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【UFC】「ナダル、ここへ来いよ」と戦うことを求めた“最強のラファエル”フィジエフが感じる恐怖と誇り

2022/07/11 20:07
 2022年7月9日(日本時間10日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて「UFC Fight Night Vegas 58:Dos Anjos vs. Fiziev」が開催され、メインイベントのライト級(5分5R)で、同級10位のラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)が、7位のハファエル・ドス・アンジョス(ブラジル)と対戦。  得意のムエタイの打撃で序盤を制したフィジエフは、4Rにドス・アンジョスのビッグテイクダウンを受けてポイントを落としたが、最終回の5Rに、右跳びヒザのフェイントから近づき、そのまま歩いて右フックから回転の速い左フックでダウンを奪うとパウンド2発。衝撃のKO劇を決めた。  ドス・アンジョスとの「Rafael」対決を制したフィジエフは、試合後、ケージの中で「今日、誰が一番強い“ラファエル”か分かっただろ? 今度は誰がスポーツで最高の“ラファエル”かを決めてやる。ラファエル・ナダル、ここへ来いよ!」と、スポーツ界で最も著名な“ラファエル”に戦うよう求めた。  奇しくも、テニスのウィンブルドンでは、世界ランク4位のハファエル・ナダル(スペイン)が腹部を負傷し、準決勝のニック・キリオス(豪州)戦を棄権すると発表しており、その男子決勝(ノバク・ジョコビッチvs.ニック・キリオスでジョコビッチが優勝・大会4連覇)直前に、フィジエフは棄権したナダルに呼びかけていた。  試合後の会見で、フィジエフは、「ナダルをコールしたのは名前が“ラファエル”だから。誰でも知ってる人だっていう程度での知っているって感じで、リアルに彼を知ってるわけじゃないよ」と説明しながらも、上位ランカーとの難しい試合をKOでフィニッシュした激闘を振り返った。 「いまは鼻が折れてて息ができない。映画の『アバター』みたいだろ(笑)。今日起きたことは全てキャンプでやってきた成果さ。すごく大きな挑戦だった。相手のドス・アンジョスは素晴らしい経験を積んできた。  すべてのラウンドでフィニッシュを狙っていた。5Rまで行って滅茶苦茶疲れたけど、俺に『カーディオが無い』と言ったやつはどいつだ? 俺が『テイクダウンされてサブミットされる』と言ったのは誰だ? 1回だけだろ、彼がテイクダウンしたのは。俺は問題無かったし立ち上がれたよ。彼のゴールはテイクダウン、だから立ち上がってスタンドで戦った」と、メインならではの4R目でテイクダウンを受けて削られたと思われたフィジエフが、最終回に底力を見せた場面を語った。  これでUFC6連勝。そのほとんどの試合で「ファイト・オブ・ザ・ナイト」あるいは「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」を受賞してきたフィジエフは、怖いもの知らずのようにも見えるが、試合直前には恐怖を感じるとも吐露している。 「試合の15分前くらいになると自分のなかの小さな自分みたいな、恐怖心を持った奴が現れるんだけど、ケージは俺のホームだから、(ケージの中に入ると)そいつはどっかに行っちまう。“おい、どこにいるんだ?”ってなるんだけど、そいつは次の試合の前まではいなくなっているんだ」 [nextpage] アゼルバイジャンの人がUFCのメインで勝利するのは初  カザフスタンのコルダイでアゼルバイジャン人の父親とロシア人の母親との間に生まれ、キルギスで育った。転校先の学校でいじめを受けたのがきっかけで11歳からムエタイを始め、その後はムエタイと並行してコンバットサンボ、ボクシング、柔術、レスリング、そしてMMAと、様々な格闘技を経験してきた。  2021年8月のボビー・グリーン戦までキルギス国籍で試合に出場していたが、キルギス国内のシーア派ムスリムに対する宗教的迫害で自身の家族が嫌がらせなどの被害を受けたため、現在はアゼルバイジャン国籍で試合を行っている。 「UFCでアゼルバイジャン(がルーツ)の人がメインを飾って勝利するのは初。誇りに思うよ。カザフタンの村育ちの俺が、村からその後、小っちゃな町に移った。それが今、その小っちゃな町から、このラスヴェガスという大都市でUFCに出てるなんて、その時から考えると“ファンタジー”だ。それで(7位のドス・アンジョスに勝利し)ランクインするなんて、ファンタスティックなことさ。  この(被ってる)アゼルバイジャン伝統の帽子は僕のルーツ。この帽子にはいろんな意味があるんだ。もしこれを誰かに取られたりすると、それは戦いの始まりを意味する。この帽子を被っていることに誇りを感じる。アゼルバイジャンは故郷、これは僕のルーツ」と、父の母国の旗を初めてオクタゴンで掲げたファイターとして、その意味を語っている。  元ライト級王者を倒し、いよいよ上位陣との対戦が視野に入るが、ライト級3位のジャスティン・ゲイジーとの試合について問われたフィジエフは、「ゲイジーのストライキングは危険。もっと顔をボコボコにされるかも、しれないし、KOだってあるかも。でもそれは互いに同じだ。恐れず試合を受けてほしい。レスリング? 週に4、5日、つまり、いつだってしっかり練習してる」と、自信を見せている。  現在UFCライト級王者は計量に失敗したシャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)が王座剥奪のため、空位となっている。  2位にダスティン・ポイエー、3位にゲイジー、4位にイスラム・マカチェフ、5位にマイケル・チャンドラー、6位にベニール・ダリウシュと強豪が並ぶ同級でフィジエフはどこまで登りつめるか。 “最強のラファエル”の名を手にしたフィジエフが、グランドスラム優勝回数歴代単独1位(22回)のナダルのように、世界に名を知られるためには、UFCのベルトを巻くことがもっとも適切なやり方になるだろう。
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