2022年3月26日(土)にシンガポール・インドアスタジアムで開催される、ONE Championship10周年記念大会「ONE X」にて「青木真也vs.秋山成勲が決定」の韓国・中央日報のニュースを受け、秋山が「まだサインしてないぞーーーー!!!^_^」と絵文字つきで反応した。
青木と秋山の対戦交渉の過程は、これまでも両者の間で口論となっていた。
2021年10月の「Road to ONE: 5th Sexyama Edition」でグラップリングマッチを戦った青木は、試合後、マット上で、「9月6日に俺にオファーが届きました。オイ、お前(放送席の秋山に)何で(試合を)断ったんだよ。笑いごとじゃないんだよ、何とか言えよ! 嘘を付くんじゃねぇよ」と秋山に直接問いかけている。
解説席にいた秋山は、「断った理由として筋肉を断裂して……」と言うと即座に青木は「関係ねえよ」と否定。
秋山は「先生の判断など色んな選択肢がありましたが、私も断るのが億劫で、やはり試合でリングに立つのが格闘家としての在り方だと私は思います。苦渋の選択として、そういう判断をせざるを得ない状況で、色んな検査を受け、もちろん周りの人に迷惑をかけたことは十分に分かっております」と続けると、青木は「だから何だよ。2カ月あればやればいいじゃないか。お前の言うことは正論だろ。お前がやる気あるならやれよ、『格闘技を盛り上げる』なんて綺麗事で、ONEと一緒だよ。オメエに覚悟あるんだったらなやってみろよ」とバッサリ。
秋山は「もちろんやらないという選択肢はない。当たり前のようにやるつもりでいるし」と答えると、青木は「はっきり言ってやるよ。オマエにそんな時間ないんだよ」と一刀両断。「俺は何があろうと、目の前にあることを一生懸命にやってやります。青木真也を貫いて、一生懸命生きていきます」と語り、ケージを後にした。
放送席で秋山は、「最高のパフォーマンスを見せるために準備をしてきたつもりが、いろんな結果を生みました。青木選手が言ったように、私が断ったのは事実であり、そこは申し訳ない気持ちでいっぱいですが、人に対して“テメエ”だの、失礼なことを言うこと自体、格闘家以前に、人として良くないと思うのでそこは改めた方がいい。私は彼よりも年上で、彼に対してちゃんと敬語を使っています。格闘家はそういう言葉を出すから、野蛮だと言われる。相手をリスペクトをして、自分の仕事、練習をしっかりして試合に臨めばいいというのが私のスタンス」と、あらためて青木とのやりとりを語った。
その上で「まあ、『待ってろよ』と。10年近く俺とやろうと言っていて、俺のことが相当好きなんでしょう。だから変なストーカーに目を付けられたなと。ストーカーを倒す、その時間はもうすぐ来るんじゃないんですか」と、怪我を治しての青木との対戦に前向きなコメントを残していた。
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この試合には日本格闘技の歴史がある(青木)
青木は、2022年1月29日にSNSに「試合のオファーがきた話 1月23日に書いた気持ち素直な気持ち」を投稿。
「試合合意書」にサインしたことを明かすと、対戦相手には触れず、「試合当日に『青木真也』でケージに立っていることが大事」といい、「この試合には10年を超える日本格闘技の歴史があって、ただただ消費されていくカードではないと思っています」と、実現への思いを語っている。
青木は、DREAM時代に秋山に対戦要求したことがある。
【写真】スタンドバックからアオキロックで足を絡め、引き込んでフェイスロックからチョークを極めた。 2008年7月に「DREAMライト級(70kg)GP」で準優勝となった青木は、同年9月にトッド・ムーアをわずか70秒、フェイスロックでのリアネイキドチョークでタップを奪い一本勝ち。リング上で「秋山“マイケル・ジャクソン”成勲先輩、この大黒柱と試合をしませんか?」と対戦を呼びかけ、翌日の一夜明け会見でも「やらせてもらえるんであれば、僕は正々堂々と戦います」と対戦をアピールした。
【写真】DREAM最後の試合は道衣着用して戦った秋山。この後、UFCに参戦した。
当時の秋山は、8連勝で迎えた2006年の大晦日の桜庭和志戦のノーコンテスト後、デニス・カーンを1R KOに降し、2007年大晦日の「やれんのか!」で三崎和雄と対戦。サッカーキックで敗れたものの、後に反則の体勢だったことからノーコンテストとなり、その後、柴田勝頼を袖車絞め、青木がムーアを降した同日にもミドル級(84kg)で外岡真徳を腕十字で極めていた。
一夜明けてのあらためての青木の対戦要求に、会見に同席していた秋山は、「正直に言わせてもらうと、興味ないです。今は吉田(秀彦)先輩にしか目は行ってないので、そっちのほうに集中したい。(吉田戦を)やることに意味があると思っているんで」と眼中にないと返答。
“DREAMの大黒柱”を自負していた青木は、「今、青木真也は正直、悔しい気持ちで一杯です。DREAMが3月からスタートして、僕は一生懸命やってきた自負があります。でもそこで他団体の選手の名前を出されたり、DREAMでやりたいと言ってもらえないのは悔しい。自分はこの気持ちを持って、世界を見て魅力的な選手になります」と、秋山の対応に失望の表情を見せていた。その後、秋山は戦場をUFCに移し、夢のカードは実現不可能となっていた。
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ONE独自の階級システムにより、対戦の可能性が生まれた
現在はともにONE Championshipを主戦場としており、階級が異なる両者だが、ONEの水抜き禁止の独自の階級システムにより、同じライト級(※77.1kg)で対戦の可能性が出てきた。
MMA47勝9敗1NCの青木真也は、 2015年に78kg契約で桜庭和志に一本勝ち。ONEでも2021年1月に元LFAウェルター級(※水抜きあり前日計量の77.1kg)王者のジェームズ・ナカシマとONEライト級で戦い、1R、ネッククランクで一本勝ちするなど、階級上の選手から勝利を挙げている。2021年4月の前戦では、エドゥアルド・フォラヤンとの3度目対戦で1R 腕十字による一本勝ち。38歳にして4連勝をマークしてる。
一方の秋山は46歳でMMA15勝7敗2NC。2015年11月のUFCでアルベルト・ミナにスプリット判定で敗れた後、2019年6月に3年7カ月ぶりにMMA復帰。ONEデビュー戦でアギラン・ターニに判定負けしたものの、2020年2月の前戦でシェリフ・モハメドに1R、右フックでKO勝ちしている。
ONEは、2022年3月26日に10周年記念大会となる「ONE X」を予定しており、チャトリ・シットヨートンCEO兼会長は、さらなる日本人選手の投入を予告。RIZINでのホベルト・サトシ・ソウザ戦の交渉もあった青木だが、秋山へのアピールから13年ごしの対戦が決まれば、日本の格闘技の歴史と両者の軌跡が交錯する試合になるだろう。
前戦ではONEウェルター級(※水抜き禁止の83.9kg)で戦っている秋山にとって、かつてのウェルター級とは異なる水抜き禁止のライト級(77.1㎏)は厳しい減量となる。
「まだサインしてない」という秋山成勲と、サインをした青木真也の試合はどうなるか。本誌の取材では、体重含め、正式決定はこれからという最終段階にあるようだ。
3月26日の「ONE X」まで50日。DREAMカードは実現するか。