みんな僕のレスリングを忘れている、僕は彼のテイクダウンを防ぐことが出来る
――試合展開をどのようになると予想していますか?
「前回と同じような内容になるんじゃないかなと思う。まず自分が距離を取った状態からから始まって打撃で圧倒して、彼にフラストレーションを与えて、必死のタックルで距離を詰めてくると思う。それに対して自分は打撃を合わせる──そういう展開になると思う」
──ボンサイ柔術黒帯のサトシの関節技をどう見ていますか。
「彼の柔術は素晴らしいものがある。戦績を見ても明らかだし、非常に有効で脅威だと思います。ですが、みんなひとつの要素を忘れていると思います。それが僕のレスリング。僕のレスリング力が、勝負をどこで行うのかを決める要素になる。僕のレスリングは彼のテイクダウンを防ぐことが出来る。どこで勝負するのかを僕が決めることが出来る。ソウザの一番のチャンスは打撃であって、パンチを当てることが出来れば勝負の流れを変えることになるかもしれないけど、もし自分とレスリングの勝負をしようと思ったら、彼は負けるし、前回のように遠い間合いからのタックルで倒されて終わると思います」
──現在の練習環境を教えてください。
「アリゾナにあるMMAラボで、ベンソン・ヘンダーソンや、ジョン・クラウチらとファイトキャンプを張ってきました」
【写真】今回セコンドにつく元UFC、現Bellatorファイターのダン・モレットと。
――ホイス・グレイシーの黒帯であるジョン・クラウチからは、何か対サトシ対策を授かりましたか。
「彼は自分に絶対の信頼を置いてくれて、自分の勝利を疑わなかった。もちろんソウザの寝技は脅威だ。でもクラウチはこう言ったんだ。『これまでジョニーが見てきたものをさほど変わりはないはずだ。柔術は柔術。特別なシークレットはない』という風に絶対の信頼を得ています。心も技術もワールドチャンピオンなんだから、何も問題ないと」(※サトシの反論「柔術に秘密はない。三角絞めの防ぎ方は誰もが知っているが、それでも防げない」)
──プロボクシングの試合をしてMMAの試合をここ数年していないことへの不安は?
「僕はプロMMAを16年やっていて、常に成長し続けてレベルアップしている。なのでリングの中でMMAをしていないことで心配する必要はない。練習しているし、いまの方が全然強くなっていて、試合に飢えて、MMAを渇望している。この期間が僕を獣にした。戦うことが人生なんだ」
──どの局面でも圧倒的に勝てると?
「そうは思っていない。このスポーツでひとつ忘れてはいけないのは、“これがファイトである”ということ。何が起きるか分からない。予期せぬことが起きることも、紙に書いて予想することができないことも起きる要素がある。リングのなかでは2つの魂と神様がいて、それがぶち当たっているので、何が起きるかは神のみぞ知る。自分がいい方向に行けば、当然自分が勝つことになるだろう。
ただ、ソウザも勝利する武器を全部揃えて勝利する気でリングで立つだろうし、自分はこの競技に長く携わっていて。“確実”というのもなかなかないことも良く分かっています。サトシとトフィックの試合でもそうだった。“10回やって9回はトフィックが勝つだろう”と、いまでもそう思っているし、実際にリマッチしたらそうなると思います。でもその10分の1が、前回起きてしまった。勝負ごとに確実というものはないと認識しています」
──サトシ戦後のプランは?
「まずはこの試合に勝って、家に帰って家族や、パンデミックのなか支えてくれた仲間たちと祝いたい。今回はみんなの勝利なので、大々的に祝いたいです。ここでちゃんとチャンピオンになったら、これ以上のものはないから、ジョニー・ケースとして歴史に残るような試合をし続けたい。とにかくベストでみんなが喜ぶようなマッチアップ、ジョニー・ケースが試合をするたびに究極のエンターテインメイントを届けられるような存在になりたい」
――最後にひとつ、このMMA復帰に至ることで聞かせてください。家庭内トラブルで逮捕され、PFLの契約が解除されました。実際は起訴内容も取り下げられ、正当防衛だったということですが、その期間は、あなたにどんな影響を与えましたか。
「自分がこの数年経験したことは、本当につらいことを経験してきましたが、この経験で人間的に成長することが出来たと思っています。とにかく自分が身を置いている状況にあらためて感謝する機会を与えてくれた。どんな困難なときも自分を信じていてくれている人たち、去って行く人たちもいる。その中で、自分がいかに恵まれているのかを再認識させられる期間になりました。それに気づいて、新しい発見や、人としての生き方、インスピレーション、自分を人としてさらなる高みへ連れて行ってくれることになりました。ほんとうに人生は辛いことが多くて、自分の名前が泥のように扱われて知られてしまうということもあるんですけど、選択肢としてはそのまま辛い思いをして生きて行くのか。それともそこから学んで強くなって立ち上がるのか、自分はそこを乗り越えることができました。辛い経験でしたが、そのおかげでいま自分はここに座っていることができていると思うので、すべてのことに感謝しています」