ONE FIRST STRIKE2021年10月15日(金)シンガポール・インドアスタジアム
▼メインイベント フェザー級キックボクシング世界タイトルマッチ 3分5R×ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)KO 2R 0分20秒 ※右ハイキック○スーパーボン(タイ)※スーパーボンが初代王座に就く。
今大会はキックボクシング&ムエタイの立ち技のみの大会。そのメインを飾るのがペトロシアンvsスーパーボンのフェザー級キックボクシング世界タイトルマッチ(王座決定戦)だ。
ペトロシアンは2009年と2010年のK-1 WORLD MAXでミドル級世界トーナメントを制し、世界にその名を轟かせてから、GLORY世界ライト級スラムトーナメント2012優勝など10年にわたって世界最高峰に君臨してきた。ONEではひとつ無効試合があるものの5戦全勝で2019年ONE Super Seriesキックボクシング・フェザー級ワールドGPを制し、変らぬ実力を誇示。今年2月にはダビッド・キリアに完勝した。戦績は104勝(41KO)2敗2分2無効試合。
スーパーボンはバンチャメークジムでブアカーオの弟子にあたり、2009年10月にはムエタイであのゲーオ・フェアテックスからも勝利。クンルンファイトで2016年世界トーナメントを制して世界にその名を轟かせた。あらゆる体勢から繰り出すミドル&ハイキックを得意とし、首相撲でも強さを発揮するテクニシャン。2020年7月のONEではシッティチャイ・シッソンピーノンからも勝利を収めた。戦績は111勝(26KO)34敗。
両者はこれが待望の初対決。ONEフェザー級キックボクシング世界タイトルの初代王座を争うにふさわしいカードの実現となった。
1R、スーパーボンはサウスポーのペトロシアンに右ハイ。ペトロシアンは左ローを蹴る。スーパーボンが右ストレートから右ハイ。前に出るペトロシアンが右アッパーから左ストレートを繰り出すが、スーパーボンはすぐ前蹴りで突き放す。スーパーボンが絶妙な距離を保ち、ペトロシアンが入ってくるところに右ロー、ペトロシアンがパンチをまとめるところに首相撲からヒザ蹴り。ペトロシアンのパンチを被弾する場面はあったものの、スーパーボンが上手く戦った印象。
2R、右ミドルと前蹴りのスーパーボンにペトロシアンはジャブを突いて前へ出る。スーパーボンの右ミドルにワンツーを返し、一度下がろうとしたペトロシアンにスーパーボンの右ハイキックが炸裂! ペトロシアンは身体を一直線に伸ばしたまま後ろに倒れて失神。大喜びして勝利をアピールするスーパーボン。衝撃の2R決着でスーパーボンが王座に就いた。
勝利者インタビューを受けたスーパーボンは「KOするために準備をしてきたのでとても嬉しいです。(同日のワールドグランプリで勝ち残った4名に)誰もが私のことをKOしたいと思っているでしょう。私もそれを迎え撃ちたい」と、初防衛戦の舞台で待っていると答えた。
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▼第5試合 フェザー級キックボクシング・ワールドグランプリ準々決勝 3分3R○マラット・グレゴリアン(アルメニア)TKO 2R 2分26秒 ※左ジャブ×アンディ・サワー(オランダ)※グレゴリアンが準決勝へ進出。
グレゴリアンは、2015年のK-1 WORLD GP -70kg王者。1回戦で山崎陽一、準決勝で牧平圭太、決勝でジョーダン・ピケオーにKO勝ちと、3試合連続KO勝ちで優勝を果たしている。2018年2月には、Kunlun Fight 69 - World MAX 2017の準決勝でジニアス・ズエフに判定勝ち、決勝でスーパーボーン・バンチャメークにKO勝ちして優勝した。そして、2019年5月「Glory 65」において、シッティチャイ・シッソンピーノンと5度目の対戦。グレゴリアンが判定勝ちでライト級王座を獲得している。2020年12月のONE初参戦ではイヴァン・コンドラチェフ(ロシア)に先制のダウンを奪われるも2RでKO勝ちした。戦績は64勝(33KO)11敗1分1無効試合。
サワーは長くシュートボクシングで“守護神”として活躍。世界トーナメントS-cupで2002・2004・2008・2012と4度優勝、K-1 WORLD MAX世界一決定トーナメントでも2005・2007と2度優勝を果たしている。2015~2017年にはRIZINでMMAにも挑戦し2勝3敗の戦績を残した。ONEには2018年10月から参戦するも2連敗、2019年の「ONE Super Seriesキックボクシング・フェザー級ワールドグランプリ」は欠場した。2020年12月に2019年3月のONE日本大会以来の試合となったジャン・チャンユ(中国)で、ほぼ一方的な展開の判定3-0で勝利した。戦績は161勝(98KO)21敗1分。
1R、グレゴリアンの圧力に下がるサワーはグレゴリアンのジャブに得意の右クロスを合わせに行くサワーだが、右ローを蹴ったところでグレゴリアンの左フックでダウンを奪われる。ケージを背負うサワーにボディから左右フックのコンビネーションを決めるグレゴリアン。サワーもすかさずコンビネーションを返すが、グレゴリアンはしっかりブロック。サワーは得意の左右フックから左ボディ、そして右ローのコンビネーションを回転させるが、グレゴリアンは左アッパーを突き上げ、左ボディと右ロー。
2R、サワーは飛びヒザ蹴り、ジャブからロー、変則的な右ハイと攻めるが、グレゴリアンのジャブ、右ロー、左右アッパーにケージを背負わされる。グレゴリアンは右ローを狙い撃ち、サワーは左ボディを返す。ジャブの相打ちで後方へ倒れるサワー。倒れる際に踏ん張った右足首を捻ったか、サワーは立ち上がることができずレフェリーが試合を止めた。
サワーは足を引きずりながら、勝者のグレゴリアンを称えた。新旧K-1王者対決はグレゴリアンの圧勝に終わった。
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▼第4試合 フェザー級キックボクシング・ワールドグランプリ準々決勝 3分3R○シッティチャイ(タイ)[判定2-1]×タイフン・オズカン(トルコ)※シッティチャイが準決勝へ進出。
シッティチャイはプロ160戦以上と鉄人的な戦歴を持つ現役のムエタイレジェンド。キックボクシングとムエタイを合わせ、世界王者に11回輝く。過去10年間に渡り、キックボクシングとムエタイで、最も圧倒的な強さを誇る選手の1人として評価を築き上げてきた。ジャバル・アスケロフ、アンディ・サワー、ソーグロー・ ペッティンディーアカデミー、エンリコ・ケールなど、数々の世界トップクラスのストライカーを倒したシッティチャイだが、2020年7月のONE初陣ではスーパーボンに判定で敗れている。2021年8月には7年ぶりのムエタイルールでタイの現役トップ選手タワンチャイから判定2-1で勝利をもぎ取った。
オズカンはONE初参戦。2016年にEnfusion 70kg MAXトーナメントで優勝した。2018年にはアンディ・サワーを4RでKOしてEnfusion 72.5kg世界王座を獲得。2006年にはダビッド・キリアからも勝利を収めている。
1R、オズカンは軽快なフットワークを刻んで左へ動く。サウスポーのシッティチャイは左ミドル、左ロー。オズカンも右ローを返すがシッティチャイに軸足を払われる。オズカンは右ボディから左フック、鋭い右の前蹴りをボディに。前へ出るのはシッティチャイ、オズカンはステップを踏んでシッティチャイのワンツーをバックステップでかわす。シッティチャイは左ボディからヒザ蹴り。シッティチャイはボディとローでしっかり削っていく。
2Rも前に出るシッティチャイにワンツーで応戦するオズカンだが、シッティチャイはさらに前へ出て左ロー、左ストレート、距離が詰まるとヒザをボディに突き上げる。シッティチャイは左ストレートを顔面とボディに打ち分け、左ミドルと左ヒザでボディを痛めつける。オズカンは右のカウンターをヒットさせるが、シッティチャイの前進は止まらない。オズカンの右を被弾する場面も出てきたシッティチャイだが、ペースは完全に握っている。
3Rもシッティチャイは左ミドル、左ロー、左ストレートで前へ出る。左フックにはオズカンがガードを固める。フットワークが止まり気味のオズカンは足を止めて右ストレートを打ち返すも、シッティチャイの左ミドル&ロー、左ストレート、左ヒザ蹴りに下がらされる。右ストレートをもらってもすぐに前へ出て手数を出すシッティチャイ。残り30秒を切っても左ストレートでシッティチャイが前へ出て試合終了。
シッティチャイの圧勝かと思われたが判定は2-1のスプリットデシジョン。シッティチャイがテクニックを存分に見せつけての判定勝ちで準決勝へ駒を進めた。
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▼第3試合 フェザー級キックボクシング・ワールドグランプリ準々決勝 3分3R×サミー・サナ(フランス)[1R 0分39秒 TKO] ※左ボディ○チンギス・アラゾフ(ベラルーシ/アゼルバイジャン)※アラゾフが準決勝へ進出。
サナは2016年5月にラジャダムナンスタジアムでKO勝ちしてWBCムエタイ世界スーパーミドル級王座、2017年12月にはISKAムエタイ世界ミドル級王座を獲得している。2019年6月にONEデビューを果たすと、初戦は判定で敗れるも2018年11月にはアーメン・ペトロシアンに勝利。
2019年2月にはジョー・ナタワットに敗れるが5月にはヨードセングライ、8月にはジャバル・アスケロフに連勝した。10月の「ONE Super Seriesキックボクシングフェザー級WORLD GP 2019」ではジョルジオ・ペトロシアンに判定負け、2020年10月にはマーティン・メオニから勝利している。2020年12月にはジャマール・ユスポフにムエタイルールで敗れている。
アラゾフは、アマチュア時代に197勝(117KO)3敗という驚異的な成績を残し、13歳でタイにてプロデビュー。2014年と2015年の『A1ワールドグランプリトーナメント』(-70kg級)で優勝、2015年にWAKOプロK-1ルール世界ミドル級王座、2016年には同スーパーウェルター級王座を獲得。
同年にNDC K-1ルール同級王座も獲得している。2017年6月に『K-1 WORLD GP』に初来日すると『第2代スーパー・ウェルター級王座決定トーナメント』で中島弘貴とジョーダン・ピケオーにKO勝ち、決勝で城戸康裕に判定勝ちして優勝し、第2代王座に就いた。2018年3月には日菜太をKOして初防衛にも成功している。
-70kg級の世界トップグループに位置するが、マラット・グレゴリアンとは1敗1無効試合、シッティチャイ・シッソンピーノンには1敗、ジョルジオ・ペトロシアンにも1敗と現在『ONE』で活躍する世界3強にはいずれも敗れており、2021年4月のONE初参戦ではケールに判定2-1で敗れた。
1R、アラゾフの左インローからスタート。サナが前へ詰めてくるところへアラゾフは左フックに左ハイキックを合わせる。
これでフラつきながら下がるサナへ左ハイキック、右スーパーマンパンチ、左右ボディと左右フック。嵐のようなラッシュを仕掛けて最後は左ボディでレバーを打ち抜きダウンを奪う。サナはそのまま10カウントを聞き、アラゾフの秒殺KO勝ちとなった。
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▼第2試合 フェザー級キックボクシング・ワールドグランプリ準々決勝 3分3R×エンリコ・ケール(ドイツ)[1R 2分50秒 TKO] ※3ノックダウン○ダビッド・キリア(ジョージア)※キリアが準決勝へ進出。
ケールはK-1 GLOBAL体制となってからの『K-1 WORLD MAX 2013』出場。トーナメント1回戦でヘンリー・ヴァン・オプスタルに勝利すると、準々決勝・準決勝も勝ち進んで決勝へ進出。決勝では2013年12月に対戦して判定負けしたブアカーオ・バンチャメークとの再戦となり、3R終了後にブアカーオが延長戦を拒否したため優勝。2013年のK-1 WORLD MAX世界王者となった。2021年4月にはONE初参戦のアラゾフを判定2-1で破っている。
キリアは芦原会館空手出身で、15歳でキックボクシングに転向。2012年にGLORYで行われた世界ミドル級スラムトーナメント(16名出場)に出場すると、準決勝まで進出したがペトロシアンに判定負け。2014年3月にはペトロシアンをKOしたアンディ・リスティをKOしてGLORY世界ライト級王座に就いた。さらに2018~2019年にはクンルンファイトのWORLD MAXトーナメントでも優勝している。2019年2月以降、試合から離れていたが2021年2月に復活。ペトロシアンに判定3-0で敗れた。
1R、サウスポーのケールの左ローがローブローとなっていきなり中断。再開後、ケールは左ローを主軸にパンチからのコンビネーションをつなげる。キリアはブロックをガッチリと固めながら右インロー、左ボディを打つが、ケールはアッパーを突き上げる。左ローを徹底して蹴るケールだが、キリアの右フックがヒットするとケールは一気に後退。そのまま左フックからの右ストレートでキリアがダウンを奪う。
続いて右フックで組み付いてきたケールに左フックでダウンを追加すると、キリアの右ストレートからの右フックでケールは3度目のダウン。キリアが恐るべき強打者ぶりを発揮してケールを初回KOに仕留めた。
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▼第1試合 キックボクシング ヘビー級 3分3R○ラーデ・オパチッチ(セルビア)[2R 1分19秒 TKO] ※ヒザ蹴り×パトリック・シミッド(スイス)
シミッドは1月に試合が予定されていたがセコンドがコロナ陽性でキャンセル、4月にはオパチッチとの対戦が組まれていたが、オパチッチが欠場したため急遽オマール・ケイン(セネガル)とMMAルールで戦うことになり、パウンドで敗れた。
オパチッチは2メートル近い長身を誇る23歳の新鋭でヨーロッパのキックボクシング団体『ENFUSION』のヘビー級リーグ戦優勝、クンルンファイト出場などで知られるようになった。ジマーマンとは練習仲間でもあるという。どONEヘビー級で2連勝中。
1R、シミッドはパンチのコンビネーションを交えながら右ローを狙い撃ち、オパチッチは左ミドルを蹴り返す。オパチッチの左ボディを受けるとシミッドは後退。オパチッチの左ハイ、ヒザ蹴りももらうシミッド。オパチッチは左ボディを狙い撃ち、ヒザ蹴りも加えて左ボディでダウンを奪う。
立ち上がると左ミドルから左ボディ2連発、さらに組んでのヒザ蹴りを打つと、右手を下げてボディを守るシミッドに左ハイでダウンを追加する。もう後がないシミッドだがオパチッチは容赦なく左ボディとヒザ蹴りで攻めていく。ダウン寸前となったシミッドだが、ゴングに救われた。
2Rが始まってすぐ、右ミドルからのワンツーでダウンするシミッド。オパチッチは右アッパー、左ボディ、ヒザ蹴りで追い込んでいき、シミッドも右ストレートで対抗する。そこへ左ハイ、すかさず組んだオパチッチがアゴへ右ヒザを突き上げ、シミッドが膝を着いたところでレフェリーがストップ。オパチッチが3連勝を飾った。