堀口恭司にATTにおける生活について尋ねると、名参謀マイク・ブラウンと並んで名前が挙がるのが現ONE世界バンタム級王者のアドリアーノ・モラエスだ。祖国を離れ、軽量級の世界の頂きを求めてフロリダのアメリカントップチームで出会った二人は切磋琢磨を繰り返し、コンプリートファイターへと進化した。BellatorとONE。それぞれの舞台での大一番を控えた両者がATTで対談! 本誌『ゴング格闘技』NO.319から試合に向けた言葉を紹介したい(text by Horiuchi Isamu)。
──試合を控えたお二人はアメリカントップチームでどのように練習しているのですか。
堀口 次のBellatorバンタム級GPの対戦相手に関しては、自分の場合は(相手のパッチー・ミックスが)寝技の選手じゃないですか。その対策をアドリアーノに助けてもらって。逆にアドリアーノの対戦相手の若松(佑弥)選手は、打撃主体という点では自分と似た部分があるから、彼の練習に自分が入ったりして助け合っていますね。
──なるほど。アドリアーノ選手は、若松祐弥選手とのタイトル防衛戦が控えていますが、彼の印象は?
モラエス とてもいい選手だ。5連勝中で勢いに乗っている。良いベースを持ち、右も強い。前回の試合では寝技の上達も見せた。「タイトル奪取が夢だ」と語るインタビューも見たよ。でもそういった言葉は気にならない。チャンピオンになれば、誰もが自分の首を欲しがるものさ。誰もがタイトルを欲しがる。それがファイターの最大の目的だから。僕はチャンピオンとしてそれを受け止めている。彼の口を封じるために全力を尽くすよ。
──油断できない相手だと。チームメイトの堀口選手から見て、アドリアーノ選手が若松選手に勝つための鍵はどこにあるでしょう。
堀口 それは言えないっすよ。それ言っちゃダメでしょ(笑)。
──ですね(笑)。では言える範囲で、若松選手のことはどう見ていますか。
堀口 そうですね。単発のスタイルは自分に似てる感じですかね。でも打撃のヴァリエーションは多くはないかなと。もうちょっと単純な動きかなって。
──こうすれば勝てるだろう、というのが堀口選手の中にはできていて、それをアドリアーノに伝えていると。
堀口 そうですね。でもやっぱり試合なんで。一発入ればまったく違う結果になることもあるんで、そこは油断しないように。
モラエス ワカマツの右手は重いけど、僕は打撃の技術も彼より上だと思っている。彼に立ち向かい、彼が思ってもみなかったような場所に連れて行くつもりさ。僕の対戦相手はいつも僕を『ノックアウトする』と言っている。彼はその一人に過ぎない。僕は一度もノックアウトされたことがないし、この試合でもそうなるとは思っていない。僕はすべてをかけて彼を追いかける。彼がそのプレッシャーに耐えられるかどうか、見てみよう。サブミッションかノックアウトで、できるだけ早く試合を終わらせるために、現れたチャンスを狙っていくよ。
──なるほど。そして堀口選手の次戦も発表されました。バンタム級トーナメント一回戦、相手はパッチー・ミックスです。早速アップされた動画では、「寝技が強くて、打撃はほぼやらない」と評価されていました。
堀口 そうは言っても、ちょこちょこは打ってくるんですけどね。まあこの試合は一億(円=優勝賞金百万ドル)がかかってるから、死に物狂いで来るでしょうね。
──お金は大きな要素だと(笑)。
堀口 そこで一発もらったりとか、テイクダウンをされないようにしっかり対策したいなと。
──15勝1敗のミックスの唯一の敗戦は、アーチュレッタとの王座決定戦でしたが、ご覧になりましたか。
堀口 見ましたね。
──1、2Rはテイクダウンを奪って寝技で攻め込みましたが、その後はテイクダウンを取れずに立ち技で逆転されてしまいました。
堀口 あの選手もたぶん減量がキツいんですよね。
──確かに。前回の11月のギャラハー戦は勝利したものの体重オーバーでした。
堀口 後半になるにつれて動きが悪くなる面があるんで、そこも考慮して、計画に入れてますね。
──アーチュレッタのように、たとえ序盤は劣勢な場面があっても、そこを凌げばチャンスが来ると。
堀口 ただ、こっちが劣勢になるようなチャンスを与えないようにはしたいですね。
──一本勝ち率はすごく高いですし、ここ2試合は3R目に極めています。
堀口 だからもちろん上手いってのはあるんですけど、相手選手(のレベル)がどうなんだろうって。そんな対応できない選手を極めてきているだけじゃないのって。現にアーチュレッタ相手にはああなったじゃないですか。
──なるほど。そのアーチュレッタ戦では、後半は脇を開けてのしのし歩いて近づいていった印象があるのですが、ああいうのはカウンターを取りやすいと思いますか。
堀口 うーん、強いて言えば打撃の対応ができていないというか。身長があるから顔にはあまりもらわないけど。それくらいですね。
──分かりました。
モラエス ところで君たちに質問があるんだけど、いいかな。
──なんでしょう?
モラエス 今度の『ONE X』は、アジアでは大きなイベントになるって聞いているけど、日本のファンの間ではどのくらい盛り上がっているんだい? シンヤ・アオキ(青木真也)対セクシーヤマ(秋山成勲)のようなジャパニーズレジェンド対決が組まれていたりするよね。
──DREAM時代からのファンは、やはりその試合に注目していると思います。
モラエス ナイス! それを知りたかったんだ。彼はオールドスクール・レジェンドだから、日本のファンには楽しみだよね!
──堀口選手はGP2回戦、あるいは決勝を東京でやりたいという話を、RIZINの榊原CEOがされていたりもするのですが、そこで戦いたいという気持ちもありますか。
堀口 まあやるだけなんで、どこでもって感じです。ただ、もしそれが日本でやれるなら盛り上がるし、いいんじゃないっすか。ベラトール自体も日本のマーケットを開けるし。まあONEとしてはイヤかもしれないっすけど(笑)。
──お互いに盛り上がることが発展につながりますから(笑)。さて、お二人とも本日は長時間にわたって楽しいお話をありがとうございました。最後に次の試合に向けてファンにメッセージをいただけますか。
モラエス ユーヤ・ワカマツを相手にタイトル防衛に臨むことを楽しみにしているよ。僕は決して対戦相手を選ぶことはしないけど、ファンのために素晴らしい試合を見せるためにジャパニーズ・ファイターとの試合が組まれるんだ。日本のファンたちは僕を応援してくれて、メッセージを送ってくれたりポジティブな考えを与えてくれるから大好きさ。『ONE X』で日本のファンを楽しませるような戦いができることを、とても光栄に思っているよ!
堀口 まあ前回不甲斐ない負け方をしちゃったんで、今回しっかり勝っていきたいですね。GPの一回戦なんで、優勝を目指して頑張っていきます。