MMA
インタビュー

【VTJ】5年2カ月ぶりに復活の「VTJ」を坂本一弘サステイン代表に聞く「日本と海外、どれくらいの開きがあるのか? 実際戦ってみないと分からない」

2021/10/11 18:10
 2021年11月6日(土)東京・新木場のUSEN STUDIO COASTにて「VTJ」が復活、プロフェッショナル修斗との昼夜2部大会として開催される。  今大会に向け、本誌では坂本一弘サステイン代表にインタビュー。5年2カ月ぶりに「VTJ」を復活させた背景と思い、その見どころを聞いた。 「VTJ」の前身となる「VALE TUDO JAPAN」は1994年に第1回大会が開催され、ヒクソン・グレイシーを日本に初招聘するなど、今から27年前に日本総合格闘技界の礎となった伝説のイベントだった。  その後もエンセン井上vs.ランディ・クートゥアー、佐藤ルミナvs.ジョン・ルイス、日本vs.ブラジル7対7、五味隆典vsトニー・ハービー等、数々の激闘、名勝負を産み出してきた。  2012年に名称を「VTJ」に変え、新たなコンセプトでナンバーシリーズとして復活。その中でも2013年「VTJ 2nd」で行われた修斗世界王者・堀口恭司とキングオブ・パンクラシスト石渡伸太郎との一戦は、団体の垣根を越え、互いのプライドがぶつかり合う壮絶な試合となり、坂本代表もベストバウトのひとつに挙げる。  今回は、「世界を目指す者」が「対世界」を経験する場、そして「世界を知る者」も新たな挑戦に挑む場、そして堀口vs.石渡のように、垣根を越えた戦いの場として「VTJ」は行われるようだ。  予告動画では、「世界を目指す者」に入る、修斗世界フライ級王者の平良達郎、同フェザー級王者SASUKE、ライト級王者の西川大和、そして大道塾からMMAで4連勝中の岩﨑大河の映像が流れ、「世界を知る者」として宇野薫、岡見勇信、佐藤将光、高橋遼伍らの姿が映し出されている。  また、ワクチン接種が進むなか、緊急事態宣言の解除もあり、格闘技界もスポーツ庁に外国人選手招聘の折衝を行っていることも伝えられており、どんな海外選手の来日が実現するのか、注目されるところだ。  果たして、誰がために、VTJのゴングは鳴らされるのか。坂本一弘サステイン代表に聞いた。 VTJには明確に『世界対日本』という図式があった ――2021年11月6日(土)東京・新木場のUSEN STUDIO COASTにて「VTJ」が復活、プロ修斗との昼夜2部大会として開催されることが発表されました。2016年9月の「VTJ 8th」以来、5年2カ月ぶりにVTJを復活させようとした経緯を教えてください。 「対世界という『VTJ』の趣旨を考えたときに、格闘技界にコロナ禍の中で漂う閉塞感というのがありました。それは我々プロモーターもそうだし、選手にも。マッチメイクの幅なども考えたときに、どうしても外国人選手を呼べないことで行き詰まる部分がある。ただ、現状で外国人選手がすぐに呼べるのかというとハードルは低くない。緊急事態宣言が明けたばかりで外国人選手をどれだけ呼べるのか。『VTJ』を開催することで、そこにトライをしたいということもありました。閉塞した現状を打破するために、歴史のあるVTJにコロナ禍で、先駆けて新しい価値観を持たせたい。  そこでスポーツ庁に通って、須藤元気先生とか、スポーツ庁の方とコミュニケーションを取りながら、どういったことをやっていけば、海外選手の来日が認められるのかを議論をしています。一つ朗報としては、オリンピックはさておき、緊急事態宣言が明けてない9月1日に井岡一翔選手の世界戦の防衛戦が行われ、挑戦者のフランシスコ・ロドリゲス・ジュニアがメキシコから来日しました。そういう事例も勉強していくなかで、海外選手の招聘に光明が見えるかもしれないと思い、今、RISEの伊藤隆代表やABEMAの北野雄司さんたちと一緒にスポーツ庁に行って、その方法の投げかけをしているところです」 ――海外のアスリートが、ワクチン接種証明書や、日々のPCR検査による陰性証明が明らかとなれば、日本で活動が出来る例が出始めていると。 「はい。ほんとうに“ウィズ・コロナ”を格闘技界も考えていかなければならない。今年中にウイルスが無くなるというレベルのものではないですし、その時・その時でコロナのあるなかで、何をすべきで、何が出来るのかを考えて、次に進めるものは進めていきたい。そのひとつが、今回のVTJ開催でした。  VTJには明確に『世界対日本』という図式があった。いま、日本の選手が世界と戦いたいと思っているのに、コロナ禍で外国人選手が呼べない状況を何とかできないかという思いが、大会開催の原動力になっています。そして、このトライ自体が無駄になることはないですし、これを皮切りに業界のモデルケースになれればいいと思っています。須藤先生と話して、VTJを機会に、外国人選手が日本で活躍できたり、日本の選手が海外でもっと試合機会を得て、ストレスなく戦えるようになる道筋を作りたい」 ――現時点(9月末)では、海外選手が呼べたとしても隔離期間が待っています。9月1日に戦ったロドリゲスは「こんなに日本のルールが厳しいとは思わなかった」と言っていました。ワクチン2回目の接種から2週間が経過した人に対しては「隔離期間の免除が検討」されているようですが、現状ではまだ免除とはなりません。 「やはり隔離はどうしてもしなければならないです。でも、到着した日から4日間の完全隔離になります。着いた日とは別に3日間の隔離期間が明ければ、その次の日に計量が出来て、翌日に試合をして帰国という流れが出来るようになる。これまでは2週間の隔離というハードルがありましたが、ワクチンパスポートや検査態勢が整っていれば、海外選手にもハンディを少なく戦ってもらえる。スポーツ庁に足を運んでいくなかで、真摯に相談を聞いていただき、こうすれば大丈夫じゃないですかと、アドバイスもいただいています」 [nextpage] 何かを生み出すときに出てくるのが、VTJ ――「VTJ」は「VALE TUDO JAPAN」 (ヴァーリ・トゥード・ジャパン)の頭文字を略したものですよね。最初の大会は1994年で、「VALE TUDO JAPAN OPEN 1994」でした。 「そうですね。広く世に呼び掛けた“オープン”トーナメントでした。あの時代に、佐山聡先生と中村頼永さんがヒクソン・グレイシーを日本に招聘したのは大きなことだと思いますし、修斗の選手もそこに出場し、日本のファンもヒクソンの戦いを生で見ることが出来た。その意味では、修斗の裏面というか、A面とB面のように対になっている大会ですね。どちらがAかBかは分かりませんが……この表現、いま通じるんですかね?(苦笑)」 ――いまはCDでさえ主流ではないですけど、レコードを求めるファンもいますから通じるかと(笑)。ともあれ、その戦いは表裏一体で、互いに影響を与え合って、ルールまで変えてきました。 「そうですね。必ずしもA面だけでいいわけでなく、B面だけでも駄目だった。その両面があることが修斗の良いところだと思います。何か突き破るべき閉塞感があったとき──ブラジルの黒船や北米の台頭など、世界に日本の強さを証明しなきゃいけない──そういった何かを生み出すときに出てくるのが、VTJだと思います」 ――修斗本戦とは異なる形でそれを実現させてきたと。 「競技としての修斗の大事な部分があります。同時にイベントとして、より幅広くいろいろな選手が出られるようにすることで実現できたものもあります。それは外国人選手もそうでしょうし、日本人選手もそうです」 ――修斗のプロライセンスを持たない選手が出場機会を得ること出来ました。 「先日引退した石渡伸太郎選手がキング・オブ・パンクラシストとして、修斗王者の堀口恭司と対戦するとか、いろいろな団体の垣根を越えた戦いがありましたね」 ――そして、2012年の「VTJ 1st」ではケージを導入しました。UFCジャパンで国立代々木第二体育館のなかにケージを見ましたが、VTJのときも入った瞬間、いつもと違う風景を感じました。メインは所英男選手と佐藤ルミナ選手の越境対決。そして、第4試合では「135ポンド契約」で堀口恭司選手が、元UFCのイアン・ラブランドと戦った試合も印象深いです。 「ラブランド、いい選手でしたね。堀口がいまで言うカーフキックを効かせて。垣根を超えること、そして対世界がテーマとしてありました。そこに準ずるいい選手、強い選手を呼んで、そういうトップどころと日本の選手が戦ったときに、どう戦うかという場を作ってきました。じゃあ、いまはどうなっているのか? ということだと思うんです。日本のMMAのレベルも上がってきている。ただ、海外はもっと上がっている。お互いにレベルが上がっているなかで、実際どれくらいの開きがあるのか、それともあまりないのか。それは実際に戦ってみないと分からない。もちろん個々の能力差もあるでしょう。悲観している人も多いかもしれませんが、必ずしもレベルが違うとは言えない。僕は、日本のレベルはどんどん日進月歩で上がっていっていると思っています。」 ―─トップに上る段階で海外選手との試合を体感できたことは、日本のMMAの底上げになったと思います。しかし、いまはその機会が失われてしまった。その箱庭的世界で良し、とする考えもあります。 「日常的に出来ていたものが、コロナで出来なくなった。各団体でいろいろなことを考えて、カードを組んでいっているとは思います。そういう中で、我々としては何をすべきか。まだワクチンが入って来ていない中で、ABEMAさんと協力し、どうやったら感染者を出さずに大会を開催できるか、無観客試合でやったり、消毒や導線を徹底的に考えて防護服を着てまで大会を開催した。批判もありましたが、取り組みをしっかり見ていただいた。そういった経験がいまに繋がっています」 ――あのときはいまとは違う緊張感がありました。 「そうですね。こんな時期に何をやってるんだ、というばかりではなく、“こんな時期”でも雑誌は発売されるし、締切はあるし、ゴン格さんも書かなきゃいけないですよね。やっぱり我々もプロモーターである以上“試合放棄”をするわけにはいかない。やるべきことをやった上で届かないこともあるとは思いますが、ベストを尽くしたい。その意味でも、あの時期は、みんな何かしら“戦う方法”を見つけていたんじゃないかなと思うんです。武器が少ないなか、工夫をしてきた。そういう時期を乗り越えてきたので、それで良しとせずに、我々も次のステップに行かなきゃいけない。いまの日常ってコロナ禍が日常じゃないですか。この日常を打破するもののひとつが、身体的なもの、格闘技で戦うことで、みんな“普通”じゃないから格闘技をやってる。このコロナ禍でファイターはどう強くなって、前に進むのか。我々の試みとともに、その新しいステップを見てもらえればと思います」 [nextpage] 西川大和はグラウンドで下から「首相撲」をしていた ――「VALE TUDO JAPAN」から「VTJ」と続いていく中で、プロ修斗もケージとなり、役割が近づいて行ったと思います。そこで、再び「VTJ」というのは、「対世界」が一番の理由なのでしょうか。 「どの時代も併用していた時代があったと思うんです。ルールしかり、リング・ケージしかり。大事なのは、そこに向かう選手たちの気持ちです。修斗で鎬を削っている選手が『VTJ』で戦うということは、修斗を代表して出ることにもなる。修斗の旗印のもと、“外”に出たときに、何らかのプライドを持って戦ってもらいたい。ある種の“他流試合”に挑むときに、自分が何を背負うか。それが家族であれ、チームであれ、俺が俺のためにやるという個人であれ、その経験は、海外で試合をするときに生きてくるとも思います。やっていることは修斗と同じケージで、ルールもユニファイドで同じじゃないか、と言われると思いますが、僕からするとそこは大きく違う。絶対負けられないというプライドがぶつかり合うから名勝負が生まれるんじゃないかなと思います」 ――その“外敵”をどんな選手が迎え撃つこことになりそうでしょうか。 「フライ級の平良達郎、フェザー級のSASUKE、ライト級の西川大和といった、新しく世界チャンピオンになった選手の中から出場可能な選手に外国人選手を当てていきたいですね。コロナが始まって1年8カ月ぐらい、そこが滞ってきましたからね。黒部三奈はどうなるか? そこは迎え撃つべき相手がいるので、ご期待ください(※昼の修斗でSARAMIとの3度目対決が決定)」 ――ところで先日、西川選手は、川名TENCHO雄生選手を下からの打撃で降しました。