MMA
インタビュー

【RIZIN】王者サトシと対戦するジョニー・ケース「彼は“ファイター”ではない」「柔術に秘密はない」、DV騒動についても語る

2022/04/17 09:04
 2022年4月17日(日)『RIZIN.35』東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ大会のメインイベントで、「RIZINライト級(71kg)タイトルマッチ」(5分3R)で、王者・ホベルト・サトシ・ソウザ(ボンサイ柔術)に挑戦するジョニー・ケース(米国)がインタビューに応じた(※前日に『RIZIN TRIGGER 3rd』開催)。  両者は2019年10月に「RIZINライト級トーナメント」の1回戦で対戦してサトシが1R TKOで敗れており、ケースは今回、サトシが持つベルトに挑戦する形で再戦に臨む。  インタビューでケースは、RIZIN後、PFLと契約するも解除となったDV騒動(実際は正当防衛で起訴取り下げ)、そこで得たもの、3連勝中のプロボクシングのこと、そして対戦相手サトシの柔術についてなど、30分にわたる質疑応答に答えた。 サトシには、業火の中に身を置いて戦い抜く遺志が足りない ――2019年、大晦日以来の日本での試合となります。いかがですか 「ほんとうに最高な気持ちです。このような機会を与えられて、また日本に帰って来れてこの時点で自分は勝った気でいます。この機会に感謝していい試合をしたいと思います」 ――最後の来日から2年半、その間にどんな練習を? 「自分はMMAファイターなのでトレーニング内容は変わっていません。レスリングも柔術もやっています。ただ一つだけ変わったのはプロボクシングも試合をするようになって、ボクシングだけの練習もたくさんするようになりました。中西部のトップボクサーたちと練習して、ボクシング技術を学び直しました。特に自分の打撃技術がとにかく上がりました。あとボクシングをやったことで、ファイトIQが凄く上がりました。ボクシングはMMAで行う上では、1/3くらいに特化されている。  MMAは覚えることがたくさんあって、まさにカオスな状態で戦わないといけないけど、その1/3に集中して学ぶとほんとうに奥が深くて視野が広がる。ボクシングの戦いの中で、集中することが限られるので、その分、ファイトIQが上がって、全体的なスキル、パフォーマンスが上がったと思います」 ──モンテ・コックスの勧めで取り組んだプロボクシングでは、168ポンド(76㎏)とRIZINライト級の71kgから5kg重い体重で試合をしていました。減量はいかがですか。 「大丈夫です。グラップリングがあると体重が大きく関係してくるけど、自分のボクシングにおいては体重はあまり関係なくて、上の階級でやることは問題ありませんでした」 ──ボクシングで3戦連続KO勝ちでした。MMAとは距離が異なるボクシングマッを経験したことは、ケース選手のMMAにどんな影響をおよぼしましたか。 「自分はMMAの距離に慣れているから、通常のボクシングよりはロングレンジに慣れている。ボクサーが慣れていない距離か角度からパンチを打つことができた。だからMMAファイターの僕がボクシングを戦うことのアドバンテージの方が多かった。当然、MMAでピュアボクシングの技術であるヘッドスリップなどが通じないなどの違いはあるものの、基本的にボクシングをやることで自分のベースの打撃が良くなりました。MMAファイターがボクシングで戦うことの方が優位に戦えるように思います」 ――対戦相手のホベルト・サトシ・ソウザ選手の印象を教えてください。 「対戦相手は非常に技術が高いアスリートだと思っています。ただ、彼はやっている競技を間違えている。非常にスキルが高くて、世界的なアスリートだと思うけど、競技者として素晴らしいけど、彼は“ファイター”ではない。心の中の情熱、この競技に対する強さというものを持っていない。それを最初の試合で僕が証明した。今回も証明する」 ──それはファイターとしての精神力を持っていないと? 「そうですね。精神力、業火の中に身を置いて勝負し続ける遺志。痛くて辛い思いをして戦い抜く遺志が足りないのではないかと思っています」 ――では、この間で互いに成長した部分は? 「2人ともたぶん同じ部分が成長したと思う。それはウォリアースピリット、ファイターとしての精神力が互いに上がったと思います。自分にとっては燃え滾る情熱、それがさらに熱くなって、勝ち取りたい、勝負に対する貪欲さが強くなったと思います。ソウザも最近の試合を見る限り、勝ちたいという決死の覚悟が見られる。最初の試合ではちょっと恐れや迷いがあったのが、最近の試合ではそれが無くなってきたと思います  ただ、今回、自分が置かれた状況、2週間の隔離が不要になったことや、自分のこの試合への情熱には欠片もおよばないと思います。  ロングフライトの末に9日に来日して、空港での長いコロナ検疫で待たされて、減量でお腹もすいているし、非常に疲れてたどり着いたけど、ほんとうに日本に来ることが出来て幸せだ。もしコロナ検疫で2日、並べと言われても全然喜んで待つくらいの精神力でここにやってきた。最終的には自分の大好きなことをやって、評価されてここに来ているのでまったく文句はありません。ほんとうに素晴らしい機会を与えていただき、素晴らしい時間を過ごしています」 [nextpage] みんな僕のレスリングを忘れている、僕は彼のテイクダウンを防ぐことが出来る ――試合展開をどのようになると予想していますか? 「前回と同じような内容になるんじゃないかなと思う。まず自分が距離を取った状態からから始まって打撃で圧倒して、彼にフラストレーションを与えて、必死のタックルで距離を詰めてくると思う。それに対して自分は打撃を合わせる──そういう展開になると思う」 ──ボンサイ柔術黒帯のサトシの関節技をどう見ていますか。 「彼の柔術は素晴らしいものがある。戦績を見ても明らかだし、非常に有効で脅威だと思います。ですが、みんなひとつの要素を忘れていると思います。それが僕のレスリング。僕のレスリング力が、勝負をどこで行うのかを決める要素になる。僕のレスリングは彼のテイクダウンを防ぐことが出来る。どこで勝負するのかを僕が決めることが出来る。ソウザの一番のチャンスは打撃であって、パンチを当てることが出来れば勝負の流れを変えることになるかもしれないけど、もし自分とレスリングの勝負をしようと思ったら、彼は負けるし、前回のように遠い間合いからのタックルで倒されて終わると思います」 ──現在の練習環境を教えてください。 「アリゾナにあるMMAラボで、ベンソン・ヘンダーソンや、ジョン・クラウチらとファイトキャンプを張ってきました」 【写真】今回セコンドにつく元UFC、現Bellatorファイターのダン・モレットと。 ――ホイス・グレイシーの黒帯であるジョン・クラウチからは、何か対サトシ対策を授かりましたか。 「彼は自分に絶対の信頼を置いてくれて、自分の勝利を疑わなかった。もちろんソウザの寝技は脅威だ。でもクラウチはこう言ったんだ。『これまでジョニーが見てきたものをさほど変わりはないはずだ。柔術は柔術。特別なシークレットはない』という風に絶対の信頼を得ています。心も技術もワールドチャンピオンなんだから、何も問題ないと」(※サトシの反論「柔術に秘密はない。三角絞めの防ぎ方は誰もが知っているが、それでも防げない」) ──プロボクシングの試合をしてMMAの試合をここ数年していないことへの不安は? 「僕はプロMMAを16年やっていて、常に成長し続けてレベルアップしている。なのでリングの中でMMAをしていないことで心配する必要はない。練習しているし、いまの方が全然強くなっていて、試合に飢えて、MMAを渇望している。この期間が僕を獣にした。戦うことが人生なんだ」 ──どの局面でも圧倒的に勝てると? 「そうは思っていない。このスポーツでひとつ忘れてはいけないのは、“これがファイトである”ということ。何が起きるか分からない。予期せぬことが起きることも、紙に書いて予想することができないことも起きる要素がある。リングのなかでは2つの魂と神様がいて、それがぶち当たっているので、何が起きるかは神のみぞ知る。自分がいい方向に行けば、当然自分が勝つことになるだろう。  ただ、ソウザも勝利する武器を全部揃えて勝利する気でリングで立つだろうし、自分はこの競技に長く携わっていて。“確実”というのもなかなかないことも良く分かっています。サトシとトフィックの試合でもそうだった。“10回やって9回はトフィックが勝つだろう”と、いまでもそう思っているし、実際にリマッチしたらそうなると思います。でもその10分の1が、前回起きてしまった。勝負ごとに確実というものはないと認識しています」 ──サトシ戦後のプランは? 「まずはこの試合に勝って、家に帰って家族や、パンデミックのなか支えてくれた仲間たちと祝いたい。今回はみんなの勝利なので、大々的に祝いたいです。ここでちゃんとチャンピオンになったら、これ以上のものはないから、ジョニー・ケースとして歴史に残るような試合をし続けたい。とにかくベストでみんなが喜ぶようなマッチアップ、ジョニー・ケースが試合をするたびに究極のエンターテインメイントを届けられるような存在になりたい」 ――最後にひとつ、このMMA復帰に至ることで聞かせてください。家庭内トラブルで逮捕され、PFLの契約が解除されました。実際は起訴内容も取り下げられ、正当防衛だったということですが、その期間は、あなたにどんな影響を与えましたか。 「自分がこの数年経験したことは、本当につらいことを経験してきましたが、この経験で人間的に成長することが出来たと思っています。とにかく自分が身を置いている状況にあらためて感謝する機会を与えてくれた。どんな困難なときも自分を信じていてくれている人たち、去って行く人たちもいる。その中で、自分がいかに恵まれているのかを再認識させられる期間になりました。それに気づいて、新しい発見や、人としての生き方、インスピレーション、自分を人としてさらなる高みへ連れて行ってくれることになりました。ほんとうに人生は辛いことが多くて、自分の名前が泥のように扱われて知られてしまうということもあるんですけど、選択肢としてはそのまま辛い思いをして生きて行くのか。それともそこから学んで強くなって立ち上がるのか、自分はそこを乗り越えることができました。辛い経験でしたが、そのおかげでいま自分はここに座っていることができていると思うので、すべてのことに感謝しています」
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント