スーパーボンはなぜ鉄壁のディフェンスを誇るペトロシアンをKOすることが出来たのか(C)ONE
2021年10月15日(金)シンガポール・インドアスタジアムにて開催された『ONE FIRST STRIKE』のメインイベント、フェザー級キックボクシング世界タイトルマッチ3分5Rは、スーパーボン(タイ)が6年間無敗を誇ったジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)を2R20秒、右ハイキックでKO。王座に就いた。
111戦ものキャリアを誇るペトロシアンが負けたのは、2007年1月にルンピニースタジアムで行ったムエタイルールでのノンタン・ポー.プラムック(タイ)戦(判定負け)と2013年11月にGLORYニューヨーク大会で行ったアンディ・リスティー(スリナム)戦(KO負け)、そしてこのスーパーボン戦のみ。
なぜペトロシアンはスーパーボンのハイキックをもらってしまったのか。現役時代は“ムエタイキラー”として名を馳せ初代IWMジュニアライト級王座に就き、現在は『STRUGGLE』会長として元REBELS-REDスーパーフライ級王者・老沼隆斗やKNOCK OUT-BLACK女子アトム級王者ぱんちゃん璃奈らを育てた鈴木秀明会長に分析していただいた。
(写真)スーパーボンが受けてからではなく、自分から蹴っていったハイ&ミドルは完璧に防御していたペトロシアン
鈴木会長は「スーパーボンは元々引っかけるようなハイキック、相手のグレーゾーンから蹴るハイキックを得意にしていて、高めのミドルキックとハイキックの間くらいで変化をつけて『これ見づらいだろうな』って蹴りを使います。それで打ち終わりの頭のある位置を狙っていたんだろうなって感じを受けました」と、相手が見づらい位置から放たれるハイキックを得意にしていたと指摘。
「スーパーボンは相手を見ながら冷静に技を当てていくのが凄く上手で、おそらくペトロシアンの飛び込みの左ストレートの打ち終わりに頭の位置がこの辺だろうと想定してハイキックを蹴ったのだと思います。KOシーンの少し前にも左ストレートを受けた瞬間に次のモーションに入っていたので。右腕で(左ストレートを)ブロックしてその場に止まるのではなく、前に出てブロックしてそのまま攻撃を打つようにしているように見えました。だからペトロシアンが頭を戻すところに技を当てるのを狙っていたのかなと推測されます」と、ペトロシアンが左ストレートを打った直後の返しの技を狙っていたのではないかとする。
(写真)ペトロシアンの飛び込みの左ストレートを前に出て右腕でブロックするスーパーボン
そのタイミングは「ペトロシアンはステップインして左ストレートを打つ時に頭を前にして打つんですよね。それを打った後、真っすぐ戻ってしまうと相手のパンチをリターンで受けてしまうので、打った後に一瞬ダッキング気味にして戻すんですが、その戻し際のところを狙っていたのでは」と、ペトロシアンが左ストレートを打った後でこの位置に頭を戻すと予測して蹴ったため、通常よりも速くペトロシアンは防御の反応が出来なかったのではないか、と分析した。
(写真)ペトロシアンがダッキングして頭の位置を戻すところを狙って蹴っているのが分かる連続写真
「同じように顔のヒザを狙っていたのもあったので、その位置に頭が来ることを想定して動いているな、と思いました。この動きだとここに頭が来るからこれを当てよう、というようなことを全体を通して狙っていた感じがありましたね。ペトロシアンの頭の逃げ場、癖を上手く突いたからあの得意のハイキックが当たったのだと思います」
予測して動いているからこそ、通常よりも速く当てることができ、相手も防御などの反応が遅れる。ペトロシアンの動きの癖を見抜き、タイミングもバッチリ合ったスーパーボンの妙技だったということか。
なお、このスーパーボンvsペトロシアンは『ABEMA』にてフルで無料公開されている。