MMA
インタビュー

【UFC】元RIZIN王者プロハースカ、UFC3戦目で王者テイシェイラに挑戦!「プロハースカは打たせず斬る。5Rの長期戦になればテイシェイラ有利」(高阪剛)

2022/06/08 17:06
 2022年6月11日(日本時間12日)、シンガポール・カランのシンガポール・インドア・スタジアムにて『UFC275』が開催される。  シンガポール初開催となるUFCナンバーシリーズのメインイベントは、ライトヘビー級王者グローヴァー・テイシェイラ(ブラジル)に、元RIZINライトヘビー級王者のイリー・プロハースカ(チェコ)が挑戦するタイトルマッチ。  日本のファンも大注目のこの一戦の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙坂剛氏に語ってもらった。 相手のパンチは空振ってるのに、プロハースカのパンチだけが当たっている ――日本でもRIZINライトヘビー級王座を獲得するなど大活躍したイリー・プロハースカが、いよいよUFC王座に挑戦しますね。 「プロハースカはUFCに来て3戦目でこのチャンスをつかんだわけですから、すごいことですよね」 ――これまでヴォルカン・オーズデミア、ドミニク・レイエスというトップランカーをしっかりKOしての文句なしの王座挑戦でもあります。 「勝ち方も衝撃的でしたからね。だから、もしかしたらトップコンテンダーに連勝したという結果だけでなく、プロハースカのファイターとしての特性的なところも評価したんじゃないかというフシもあるんですよ。というのも、プロハースカはこれまでのUFCライトヘビー級にはいないタイプの動きができる。簡単に言うと、ドミニク・クルーズとかTJ・ディラショーの重量級版という気がするんです」 ――変幻自在の高速ステップでバンタム級に革命を起こした2人のような動きが、ライトヘビー級でできると。 「プロハースカは、あんなにデカいのにステップを使うし跳ねるし飛ぶし。なおかつ相手の見えないところから打撃が飛んできて、全局面で倒すものを持っている。このタイプって、世界のトップ選手が揃った今のUFCライトヘビー級でもちょっと見当たらないな、と。だから、もしかしたらUFCサイドも“こいつは面白いな”“さらに化けるんじゃないか”と感じて、次々とチャンスが与られた部分もあったんじゃないかと、自分なんかは思ってるんですけどね」 ――マイケル・チャンドラーは、元Bellatoer世界ライト級王者としてアメリカでも知名度抜群だったから、2戦目でいきなりUFC世界ライト級暫定王座決定戦のチャンスが与えられたのも分かりますけど。プロハースカの場合、それまでアメリカではほぼ無名だったわけですからね。 「またプロハースカは、すごく武道的な戦いをしようとしているように見える。本人の中ではまだ構築中だと思うんですけど、相手に触らせずに自分の攻撃を入れることをやろうとしてるんじゃないかと思うんですね。だからこれまでの試合を見ても、打ち合いになっているように見えて、じつは打ち合いになっていない。相手のパンチは空振ってるのに、プロハースカのパンチだけが当たっているとか、そういうことが起こっている。  とくに前回のドミニク・レイエス戦はそうだったなって思うんですよ。お互い打撃をやり合って見える場面もあったけれど、試合後のプロハースカの顔を見ると、ほとんど傷がついてなくて綺麗なんです。ということはパンチをもらってないし、もらったとしてもスリッピング・アウェーなどの技術、動きを使ってダメージを逃している。その上で、自分はダメージがない状態で相手を斬る、そんなことをやろうとしている感がありますよね」 [nextpage] テイシェイラがどうプレッシャーかけていくかがポイントになる ――そういった「当てさせずに当てる」ことをジョン・ジョーンズとスタンドで互角以上の闘いを展開したドミニク・レイエス相手にやっているわけですからね。 「1ラウンド後半から2ラウンドにかけて、レイエスのほうが“どうすりゃいいんだよ?”という感じで追い込まれていたので、相手がどう攻めたらいいか分からなくなることを、プロハースカは試合の中で起こしてるんじゃないかな。