キックボクシング
インタビュー

【ONE】日本人初の快挙、秋元皓貴が手にしたベルトの重み「日本で頑張ってる選手や若い選手の刺激になれば」

2022/03/28 11:03
 これを「快挙」と言わず何と言おうか。  2022年3月26日(土)、シンガポール・インドアスタジアムで開催された、ONE Championship10周年記念大会『ONE X』で、秋元皓貴(Evolve)がカピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)が持つ「ONE世界バンタム級キックボクシング王座」に挑戦。5R判定の末、新王者に輝いた。  試合は、秋元のベースのフルコンタクト空手の下段蹴り、中段突きやヒザ、さらにシンガポールEvolve MMAでも培った前進力が活きた激闘に。  キックボクシングルールのなか、顔面から腹、そして下段の蹴りも前足、奥足と蹴り分けた挑戦者は、カピタンを金網に釘付けにして、ムエタイ王者に反則の掴みのイエローカードも出させたうえで、こかす場面も見せて、5R、判定で完勝した。  秋元は、小学2年時に空手を始め、2007年10月に15歳でプロデビュー。2008年8月の「K-1 甲子園 KING OF UNDER 18~FINAL16~」で江幡睦に判定勝ち。2011年7月に、19歳にして元ルンピニースタジアム認定二階級王者で現役ランカーのピンサヤーム・ソー.アムヌアイシリチョークに2RにKO勝ちを収めた。2012年10月の森井洋介戦では、5R判定勝ちでデビュー以来無敗のままWBCムエタイ日本フェザー級タイトルを獲得。  2014年からフルコンタクト空手に復帰し、2017年のJFKO第4回全日本フルコンタクト空手選手権軽量級で優勝。2018年8月にシンガポールのメガジム「Evolve MMA」のトライアウトを受けて合格。10月には日本から拠点を移し、2019年1月に約6年ぶりのキックボクシングの試合をONEで行って勝利するも3月のヨゼフ・ラシリ戦でプロ21戦目にして初黒星。しかし、前戦で“中国最強”の呼び声高いチュー・ジェンリャンに判定3-0で勝利するなど4連勝をマークしていた。  対するカピタンはルンピニースタジアムおよびWPMFの王座を手にしたムエタイの超強豪の一角。2020年9月のONEデビュー戦では、武林風やEnfusionタイトル経験を持つペッタノンに6秒KO勝利を挙げると、2021年1月にはアラヴァディ・ラマザノフもKOで降し、ONEバンタム級キックボクシングの世界王座を戴冠。同9月にメディ・ザトゥーを判定で下し、初防衛にも成功している。  試合前に秋元は、日本人初のスーパーシリーズ(立ち技)のタイトル挑戦について、「この試合はずっと組まれるだろうなと思っていて、もう1年以上前からしっかりと準備をしてきたので、あとはそれを出すだけ」と語り、カピタンについて、「プレッシャーが強い選手で、早いラウンドでのKO決着が多く、調子に乗らせないようにしなければいけない相手。1Rから強いパンチとローキックでガンガン仕掛けてくると思うので、相手の攻撃で下がったらいけない。そのプレッシャーに負けないように、しっかりカウンターを取っていければ」と、その圧力を警戒していた。  そのお株を奪う前進力は、秋元のこれまでの軌跡が現れたものだった。  フルコンタクト空手からキックへ。しかし日本での試合機会に恵まれないなか、「Evolve MMA」のトライアウトを突破し、家族とともにシンガポールに移住した。  ONEで王者になるために、現地で戦う。その選択のなかに、修斗王者で戦極、UFCでも活躍したシアー・バハドゥルザダコーチとの出会いもあった。  戦前「下がらないという部分では、ずっとやってきた空手が活きてくるかもしれない」と語っていた秋元は、「Evolve MMA」でもシアーコーチのもと、5Rをフルに戦い抜くべく、ノンオーらムエタイ勢との練習とともにMMAチームとも合流。フィジカルの強いMMAファイターとも肌を合わせ、ロックダウンもあったなか、バハドゥルザダのパーソナルトレーニングで王座奪取を目指してきた。  勝利コール後、バハドゥルザダと長い長い抱擁をかわした秋元は、「ほんとうに相手が強くてしんどくて、3R目くらいからパンチも強かったです。世界で一番最初にこのベルトを獲りました。シアーコーチと毎日パーソナルトレーニングをして、週3回、5Rずっと前に出続ける練習の成果が出ました。毎日、しつこいくらいに『お前はチャンピオンになるんだ、その日が来る』と言われ、それを信じて戦いました」と戴冠を語る。  5万ドルのボーナスの獲得も告げられると、「頭の片隅に、今日もKOじゃなくて、インタビューとかで『派手じゃないですけど』と言われたりして、今日もほんとうにKOしたかったですし、賞をもらえて評価されて嬉しかったです」と、判定ながら完勝劇が評価されたことを喜んだ。  試合後のバックステージでは、10周年で新設されたベルト、立ち技ファイターの世界的な強豪が集うONEで、日本人が初めてスーパーシリーズで巻いたベルトを肩に秋元は、「本当に重くて……これが今のこのベルトの価値、この重さが価値だと思うので、さらにチャンピオンとしてこれから防衛戦をしていって、もっともっと重いものにできたら嬉しいと思います」と、新王者として語った。 [nextpage] この重さ、これが今のこのベルトの価値(秋元) ──カピタン選手と対戦した率直な感想からお願いします。 「本当にチャンピオンもタフな選手で打たれ強さもありますし、“何とか倒そう、どうやって倒そう”って、5R考えながらやっていたらあっという間に終わってしまって、その結果が評価されるのはとても嬉しいです」 ──ついにベルトを腰に巻きました。 「ONE Championshipが10周年でベルトが新しくなって、そのベルトを初めて巻くことができた。獲ってからでも『日本人初』っていうのがそんなによく分からないというか、そういう感じなんですけど僕がこうやってベルトを獲ったことで、日本で頑張ってる選手とか若い選手に刺激になれば嬉しいと思います」 ──その新しいベルト、随分重そうですが……。 「本当に重くて、これが今のこのベルトの価値、この重さが価値だと思うので、さらにチャンピオンとしてこれから防衛戦をしていって、もっともっと重いものにできたら嬉しいと思います」 ──寝る時はこれを枕に? 「これを枕にはできないので(笑)、今回、母がシンガポールまで応援に来てくれたので、まずは母の肩にかけてあげたいと思います」 ──シンガポールまで応援に来てくれたご両親とは話されましたか? 「試合前に少しだけ会って話して、ホテルのロビーで『頑張って』と背中を押してくれました」 ──家族に伝えたい言葉は? 「ほんとうに父と母には感謝したいし、こうやって自分がいるのは子供の頃からその環境をつくってくれた両親がいて、今は支えてくれる妻がいて、毎日練習行く前に『頑張ってね』と言ってくれる子供がいて。そういうことがすべて力になっていると思います」 ──秋元選手に、チャトリ・シットヨートンCEO兼会長が5万ドルボーナスを表明しました。 「5万ドルのボーナスは狙って獲れるものじゃないと思いますし、試合した結果、自分がいて、コーチがいて、チームメイトがいて、相手がいて、この大会を作ってくれた方がいて、そういったものが全て重なって自分のボーナスに繋がっていると思うので、みなさんに本当に感謝したいと思います」 ──ファンへメッセージを。 「ほんとうに今回のタイトルマッチが決まってからもそうですし、シンガポールに来てからも、たくさんの方がメッセージくれたりして、そういったことがすごく力になって、今回も心が折れそうになったのですけど、心が折れずにしっかり5R、戦い切って、“倒そう・倒そう”という気持ちを出し切って、それがベルトに繋がったので、皆さんに感謝しています」
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