どれだけ自分の距離に入ってしっかりとワンツーや強い蹴りを入れられるか
――では話をまとめると、最新のアデサニヤからは、フェイントの多用と2種類のスイッチによるチェンジアップ効果、そしてグラウンド対応力の向上という3つの大きな成長が見られた、と。ただでさえ“ミドル級絶対王者”と呼ばれるほどの選手ですから、これは挑戦者たちにとっては、相当厄介なチャンピオンになっているということですね。
「いろんな面で相当高いレベルになっていますからね。それを考えると今回の挑戦者であるキャノニアという選手は、いい意味で“馬鹿正直”なんですよ。レギュラーボクサータイプの選手で、しっかり前手でジャブをついてワンツーや、近い距離でのアッパーなど、多彩ではないけれど忠実なボクシングをしっかりとやる」
――すごくオーソドックスだけれど、他の誰よりもパンチ力や爆発力があるわけですよね。
「それもあるし、自分が持っている技術はそんなに多くはないけれど、相手を倒すための道筋を最大限に生かす試合のやり方をしている印象があるんです。なぜ、それができるかといえば、身長の割にリーチが長いこともポイントかなと」
――キャノニアはもともとヘビー級だった選手ですけど、身長自体はミドル級の中でもそんなに大きくないですもんね。
「身長は180cmですからね。でもリーチは197cmもある。相手からするとジャブが急に伸びてくる感じがしてすごく嫌だと思うんですよ。その自分のリーチを活かした左右のストレートを軸に、しっかり前に出るプレッシャーとフィジカルの強さがあるので、それで勝ってきているな、と」
――だからこそ、ボクシングがちゃんとうまいウィテカーには封じ込まれた感じがありましたよね。
「そうですよね。基本的なところをちゃんとやろうとするから、相手からすると“たぶん次こうくるだろうな”というのが読めるというか。でも、変幻自在のアデサニヤが相手だと、逆にそれが活きる可能性がある。言ってしまえば、アデサニヤの動き自体を攻略しようにも、キャノニアの持っているボクシングテクニックからすると難しいと思うんですよ」
――ボクシングや打撃能力に定評があるウィテカーですら対応に追われたわけですもんね。
「だからもし自分がキャノニアのセコンドだったら、逆に“気にせずいつも通りやれ”と言いますね。そうしないと、さっき言ったアデサニヤのフェイントや、スピードの強弱をつけて惑わす動きに簡単に引っかかっちゃうと思うんですよ。引っかからないようにするためには、逆に細かい仕掛けや技術よりも、基本的な技術が生きる場合があるんです。変則な相手に変速で対応しようとすると、たいてい墓穴を掘りますからね」
――キャノニアからすると、自分の打撃を当てることだけ考えて、1発でも2発でも当たれば、あの破壊力ですからね。
「この階級屈指のパンチを持っているので、それを当ててアデサニヤを引かせることができれば面白くなる。また、これはアデサニヤの出方次第なんですけど、フェイントやスイッチをこれまで以上に多用したのは、相手がスタンドの技術力の高いウィテカーだったからだとも言えるんですよ」
――他の相手なら、そこまで頻繁に使う必要もないわけですもんね。
「だからその辺りの駆け引きも起こりそうな気がするんですよね。アデサニヤからすると、キャノニアが不用意に前に出てきたところでカウンターを入れたりしたいと思うんですけど。あまりフェイントを使ってキャノニアが前に出られなくなったら、世紀の凡戦になる危険性もありますからね(笑)」
――ヨエル・ロメロ戦の悪夢ふたたび(笑)。
「それはアデサニヤとしても避けたいでしょうから、キャノニアを誘うような動きをするかもしれない。そしてキャノニアの方は、そういったアデサニヤの仕掛けや罠に乗らずに、どれだけ自分の距離に入ってしっかりとワンツーや強い蹴りを入れられるか。そこにかかっていると思います」
――キャノニアはアンデウソン・シウバの脚をローキック1発で破壊したこともありましたからね。
「その自分の攻撃力を信じて前に出られるのか、そしてアデサニヤはどれだけ惑わせて、キャノニアのパワーを空転させられるか、その辺がポイントになるかと思いますね」(取材・文/堀江ガンツ)
WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール
『生中継! UFC‐究極格闘技‐ UFC276 in ラスベガス アデサニヤ、ミドル級5度目の防衛戦&ヴォルカノフスキーvsホロウェイ』
7月3日(日)午前11:00[WOWOWライブ]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
7月5日(火)午前10:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
【メインカード】
▼UFC世界ミドル級選手権試合 5分5R
イスラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)22勝1敗(UFC11勝1敗)
ジャレッド・キャノニア(米国)15勝5敗(UFC8勝5敗)
▼UFC世界フェザー級選手権試合 5分5R
アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)24勝1敗(UFC11勝0敗)※UFC11連勝中
マックス・ホロウェイ(米国)23勝6敗(UFC19勝6敗)
▼ミドル級 5分3R
ショーン・ストリックランド(米国)25勝3敗(UFC12勝3敗)※UFC6連勝中
アレックス・ペレイラ(ブラジル)5勝1敗(UFC2勝0敗)
▼ウェルター級 5分3R
ロビー・ローラー(米国)29勝15敗(UFC14勝9敗)
ブライアン・バーバリーナ(米国)17勝8敗(UFC8勝6敗)
▼バンタム級 5分3R
ペドロ・ムニョス(ブラジル)19勝7敗(UFC9勝7敗)
ショーン・オマリー(米国)15勝1敗(UFC7勝1敗)※UFC3連勝3KO
【収録日・収録場所】
2022年7月2日<現地>米国・ネバダ州ラスベガス Tモバイル・アリーナ
【出演】
解説:髙坂 剛、堀江ガンツ
実況:高柳謙一
生中継前後に出演陣のYouTube配信も
『スタジオ裏トークUFC276』YouTube「WOWOWofficial」
詳しくはWOWOW番組オフシャルサイトにて