展開に。HIROは右の関節蹴りで相手の突進を止めようとするものの打開策には至らない。逆に平塚は両腕で顔面をガッチリと固めながらじりじりと前に出る“平塚スタイル”で試合の主導権を掌握する。 ラウンドが進むにつれ、HIROはときおり構えをスイッチするなどダメージを隠せない。5Rになると必死に反撃を試みるも、時既に遅し。3Rと4Rに明らかにポイントをとられ、0-3の判定で敗れた。
プロになって約10年、初めてチャンピオンベルトを巻いた平塚はマイクを握ると、中学生のときに亡くなった母への感謝を口にした。「絶対ベルトを母の墓前に持っていくと心に誓っていたのでうれしい。ママ、やったよ、ありがとう」
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▼トリプルセミファイナル1(第8試合)ヘビー級 3分3R延長1R〇ジャイロ楠(TEAM JAIRO/元アクセルヘビー級王者、元J-NETWORKヘビー級王者)TKO 1R 1分03秒×森 謙太(秀心塾)
当初ジャイロ楠はカルロス・ブディオと空位となったHOOST CUPヘビー級王座決定戦に臨む予定だったが、ブディオはブラジルから出国する際に出国制限にひっかかり、来日できなくなってしまった。そこで森謙太(秀心塾)とのノンタイトルマッチを行なうことに。
森はかつて九州の大会で『THE MATCH』にも出場したサッタリとM-1ヘビー級王座を争ったことでも知られる熊本在住の重量級戦士だ。しかし急遽ピンチヒッターとしての登場だったけに調整不足は明らか。かつてプロボクサーとして活動したキャリアを持つジャイロの軽やかな連打を浴びると、ガードを固めたまま防戦一方になってしまい、そのまま立て続けに3度ダウンを奪われ1R1分03秒、TKO負けを喫した。
試合後、マイクを握ったジャイロは「今回のタイトルマッチ(王座決定戦)のために2カ月間一生懸命練習したけど、相手が日本に入れなかった。(今年)12月のHOOST CUP(名古屋大会)でまたタイトルマッチをお願いします」と流暢な日本語でアピールした。次の名古屋大会は12月18日に予定されている。
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▼第7試合 60Kg契約 3分3R延長1R〇泰良拓也(PFP/元HOOST CUP日本フェザー級王者)判定3-0 ※29-26×2、29-27×エディラヨ・イスマエル(TEAM ELMERALDA/KIC60Kg王者)
エディラヨ・イスマエルは南米・西海岸にある赤道直下の国エクアルドル出身。ブラジリアン・タイのルートでの来日だったが、この国からは来日第1号のファイターだろう。果たしてイスマエルは期待に違わぬ動きをみせた。ダイナミックな後ろ回し蹴りで場内を大きくどよめかせたかと思えば、スリップダウンした泰良拓也に殴り掛かろうとするなど旺盛な闘争本能を見せる。
しかし2Rになると、泰良のローで削られたことが原因なのか失速。「(2度目の)ローブローを受けた」と主張して倒れたまま休もうとすると、レフェリーからすぐにファイトを要求されたあたりから様子をおかしくなっていく。
3Rになると、泰良のラッシュに防戦一方になってしまう。そして前のめりになったところにミドルの軌道の蹴りを顔面に受け、先制のダウンを喫した。こうなったら泰良の勢いは止まらない。右の3連打で2度目のダウンを奪う。判定3-0で勝利を収めた泰良は「今日は(2試合後に)ライト級の王座決定戦がある。いい勝ち方をして次の挑戦者として名乗りをあげたかった」と控えめにアピールした。
次回HOOST CUPは10月16日に泰良の地元京都で開催される予定。そこでビッグチャンスが訪れるか。敗れたイスマエルも磨けば光るタイプ。“エクアドルの鳥人”としての再登場に期待したい。
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▼第6試合 54kg契約EXルール 3分3R延長1R×国本真義(MEIBUKAI/元WMCインターバンタム級王者)延長R 判定0-3 ※9-10×3〇山田航暉(キングムエ/元WMC日本フライ級王者)※本戦の判定は29-29×2、29-30
昨年7月の大和ジム50周年記念興行では俊YAMATOを撃破した国本真義が今年4月のムエタイスーパーファイトで4年ぶりに復帰した山田航暉とEXルール(ヒジ・ヒザあり)で激突した。
2R、山田はワンツーからの左ミドルや左のテンカオ(カウンターのヒザ蹴り)を武器に国本を攻め立て試合の主導権を握る。しかし3Rになると、国本は復調し左の前蹴りを軸に反撃を試みる。
判定はジャッジ2名が29-29で延長戦へ。山田は前日タイから帰国したばかりのキングムエの佐藤孝也代表から「前に出ろ」という指示通り、前蹴りで国本の足を一瞬止めるなど試合を攻勢に進める。そして終盤になると右のテンカオやボディフックで追い打ちをかけ、試合の流れを決定づけた。判定は3名とも10-9で山田。老沼隆斗戦に続いて復帰2連勝を飾った。スーパーフライ級戦線の台風の目となるか。
▼第5試合 67Kg契約 3分3R×吉田理玖(朋武館)KO 3R 2分39秒〇ヴィクトル・アキモフ(ブラジリアンタイ)
▼第4試合 70Kg契約 3分3R剛王(TEAM GOH/GLADIATOR武士道ミドル級王者)試合中止康輝(キングムエ)
▼第3試合 64Kg契約 3分3R〇櫻井祐斗(Rich KickBoxingGym)TKO 3R 2分13秒 ※ハイキック×ウェズリー・ペレイラ(ブラジリアンタイ)
▼第2試合 53Kg契約 3分3R×羽田翔太(キックスターズジャパン)TKO 1R 1分58秒 ※3ノックダウン〇松田龍聖(大原道場)
▼第1試合 ヘビー級 3分3R〇ミヤギン(Team Bonds)TKO 1R 2分41秒×マツダ・ホネル(TS GYM)
▼オープニングファイト プロ第4試合 53.5Kg契約 3分3R〇中島大翔(GET OVER)判定3-0 ※30-28×3×大久保峻(修徳会)
▼オープニングファイト プロ第3試合 60Kg契約 3分3R〇上村康太(真正会)判定3-0 ※30-26×3×FU-MIN(MEIBUKAI)
▼オープニングファイト プロ第2試合 61Kg契約 3分3R〇伊藤勇大(OISHI-GYM)TKO 2R 2分19秒×イマイ・ハルユキ(ブラジリアンタイ)
▼オープニングファイト プロ第1試合 63Kg契約 3分3R〇暖(NJKF健心塾伊勢支部)反則勝ち 2R 1分48秒 ※バッティングによる試合続行不可能×三井泰地(NJKF理心塾)
文/スポーツライター:布施鋼治