MMA
インタビュー

【RIZIN】朝倉海「勝てれば身体はどうなってもいい。年明けは病院で迎える覚悟」×宮田和幸「“何してくるか分からない朝倉海”で戦える」

2021/12/15 16:12
 2021年12月31日に、さいたまスーパーアリーナで開催される『Yogibo presents RIZIN.33』にて「RIZINバンタム級JAPANグランプリ準決勝&決勝」に臨む朝倉海(トライフォース赤坂)が、BRAVEジムでのレスリング出稽古を公開。 「勝てれば身体はどうなってもいい。年明けは病院で迎えるつもり」と必勝の覚悟を語った。また本誌の取材にシドニー五輪フリースタイル63kg級日本代表の宮田和幸BRAVE代表は「この練習は、朝倉海を年末RIZINで優勝させるのがテーマ。優勝してくれると思います」と太鼓判を押した。 朝倉海は立ち上がり能力も高い、カレッジレスリングを採り入れている(宮田)  トライフォース赤坂とBRAVEジムの合同練習がきっかけだった。  宮田代表率いるBRAVE勢が赤坂に出稽古し、プロ練習を開始、グラップリング部門の強化が図られた。2021年3月にスタートした両ジムの交流から、バンタム級GPファイナルに向け、朝倉海がレスリング強化のために、BRAVEジムへの出稽古も追加。  現在は赤坂での朝練習と千歳船橋のBRAVEと、週2回、宮田代表から指導を受けている。 「2カ月前くらいから、トラフォース赤坂での朝練習以外にも、打撃一辺倒のスタイルから、『カレッジレスリングやスクランブルも学びたい』という海くんの要望を受けて、BRAVEでも練習を行うことにしました」とその経緯を宮田代表は語る。  動画では、BRAVEの強豪レスラーで、現GRADIATORフェザー級王者でレスリング国体3位の実績を持つ原口央、さらに、2019年の全日本選手権フリースタイルレスリング70kg級王者の原口伸とのスパーリングを公開。  原口伸に右ストレートを入れ、伸のダブルレッグを差し上げて体を入れ替える場面は圧巻。原口伸は「次元が違いました。最初、右ストレートが分かっていてもらってしまった。さすがトップの人なんだなと」と感嘆した。  続く原口央とのスパーでは、朝倉のジャブから右ストレートの打ち終わりに、素早く前足にシングルレッグに入った央。その組み付きに、朝倉は片ヒザを着いて回転してすぐに足を抜いて見せる。  続くダブルレッグも後方に両足を飛ばしてスプロール。央に引き込みを余儀なくさせている。立ち上がった央がダブルレッグで壁に詰めて、尻下でクラッチしてテイクダウン。11月の「VTJ2021」で宇野薫をドミネートした得意の形──両足で相手の片足を挟んで伸ばしての崩しにも、すぐに朝倉は上体を壁で立てて足を抜き、バックを譲ることなく立ち上がることに成功している。  原口央は、「滅茶苦茶腰が強いです。倒されてからの対応がもの凄く上手くて、普段だったらあそこのコントロールが得意なんですけど、まったくその形にさせてくれなかった。力を滅茶苦茶使ってバテバテです」と朝倉のケージレスリングを賞賛した。  朝倉の組み技について、本誌の取材に宮田代表は2つの大きな進化を挙げる。ひとつは、さらに磨きがかかったテイクダウンディフェンス。もうひとつは、朝倉海から仕掛けるテイクダウン能力の高さだ。  ひとつめのテイクダウンディフェンスでは、いま朝倉海を相手に、フェイントや打撃の圧力、崩しがないタックルはほぼ切られると言ってもいい。さらに、もし倒されても、そのリカバリーに長けている。 「もともと身体の柔らかさと、強い体幹からくるバランスの良さで、ぎりぎりで倒されない強さがあった上に、オリンピックレスリングでいったらポイントになる倒された形でも、そこからの立ち上がり能力が高い。もともと身体の使い方が上手だったけど、感覚でやっていた。その良さも壊さず、カレッジレスリング的な専門的なテクニックも教えています」と宮田代表はいう。 [nextpage] やられた技は絶対に自分のものにする。それが一番手っ取り早く強くなれる(朝倉)  10歳からレスリングを始め、全日本レスリング選手権を3度制している宮田代表は、土浦日大高校時代の米国遠征で初めてカレッジレスリングに触れたという。 「上位入賞者だけが行く高校生の米国遠征で、1カ月間ほどミシガン州に行って、日本選抜対ミシガン州の強豪との試合を続けて、そこでの練習でカレッジレスリングの動きに興味を持ちました。ルールがころころ変わることなく、いつまでも見ていられるルールだし、米国ではすごく人気が高い。コントール重視でスクランブルがMMAに向いていました」  オリンピックレスリングとの大きな違いは、エスケープ・ポイントが設けられていること。  下になっている選手が上になると、テイクダウンと同じだけポイントが入るため、テイクダウンされても抑え込まれず立ち上がることが有効となる。またパーテルポジションで下を選んでも立って向き合い、離れるとポイントが入る。  さらに抑えている時に腕をクラッチすることが禁じられているため、ボディで相手をコントロールする必要があり、MMAになれば、相手の腕をクラッチする代わりに相手の胴などを抱え、空いた手でパウンドを入れることが出来る。そういった点が、MMA向きと言われるゆえんだ。  上半身だけのグレコローマンよりもフリースタイル、フリースタイルよりもカレッジレスリング=フォークスタイルレスリングが、よりMMAでは重視されている。  そのなかで宮田代表は、「MMAはフリーとグレコの狭間、“グレコ・フリー”が出来ると良い」といい、そこに打撃とサブミッショングラップリング(寝技・関節技)、カレッジレスリングのスクランブルなどが「融合」しているのがいまのMMAだ。  もちろんレスリングのみならず、ボクシング、ムエタイ、空手なども同様に個々の競技で通用するハイレベルな技術・武器を持たないとトップに上がれないのが「世界」で、その割合が選手によって異なるところが多様なMMAの醍醐味と言える。  朝倉がその習得を望むのは、GPで勝つためだけではなく、海外勢との戦いを見据えてのものでもある。 「海外でやるなら米国はレスリングが標準装備だから、米国に行って戦うときに、もし打撃で互角や劣勢になったとき、ラウンドマストのジャッジのなかでテイクダウンは必須」と、宮田代表は語る。  この日の練習でもシングルレッグでの足の抜き方、離れ方などもカレッジレスリングの動きをMMA用にアジャストさせてアドバイスした宮田代表。  朝倉は、「宮田さんに教えていただけるようになってからレスリング力がかなりつきました。身体の力だけでやっていたのが、理屈として分かるようになった。スパーリングとかを見てもらって、その都度教えてもらえる。すぐに修正して強くなれる」と、BRAVEでの練習の成果を語る。  宮田代表も「このあいだ教えたがぶりとかもすぐにやっていて驚いた。久保(優太)君もそうだけど、教えがいがある。やったことを反復してから(出稽古に)来てるのか、ほかで試してから来てるのか」と朝倉の取り組みを評価する。  2020年4月の『Road to ONE』では、現LFAファイターの田中路教とのグラップリングマッチで、上からのみならず下からの仕掛けも見せて周囲を驚かせている宮田代表との直の練習も、朝倉の引き出しを増やしている。 「宮田さんにやられてから、帰り道でずっと反省して、なんでやられたのかを考えて、動画を見直して、やられた技は絶対に自分のものにしようと思っています。それが一番手っ取り早く強くなれる。かなりレスリングの技術も向上してきました」と手応えを語る朝倉に、宮田代表も「やりこんでるからね」と目を細める。 「自信を持って戦えます。同階級の日本人だったらまず負けないなと」という朝倉に宮田も「テイクダウンできないものね」と同意。「ほぼされないです」と朝倉は自信を見せた。 [nextpage] 試合で自分からテイクダウンに行ってもいい(朝倉)       朝倉海のもうひとつの進化がテイクダウンだ。  動画では見せていない、朝倉海のテイクダウン能力はいかなるものか。 「最初、海君にはテイクダウンディフェンスを教えようと思ったんだけど、なんだかんだ言って一番強いのはテイクダウン。KOする気持ちが高いから、これまで見せていないだけで、ウチのレスラーも倒されてますよ」  それは打撃が混ざったなかでのニータップなどのテイクダウンなのか。 「それが海君は、打撃無しの組みだけでもテイクダウンが取れているので、打撃が混ざってるなかではより効果的だと思います。組んでからも強いし、四つになっても強い。そこでは相撲の経験も活きている」と宮田代表は、その進化を語る。  朝倉も「最近は自分から倒す、テイクに行く方法も覚えてきた。試合でも自分からテイクダウンに行ってもいいかなと思っています。トータルでMMAとして自信を持って戦える」と、これまであまり見せていない、朝倉からのテイクダウンもバリエーションのひとつとなっていることを明かした。  一方、準決勝の対戦相手の瀧澤謙太は、朝倉海がテイクダウンを仕掛けてくることは「全然ありえる」と想定しながらも「ニータップでテイクダウンを取られたことはない」と豪語しているが、宮田代表は「テイクダウンがあると打撃も当たる。打撃だけだと思われてるけど、実際はテイクダウンも寝技も出来る。寝技はみんな見たことないだろうから、これからはテイクダウンもありで、“何してくるか分からない朝倉海”で戦えるね」とお墨付きを与えた。  それでもなお、朝倉は伸びしろばかりだという。 「僕、まだまだだと思うので、いろいろ直さなきゃいけないところがたくさんあるので、1回の練習で覚えることがたくさんあって、でも日々、成長を感じられてるのでほんとうにありがたいです」と目を輝かせる。 「世界」を知る強豪が残ったGPベスト4。 「朝倉海を年末RIZINで優勝させるのがテーマだけど、年末は2試合、そのためにも武器の多さは力になるはず。しかし、1日2試合って出来んの?」と宮田代表は問う。  朝倉は、「未知の世界なので、そこは怖さはありますけど、もう勝てれば身体はどうなってもいいかなと思っていて、年明けは病院で迎えるつもりで、それくらいの覚悟でやろうと思っています」と不退転の覚悟を語っている。
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