プロハースカがRIZINで藤田(和之)とやったとき、自分も(藤田の)セコンドに付いたんです。あの時もいろいろと策を練ったんですけど、試合の途中に“これはどうすりゃいいんだ!? 捕まえるのは無理だな”って思うような状況にさせられてしまいましたから」 ――重量級の中で抜群のテイクダウン能力を持つ藤田選手でもそうだった、と。 「プロハースカは動きが止まらないのと、攻撃の強弱が頻繁に変わるんですよ。普通、強打を打つ時というのは、やはり出力を大きくするために若干スピードを落とさなきゃいけなかったりもするんですけど、プロハースカは速い動きの中で急に強い打撃が来たりする。これは相手にとって休む暇もないし、本当に厄介な選手でしたね」 ――ただ、スタンドではそれだけの強さを発揮するプロハースカですが、王者テイシェイラは打撃ももちろんできる上でのグラウンドの達人のような選手です。 「そうなんですよね。テイシェイラに組み付かれてコントロールされたら、誰も抜け出せないんじゃないか、というくらいの技術を持っていますからね。だからテイシェイラの方は相手がプロハースカだからといって、何か奇策を練ったりはしないと思うんですよ。これまでと同様に“自分のやるべきことをまっとうするだけ”という試合をすると思います。ただ、動き回るプロハースカをテイシェイラがどう捕まえるか、でしょうね」 【写真】テイシェイラのテイクダウンのキーは相手に金網を背にさせること。そこから右を振り、シングルレッグ、アンクルピップ、ダブルレッグテイクダウンにつなげていく。あるいは打ち合いのなかのカウンターの組みだ。 ――先ほどの話でもありましたが、プロハースカはこの階級屈指のフットワークを誇るわけですからね。 「テイシェイラは右フックを振ってすぐにタックルに切り替える連続技が、勝利につなげる大きな武器としてありますけど。それを仕掛けるためには、触れられる距離に詰めなければいけない。でも、単純にリーチの長さでもプロハースカが10cm上回っているので、どこをどうプレッシャーかけていくかが、ひとつ大きなポイントになるでしょうね。  触ろうとしてもその前に打撃をもらうかもしれないし、ステップでかわされてるかもしれない。そういう中で、どうグラウンドに持ち込んでいくか。テイシェイラが自分の得意な体勢に入ることができたら、プロハースカだろうが誰であろうが勝てると思うんですよ。だから、そこに持ち込めるかどうか。本当にそこだと思うんですよね」 [nextpage] プロハースカは5ラウンドあの動きを続けられるか? ――UFCライト級はジョン・ジョーンズが長期政権を築いたあと戦国時代が続いていますが、ここで完成度の高い王者であるテイシェイラを破るようなことになれば、『プロハースカ時代』が来るかもしれないですね。 「その可能性はありますね。プロハースカはRIZINでもうまくステップを使っていましたけど、UFCに来てからはさらにオクタゴンを広く使う動きを見せているので、まだ攻略の仕方が見えてきてない部分があるんですよ。ただ、ひとつ懸念するならば、あれだけ動き回るので、5ラウンドあの動きができるのか? というのがあるんですよ。そこはちょっと未知数ですよね」 ――たしかにプロハースカは、現在10連続KO勝利を続けていますけど、長期戦になった場合どうなるのかをまだ見せたことがないです。 「そうなんですよ。さっき“プロハースカは、ドミニク・クルーズやTJ・ディラショーの重量級版”と言いましたけど、ドミニクやTJは、61.2kg以下のバンタム級なので、動きが落ちないまま5ラウンド戦えますよね。でも、ライトヘビー級であの動きを5ラウンド続けるというのは、さすがに難しいんじゃないかな」 ――ライトヘビー級リミットは93kgですけど、試合当日は100kg超えてるでしょうからね。 「しかもフレームもデカいですから。フレームがでかいということは、自分の体を制御するための身体への負担というのがすごく大きいはずなんですよ。ステップ切って、バッと身体を止めようとするときなど、全身の筋肉を使わなきゃいけないので」 ――車で言えばトラックが急ハンドル、急ブレーキをかけるようなものでしょうからね。 「そうやって自分の体を制御していくだけで、だんだん疲労していくはずなんです。だからこそ、プロハースカがあの動きを5ラウンド続けられたら、本当にすごいことだと思います」 ――では、試合が長期戦に持ち込まれるのかどうかも注目ですね。 「やっぱり長期戦になればなるほどテイシェイラ有利になると思うんですよ。プロハースカの動きが鈍れば、テイシェイラのやりたいことがやりやすくなるわけなので。だから両者にとって試合時間というのも大きなポイントになるんじゃないかと思います」(取材・文/堀江ガンツ) UFC 275: Teixeira vs. Procházka 放送・配信スケジュール WOWOW『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC275 in シンガポール テイシェイラvs.プロハースカ ライトヘビー級タイトルマッチ!』2022年6月11日〈現地〉シンガポール・インドア・スタジアム 6月12日(日)午前11:00[WOWOWライブ]※生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 6月17日(金)午前10:00[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【出演】解説:髙坂 剛、堀江ガンツ実況:高柳謙一 WOWOW番組オフシャルサイト 【メインカード】※WOWOW放送 ▼UFC世界ライトヘビー級選手権試合 5分5Rグローバー・テイシェイラ(ブラジル)33勝7敗(UFC16勝5敗)※UFC6連勝中イリー・プロハースカ(チェコ)28勝3敗(UFC2勝0敗)UFC2連続KO ▼UFC世界女子フライ級選手権試合 5分5Rヴァレンティーナ・シェフチェンコ(キルギス)22勝3敗(UFC11勝2敗)※UFC8連勝中タイラ・サントス(ブラジル)19勝1敗(UFC4勝1敗)※UFC4連勝中 ▼女子ストロー級 5分3Rジャン・ウェイリー(中国)21勝3敗(UFC5勝2敗)ヨアナ・イェンジェイチック(ポーランド)16勝4敗(UFC10勝4敗) ▼フライ級 5分3Rホジェリオ・ボントリン(ブラジル)16勝4敗(UFC2勝3敗)マネル・ケイプ(ポルトガル)17勝6敗(UFC2勝2敗)UFC2連勝 ▼ウェルター級 5分3Rジャック・デラ・マダレナ(豪州)11勝2敗(UFC1勝0敗)ラマザン・エミーフ(ロシア)20勝5敗(UFC5勝2敗) 【プレリミナリー】※UFC FIGHT PASS ▼ミドル級 5分3Rブレンダン・アレン(米国)18勝5敗(UFC6勝2敗)ジェイコブ・マルクーン(豪州)6勝1敗(UFC2勝1敗) ▼ミドル級 5分3Rロバート・ウィテカー(豪州)23勝6敗(UFC14勝4敗)マービン・ヴェットーリ(イタリア)18勝5敗(UFC8勝3敗) ▼フェザー級 5分3Rチェ・スンウ(韓国)10勝4敗(UFC3勝3敗)ジョシュア・クリバオ(豪州)9勝1敗(UFC1勝1敗) ▼ライト級 5分3Rハイサアー・マハシャテ(中国)6勝1敗(UFC0勝0敗)スティーブ・ガルシア(米国)12勝4敗(UFC1勝1敗) ▼ウェルター級 5分3Rジェイク・マシューズ(豪州)17勝5敗(UFC10勝5敗)アンドレ・フィリ(ポルトガル)16勝4敗(UFC2勝1敗) ▼バンタム級 5分3Rカン・ギョンホ(韓国)17勝9敗(UFC6勝3敗)ダナー・バットゲレル(モンゴル)12勝3敗(UFC3勝2敗) ▼女子ストロー級 5分3Rシルバーナ・ゴメス・フアレス(アルゼンチン)10勝4敗(UFC0勝2敗)リャン・ナ(中国)13勝5敗(UFC0勝1敗) ▼女子バンタム級 5分3Rジョセリン・エドワーズ(パナマ)10勝4敗(UFC1勝2敗)ラモーナ・パスカル(中国)6勝3敗(UFC0勝1敗)
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント