MMA
インタビュー

【ONE】手塚裕之、アギラン・ターニ戦へ「彼は自分のような格闘家とは戦ったことがない」× 再起を誓うターニ「僕にはテツカを倒す能力がある」=11月12日(金)配信

2021/11/09 17:11
“野生獣”の異名で知られる手塚裕之が2021年11月12日(金)に配信される「ONE Championship: NextGen 2」(シンガポール・インドアスタジアムで事前収録された大会)で、ウェルター級世界王座挑戦経験を持つアギラン・ターニ(マレーシア)と通常より重い86kg契約で対戦する。  手塚は農家と格闘家の二足の草鞋を履くファイター。2018年8月から5連勝を飾るも、2020年11月の前戦でMMA9戦無敗の強豪ムラド・ラマザノフに判定負け。連勝がストップした。今回が約1年ぶりの試合となる。  対するターニは、2019年6月に秋山成勲に判定勝ちし、同年10月に岡見勇信にスプリット判定負けも接戦を繰り広げているマーレーシアのスターだ。岡見戦後、ダンテ・スキーロに判定勝ち後、2020年12月の前戦でタイラー・マムガイアに判定負けしており、今回が再起戦となる。当初、11月に行われる予定だったこの試合が、10月29日実施に決まり、ターニの希望で86kg契約となった。  これまでチームクエストやサンフォードMMA、ジャクソン・ウィンクMMAなど北米でも出稽古を積むターニを相手に、手塚は「まだ栃木の片田舎に住んでるの?って聞かれるけど、山田道場(体育館)でも、TGFC(自宅ガレージ)でも、最高の仲間達がいるから強くなれる。結局、人を強くするのは愛なんよ。大好きな自然溢れるこの場所で、大好きな仲間と大好きな格闘技ができる。幸せだ。試合まで1週間切った。やるぜ!」と、独自のトレーニングと周囲の愛で磨き上げたMMAで戦うと意気込む。  キャリア11勝のうち、3つのノックアウトと5つのサブミッションを含む8つのフィニッシュを決めているターニ。強打を振って組んで倒して削るターニに対し、手塚は組んでの勝負も厭わないという。  ターニは手塚について、「かなりタフで、ムキムキで、キレている。パンチも強いし、KOパワーがあるのは間違いないが、グラウンド戦をしている姿は見たことがない。おそらくグラップラーのタイプではないんだろう。ラマザノフ戦でも何度もテイクダウンをされて、長い時間グラウンドに押し付けられていた。彼はいつもKOや、テイクダウンからのパウンドをしようとするが、パスガードやサブミッションをしたところは見たことがない」と評する。  しかし、高木健太をチョークで仕留めてPANCRASEウェルター級暫定王座に就いている高木は、「実はグラップリングにも自信があるし、チャンスがあれば、彼をテイクダウンしたい。グラウンドやパウンドも得意だと思っています。だから、打撃だけでなく、グラウンドの技術も含めて、自分のスキルをすべて見せたい」と意気込む。  そして、打撃では、自身に分があるという。2020年9月のグンター・カルンダ戦前には宇都宮のキックボクシングジム・ゼロで打撃練習を行い、1R、オーソからの左フックでTKO勝ちを収めており、打撃の進化にも手応えを得ている。 「ターニはとてもタフだけど、ストライカーとしては僕の方が優れていると思いますし、スタミナも勝っている。相手がガス欠になるまで、彼のボディを打ちたい。最終的にはKOできたらいい」  元ONEウェルター級世界王者のベン・アスクレン、ゼバスチャン・ カデスタム、キャムラン・アバゾフに敗れているターニだが、強豪たちと戦ってきた経験が、26歳の“アリゲーター”を成長させている。  しかし、手塚は、「彼は多くのタフガイと戦ってきたけど、自分のようなタイプとは戦ったことがない。僕はユニークなファイターだから、彼は驚くんじゃないかな」と、これまでの対戦相手とは異なると警告した。  現ONEウェルター級世界王者に君臨するのは、キルギスのキャムラン・アバゾフだ。2019年に前王者のカデスタムからタイトルを奪い、その後、ジェームス・ナカシマを相手にタイトル防衛に成功している。今回、手塚がターニを倒すことができれば、この階級のトップ選手たちに挑戦する絶好のポジションに立つことができるだろう。  手塚は「僕の左フックで。うまくいけば1Rでフィニッシュできるかもしれないけど、実際に対戦してみないと分からない。勝利することができれば、タイトルマッチをしたいと言えると思う。チャンピオンやゼバスチャン・ カデスタムのようなトップコンテンダーとの対戦を期待しています。カデスタムは元王者ですよね? 彼は良いストライカーなので、もし戦えばエキサイティングな試合になるでしょう。そのためにもまずはターニに勝利すること」と、今回の試合を位置づけている。 [nextpage] グラウンドとケージコントロールで手塚を圧倒する  対するONE10勝4敗のターニは、練習環境の変化に手応えを感じている。  コロナ禍で、マレーシアでも一時はロックダウンが続いたが、「ロックダウンが行われても、トレーニングはできた。家でやったり、友達の家でやったり。結局、やるべきことをやるしかない。毎日トレーニングしないと、試合に出るには不向きな状態になってしまうから」と、そのときのことを振り返る。  現在は「トレーニングキャンプを終えて、多くの点で改善できたと思う。トレーニングの方法、食事、減量、全部これまでとは違うものだった。前のジムを離れて、今は違うジムで違うコーチと練習しているんだ。順調にトレーニングをできているよ」という。 「モナーキーMMA」を辞め、トレーニング・キャンプは、ターニがインストラクターとして働いているクアラルンプールの「ブループリント・マーシャルアーツ」と、「ノース・キアラMMA」で行ってきた。ヘッドコーチはコンラッド・ファーランで、新たにブラジリアン柔術黒帯のオズワルドコーチとも練習している。また、ケアヌ・スッバとも練習を積んできた。 「ノース・キアラ」では、グラウンドコントロールに注力し、「相手をテイクダウンして、長い時間、楽に保てるポジションを取るようにしている。それに、押さえ込むだけじゃなく、よりダメージを与えられるように。ブルーノ(「モナーキーMMA」のブラジリアン柔術ヘッドコーチ)と組んでいた時は、単なるサブミッション狙い的な感じだった。でも、今はそれを変えたんだ」と、ポジショニングの極意を習ったという。 「ブループリント」では、セットアップ、打撃、テイクダウンに取り組んでいる。 「HCのコンラッドも同じような感じだ。コンラッドと別にトレーニングするのは、フットワークだけ。長い間、世界レベルのストライカーになろうとしてきたが、今ではフットワークを使って打撃をセットアップしなければならないと気づいた。そうしたら、自分の打撃がより効果的に使えるようになって、もっと自信を持って勝とうとできるようになったよ」とフットワークも進化したという。 「フットワークに力を入れてきた。だって、テツカは爆弾のような一髪を持っているだろう? KOパワーは物凄いし、彼は相手をKOで倒してきたことで知られているしね」  秋山とスキーロから勝利、しかし岡見とマグワイアに敗戦と、直近4戦2敗のターニは、厳しい挫折を味わった。 「過去3試合は、スプリット判定か敗戦という苦い結果だった。これは次の試合でフィニッシュしなければというモチベーションになっている。最近の結果はハッピーなものではなかったから。  一時は、『ああ、もうダメだ。自分のキャリアは終わった』と思ったこともあった。でもこれもキャリアの一部だし、我慢しなければいけないと思っている。1度か2度の負けで済む人もいるかも知れない。多分、自分はあと2、3敗しないとピークに達せないのかもしれない。  ハビブ(・ヌルマゴメドフ)でもなければ、ハードルを乗り越えずにトップに立てるアスリートなんていない。これは自分のハードルだ。困難を通して学んでいるんだ。100パーセント勝つ自信があるとは言わない。でも、戦い方は分かっているし、ちゃんとやれるって分かっている。今のところは、トレーニングに集中して、自分がコントロールできることに集中しないといけない。それだけだ」  手塚裕之は、26歳のターニがこれまで戦ってきた相手の中でも、最も危険なファイターの一人と言えるだろう。それでも「手塚のノックアウトパワーは歓迎だ。これまでのキャリアで僕がKOされたのは、1度だけだ。その時の相手は、ゼバスチャン・カデスタムだった。それも失神するようなKOでもなかった。どのくらい自分が打たれ強いかわかるだろうね」と、これまでの試合経験に自信をのぞかせる。 「僕はこれまで、強くて危険な選手たちと戦ってきた。僕はテツカより若いけど、彼より経験を積んできたと思う。彼よりもタフな相手たちと戦ってきて、ただ今はキャリアにおいてちょっと上手くいっていなかっただけ。僕にはテツカを倒す能力がある」  勝負のポイントは、やはり組み技だ。 「グラウンド・コントロールだ。 相手をテイクダウンして、グラウンド戦に持ち込むこと。自信があれば、サブミッションかTKOで仕留めたいと思う。シンプルにフィニッシュを狙っている。どのラウンドであろうと関係なくて、とにかくフィニッシュすることに拘りたい。そうでなければ、グラウンドとサークル(ケージ)でのコントロールで圧倒する。3ラウンドを通じて寝かせて、疲れさせる」と、ターニは自身の持ち味を最大限発揮するつもりだという。  果たして、ウェルター級トップ戦線に進むのは手塚かターニか。  11月12日(金)配信の「ONE: NEXTGEN 2」は、ONEスーパーシリーズのセーマペッチ・フェアテックスとリッテワダ・ペッティンディーがメインイベントに組まれている。そして、MMAでは手塚vs.ターニのウェルター級戦に加えて、フェザー級で、タン・カイvs.ユン・チャンミンの試合などが行われる。
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント