フェイスオフでついに向かい合った那須川と武尊
RISE世界フェザー級(57.5kg)王者・那須川天心(TARGET/Cygames)とK-1スーパー・フェザー級(60kg)王者の武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)が、2022年6月に対戦することが12月24日(金)都内にて行われた記者会見で発表された。
会見には両選手と榊原信行RIZIN CEOが出席。以下、その全文の第二弾。
――榊原CEOにお聞きしたいのですが、このタイミングの発表になったということで、言える範囲で結構なんですけど、どこが障害で、どこがクリアになって発表に至ったというところは、どのへんでしょうか。
榊原 まあ、天心の表現でいうと、ディズニーとユニバくらい違いますからね。まあ当然、そしてこれだけの選手が対戦するわけですから何百かある。これは顕在的なことも含めてです。僕らなんかもそうですけど、当然選手は看板を背負ってやってるわけだし、そこには誇りも、こだわりも、奪われたくない地位も名誉も全部かけて戦う。そういうものを一つずつ、お互い歩み寄っていくうえでいえば、時間がかかったなと。
でも、本当に関係各位の人には感謝しかないんですけど、こういう形で私に重責を担わせていただいて、発表させていただけることに、非常にK-1の関係者、矢吹オーナー、関さんを含めて、ご尽力いただいてここまで来ましたし、RISEの伊藤隆代表を含めて、チーム天心にもいっぱいたくさんご無理を言って、譲っていただいて、調整がついた。そのためには必要だった時間かなと、そういうふうに思います。
――両選手に、先ほど確定と発表されたルールと体重について感想というか、気持ちをお聞かせください。
武尊 この体重で決まったので、僕はもうそれに合わせて身体をつくるだけかなと思っています。ルールに関しては、いつもやってるルールと違うルールなので、そこもあと半年あるので、それに向けて自分で調整していく感じになるんですけど。あと、ラウンド数とかはこれから決まると思うんですけど、僕は正直、この試合の判定とか、ドローとか、そういう結果はいらないと思うので、僕は延長無制限ラウンドでやりたいと思ってます。
那須川 まあ本当、いろいろありましたけど、決められたことをやるだけなので。お互い、この階級が適正階級ではないというのは、もう5年前の時点で、階級は違ってはいたんですけど、本当もう、ファンだったりとか、応援してくれる人がすごい後押ししてくれましたし。話は戻っちゃうんですけど、この試合をやるにあたって、本当にたくさんの人に感謝しなきゃいけないと思いますし、やっぱり一番はファンのためというのもありますし。関係者とか、いろいろな、周りの身近な人たちとか、チームの人とかもいるんですけど、本当に全員が全員心からこの試合を見たいというのじゃないんだなというのを、交渉の時点ですごい感じて。みんなやっぱり自分で自分を守ったりとか、自分の権利だったりとか、自分の思いだったりとかっていうのを、どんな状況でも大事にしたいんだなということもわかりましたし。
そういう人たちがいた中でも、でも、自分を信頼してくれる人というか、自分のことだけを本当に思ってくれている人もたくさんいたので、その人たちのために。あとはファンのためにというか。で、あとは、やっぱりこの試合を行うことで、これからのキックボクシング、すぐ発展するかといったら、そうではないと思うんですよ。このカードをやってしまうことで、ここから盛り上がりがもっと上がるかといったら、正直それはないとは思うんですけども、これを見て、僕は昔、K-1を見て、キックボクシングを始めようと思ったので、この試合をやることで、そういうふうに思ってくれる人が1人でも2人でもいればなというか。まあたくさんいると思うので、子どもたちのために、未来のある子どもたちのために、僕はこの試合をやろうと思ってますし。
あとは、僕は23で、まだまだ新卒の年でというか、最近の若者はとか、ゆとり世代はとか、Z世代はとか、けっこういろいろいわれるんですけど、いやいや、そんなの関係ねえぞと、見てろよと。世間に知らしめたい。俺は若者代表だということで。そういった部分をしっかりと周りに見せたいたいなと思っています。
――両選手に、相手よりもどの部分が自分が勝っていて、相手のどういったところに警戒する戦いになると今のところイメージしているでしょうか。
武尊 天心選手も素晴らしいファイターで、世界でもトップのコンプリートファイターだと思うので、僕は本当に、今までの試合もそうですけど、どれだけ自分より優れている選手だったとしても、僕は気持ちで負けなければ絶対勝てるというのを自分の身体で体験してきたし、自分の身体でそれを証明してきたので、そこに絶対的な自信があるし、僕は気持ちの部分では世界中どの選手にも負けないと思ってるので、そこがあれば必ず勝てると思います。
那須川 警戒している点としていえば、圧力だったり、一発のパワーだったり、階級が上なので、僕より全然圧力はあると思うんですけど、そこはしっかりと対策してというか、自分のやりたいことをしっかりやろうかなとは思いますし。あとは、勝っている点としてみれば、いっぱいあるんですけど、マインドですかね。
――マインドというのは、もうちょっと噛み砕いて説明していただけると。
那須川 まあそこは雰囲気で。
――武尊選手だったら気持ちというのと、また違うところですか?
那須川 まあそこは受け取ってもらえれば。
――武尊選手に質問なんですけど、ここまでずっとなかなか決まらない間、サウスポー対策の練習というのをされてきましたが、その中で、いよいよ新しく見えてきたものとか、試合をしていない間の自分の成長の手応えの部分というのはどういったところがあるでしょうか。
武尊 対策はどの選手とやるときもやるんですけど、天心選手は本当特別な相手だと思うので、しっかり対策をやって。本当は僕は大晦日に照準を合わせてやってたので、むしろここから半年、また天心選手対策、天心選手との試合に向けた練習ができるというのを、それをプラスに考えて、もっと強くなって、リングに上がりたいと思います。
――武尊選手に、この試合をずっと望まれていて、年齢的にもだいぶ終盤なのかなという試合なのですが、この試合がラストマッチという可能性もあり得るのでしょうか。
武尊 僕は毎回そのつもりで試合に出てるので、1回でも負けたら引退すると決めてこの何年もやってきているので、毎回その気持ちでやっていますけど、年齢的にもと言われるんですけど、僕は今が全盛期だと思ってるので、今が一番強いです。
――先ほどから、両陣営の立場だったり価値観、考え方、いろいろあって取りまとめでここに至ったという話があったと思うのですが、それを取りまとめる立場として、榊原さんは、両選手の思いだったり、こだわり、信念で大切にしたところ。両選手に対しての質問は、この合意に至るまでで、自分の価値観だったり、生き方だったり、そういうので、これは絶対譲れないというところをちゃんと認めてもらったので合意に至ったという、その譲れない部分というのをそれぞれ教えていただければ幸いです。
榊原 それぞれ両選手に、本当に背負ってるものが多いんですね。だから、この試合をすることで犠牲にするものをなるべく少なくさせてあげたい。実りのあることもたくさんあれば、この試合をすることによって失うものもある。例えば那須川天心選手でいうと、本当は4月に(キックを)引退するはずだったんです。その引退期間を、これも関係各位、当然もうボクシングに行くと表明しているので、ボクシング関係者、さっき天心も言いましたけど、そういう人たちに理解をしていただいて、キックの卒業の時期を延ばすこととかも含めて。
これは天心にとってはダウンサイド(否定的側面)のことかもしれない。ただ、やっぱりいろいろなものを背負って戦うに値する環境を整理をする。選手がそれぞれそこまでしてでもやっていこうと思ってもらえるものを整えていくというところに、一番僕もこだわりましたし、選手の思いとしてもそこにかけてみようと思ってもらえることができる状況がようやく整った。これは多くの、先ほどのご質問にもあったように、関係各位の人たちの深いご理解とご協力があってたどり着けたというところかなと思います。
武尊 僕がこの試合、さっきも最初に話したんですけど、この試合を実現するにあたって、どっちかの団体が落ちちゃったりとか、格闘技界が落ちちゃったりとか、そういうふうになったらこの試合をやる意味がなくなってしまうと思うので、そういう意味で、誰も傷つかないというのは難しいとは思うんですけど、それに一番こだわってじゃないですけど、この試合が熱望されてから、K-1が悪く言われたところもすごいあったし、逆のこともあったと思うし。そういうふうに、せっかくこんなすごい最高のカードができるのに、格闘技界が悪いイメージになっちゃうのがすごい嫌だったので、このことで、K-1ファイターたちにもすごい迷惑かけたなと思って。僕の試合のことでK-1が悪く言われて、K-1ファイターたちは、たぶん自分のことじゃないのにそういうふうに言われたりしたことは、たぶんすごい悲しかったと思うし、悔しかったと思うし、それが僕は一番きつかったので。今日こうやって実現できたことで、そういうこともなくなるのかなと思うし。
一番実現するにあたって、僕がこだわってたというのは、そこですかね。RIZIN、RISE、K-1、他の団体全員が、みんなで上がるための試合にならないと意味がないと思うし。そこが一番こだわっていた部分ですかね。あと、さっきこの試合が終わったら格闘技界が1回下がるって(那須川が)言ってたんですけど、全然そんなことないと思ってて。今、僕と天心選手以外にもすごいいい選手たくさんいて、(自分たちが)いない大会でもすごい盛り上がってるし。僕らの試合が終わった後、この試合を見た人が、たぶん格闘技面白いって気付いてくれる人がすごいたくさんいると思うんですよね。その人たちが、僕らの試合だけじゃなくて、K-1だったり、RIZINだったり、RISEだったり、いろいろな団体の選手、また新しくファンになって、格闘技界がもっともっとでかくなってくると思うので、そういう試合になると思ってます。
那須川 そもそも僕は4月でRISEをというか、キックボクシングを引退するというふうに言ってたので、元々の話だと今年の6月にあるという、中立の舞台があるというふうにほぼほぼなってたんですけども、それがなくなってしまって、じゃあ大晦日となったんですけど、大晦日は僕がRIZINにめちゃめちゃお世話になってますし、恩返しをしたいというので、RIZINでしか試合をしないと。大晦日はRIZINのファンの皆さんに本当申し訳ないというか、しっかりと卒業するという姿を見せたいというのがあって、こういうスケジュールになったんですけど、じゃあそれでないのかと思ってたんですけど、榊原さんから、引退を延ばしてくれみたいな提案が来て。まさかそこでそれ来るかとは思ったんですけど、本当しつこいなというか。その発想ないよね、というのがすごいあって。
自分の中でも非常にこう思ってたんですけど、でもみんなが見たいと思ってくれてるし、いろいろな関係者さんにも迷惑をかけてもいますし、そこの部分申し訳ないなということで、いろいろな、そこから調整に入って、やっと決まったという部分なんですけども。譲れないというのは、やっぱ自分の試合のスケジュールもそうですし、あとは、自分のファイターとしての気持ちというか、やっぱ強い相手と戦いたいというか。ここ最近ずっと僕は試合をしてはいるんですけど、立場的にずっとチャンピオンで、ずっと挑戦者を受けて受けてということがすごい多かったんですけど、というか、それしかなくて。なかなか周りも、どうせ勝つしみたいな。KOできなかったら、大丈夫か? みたいなすごい言われたりとかして、モチベーションが上がらない中、こういった試合が、武尊選手との試合が決まって、僕のモチベーションも、立場的には、これはどうかわからないですけど、自分、久々にチャレンジャーというか、やってやるよという気分になりましたね。
あとはやっぱり、武尊選手も言ってたんですけど、K-1だったり、RISEだったり、RIZINだったり、そこが誰も下がらない。プラス、僕はこれでキックを引退するんですけど、平和でいこうよと思いますね。いろいろ交わらない団体がやっとここで交わるし、団体だけじゃなく、放映権とか、放送の問題とか、フジテレビ、ABEMA、全て仲良くしてピースでいこうよと僕は思います。そういういがみ合ってるのとかなしにして、ここでしっかりと全部を整えて、僕は置き土産として、しっかりと試合をして勝って、キックを去りたいなと、そういう気持ちはあります。(続報あり)