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6月2日(日)神戸ワールド記念ホールで開催された「RIZIN.16」にて、2年ぶり復帰戦に臨んだ征矢貴(パラエストラ松戸)が1R KO勝利。2016年12月以来、2年6カ月ぶりの白星をRIZINマットで掴んだ。
対戦相手の川原波輝(総合格闘技スタジオSTYLE)は、伝統派空手出身の鋭い打撃を武器にDEEP王者の越智晴雄からダウンを奪うなどの実績を持つが、今大会で元修斗ランカーの征矢は左のロングフックで先にダウンを奪うと、最後はカウンターの右フックでダウンを追加。すぐに右のサッカーキックを追打し、KO勝ちを決めた。
試合後の会見で征矢は、リング上で骨髄バンクドナー登録への感謝の気持ちをマイクで語ったことについて、「僕の大切な人が白血病でドナーが必要だったんです。それで皆さんにSNSで呼びかけたら格闘家や格闘技ファンの皆さんがたくさん協力してくれたので、自分の口からお礼を言いたかった。しばらく表舞台に出ることがなくて言えなかったので、やっと言えたと思います」と説明した。
2017年10月に婚約者が急性白血病で他界。「大切な人を亡くして何もやる気が起きない期間はありました」と、振り返った征矢。さらに悲しみのなか、今度は自身が内臓に炎症ができる原因不明の難病・クローン病を患った。「現代医学では治らない」と言われるなか、今回の復帰戦の地である関西で「東洋医学と出会い」、体調が改善。復帰の手ごたえをつかんでいた。
征矢は「ジムへ行けば頑張っている仲間がいるのが僕にとって大きかった。どんなに辛いことがあっても、ジムに行けばみんなが頑張っている。その姿を見て、その姿があったから僕も諦めないで復帰してやろうって気持ちになれたのかなと思います」と、2年ぶり復帰戦までの道のりを語った。
試合後には、榊原信行実行委員長も「個人的には征矢選手が本当に良かった。(浅倉)カンナと同じ道場でトレーニングを重ね、プライベートな中でのいろいろな苦難を乗り越えて今日の勝利を手にすることができた。彼の生き様が多くの人たちに勇気や元気を届けた。人生には挫折もいろいろな苦労もあるけれど、それを乗り越えていく強い心、信念を持ってやり続けることがまた喜びを手に入れられることにつながるんだ、ということを征矢選手の勝利が教えてくれた」と征矢の復活を祝福。続けて、「その征矢選手と真っ向勝負をした川原選手にも敬意を表したい」と、敗者の健闘を讃えることも忘れなかった。
復帰戦を白星で飾り、リング上で「修斗ファンの皆さん、ただいま」と挨拶した征矢は今後、「修斗でベルトを巻くのが格闘技を始めた時からの目標なので、それは変わらない」としながらも、新たな舞台で「朝倉海選手、トップノーイ選手、中村優作選手と喧嘩したいと思います」と名前を挙げて対戦を希望。会見では、「格闘技を始めた時から、さいたまスーパーアリーナで試合したいという気持ちが強いので、さいたまで今日みたいな試合ができたら最高。そして、地上波生放送に乗るくらい、上の試合をしたいです」と、新たな目標も口にした。
「つらいときはたくさんあると思うけど、一緒に頑張りましょう」と、来場したファンに“一緒に”と呼び掛けた征矢。「日常生活もままならなかった」状況から、周囲の仲間とともに復活を遂げたかつての“新人王”は、艱難辛苦を乗り越え、再び王者を目指す。
▼第4試合 RIZIN MMAルール 5分3R(59.0kg)※ヒジあり
○征矢 貴(パラエストラ松戸)
[1R 4分05秒 KO]
×川原波輝(総合格闘技スタジオSTYLE)
先に川原が石原夜叉坊らと入場。続いて征矢はパラエストラの柔術衣を着て鶴屋浩代表、扇久保博正、内藤のび太らと入場する。
1R、ともにオーソドックス構えから。川原はサウスポー構えに戻す。前手を出す川原に、征矢は左ロングフック! ダウンした川原にすぐにラッシュした征矢は立ち上がる川原にサッカーキックも! しかしガードする川原は背中を預けながら立つことに成功。征矢を突き放す。
左ミドルから左ストレートは川原だが、かわす征矢は遠間からダブルレッグテイクダウン! 両足を束ねサイドを取るがニンジャチョーク狙いの川原にサイドへ。その際(きわ)で川原も立つ!
ヒザ蹴り、右から左ハイで前に出る川原。そこに征矢はオーソドックス構えから左フック! さらに圧力をかけてくる川原にコーナーに詰まりながら、川原の大きな右に、カウンターの右フック!
前のめり倒れた川原に征矢はすぐに右のサッカーキックを追打し、2年ぶりの試合をKOフィニッシュした。
試合後、リング上でマイクを持った征矢は、「修斗ファンの皆さん、ただいま。喋りたいことはいろいろあるんですけど手短に。21年間いろいろありました。ここにいる皆さんも、人生うまくいかないとき、辛いときとかあると思いますけど……一緒に頑張りましょう」と挨拶。
続けて、「朝倉海選手、トップノーイ選手、中村優作選手と喧嘩したいと思います」と名前を挙げて対戦を希望。最後に「骨髄バンクに協力してくださった、すべての方に感謝します」と、パートナーが闘病中に支援してくれた周囲に感謝の言葉を述べた。
征矢貴「ジムの仲間の姿があったから、諦めないで復帰してやろうって気持ちになった」
――2年ぶりの試合を終えていかがでしょうか?
「久しぶりでしたがノビノビ動けた試合でした。今回はそこまで緊張せず、本当にRIZINで試合をするのかって、2年ぶりとは思えないくらい落ち着いて試合ができました」
――それはなぜでしょう?
「本当に練習がきつかったので、それをこなしたから。あれだけやったのだから、あとは試合でやるしかないって気持ちになったおかげだと思います」
――カウンターのタイミングがバッチリでした。
「自分はいつも倒す時は右のカウンターなので。それが得意技です」
――川原選手と戦ってみての印象は?
「(伝統派)空手の選手だったのでもっとステップを踏むかと思っていたんですが、そこまで空手っぽい打撃ではなかったのでやりづらさはなかったです」
――川原選手が「征矢選手のプラン通りに進んだんじゃないか」と言っていましたが、実際はどうですか?
「スタンドの打撃もそうですが、タックルもサッカーボールキックも出したい、という考えで試合をやりました」
――足が腫れているのはサッカーボールキックを蹴ったから?
「人の頭って硬いんだなって分かりました」
――これで復帰を飾ったわけですが、今後は多く試合をしていきたいですか?
「そうですね。59kgであれば1カ月前にオファーをいただいても今日くらいの動きは見せられます」
――試合後のマイクで骨髄バンクのことに触れていました。
「僕の大切な人が白血病でドナーが必要だったんです。それで皆さんにSNSで呼びかけたら格闘家や格闘技ファンの皆さんがたくさん協力してくれたので自分の口からお礼を言いたかったんです。しばらく表舞台に出ることがなくて言えなかったので、やっと言えたと思います」
――今後の目標やプランは?
「格闘技を始めた頃からさいまたスーパーアリーナで試合をしたい気持ちが強いので、今日のような試合がさいたまスーパーアリーナでできたら最高です」
――病気は完治しているんですか?
「自分でもいつまた悪くなるか分かりませんが、僕の病気は現代医学では治らないと言われています。大阪に唯一、その病気を治せると豪語している先生がいるので、藁をもつかむ思いで行きました。そこで東洋医学と出会い、漢方と鍼で劇的に体調がよくなりました。完治したと自分では思っています」
――その先生に向けても勝利してよかったですね。
「先生が見ているか分からないですけど、先生には感謝しきれません。1月くらいまではたまに下血があったので、それは不安でしたが、そんなことを言っていてもしょうがないというのが自分の中であって。2月・3月とかなりよくなって試合をやりたいと言ったら、ちょうどRIZINから声がかかったので不安はなかったです」
――自分の病気と奥様が亡くなられるなど大変な時期があったようですが、それでも復帰を決めたのは?
「大変な時期でした。細かいこと言うと籍は入れていないので、婚約者でした。大切な人を亡くして何もやる気が起きない期間はありました。でもジムへ行けば頑張っている仲間がいるのが僕にとって大きかった。その姿を見て、その姿があったから僕が諦めないで復帰してやろうって気持ちになったのかなと思います」
川原波輝「圧力を感じた中で(手を)出させられた」
――試合を振り返ってください。
「だいぶ効かされました。こんなのは初めてです。何をもらったか覚えていないレベル。悔しい」
――征矢選手はどうでしたか?
「圧力を感じてしまった。今まで体感したことのない圧力でした。あとやはり身体が大きかったですね。向かい合った時に感じました」
――当初はどのようなプランで戦おうと思っていたんですか?
「自分のやりたいことをやるつもりで、スピードで打って離れて、フェイントをかけてパンチを当てる予定でしたが、テイクダウンをとられたし、テイクダウンに来ることは分かっていたんですけれど。テイクダウンは向こうのプラン通りでしょうね」
――カウンターを2度も合わせられるとは意外でした。
「圧力を感じた中で(手を)出させられたって感じです。あんな風にもらうこと今までなかったです。プレッシャーをかけられて後手後手で下がってしまい、向こうのプラン通りにやられてしまいました」
――今後はどうしていきますか?
「楽しかったです、RIZINは。自分からタックル行く気はなかった。でも相手は勝ちに来ていた。自分は盛り上げる方がいいと思っていました。自分は体重差がある中で盛り上げることの方が大きかったです。向こうのプラン通りにハメはめられた感じですね。テイクダウンをもらったらキツい。それは分かっていたんですが、向こうの思い通りにやられた感じでした」
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