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【ONE】ベルトを巻いた秋元皓貴「あと100倍は強くなれる」日本の若い世代に「ぜひ世界に出てきて“本当のチャンピオン”になってほしい」

2022/04/04 14:04
 2022年3月26日(土)、シンガポール・インドアスタジアムで開催された、ONE Championship10周年記念大会『ONE X』で、秋元皓貴(Evolve)がカピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)が持つ「ONE世界バンタム級キックボクシング王座」に挑戦。5R判定の末、秋元が勝利し新王者に輝いた。  現地シンガポールから届いた戴冠インタビューで秋元は、何の気負いもなく、素直に下記のような刺激的な言葉を語った。 「あのローキックは完全に空手の蹴り方」「キックを離れたことは全く後悔していない。だからこそ今シンガポールにいる」「スタミナが切れたことがない」「あと100倍は強くなれる」「MMAチームでレスリングや柔術の組み技も練習している。興味は正直ある」 ──そして、「日本の中で戦って世界チャンピオンと言っている選手もいると思うので、ぜひ世界に出てきて本当のチャンピオンになりたいと思うような若い世代が出てきたら嬉しい」と。  家族とともにシンガポールに移り住み、悲願のベルトを巻いた秋元のインタビュー全文は下記の通りだ。(C)ONE Championship シアーコーチの顔を見たら泣けてきました ──チャンピオンになった気持ちはいかがですか。 「試合前に『チャンピオンになってもそこからだ』って言っていたので、そこまで気持ち的には変わらないのかなって思いましたが、やっぱりタイトルを獲ってシアー(・バハドゥルザダ)コーチの顔を見たら泣けてきました。一人で掴んだものじゃないので、コーチとチームと掴んだものなのでとても嬉しかったです」 ──ラウンド間のインターバルでもシアーコーチから熱い言葉があったようですが。 「『チャンピオンになるんだ、チャンピオンになるんだ』って繰り返し言われていました。1ラウンドから結構激しい感じで、本当に追い込みの練習をしてたのと同じような感じになったので、そのトレーニングのインターバルで言われていたことを、そのまま言われてた感じでした。試合でしたけど、そのトレーニングと同じような感覚でやっていました」 ──コーチの存在は非常に大きいと。 「選手によっては自分で色々なことをやる選手もいますし、対策を立てたり考えたりをする選手もいると思いますけど、僕の場合は、相手選手の対策を練るとかがあまり得意でないのでやりませんし、そういった部分はコーチに任せています。自分はしっかりと100%以上のコンディションを作って、テクニックをしっかり吸収して、という感じなので、僕にとってはコーチの存在はとても大きいですね」 ──今回の試合で、警戒していたことや作戦は? 「試合前のインタビューでも言っていたのですが、やっぱり右のパンチ、右のストレートとローキック、フックも強いですけどパンチがやっぱり強い選手で、パンチからローキックに繋げてというのが他の試合では多く見られましたね。あとは前に前に来るプレッシャーが強い。それをさせなように、というのが一番の作戦でしたね。アドバンテージで言うと、大体は僕がリードしていると。フィジカル的なところも」 ──試合前に「ガンガン来る相手なので噛み合う」と言っていましたが、その通りの試合になりました。 「そうですね。本当にガンガン来たので、僕としては早いラウンドでもカウンターを狙っていたので倒しにいけるかなって思っていたのですが、やっぱりカピタンはディフェンスも上手くて、カウンターを合わせに行こうと思ってもなかなかできず。早いラウンドでローキックを嫌がっているなと思っていたんですけど、なかなか決め切るまではさせてもらえなかったなと思いました。相手のディフェンスの上手さもあったかと思いました」 ──相手のタフさもありました。当たっても中々崩れなかったです。 「そうですね。あと一歩。良いのが当たって、その後一発か二発当てれば倒せたかなと思ったのですが、また時間が空いてという感じだったので、回復されてしまったのかなって思いました。タフさはあったと思います。でも最初のラウンドでローキックを効かせられたっていうのがあったと思いますが、パワーは正直ほとんど感じなかったですね。強いなー、重いなー、というのはあまり感じなかったです。でも、ディフェンスの上手さはすごく感じました」 ──ご自身のディフェンスについては。 「自分として一番やりたくなかったのはプレッシャーが来るなかで、最初は自分がプレッシャーをかけて行こうと思ってて、それが出来なかったら下がりながら距離を取りながら戦うっていうのがやりたくなかった。ハードな方法を選びました。スピードに関しては自分の方に分があるなって思っていました。パンチも蹴りも全部見えましたし、しっかりそこは対処できたと思います」 ──どのタイミングで自分の勝利が見えましたか。 「勝ったなっていうのは、やっぱり最後まで思わなかったですね。やっぱり一発のある選手なので、それはしっかり頭に入れてやっていました。ラウンドとしてはフルラウンド取ったとは思っていましたけど、一発だけは気をつけて、なんなら自分が倒しに行くつもりでやっていました」 ──最終ラウンドも倒しに行きましたが、他のラウンドと比べて被弾しました。 「そうですね。5ラウンド目は本当に自分も倒したいって気持ちが強かったので、その分被弾しましたね。あそこで引いていたら一発もらっていたかもしれないので」 ──手数とスタミナが素晴らしかったです。日頃の成果ということでしょうか。 「スタミナが完全に切れたことが今までの人生であまりなくて、スタミナには結構自信があります。この間の試合もしんどかったですけど、あと2ラウンドは行けたなと、そのくらいのスタミナの余裕はありましたね」 ──スタミナが切れたことがない? 「スタミナが切れて負けたっていう試合は、ないですね。負けず嫌いなんです。本当にすごい子供の頃から負けず嫌いで、下校中の通学路とかでもとにかく一番前を歩きたいし、誰かが歩いてきたら後ろを歩くのが嫌だから抜かすとか(笑)、そういうところから始まっているのかもしれませんね。小学校はサッカー部だったんですけど、シャトルランとか持久走とか走るものとかは負けたくなくて常に一位を狙っていました。遊びでも部活でも空手でもトレーニングでも、全てに関して一人で勝手に頑張っていたというのがこういう結果に出たのかもしれないです」 [nextpage] キックボクサーとしてはまだ3年ちょっと。パンチの技術なんてほとんどないといっていいくらい ──これからの自身の伸び代についてはどう考えていますか。 「伸び代に関しては、かなりあると思っています。自分は格闘技をやっているのは長いですけど、キックボクサーとしてはまだ3年ちょっとだと思っていますし、パンチの技術なんてほとんどないといっていいくらいだと思います。パンチの技術、ボクシングのテクニックとかをもっと取り入れていったらもっと良くなると思います。蹴りは、ローキックとかであれば大分効かせることができるようになったなって思います。ハイキックとかも精度を上げていけば、一発で倒せるようになると思いますし、技一つひとつもそうですけど、動き方、ステップワークとかもまだまだ改善できることはたくさんあります。あと100倍は強くなれると思います」 ──試合を終えて、ご家族の反応はいかがでしたか。 「みんな喜んでくれていて、結構試合が終わるとダメ出しをされるっていうのが多かったのですが(苦笑)、今回はそういうのがなくて。もちろん僕がまだ未熟な部分があるっていうのは皆んな分かっていると思うんですけど、両親にしても空手の師範たちにしても、みんな褒めてくれましたね。両親もそうですし、空手の先生たちのグループLINEがあるんですけど、これまでは試合後にあそこはこうした方が良かった、とかよく言われて、勝ってもシュンってなることがありました(笑)。今回はそういうのもなく、良かったってみんな言ってくれました」 ──ご両親も空手を? 「僕が始めた1年後に父が初めて、その1年後に母が始めました。今は空手の支部を暖簾分けしてもらって父と母で道場を持っていて教えているという感じですね」 ──キックボクシングの中で秋元選手の空手が活きていると感じることはどんなところですか。 「今回の試合で言えば、一番はローキックかなと思います。あのローキックは完全に空手の下段の蹴り方で。それをキックボクシングに対応させた形です。どうやったらキックボクシングの競技の中で使えるのかを試行錯誤しながら、今回それがハマった感じです。今回は空手の蹴りですね。本当はもっともっとやりたいことがありましたけど、いっぱいいっぱいでしたが、今回は空手の蹴りが活きたかなって思いました」 ──キックができなかった6年間がありました。その時期を振り返ってみていまどう感じていますか。 「本当に変わった経歴、すごく特殊な経歴だと思うんですけど、自分としては全く後悔はなくて。あの時キックボクシングを離れたからこそ、僕は今シンガポールにいると思います。これだけ言われたことを素直に吸収できているというか。あのままキックをやっていたら、自分のスタイルが出来ちゃっていて、いまのように言われたことを素直に吸収できない部分があったのかなとも思います。周りから見たらフラフラしているって見えるかもしれませんが、自分としては一つひとつを真っ直ぐにやってきたので、良かったなと思います。評価される場所に来れたっていうのは嬉しいですね」 ──空手に戻った時に何か気持ちの動きみたいなものはありましたか。 「確かに空手もムエタイとかと一緒であまり評価されないですけど、自分がムエタイをやっていた時は、正直試合をしていて楽しくなかった。相手が強いって感じなかったんですよね。空手に戻った時に強い選手がたくさんいて、自分としてはそれが楽しいと思いました。自分より強い相手と純粋に戦いたいという気持ちでした」 [nextpage] 日本の中で戦って「世界チャンピオン」と言っている選手もいる。ぜひ世界に出てきて「本当のチャンピオン」になりたいって思うような若い世代が出てきたら嬉しい ──チャトリ・シットヨートンCEO兼会長が、秋元選手の試合を大会のベストバウトと話していましたね。 「自分としてはやっている時は一杯一杯だったので、正直ボーナスを貰えるって考えていませんでしたし、本当にベルトを獲れて嬉しいという感じでした。ホテルに戻って試合を見た時に、自分が思っていたより良かったなと感じました。これだったら評価してもらえるような試合をできたなって思いました」 ──ところでボーナスの使い道は? 「本当に物欲がないので、貯金になるのかなって思います。多分自分のことに使うことはないかなって思います。奥さんにプレゼントとか、両親にプレゼントとか、そういったことに使おうかなって思います。サプライズとかは苦手なので、欲しいものがあれば、と思います」 ──『ONE X』で他の試合で印象的だった試合はありますか。 「面白かったなというか、フェザー級キックボクシングのタイトルマッチ、スーパーボンとマラット・グレゴリアンの試合。自分はグレゴリアンが勝つのかなって思っていたんですけど、ただあのプレッシャーをスマートにかわしながら、しっかりと攻撃を当てていたスーパーボンは印象的でした」 ──デメトリアス・ジョンソンとロッタンによる特別ミックスルールの試合がありましたが、MMAへの挑戦なども興味があったりしますか。 「MMAは、チームのみんながMMAなので一緒にトレーニングをしてて、ウォーミングアップまでは一緒にやっていますね。レスリングの日も、BJJの日も一緒にやっています。興味は正直ありますね。ただ引退してからで良いかなって思います。今はしっかりキックボクシングに集中して、引退したらやればいいかなって思います」 ──MMAファイターのエコ・ロニ・サプトラ(インドネシア)とも練習されたとか。 「階級は一つ下ですけど、パンチのパワーは結構あるなって思いますね。ストライキングの時間とかもペアを組むことが多かったので、その期間にめちゃめちゃ技術が上がったなって思いますね。これからが楽しみですね。自分が普段の普通のトレーニングでも気を抜くのが嫌いで、常にピリピリした集中した感じでやるので、彼もそれについてくるという感じですね」 ──「絶対的なチャンピオンになりたい」とタイトルマッチ前に仰っていましたが、今はどんな気持ちですか。 「絶対的なチャンピオンになるためには、一番は基礎だったり本当にみんなが嫌がるような地味な練習、そういったことをコツコツやる選手が一番強いと思うので、そういったことをもっと集中してやっていきたいと思います。パンチのテクニックもしっかり上げていきたい。ボクシングのコーチについてもらったり、一つひとつレベルアップしてきたいです」 ──さて、最初のチャレンジャーは誰が相応しいと思いますか。 「僕は誰でも良いかなって思います。やってみたい選手は……どうですかね。レベル的にいったらリマッチになるのか、もしくはチュー・ジェンリャンとカピタンが試合をして、その勝者とかなって思います。やりたい選手っていうのは本当にないです。組まれた試合を完璧にしたいです」 ──久々に大勢のファンが会場にいましたね。かなり盛り上がっているようにも見えました。そんな中での試合でどう集中しましたか。 「すごく盛り上がっていたなとは思いました。空手の試合は周りがうるさくて、その中から小さいコーチの声を聞くっていうのを空手の時から意識をしていたので、今回もほとんどコーチの声しか耳に入っていなかったと思います。空手の場合は多いと8面とか同時にやって、その周りにお客さんもいて、その中で師範たちの声をこぼさないようにしていたので。僕の耳にはコーチとセコンドのション・ジンナンの声しか入っていなかったですね。二人の声だけは聞こえましたね。  シアーコーチが言っていたことは、この試合に向けて練習してきたことの中からさらに絞っていって、その中のコンビネーションについて話していたり、あとはプレッシャーかけていけ、倒せとかシンプルな言葉でしたね。セコンドが言っていれば相手も分かるじゃないですか、そのセコンドの声をフェイントに出来るという場面もありました。それも自分としては楽しんでいましたね」 ──チャンピオンになってからの反響は。 「まだ家から出ていないので、あまりわからないですが、SNSだったり友人からのメッセージだったりは物凄くきましたね。今までの比じゃないくらいでした。何件来たかも分からないですが、印象的だったのは、ストーリーでタグ付けされたもので “彼氏がチャンピオンになりました”って書いてあって、それは面白かったですね。“あっ、彼女できた”って(笑)」 ──ご家族、奥さん、お子さんからの反応はいかがでしたか。 「奥さんは会場まで応援に来てくれて、家でも喜んでくれましたし、娘は僕が次の日に家に帰ってきたとき、ベルトを見せたら喜んでいましたね。ベルトの意味を分かっているかは分からないですが、僕の仕事が格闘家だってのは理解していますね」 ──ともに移住した家族の力が支えになったと。 「家族がいて、小さい頃から両親がこの環境を作ってくれたっていうのもそうですし、妻が支えてくれたっていうのもそうですし、娘が毎朝、『パパ、がんばってね』って言ってくれるのとかもそうですし。“ちょっと今日疲れたな、身体重いな”っていうときも、そういう言葉が力になるなって思います。それが結果につながったかなって思います。タイトルマッチが終わったので、シンガポールの周りの島とか。隔離なしで行けるところが出てきているので、そういったところに家族と旅行に行けたらいいなって思っています」 ──日本人ファイターが日本を出て戦う意味は、秋元選手にとってどういうものでしょうか。 「世の中にはたくさん世界タイトルだったり、日本の中でも日本のタイトルがもの凄くたくさんあって、正直そのチャンピオン、タイトルの重さというのがどの程度あるのかっていうのが僕はちょっと分からない。世界で評価された舞台で戦うっていうのは、すごく価値のあることだと思いますし、日本の中で戦って世界チャンピオンと言っている選手もいると思うので、ぜひ世界に出てきて本当のチャンピオンになりたいって思うような若い世代が出てきたら嬉しいなって思います」
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