シンガポール・インドアスタジアムで2021年10月29日に事前収録された「ONE Championship: NextGen 2」が11月12日(金)、配信(ABEMA 格闘チャンネルとONE Super App)された。
第2試合では、“野生獣”の異名で知られる日本の手塚裕之(ハイブリッドレスリング山田道場/TGFC)が、ウェルター級世界王座挑戦経験を持つアギラン・ターニ(マレーシア)と、通常より重い86kg契約で対戦。3Rにターニのハイキックで両手をマットに着いた手塚だが、逆襲のフックでTKO勝ちした。
メインイベントでは、ONEムエタイ・バンタム級1位のコンテンダー、セーマペッチ・フェアテックスが、初参戦のリッテワダ・ペッティンディーを迎え撃つ。リッテワダは90勝25敗5分。ルンピニースタジアムで戦い、WMCムエタイ世界タイトルも持つ。勝者は王者ノンオー・ガイヤーンハーダオの次の挑戦者となる可能性がある。
ONE Championship: NextGen 2
▼第6試合 バンタム級 ムエタイ 3分3R×セーマペッチ・フェアテックス(タイ/1位)[2R TKO]〇リッテワダ・ペッティンディー(タイ)
セーマペッチは7チャンネルTVマッチを主戦場とし、2017年頃からは海外選手との戦いが主流となる。ONEには2018年7月から参戦。2019年11月にONE Super Seriesムエタイ世界バンタム級タイトルにも挑戦したが王者ノンオーに4RでKO負け。2020年のバンタム級(※65.8kg)ムエタイトーナメント準決勝でロートレックを判定2-0で降したが、怪我により決勝戦を欠場。2021年5月にはそのトーナメント準優勝のクラップダムと対戦、1R2分7秒で左ボディストレートによるKO勝ちを収めている。戦績は123勝16敗1分。
リッテワダはONE初参戦。戦績は90勝25敗5分。ルンピニースタジアムで戦い、WMCムエタイ世界タイトルを獲得してきた。アマチュアボクシングでは五輪代表候補にもなっているという。
1R、サウスポー同士。攻撃を先に仕掛けるのはリッテワダでジャブ、前蹴りを出しつつワンツー、左ロー。リッテワダはバックスピンエルボーを繰り出す。しかし、セーマペッチはリッテワダの前蹴りをキャッチすると、引き付けながらの左フック、そして右フックでダウンを奪う。前に出るセーマペッチがジャブ、右ロー、そして一気に踏み込んでの左ストレート。
2R、やはり踏み込んでの鋭いワンツーを見せるセーマペッチ。左ボディからの右フックでもリッテワダをフラつかせる。リッテワダは前蹴り、ジャブで突き放しに行くが、セーマペッチはまたも蹴りをキャッチすると引き付けながらの左ストレート。リッテワダは左ヒジで飛び込み、これでカットに成功して流血に追い込む。パンチを打ちに来たセーマペッチにもう一度左ヒジ。
セーマペッチはドクターチェックでストップとなり、リッテワダがTKO勝ち。初参戦でいきなりランキング1位を降す番狂わせを起こした。
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▼第5試合 フェザー級 5分3R〇タン・カイ(中国)[1R 4分03秒 KO]×ユン・チャンミン(韓国)
MMA12勝2敗のタン・カイはONEで4連勝(MMA7連勝)中の強豪。ONEではイ・スンジョン、エドワード・ケリー、ケアヌ・スッバ、2021年3月の前戦では高橋遼伍を右ストレートで1R TKOに降している。
対するユン・チャンミンはMMA5勝1敗。『格闘代理戦争』出身でONEデビューから4連勝も、2020年11月に高橋遼伍に2R TKO負け。2021年6月の前戦でマ・ジウェンにリアネイキドチョークで一本勝ちし、再起を遂げている。
1R、ともにオーソドックス構え。右を見せながらシングルレッグに入るチャンミンだが、足を抜いて切るタン・カイは右ローを当てる。シングルレッグを餌に右オーバーハンドを狙うチャンミン。
しかし、タン・カイは左手を前に右ボディストレート、左ストレートも! 前足を触りに行くチャンミンだが遠い。
ワンツーで詰めるタン・カイは得意の左ハイを見せる。さらにじりじり圧力をかけるタン・カイは内側を突くジャブから一転、左ロングフック! アゴにもらったチャンミンが後方に崩れ、パウンド。タン・カイがONE5連勝を決めた。
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▼第4試合 フェザー級 キックボクシング世界GPリザーブマッチ 3分3R×ジャン・チャンユ(中国)[判定0-2]〇ドビダス・リムクス(リトアニア)
第3試合に続き、10月に開幕したフェザー級キックボクシング・ワールドグランプリの欠場選手が出た場合のリザーバーを決める一戦。
WPFM世界王者のチャンユはジャン・チェンロンの兄。2019年7月にはKrushに来日経験があり、加藤虎於奈からダウンを奪って勝利を収めている。2020年10月のONEではサゲッダーオ・ペットパヤタイと対戦も判定で敗れた。12月にはアンディ・サワーにも判定で敗れるなどトップとの壁にぶち当たっている。戦績は42勝15敗3分。
リムクスはONE初登場。7勝(4KO)無敗で今回が8戦目。椅子に座って登場し、王様のような演出で入場する。
1R、独特な動きでジャブ、左ボディストレートを繰り出し、左へ回り込むリムクス。ジリジリと前へ出るチャンユだが、リムクスのジャブと右ストレートに距離をとられる。リムクスはバックステップも使う。踏み込むと一気に左右フックを繰り出してすぐに離れるリムクス。
2R、ジャブを伸ばすリムクスに右ローを蹴るチャンユ。右ローを蹴るチャンユにはリムクスが右ストレートを伸ばしてくる。チャンユが右ストレートを繰り出すとリムクスはフックの3連打を返す。ノーガードやカモンゼスチャーのリムクス。ローを蹴って右足を痛めたか、下がるチャンユにリムクスが左右フック連打。しかし、チャンユが右フックを打ち返すとリムクスは下がる。チャンユの左フックにダウン気味に倒れるリムクス。
3R、右ローを蹴っていくチャンユが前に出る。リムクスはノーガードで回り込みながら前蹴り。チャンユがパンチの距離に入るとリムクスは3連打。チャンユの右ローに足を上げ始めるリムクス。必死にパンチを打ち返していくも、明らかにローが効いた様子。リムクスは前蹴りを連打するが、足を下したところにチャンユが右ロー。最後はチャンユがパンチで前へ行くも、リムクスも左右フックを打ち返してチャンユも攻め込めない。
判定は2-0でリムクスの勝利。ローキックのダメージよりも、左右フックをまとめた手数を取ったか。
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▼第3試合 フェザー級 フェザー級 キックボクシング世界GPリザーブマッチ 3分3R〇スモーキン・ジョー・ナタウット(タイ)[1R KO]×ユーリック・ダフティアン(アルメニア/ロシア)
10月に開幕したフェザー級キックボクシング・ワールドグランプリの欠場選手が出た場合のリザーバーを決める一戦。
ナタウットは10歳でムエタイを始め、2013年にはアメリカへ渡って試合を行い、ラスベガスを拠点とする『LION FIGHT』で2階級を制覇。2018年4月にONEに初参戦すると、4勝2敗の戦績を残している。2敗はいずれもジョルジオ・ペトロシアンに付けられたもの。戦績は70勝8敗2分。
ダフティアンは『MAX MUAYTHAI』や『THAIFIGHT』で多くのムエタイファイトを繰り広げてきた。2020年9月にONE初参戦を果たすと、左フックで2RにKO勝ちを収めている。戦績は40勝15敗。
1R、お互いにパンチでプレッシャーをかけつつ、ボディを打ちローを蹴る。片方が右ローを蹴れば右ローを蹴り返す、ボディを打てばボディを返すという展開が続く。両者とも思い切りパンチを繰り出し、相打ちやノーガードのところへ決まりそうになる危険な打ち合い。
ナタウットがダフティアンの右フックに右のショートストレートをカウンターで合わせると、ダフティアンは弾けるようにダウンする。ダフティアンは立ち上がろうとするも頭からマットに沈み、ナタウットが豪快なワンパンチKO勝利を収めた。
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▼第2試合 キャッチウェイト(86kg) 5分3R〇手塚裕之(日本)[3R 3分45秒 TKO] ※左右フック×アギラン・ターニ(マレーシア)
手塚は農家と格闘家の二足の草鞋を履くファイター。2018年8月から5連勝を飾るも、2020年11月の前戦でMMA9戦無敗の強豪ムラド・ラマザノフに判定負け。連勝がストップした。今回が約1年ぶりの試合となる。
対するターニは、2019年6月に秋山成勲に判定勝ちし、同年10月に岡見勇信にスプリット判定負けも接戦を繰り広げているマーレーシアのスターだ。岡見戦後、ダンテ・スキーロに判定勝ち後、2020年12月の前戦でタイラー・マムガイアに判定負けしており、今回が再起戦となる。
当初、11月に行われる予定だったこの試合が、10月29日実施に決まり、ターニの希望で86kg契約となった。
1R、ともにオーソドックス構えから。手塚の右の蹴りに、サウスポー構えにスイッチするターニは左の蹴りもローブローになり中断も再開。
左ミドルから左バックフィストのターニだが、その打ち終わりにボディロックからテイクダウンは手塚! ハーフから細かいパウンド、マウントを奪いリアネイキドチョークを狙うが、そこで落として立ち上がるターニ。
右ハイを打つターニ。その打ち終わりに組んでまたもテイクダウンは手塚。バタフライガードのターニはフルガードに戻すと、パウンドからパスガードは手塚! 再び背中を見せたターニにリアネイキドチョークも、またも正対して落とすターニ。手塚はその立ち際ヒザ蹴りもそれをボディロックからリフトしテイクダウンはターニ! 立ち上がる手塚。
2R、ターニのバックフィストをかわして組む手塚。切るターニはボディロックテイクダウン。上半身を金網で立てて立ち上がると、なおもダブルレッグテイクダウンを狙うターニ。しかし切る手塚。肩で息をするターニに右ローは手塚。さらに組んでボディロックから崩しもここは切るターニ。ワンツーから右を振る手塚。ターニもサウスポー構えから右ジャブを突く。
手塚は右ハイも空振り。右ローを当てる。ターニの左の蹴りを掴んで組みに行く手塚だが、切るターニはジャブ、右アッパーを突く。左右フックを肩口に当てる手塚。ターニは胴に組むが、それを突き放す手塚にターニは尻餅! 追ってパウンドの手塚の足を手繰るターニ。
3R、クリンチボクシングからヒザをマットに着いてのダブルレッグを狙うターニ。切る手塚は詰めるが、左の蹴りはターニ。左ジャブ、右ストレートも。手塚が入ると左ミドルを合わせる。詰める手塚は右ロー。左ジャブのターニ。右ロー! 左右ボディは手塚。左フックも振るがブロッキングするターニはワンツーから右ハイ!
テンプルにかすった手塚は両手をマットに着いてニアダウン。後退。しかし、手塚は左右フックを当てると、左アッパー、さらに右フックをしっかりターニの顔面を打ち抜き、棒立ちにさせると左右のラッシュ! 打たれるままのターニを見て、レフェリーが試合を止めた。
劇的な勝利に、手塚はバック宙。カメラに向かって母親に英語で感謝の言葉を述べた。
試合後、インタビュアーのミッチ・チルソンから「スゴイネ! 3R、ハイキックをもらってピンチに陥ったのになぜ逆転できたのか」と聞かれた手塚は、「ハイキックでピンチだったけど、米食ってコールドトレーニングを自然の中でやっているので回復出来ました」と、笑顔で語り、「米は裏切らない」を証明した。
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▼第1試合 バンタム級 ムエタイ 3分3R〇ハン・ズーハオ(中国)[判定3-0]×ビクター・ピント(フランス)
ハンは散打出身でムエタイを中国で学んでいたが14歳でタイへ移り本場でムエタイを学んだ。ONEには7月27日から参戦し、2019年2月にはONEムエタイ世界バンタム級王座決定戦をノンオーと争ったが判定負け。前戦は2020年10月にモハメド・ビン・マムードを3Rに左ストレートでKOした。また2017年10月には中国で、2月の『DEEP 100』でMMAデビューした雅駿介と対戦し、KO勝ちを収めている。2021年3月にはアダム・ノーイを判定で降した。戦績は63勝18敗。
ピントはGloryを主戦場に戦っていたが、2018年10月の試合を最後に2020年1月からはONEに主戦場を移した。しかし、現在は3連敗中。ズーハオに敗れているアダム・ノーイにも黒星を付けられている。ルンピニースタジアムで志朗とも戦っているという。戦績は76勝32敗。
1R、ハンは左ストレートをヒットさせると一気に前へ出て左ヒジを連打で叩き込む。体勢を立て直したピントは逆に前へ出るとジャブ、左ミドル。ハンはよく見ながらピントのガードの隙間からパンチをねじ込む。残り30秒を過ぎたところでハンが左右ストレートを叩き込むと右ストレートでダウンを奪う。ケージを背にするピントに次々とストレート&フックを叩き込むハン。
2Rが始まってすぐ、ハンの右ローに合わせてピントが左フックでダウンを奪い返す。立ち上がったハンは前へ出ると右の強打を叩き込み、足払いでコカす。ピントの左フックに対してハンが左手を伸ばしたところでアイポークとなり、試合は中断。再開後、前に出るハンはピントをケージに追い込む。ピントは左フックを狙い撃ち、ハンは顔面とボディへの右ストレートと左右のヒジ。
3Rも前に出るのはハン。ピントは待ちの姿勢でジャブやミドルを出しつつ、左フックを狙う。ハンは力強い右ストレートと左フックを叩き込む。ハンの右をブロックして左ミドルを蹴り返すピント。ハンは度々そのミドルをキャッチしてパンチを入れようとする。ピントの右ハイをもらっても前に出るハンだが、ピントは試合を流し始める。途中には勝利を確信したかのようなガッツポーズも。
判定3-0でハンの勝利がコールされると、ピントは「信じられない」との表情を浮かべてオーバーリアクションで判定への不満をあらわにした。