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インタビュー

【UFC】「隙があるようで罠が張り巡らされた王者オリヴェイラに、挑戦者ゲイジーは打撃を効かせて“次の手”をどうするか」「リヴェンジ狙うナマユナスをエスパルザはドミネートできるか」(高阪)=5.7『UFC274』

2022/05/02 20:05
 2022年5月7日(日本時間8日)、米国・アリゾナ州フェニックスのフットプリント・センターにて『UFC274』が開催される。  メインイベントは、UFC歴代1位の18フィニッシュを誇るライト級王者シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)が、23勝(19KO・TKO)83%のKO・TKO率を誇るジャスティン・ゲイジー(米国)を迎えうつ2度目の王座防衛戦。  コメインでは、UFC世界女子ストロー級王者ローズ・ナマユナス(米国)が、2014年12月に敗れている初代女子ストロー級王者カーラ・エスパルザ(米国)を相手に2度目の王座防衛戦に臨む。  この2試合の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛に語ってもらった。 オリヴェイラの付け入る隙が落とし穴になっている ──『UFC274』のメインイベントは、UFC最激戦区と言ってもいいライト級のタイトルマッチ、オリヴェイラvs.ゲイジーが組まれました。これは楽しみな一戦ですね。 「これはもう間違いなく盛り上がるでしょうね」 ――王者オリヴェイラはUFCの最多フィニッシュ勝利(18勝)、最多一本勝ち(15勝)、最多パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(12回)を記録していて、挑戦者ゲイジーもファイト・オブ・ザ・ナイト6度獲得の名勝負男です。 「ただ、これはとくにオリヴェイラに言えることなんですけど、なぜ毎回試合が盛り上がるかというと、相手の攻撃をもらってしまうことがけっこうあるんですよね。たとえば、前回のダスティン・ポイエー戦にしてもその前のマイケル・チャンドラー戦にしても、効かされるシーンがあって」 ――チャンドラー戦ではダウンを奪われTKO寸前まで追い込まれながらの逆転勝ち。攻撃をもらってしまうからこそ、はからずも“激闘”になってしまう、と。 「以前のオリヴェイラは寝技にすごく自信があるがゆえに、寝技になったときに力を使いすぎて、しのがれてスタンドに戻ったときにガス欠状態で被弾して負けることもあったんです。その後、打撃を磨いてスタンドに重きを置くようになったので、打撃の鍔迫り合いをすることでどうしても被弾するので、殴り合いの激闘になっているのかなと。だからある意味、そこの部分に関してはちょっと危なっかしいというか、付け入る部分を残しつつ頂点に立ったチャンピオンですね」 ──でも、付け入る隙がありそうなのに、UFC最激戦区のライト級でトップランカーに勝ち続けて現在10連勝中なんですよね。 「オリヴェイラの面白いところは、そこなんですよ。オリヴェイラと対戦した選手は、この前のポイエーもそうですけど、試合中“いける!”と思う瞬間が、必ずと言っていいほどあるんじゃないかと思うんですよ。ただ、“いける!”と思って攻めたとき、逆にその隙を突かれて、結果的にサブミッションを極められたり、KOされたりしている」 ――相手が“チャンスだ!”と思って向かってきてくれたときこそ、じつはオリヴェイラにとってのチャンスになっていると。 「そういうことが起こってるんじゃないかと思うんですよね。相手がチャンスだと思って前に出たところにカウンターを入れられたり、グラウンドで首とられたりね。だからオリヴェイラの“付け入る隙”が、じつは罠だったり落とし穴になっているんですよ」 ――なるほど。では、ゲイジーは必ず打撃でフィニッシュを狙ってくる選手ですから、ポイエーやチャンドラー同様、その罠にハメやすいタイプかもしれないですね。 「だからこそゲイジーは、ポイエーやチャンドラーと同じ轍を踏まないための戦い方が問われてくると思うんですね。ゲイジーはオリヴェイラより10cmほどリーチが短いので、至近距離で打撃が交錯するような展開を望むと思う。ただ、仮にゲイジーがオリヴェイラを打撃で効かせていたところで、その次の手をどうするのかが悩みどころかもしれないですね。  たとえば打撃で効かせてフラッシュダウンさせたとして、そこからオリヴェイラ相手に寝技で勝負するのかどうか。オリヴェイラは下からの極めがものすごく強いので、上になってパウンドを落とすのも危険ですからね。だからその展開になったとき、はたしてゲイジーがどうするのか自分も興味がありますね」 ――実際、前回対戦したポイエーは、グラウンドで上になりながらパウンドに行ったところでスイープされて逆転されていますしね。 「ゲイジーが勝つためには、まずパンチで効かせなきゃいけないというのが絶対にあると思うんですよ。カーフキックなど足技もやりますけど、オリヴェイラも足が利くタイプだから、なかなか通用しないことが考えられる。では、どうするかを考えた時、ひとつイメージできるのはクリンチした状態でのパンチとか、至近距離からのアッパー。これは強烈で、しかも分かりづらい打ち方をするので、ひとつの武器になるんじゃないかなと思うんですよ。抱えた状態で、完全に効くまでパンチを連打すると」 ――先日、秋山成勲選手が青木真也選手にやったクリンチアッパーみたいな形ですね。 「ああいうのが有効だと思うんですけど、ただクリンチで抱えているということは、その抱えた腕をオリヴェイラが取りにくることも考えられる。跳びつき三角絞めや跳びつき腕十字という技も得意ですからね。そういうことを考えると、ゲイジーはどう戦うのかなと。すごく興味がわきますよ」 ──ゲイジー陣営がどうやってこの難問を攻略しようとしているのか、と。 「判定勝ちを頭に入れてるとしたら、フラッシュダウンさせても深追いせずに離れて、ラウンドを確実に取っていくのを繰り返すというのも手ですけど、ゲイジーはおそらくそれを望まないと思うんですよね」 ──やりすぎなくらい倒し切ることが信条のファイターですからね。 「そうすると倒し切るためにはどうしたらいいのか。オリヴェイラは、隙があるように見えて、罠や落とし穴が張り巡らされた不思議な強さを持ったチャンピオンなので、ゲイジーがその攻略法を見つけることができるかどうかがポイントだと思いますね」 [nextpage] ナマユナスにエスパルザはタックル&トップキープが出来るか ――続いてのコ・メインでは、ナマユナスvs.エスパルザのUFC女子世界ストロー級タイトルマッチが行われます。ストロー級も女子最激戦区と言っていいかと思いますが、王者ナマユナスはライバルのジャン・ウェイリー、ヨアナ・イェンジェイチックを2回ずつ倒して、頭ひとつ抜けた存在になりつつありますね。 「そうですね。安定してきた感がありますね」 ──ナマユナスの快進撃の要因はどう見ていますか? 「ナマユナスもオリヴェイラと同じく、もともと組みが強いグラップラーだった選手が、打撃を磨いたタイプですよね。相手からすると当然、組技を警戒しなければならないのに、打撃レベルがかなり高いというのが、やりづらくしている要因だと思います。  その打撃自体、自分からプレッシャーをかけていくんですよね。相手からすると、そのプレッシャーをかわすためには、そこにタックルを合わせたり組みついたりという選択肢が当然あると思うんですよ。でも“組んだらナマユナスは寝技が強いしな”という思いがあるから、そこで相手に迷いが生じるわけですね。  たとえばジャン・ウェイリーなんかは、スタンドでプレッシャーをかけられて、タックルやローキックを警戒して意識が下に向いたところでハイキックを入れられたり。イェンジェイチックもそれで顔面に連打をもらってますよね」 ――だからこそ、ウェイリー、イェンジェイチックというトップストライカーが、本来グラップラーだったナマユナスにKOされたわけですね。ただ、今回の挑戦者エスパルザは完全にレスラーです。 「がんがんタックルに入ってくるタイプですよね。だから今回、エスパルザ側からするとタックルが取れる距離を早く見つけることと、その設定ができる状況を作ることが大事だと思うんですよ。そのためには相手を不用意に出てこさせるとか、自分からプレッシャーをかけて足を止めさせるとか、ケージ際まで追い込んだりする必要が出てきますけど、それをナマユナス相手にできるかどうかですね」 ――エスパルザは、ナマユナスのグラップリングを怖がらない相手でもあります。 「なぜ極めが強い相手に対してもタックルに行けるいけるかというと、エスパルザは倒してトップポジションを取ったとき、下手に寝技をやらないんですよね。トップキープに専念して、そこから極めに行ったり、下手したらパスガードも狙わずに、そこからパウンドとヒジを落としていく。そのパウンドとヒジが強いし、要は漬けるだけなので隙が生まれにくいんですよ」 ――そうして確実にラウンドを取りにいくと。 「そういうシンプルな試合運びをするので、おそらくナマユナス相手にもタックルを仕掛けていくと思うんですけど。要はそのタックルが成功するかどうかですね。逆に言うとテイクダウンを奪えなかったら、厳しい展開を強いられると思います。  また、テイクダウンが取れたとしても、エスパルザはトップキープをしようとして立たれた時、けっこう消耗していることが多いんですよね。ナマユナスは寝技から立つ動きとか、下からサブミッションを仕掛けながらスタンドに戻す技術をいろいろ持っているので、しっかりとトップキープしてドミネートできるかですね」 ――ナマユナスにとってエスパルザは、UFCデビュー戦である初代ストロー級王者決定戦で敗れた相手ですから、成長ぶりを証明したいところです。 「だからエスパルザ相手だからこそ見られる、ナマユナスの技術の幅の広さみたいなものが見られるかもしれないし、自分はそこに期待していますね」(聞き手・文/堀江ガンツ)[nextpage] UFC 274: Oliveira vs. Gaethje 全カード WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール 5月8日(日)午前11:00[WOWOWライブ]※生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 5月13日(金)午後4:00[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【メインカード】 ▼UFC世界ライト級選手権試合 5分5Rシャーウス・オリベイラ(ブラジル)32勝8敗(UFC20勝8敗)UFC10連勝中ジャスティン・ゲイジー(米国)23勝3敗(UFC6勝3敗) ▼UFC女子世界ストロー級選手権試合 5分5Rローズ・ナマユナス(米国)11勝4敗(UFC9勝3敗)UFC3連勝中カーラ・エスパルザ(米国)18勝6敗(UFC9勝4敗)UFC5連勝中 ▼ライト級 5分3Rマイケル・チャンドラー(米国)22勝7敗(UFC1勝2敗)トニー・ファーガソン(米国)25勝6敗(UFC15勝4敗) ▼ライトヘビー級 5分3Rオヴィンス・サンプルー(ハイチ)25勝16敗(UFC13勝11敗)マウリシオ・ショーグン(ブラジル)27勝12敗(UFC11勝10敗) ▼ライト級 5分3Rドナルド・セラーニ(米国)36勝16敗(UFC23勝13敗)ジョー・ローゾン(米国)28勝15敗(UFC15勝12敗) 【プレリミナリー】(UFC Fight Pass) ▼ウェルター級 5分3Rランディ・ブラウン(ジャマイカ)14勝4敗(UFC8勝4敗)ケイオス・ウィリアムズ(米国)13勝2敗(UFC4勝1敗) ▼女子フェザー級 5分3Rメイシー・チアソン(米国)7勝2敗(UFC5勝2敗)ノーマ・ドゥモン・ビアナ(ブラジル)7勝1敗(UFC3勝1敗)UFC3連勝中 ▼フライ級 5分3Rブランドン・ロイバル(米国)13勝6敗(UFC3勝2敗)マット・シュネル(米国)15勝6敗(UFC5勝4敗) ▼ヘビー級 5分3Rブラゴイ・イワノフ(ブルガリア)18勝4敗(UFC2勝3敗)マルコス・ホジェリオ・デ・リマ(ブラジル)19勝7敗(UFC8勝5敗) ▼ウェルター級 5分3Rフランシスコ・トリナウド(ブラジル)27勝8敗(UFC17勝7敗)ダニー・ロバーツ(英国)18勝5敗(UFC7勝4敗) ▼女子フライ級 5分3Rトレイシー・コルテス(米国)9勝1敗(UFC3勝0敗)メリッサ・ガト(ブラジル)8勝0敗(UFC2勝0敗)UFC2連勝中 ▼フライ級 5分3Rクレイドソン・ホドリゲス(ブラジル)7勝1敗(UFC0勝0敗)CJ・ベルガラ(米国)9勝3敗(UFC0勝1敗) ▼女子ストロー級 5分3Rアリアネ・カルネロッシ(ブラジル)14勝2敗(UFC2勝1敗)ルピータ・ゴディネス(メキシコ)7勝2敗(UFC2勝2敗) ▼バンタム級 5分3Rジャーニー・ニューソン(米国)8勝4敗(UFC0勝2敗)フェルナンド・ガルシア(米国)10勝1敗(UFC0勝0敗) ▼ウェルター級 5分3Rアンドレ・フィアリョ(ポルトガル)15勝4敗(UFC1勝1敗)キャメロン・ヴァンキャンプ(米国)15勝5敗(UFC0勝0敗) 【出演】解説:高阪 剛、堀江ガンツ実況:高柳謙一 生中継前後に出演陣のYouTube「WOWOWofficial」配信『スタジオ裏トークUFC274』 WOWOW番組オフシャルサイト
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