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【THE MATCH】那須川天心、武尊戦で勝利後の全発言「格闘技って一般の人は野蛮なスポーツなのと思うかもしれないけれど、それでも人の心を動かすことが出来るもの」

2022/06/20 04:06
 2022年6月19日(日)東京ドームにて開催された『THE MATCH 2022』のメインイベントで、武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者)に判定5-0で勝利し、キックボクシング42戦無敗で終えた那須川天心(TARGET/Cygames/RISE世界フェザー級王者)が試合後インタビューに答えた。  質問の合間にはYogiboに寄りかかって目を瞑るなど、かなり疲れた様子だった那須川だが、30分近く記者との質疑応答に丁寧に答えた。以下、その全文。 格闘技最高だろと日本中に伝えられたと思います ――試合を終えた率直な感想は? 「解放されました。全て終わったなという感じです」 ――対戦を終えての武尊選手の印象は? 「印象はずっと同じでしたね。本当に気持ちの入ったファイターで。マジで出会えてよかったなと。感謝しかないですね。ありがとうございます」 ――満員の東京ドームで試合をした感想は? 「めっちゃ気分良かったですね。格闘技、日本のエンタメの中でも一番盛り上げた大会だと思うので、格闘技も捨てたもんじゃないと。格闘技最高だろと日本中に伝えられたと思います」 ――今回がキックボクシング最後の試合。今後の展望は? 「1回休みたいです。全てから解放されて1カ月、2カ月、3カ月、4か月、5カ月…くらい休みたいです(笑)。ちょっと休む。やるんでやりたいことはなんだろうな。格闘技のことを1回考えない日々を送りたい」 ――入場の時にゴンドラに乗って登場しましたが、どんな風景だった? 「めっちゃキラキラしてて星みたいでした。逆夜空みたいな。空から夜空を見た感じでした。俺が地球になったかなってそんな感じでした」 ――1Rから右ジャブが冴えていた。あれは作戦通り? 「あれはそうですね、何パターンか用意しておいて。右が当たらなかったらどうしようと考えていたんですけれど、ジャブからしっかり組み立てることが出来たので。右のジャブが自分の中のキーポイントだったのでそこから組み立てることが出来て、いつもより落ちついて戦えましたね」 ――武尊選手の右ジャブへの対応は? 「僕、相手のセコンドの声がよく聞こえていて『ジャブは捨てろ』と相手のセコンドがずっと言っていたので、あえてジャブを踏み込もうと思って思い切り打ちましたね。それでジャブで止めることが出来たので。本当はジャブをポンポンと(軽く)打とうと思っていたんですけれど、相手セコンドの声が聞こえたので踏み込んで強く打とうと思って打った感じです」 ――1Rのダウンを奪った左はどんな左だった? 「会心の左でしたね。カウンターというかコンパクトに狙う、大きくならないで刀のように刹那というか、それを意識していた。最後に確認したパンチでダウンが取れましたね」 ――2Rでバッティングを受けて試合の流れが変わった? 「そうですね。そこで集中力が…切れてはいないですけれど、ちょっとやべぇって感じになって。偶然のバッティングなので仕方がないんですけれど、ちょっと視界がボヤけて。こっち(左)は見えるんですけれどこっち(右)がだぶちゃったから、ちょっと落ち着かないとっていうのはあった。そういう中でもしっかり対応できたのでよかったですね」 ――3Rにその視界は戻った? 「いや、戻らなかったですね。今はだいぶよくなったですけれど、こっち(右)はずっとぼやけていたから、しっかりと冷静になっていかないとなって」 ――その状態で3Rの展開は? 「展開的には相手は絶対に来るから、そこに全部合わせる、そういったイメージでやっていましたね」 ――武尊選手の強さを感じた部分は? 「一番感じた部分としてはプレッシャーっていうのを凄く感じましたね。今までやった選手の中でも、一番強かったんじゃないかなって。本当に僕と真逆のスタイルだったけれど、そこの中で勝ち切れたのは大きいですね」 ――余裕が生まれる場面はあった? 「ダウンを取った時に本当にゆっくり見れたから、そこでスコーンっていう。本当に力を入れなかったんですよ。斬るってイメージで、それがよかったですね」 ――最後のマイクで「キックボクシング最後だった」と言っていたが、そこまで意識していなかった? 「そうですね。最後とかじゃなく武尊選手と戦うってことをずっと意識してやっていました」 ――終わってみてキックボクシング最後っていう感慨は出てきた? 「どうだろう…まだちょっとしばらくないんじゃないですかね。でも終わりだもんね。悲しくなりますね」 ――最後は涙もあったが、武尊選手とはどんな言葉を交わし合った? 「『天心君がいなかったら俺はここまで続けられていなかったし、本当にありがとう』という気持ち。まだいっぱい話したんですけれど、そういう感じの話ですね。まあ、そこは2人の男話として」 ――しばらく格闘技のことを考えたくないというほどの日々は、どんな感じで過ごしていた? 「俺マジで負けたら死のうと思っていたんですよ。本当に思っていて。僕、動画を撮って『これ遺書です』みたいなことをやっていたんですよ。ずっとそういう気持ちでした。だから次の日をやっと迎えられると思えて、今本当に良かったって。心の底から良かったって思っています。だから俺はずっと今日は人生最後の日だって思っていました」 ――武尊選手が死んでもいい気持ちでとよく言っていたが、全く同じ気持ちだったと? 「そうですね。死んでもいいと思っていたから、終わるんだと思っていたから。良かったです、生きれたから」 [nextpage] ボクシングっていうものを1回何も考えなかった ――観客の期待感がメイウェザー戦の時よりも上だったと思うが、それはリング上でも感じられた? 「不思議な感覚だったんですよね。パンチを当てます、歓声が“ウォー”じゃなくて、パンチを当てて何かの動きをしたら“ウォー”みたいな。だから反響しているというか、時差が凄くて。だから不思議な感覚でしたね。反響しているのか、俺がその次元に行っているのか分からないような。時間がゆっくりな感じでしたね。パンチも中で戦ったりしましたけれど見えたりしたし、ガードを高くしっかり上げてっていうのも出来たし、何か不思議な感覚でしたね」 ――キックボクシング最後の試合で矢沢さんの曲がフルで流れたのはたまらなかったのでは? 「そうですね。本当に、こういうのはおこがましいかもしれないですけれど、今日は矢沢さんに近付けたんじゃないかなって思いました」 ――菅田将暉さんから花束の贈呈があった。何か言葉は? 「連絡したら花束贈呈してくれると言ってくれて。上でも会って心強い言葉を言ってくれたのでパワーになりましたね」 ――坊主姿を公に出すのは今日が初めて。 「そうなんですか。いいですよね、イケメンって。何でもに合うじゃないですか。爽やかでした(笑)」 ――6年の時を経て実現に至って、今後の格闘技界がどうなって欲しいのか。 「今回こうやって格闘技で日本のエンタメの中で一番大きなことが出来たので、これを見て格闘技を目指そうと思ってくれた子供とか次の世代。俺もテレビでK-1を見て格闘技を、キックボクシングを始めたわけであって、そういった存在にやっとなれたかなって思うので、ここからすぐにまたこういう大きな大会が出来るかと言ったらそうではないと思いますが、出来るようになって欲しいなと。選手たちの想いはみんな一緒だし、みんな一番を目指しているし、最強を目指しているし、みんな純粋だと思うので、その気持ちを踏みにじって欲しくないなと。ただそれだけ思っています」 ――記者会見で「人生最後の日」と言っていて、キックボクシング最後の日という意味で言っていたと思ったが、ボクシングという新たな道があるのになぜそう考えた? 「ボクシングっていうものを1回何も考えなかったですね。これに全部を懸けるしかないと思ったので。そうでないと勝てないし、そうでないと戦えない。次の日はないとずっと思っていたから、この日のために毎日生きて。それでやっと次の日生きられるかなって。今マジでハッピーですよ」 ――それは対戦が決まった時から思っていた? 「思っていましたね」 ――試合前に研究して武尊選手の弱点や癖は見抜けていた? 「そうですね、何個か。どんなものが来てもいいように対応していたし、そういう練習もしていたので。だから問題なかったですね」 ――3Rに相手がノーガードで来た時はどんな気持ちだった? 「ここで乗ったらいけないなっていう風に思いました。全部研究して、笑ったらこのパンチが来るとか。そういう対策もしていたので。笑ったらこのパンチが来るとか、笑ったらこういう動きをするって癖とかも全部やってきたので、だから落ち着いて出来たと思います」 [nextpage] 最終的に自分を信じ切れたところが勝因かな ――リング上でこれまで最強と思ったことはなかったと言っていたが? 「ずっと寂しかったですね。ずっと試合あるんですけれどワクワク感がずっとなくて。でもやっとここで戦えたというか、やっと出会えたというか。だからこそ自分の中で、この人に勝てば本当に強いと認めてもらえるというか。世間からもいろいろ言われたりとかもお互いあったし、選手同士はやりたいのにずっとあったので。それがやっと出来る。この人に勝てば僕は強いってことでいいのかなってずっと思っていたから。正直、戦わないで引退するのって俺マジで心残りが凄いあったから。こういう風に戦うべくして運命的な出会いだったんじゃないかなって。その言葉で片付けるのはあまりよくないとは思うんですけれど、そういう感覚ですね」 ――判定を聞く時に、1人目のジャッジが出るか出ないかくらいの時に涙ぐんでいた。その涙の理由は? 「リング上のことはそんなに覚えていなくて。俺、そんなに泣いていましたか?」 ――最終結果を聞く前に涙を流していた。 「マジすか。なんだろうな…出た感情じゃないですか。感情がバーっと出ちゃったんじゃないかな。あまり記憶はないです」 ――プレッシャーに打ち勝てたのは? 「チームを信じ切って戦えたことじゃないですか。今までやってきた(チームに)最後戻して、カウンターを狙って、那須川天心の強さを見せるっていうところを最終的に自分を信じ切れたところが勝因かなと思いました。父親だったり、ボクシングのトレーナーだったり、チーム天心、最強の仲間なのでみんなに感謝しています」 ――試合のイメージが出来ていると前日会見で言っていた。そのイメージの合っていたところと違ったところは? 「合ってた違うとかではなく、ずっと戦うとか戦わないとか言われていて、画面でしか見たことがなかったから“うわっ、武尊だ”って感じだったんですよ。ずっと大きく想像していたんですよね。でも対峙してみたら、思っていたより、骨格とか身体とかデカいですけれど、思っていたものより小さく見えたんですよ。そこが思えたことが勝てた原因かなと思いましたね。何倍も強い武尊選手をイメージしていたから、そのイメージの範囲で戦えたというか。そういうのはありましたね」 ――言える範囲で今後のボクシングにおいてどういうところを目指していくか? 「ちょっとまだ、いったん休んでから考えようと思います。ちょっとまだ分からないです」 ――那須川会長最後のセコンドだと思うが、そこで感じることは? 「いま率直に思うのは感謝の気持ちしかないですよね。出来すぎですよね、父の日だし。なんだろう、こんなことってある? っていう。ロッタンに勝ったのも父の日だったんですよ。いい話ですよね」 ――ボクシング界において武尊選手に匹敵するような好敵手は見つかりそう? 「まだ次はとりあえず考えてないです」 ――武尊選手は負けたら…と周囲に言っているが、今後武尊選手に期待したいことは? 「どうなんですかね。これはリング上で2人で話したことだからあまり言えないんですけれど、武尊選手の想いがあったみたいなので、期待することってわけではなく…これは内緒ですね」 ――キックボクシング最後ということで何か言葉があれば。 「最後の最後に武尊選手と戦えてこういう舞台を用意してくれて、関係者だったり、そして本当に武尊選手には感謝しかないです。僕の前に立ちはだかってくれてありがとうというか、戦ってくれてありがとうと本当に感謝の気持ちしかないので。あとは僕をここまで成長させてくれたキックボクシング界に感謝したいです。そしてRISE、RIZIN、K-1、どの舞台も最高だと思うので、またこうやって交わることが出来たら僕は嬉しいですし、選手も嬉しいし、本当に格闘技って一般の人から見たら殴り合って蹴り合って野蛮なスポーツなのと思うかもしれないけれど、それでもやっぱり人の心を動かすことが出来るものですから、キックボクシングに出合わせてくれて、最高の舞台で戦わせてくれてありがとうございましたと皆さんに伝えたいです」 ――ファンにひと言。 「これで那須川天心のキックボクシングは終わりですけれども、今後もキックボクシング、格闘技をよろしくお願いします。すげぇ楽しかったです」
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