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インタビュー

【Bellator】GPでATTサバテーロと対戦するピットブルブラザーズのレアンドロ・イーゴ「幼い頃、夜通しPRIDEを見るのが楽しみだった。このGPで勝ち上がり、日本で戦いたい」

2022/06/25 09:06
 2022年6月24日(日本時間25日朝10時からメインカード)、米国コネチカット州アンカスビルのモヒガン・サン・アリーナにて「Bellator 282」(U-NEXT配信)が開催されている。  堀口恭司も参戦したBellatorバンタム級ワールドGP1回戦で、ブラジルのレアンドロ・イーゴが出場。4月のワイルドカードを勝ち上がったATTのダニー・サバテーロ(米国)と対戦する。  少年時に日本のPRIDEに憧れ、ナタウでピットブルブラザーズ入りし、パトリシオの家に住み込みながらMMAファイターとして強さを得たイーゴは、「レスラーだらけのこのGPで、僕の柔術とボクシングを見せる」という。 幼い頃、柔術大会に出る費用や遠征費もなかった ──最初に格闘技を始めたのはいつですか? 「最初に格闘技を始めたのは20年前、ブラジリアン柔術だった。住んでいたモソロという街で始めて、その近くのナタウとでピットブル兄弟のジムに入ってプロの格闘家になりたいと思った。その時が10年前だった。試合に出てたりはしていたけど、今の環境になるまでしっかりとした戦績などは残っていない」 ──リオグランデ・ド・ノルテ州で生まれた。そこでブラジリアン柔術を始めたのですね。当時の帯は? 「ナタウに移動する前までは茶帯で、ナタルに移動して数カ月してから黒帯になったよ。ジュアン・マウリシオとパトリシオ・フレイレに師事していた。ナタルでは、MMAにフォーカスしていた事もあって、当時ブラジリアン柔術の選手で試合をした相手だと……アブダビのBJJトーナメントで勝っているタイソン・スワレスとかがいたね」 ──北部は南部に比べて経済的に厳しい状況だと聞きます。イーゴ選手が育った環境は? 「子供の頃の環境はなかなか苦労続きだった。僕が生まれる27日前に父親が仕事中の事故で亡くなった。だから経済的に苦しかったし、母親が僕と僕の姉妹2人の3人全員を一人で育てていた。常になにか足りないものがあったし、成長するにつれ、常に怒りが自分の中にある事を感じた。その時に出会ったブラジリアン柔術が自分の人生を正しい方向に導いてくれ、更生をするきっかけになったと思う。トレーニングをはじめ、そこに全てをつぎ込むようになってから自分の人生は良い方向に変わっていったと思う」 ──道衣の用意や試合出場の工面なども大変だったのでは? 「そうなんだ。当時は試合に出場する費用を支払う余裕はなかった。実際ブラジリアン柔術での戦績がそれほど残せていない理由は、試合の出場費や会場までの移動費を負担する事ができなくて、出場する機会が圧倒的に少なかったからなんだ。なので、近場でやる試合のみ出場し、コーチやジムの仲間が、出場費を支払ってくれる事もあった。自分で働くようになってから、出場費や移動費を自分で支払えるようになった。試合に出るために、仕事をしていた。稼いだお金は全て試合出場費や移動費などに消えていった。最終的に、MMAが自分の進むべき道だと思っていたのでつぎ込むことができたのだと思う」 Bellatorに出るようになって、初めてフルタイムファイターになった ──2006年の「Rio Grande do Norte Regional」がプロデビューとなっていますが、フルタイムファイターになったのはいつでしたか。 「ナタウに移動した時もまだ働いていた。MMAをやるために仕事を辞めた時に残っていたお金もトレーニングや試合で消えていった。ある時からスポンサーがついて、トレーニングにフォーカスできるようになったけど、それまではBJJのトレーナーや企業のセキュリティガードをしていた。  実際に、格闘技1本に集中できるようになったのは、2017年にBellatorとサインしてからだ。RFAチャンピオンの時もトレーナーの仕事をしていたからね。Bellatorと契約し、最初の試合をしてファイトマネーが入ってから、きちんと生活費を支払っていけるようになってMMAにフォーカスできるようになったんだ」 ──Bellatorとサインをする事で、またピットブル兄弟に出会って人生が変わった。ピットブル兄弟とはどのように出会ったのですか。 「最初からパトリッキーもパトリシオの事も知っていたけど、まだその時点では友達ではなかった。お互いに存在を知っているくらいだった。オクーチというSNSのツールが当時あって、直接ブルーノ・ゴヘイアコーチにメッセージを送ったんだ。『チームに入って戦いたい』と。彼はその数カ月後に交通事故で亡くなってしまって……当時の友達がゴベイアと今のマネジメントと通訳をしてくれているマテウスに口をきいてくれて。2人がモソロに迎えに来てくれたんだ。  身請け人のゴベイアが亡くなって、それで、パトリシオが代わりに僕を迎え入れてくれて、彼の家にしばらく住まわせてもらったんだ。それからピットブル兄弟とはずっと一緒にいて、離れたことはない。彼らは僕に格闘技で食べていくという生き方を見せてくれた。今の自分の、そして皆の夢は今回のバンタム級GPでベルトを獲る事。そうすると同じジム、同じ街から3つのベルトが生まれる事になるんだ!」 ──ゴベイアさんはチームノゲイラでノゲイラ兄弟とも仲が良かったですね。イーゴにとってアイドルのような選手はいますか。 「自分にとっての最大のアイドルは、毎日一緒に過ごしているパトリシオだ。他の選手に目をやる必要は一切なく、完璧な見本が毎日そばにいて一緒にトレーニングできている。彼のファイトIQ、判断力、集中力、彼が持つ全てにインスパイアされている。彼は選手としてとても完璧で毎日一緒にいる事で本当にいい影響を与えてもらっている。この競技にいろんな立派な選手がいるのは知っているが、他を見る必要が本当にないんだ。毎日同じジムで、そこが自分の家でもあり。そこで完璧な見本となるパトリシオと一緒に過ごしている」 [nextpage] コールドウェルに敗れ、感情だけで動くのを止めた ──そのBellatorの第1戦では、エドゥアウド・ダンタスにスプリット判定で敗れました。 「あの試合を受けた時、RFAのタイトルを獲って、自分にとってとても調子の良い時期だったと思う。ダンタスとの試合は、実際はダリオン・コールドウェルと戦う予定だった試合で、コールドウェルが出場できないとなった時に声がかかった。僕はRFAの試合の怪我のリカバリー中だったし、激しい試合だったので薬を飲んだりもしていた。なので、トレーニングもできない日が多く、すごく限られた内容しかできていない状況だった。  ただ、サークルケージデビューでいい経験にはなると思ったから100%の状態ではなくても断る事はできなかった。勝てる自信があったし、実際に勝っていたと思う。自分に入れているジャッジもいたし、あの場にいた多くの人に、自分が勝っていたと思うと伝えられた。彼は常に逃げの体勢だったし、自分が常に追いかけて向き合おうとしていた。効果的なパンチも。だから勝てると思ったけど、残念ながらそうはいかなかった。次に再度戦う事になったとしたら、前回とはまるで違う結果になると思う」 ──その後もアーロン・ピコ、ダリオン・コールドウェルとの苦しい試合がありました。その後3連勝できた要因はどこにあると思いますか。 「あの時は天国から地獄に落ちたような気持ちだったよ。2018年にコールドウェルとタイトルをかけて戦った。そして負けた。実際に負けたとは思っていないが、負けた。コールドウェルとの戦いから2連敗した。彼はいいポジションに入って、そこからギロチンチョークを1ラウンドで仕掛けてきて極められた。当時の契約ではこれが最後の試合だったんだ……皆、コールドウェルがいかにビッグな選手になるか、当時話題にしていて。自分は踏み台になりたくないと思ったけど、負けた。ファイターとして負けたんだ。  当時、自分がどんなファイターなのか理解できていなかった。グラップラーなのか、ストライカーなのか。自分のファイターとしてのルーツを見失っていた。負けたあと、すべてにおいて迷いが出た。けれど、契約が終わってしまうから自分を変えなければいけなかった。次のチャンスをもらえるように何度も頼んだんだ。まずは自分のマインドセットを変えなければいけないと思った。自分を振り返って何を改善しなければいけないか考えた。コーチの話にもより耳を更に傾けるようにした。感情だけで動くのも、止めにした。もっと合理的に動けるようにと、マインドセットを変えるように心がけた。あの敗戦からそれをずっと続けている。その結果が連勝につながったんだと思っている。試合毎に上達しているとも感じている」 ──そして、2021年5月、前回のコールドウェルとの結果はスプリット判定勝ちでした。イーゴ選手は体重オーバーしての契約体重戦で、テイクダウンなども受けてとてもハードな内容でした。 「137.5ポンド契約になったことは申し訳なく思う。前回の試合は重要な試合だった。そして想定通りの内容だった。1Rにテイクダウンをされた時、前回のように慌てて立とうとするのは止めたんだ。そこでポジションを失うことになるから。下からのポジションでも勝てると考えていた。下からでも積極的に攻撃をしかければ、コールドウェルは手が打てないだろうと思っていたしそれで勝てると思っていた。  グラウンドでもエルボーやパンチを色々出した。それで、スタンドになった時にも有効な打撃が出せていたと思う。コールドウェルがイライラしていたのが伝わったよ。とにかく焦って立ち上がろうとして前の試合やコールドウェルが他の選手にしているのと同じようにならないようにした。だからコールドウェルのアプローチを逆に利用してやったんだ。下からの攻撃に彼は居心地悪かったと思うし、思い通りにいったと思う」 [nextpage] 僕はトラッシュトークを売りにしたくない ──なるほど。8戦無敗だったジョネル・ルゴとワイルドカードで勝ち上がったサバテーロの強いテイクダウンを見せた試合をどう思われましたか。 「試合は見たよ。特に何も驚くような事はなかった。これまでの試合もバンデハス以外はレスラーだったと思う。自分はグラップラーだ。だから、グラップリングの試合は好きだよ。対戦相手をテイクダウンしてサブミットするのが好きだ。Bellatorと契約してから米国でもトレーニングをしていて色んなトレーニングパートナーがいるから、他の選手と違うところは特に見当たらない。これまで戦ったレスラーと何も変わらない。だから試合の日がくるのが楽しみだ 本物の“Alter Higo”(EgoとHigoをかけている、別人格という意味のリングネーム)が叩きのめしに行くよ!」 ──サバテーロはふだんはトラッシュトークはしないようですが、試合前のサバテーロのトラッシュトークについてはどう思いますか。 「彼は馬鹿だと思うよ。トラッシュトークは俺のモチベーションを上げているのに。これまでの試合でもトラッシュトークをするようなヤツと試合をしたけど、トラッシュトークをしたやつの顔は試合のあとボコボコだったよ。今回も全く同じプランだ。歯をへし折ってやろうと思っている。だから誰に向かってモノを言っているかヤツも考えた方がいいと思う。正直、何を言われても全く気にならないけど、ボコボコにしてやろうというモチベーションが上がるだけだ。個人的には何も思わないけど、こういう男を倒す機会があるのは楽しみだよ」 ──今回のGPはレスラーが多く参戦しています。その一人であるサバテーロに対してどのようなゲームプランを考えていますか。 「これまで3連勝したのと同じ“Alter Higo”として戦うよ。スマッシュしに行く。レスラーと対戦する準備は出来ていたよ。もともとトップ10に入っている選手はほとんどがレスラーだから。これまでの試合と同じような自分を見せられると思うよ。スタンドでもグラウンドでも、サバテーロよりは上だ。やつはレスラーで、パンチやストライクに慣れていないだろ。硬くなると思う。立ち技で向かっていけば、やつは居心地悪くてテイクダウンに来る。でも、その準備はできている。リサーチもしている。まぁ、ヤツがすでに予測している事もあるだろうけど、予測していないような事も用意している。驚かせられると思う。サバテーロだけでなく、他のレスラーもだ。今回のGPでレスラーじゃなかったのは(堀口)キョージだけだ。彼はもう負けてしまった。ほかのグラップラーはミックスだが、それ以外はレスラーじゃないか? だから準備は出来ているし、どの選手にも応用できるような戦略も考えている。それが6月24日に見れると思うよ」 ──サバテーロに勝てばストライクができるレスラー、ラフェオン・スタッツが相手になる。彼が一番のタフな戦いになる? 「そう思うよ。ストッツはコンプリートな選手だ。レスリングのチャンピオンにも2度なっているし。アーチュレッタをKOし、いいグラップラーでもある。今は彼が一番話題になっているし、メディアも皆、彼に注目している。Bellatorも彼の事が好きみたいだ。だから、ストッツに勝てば俺の株も上がるだろう? 前からスタッツに目をつけていたんだ。だから、ストッツと対戦できるのは嬉しいし、いい組み合わせになるんじゃないかな。ストッツに勝つのが楽しみだよ」 ──もうひとつの山は、マゴメドフ、バルゾラ、ミックスの誰が勝ち上がってくると思いますか。 「ミックスが決勝に上がってくるだろう。もう2人はレスラーだけど、ミックスはグラップラーとして優秀で彼らより強い。だから決勝で自分と戦うのはミックスだろうな」 ──年末には日本大会があると言われています。日本のファンにもメッセージをお願いします。 「日本で大会があったら絶対に行きたい。2019年にチームメートのイララ・ジョアニがBellatorの日本大会に出たんだけれど、自分もリクエストしたけど叶わなかった。小さい頃に夜通しPRIDEを見るのが楽しみだった。だから、このGPで勝ち上がり、日本に行けたら夢が一つ叶う事になる。ほんとうにPRIDEは頂点だったんだよ。  ファンに向けては、まず応援ありがとう。このトーナメントでも応援してくれると嬉しいです。自分は格闘家なのでトラッシュトークを他の選手のようにはしない。自分の技術が自分をトップに連れて行ってくれると思うし、技術で人に魅せたい。日本のファンも、格闘技そのものを好きでいてくれると思っている。今は、トラッシュトークで注目されたり話題になったりする時代でもあるけれど、それは自分のスタイルじゃない。自分は格闘技を根幹にしていきたいから、トラッシュトークを売りにしたくはない。だから格闘技の事を理解して大事にしている日本のファンの人達にもそんな自分を見て欲しいし好きになって欲しいと思っているよ。応援よろしくお願いします!」
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