総合ってやっていい幅が広い。自分を全部出し切る、さらけだす戦い方もやっていいんだと気づいた
引退試合で、20代のトップアスリートとのマッチアップについて、「自分が望んでいたんです。相手が誰というリクエストはしていなかったんですけど、『日本人選手で総合格闘技と向き合っている若い選手と出来たら幸せです』と伝えていました」という。
「バトンタッチ」の試合になるか、と問われた“世界のTK”は、「そうですね……でも試合になったら自分はガチャガチャやりますんで、そんな感傷に浸っている暇は無いです。いま自分がやらなきゃいけないことで精一杯やるというのが自分のやり方なので。終わってからどういう風になっているのか、ということですね」と言い、MMA25年で作り上げた引き出しについて、「出るといいですね。いろいろやってきましたからね。全部出せればいいと思っています」と語った。
試合展開は、「よく分からない」という。
「その場で感じたことをそのままやっている、というのが正しい言い方で、たどり着いたのがここだった、というのはもしかしたらあるかもしれませんね。20代の頃は、ああいう技が生まれたとか、効果があるとか、いろいろ確かにやってきたこともあるし、勝つことも負けることもあった。最終的にたどりついたのが、総合ってやっていい幅が広い。自分を全部出し切る、さらけだす、そういった戦い方というのがやっていいんだ、と気付いたんですね。リングに上がって相手と向き合って、ゴングが鳴ったら、あとは自分の身体に任せる。それが打撃や組んでもテイクダウン、寝技になったり、その場で身体が勝手に判断するんじゃないかと思います」と、25年で身に着けた・身に沁みついた動きを「すべて出し切って」戦いたい、と語る。
ここまで現役を続けたモチベーションは、枯渇しない負けん気と、MMAへの探求心にあるという。
「戦うモチベーションは……やられて“あいつにもう一回、やり返さなきゃ”ですね。“クソーッ”って、それに尽きるんじゃないですかね。勝つことも負けることもあって、もし勝ってももっとこういうやり方があったんじゃないかとか、もしいかれた場合はもう一回、やり返してやるっていう。今回で、もう1回となったら? どうしますかね。嘘つきおじさんになっちゃう(苦笑)。10年後は60歳ですよ。でも今回はあらゆる意味で出し切る試合を絶対やりたいと思っています。引退試合ということになっていますが、試合は試合なので、いつも通りの出し切る試合をやりたいなと思います。それが観ている人の心に響けばいいと思います。最後の試合、最後のリング。全部出し切る試合をしたいと思います」
これまで積み重ねてきたもの、勝って、負けて得たもの。手放して残ったもの──それらを「ぜんぶさらけ出して」相手と戦うのがMMAという52歳の高阪は、26歳の上田を相手にどんな試合を見せるか。