あの稀有なスタイルは、対海外勢にも通用するでしょうか。 「そこも興味深いところでしょう。彼には何か変える可能性があるから、僕は底知れないと思っています」 ――西川選手は、強くなるのに「穴を埋める」作業という言い方をしていました。 「例えばいま、カーフキックがあったりするじゃないですか。テイクダウンされないでパンチで行くとか、技術に流行り廃りはある。でも、根本は変わらないと思うんですよ。僕はあの試合を見て感じましたね。“こいつ、首相撲をやってるんだ”と」 ――首相撲? 「西川選手は、下になったときに、首相撲が出来ているんですよ。立ち技でも首相撲をやっていたけど、ガードポジションになっても首相撲をやっていた。これ、ガードポジションを取られている側は首相撲が難しいんですよ。下からの首相撲をちゃんとやって潰して勝っている」 ――首相撲という大昔からある根本の技術を、寝技のなかでやっていたと! インサイドガードの中、上からだと首相撲はやりづらいですか? 「首を取らなくていけないけど、寝ちゃったらもう取れない。上からパウンドに行ったり、ヒジ打ちもあるけれども、首相撲にはならないんですよ」 ――うーん……そして上からの打撃を避けている。何より、足を越えさせない。超えられても戻している。 「根本の技術ですが、進化している。それが“ヴァーリ・トゥード”を冠した大会で、またMMAが進化するんじゃないかなと。西川流ができるのかなと、期待したいです」 [nextpage] エンセンvs.クートゥアーは歴史が変わる瞬間だった ――ちなみに、坂本代表にとってVTJのベストバウトとはどの試合になるでしょうか。 「ベストバウト……すごい難しいですね。やっぱり絶対に外せないのは、エンセン井上vs.ランディ・クートゥアーですね(※1998年10月「VALE TUDO JAPAN '98」1R 腕十字でエンセンが一本勝ち)。これはもう外せないです。『エポックメイキング』って、いつも僕は言うんですけど、エンセンvs.クートゥアーと、佐藤ルミナが(ヒカルド・“リッキー”・)ボテーリョに勝った(※1997年1月「修斗」3R ヒールフック)とき、この2試合はやっぱり修斗の中での変わる瞬間というか、歴史が変わる瞬間であったと思うので、VTJではエンセンvs.クートゥアーはまず絶対に外せないです。  それに、ルミナとハファエル・コルデイロ(※1999年12月「VALE TUDO JAPAN '99」1R ヒザ十字でルミナが勝利)の試合も良かったですね。それにさきほど挙げた堀口と石渡くんの試合(※2013年6月「VTJ 2nd」5R KOで堀口が勝利)も。想像を超える、何かの価値観が変わる瞬間でした。  いい試合、思い入れ深いシーンはたくさんあります。たとえば、ヒクソンが来たことは事件だし、五味(隆典)が戻ってきてくれたのは嬉しかった(※PRIDE、戦極を経て、UFC参戦前の2009年10月に「VALE TUDO JAPAN 09」でトニー・ハービーに判定勝ち)。宇野(薫)くん、(桜井)マッハ(速人)、藤井惠選手の試合も……それにさきほどのルミナと所英男選手の試合が行われたことも。 ――エンセン戦は、坂本代表はプロモーターとして組みました。rAwチームとの交渉が困難だったとも聞きます。その中でエンセン選手が勝ち切ったのは、ひとしお身に染みたのではないですか。 「そうですね。やっぱりことの大きさって時間が経たないと分からないことがあります。当時は近くにいるから見えてなくて“エンセン、やったな”と思うばかりでしたが、長いスパンで見れば見るほど、これは偉業だなと。本当の偉業って、こうしてずっと語り継がれる。堀口と石渡もそう。記憶に残る、起点になるもの──その意味で、この2試合はちょっと特別ですね」 ――“他流試合”のなかには日本人選手同士の戦いも含まれそうですね。 「一つのテーマとしては、今まで世界で戦ってきた選手との戦いも『対世界』じゃないかなと思っています。海外に出て戦うということは、周囲も含め、みんながみんなハッピーなわけでもない。でも、やっぱり外に出て、海外で試合をして、結果を出すことは大変なことです。日本にいたらチヤホヤされますよ。海外に行けば、いちから自分を構築しなければいけない。負けることもあれば、勝つこともある。そういう挑戦をしてきた人たちがいるから今がある」 [nextpage] 世界で戦って来た日本人選手から何を学ぶか ――その一歩を踏み出した選手たちと、いま日本で戦っている選手を戦わせてみたいと。 「そうですね。やっぱりその先駆けって宇野選手でしょうし、あの当時、あの階級でジェンス・パルヴァーと戦ったり(※2001年2月、初代UFC世界バンタム級(現ライト級)王座決定戦で判定0-2で敗れる)、BJ・ペンとも戦った」 ――その宇野選手のVTJ参戦や、修斗と関係のあるONE Championshipに関連した選手の参戦もあり得ますか。 「世界と戦ってきたパイオニアです。そういう人たちが日本にいる。世界で戦って来た日本人選手も、世界を知っているじゃないですか。その人たちから何を学ぶか。修斗に普段出ないような選手も呼ぶつもりです。宇野選手にもタイミングが合えば、ぜひ出てもらいたいですし(※インタビュー後、GLADIATORフェザー級王者・原口央との対戦が決定)、ONEで戦っている選手も日本を出て世界で戦ってきた選手なので、そういう選手たちにも出てもらいたいです。勝利であれ、敗北であれ、海外でそれを見つめ直した堀口恭司は、いま米国に移住して戦っている。それに近づくことをするべきではないかなと思います。勝つ方法がそこにあるわけですから」 (※発表されたイメージ動画には、宇野薫のほか、岡見勇信、佐藤将光、高橋遼伍らが登場)」 ――それは、いま日本を主戦場とする選手を後押しする形になるかもしれませんね。送り出すプロモーターとしては痛みも伴います。 「でも気付かなきゃ駄目じゃないかなと思います。行かないと分からないこともあるでしょう。成功例があるんだったら真似すればいい。そして、日本でも方法を考えて、近いテンションを何かで持ってこないと駄目じゃないですかね。 【写真】1995年9月の修斗Vale Tudo Perceptionでレオニード・ザフラスキーに一本勝ちした坂本一弘代表。ロープの最下段には細かいロープが張られていた。  僕らの時代には前例や正解がなかったから、当たり前のように長時間の厳しい練習をしていましたが、今は縮めたりできるわけじゃないですか。産業革命前と産業革命後みたいなものですよ。労働時間12時間だったのが8時間になっている。でも、便利になったからって、やるべきことはある。便利になればなるほど、やることって増えるんです。特にMMAは“何でもあり”だから、やることが多い。そこに気付いたやつだけが、ITで出来た時間やツールをうまく組み合わせて使って、格闘技を考えて戦っている」 [nextpage] 何年後かに語り継がれるような大会に ――VTJがその気付きの場になっていかなくちゃいけないと。そのために、さまざまな「対世界」を用意する。 「いつどうなるかというのはまだ分からないですが、外国人選手では、北米なら多くの人がワクチンを打っていますし、ワクチンの2回接種が行われている国が中心になってくると思います。それにアジアの台頭が著しい。そこにもきちんと向き合いたいです。もちろんオリンピックのように大量に呼ぶことは難しいですが、まずはそこにトライする。その努力を我々もしなければならない。これはもう使命感みたいなものです」 ――それをやるのは修斗でありたいという思いも。 「そうですね。修斗は常にそうでしたから。それがいい例になれば誰かが真似をするだろうし、悪い例なら誰も真似をしないし、教訓にするでしょう。いいモデルケースになればいいと思います」 ――なるほど。コロナはまだ終わっていませんが、以前仰ったように沈まなかったですね。 「何とか沈まないでいます(笑)。腰かけでやっているわけじゃないですからね。何か失敗しても、やることはやったということと、途中で投げ出しちゃうのとではやっぱり違う。『たゆたえども沈まず』ですね。どんなに強い風が吹いても揺れるだけで沈みはしない。いろいろあるけれども、結局沈没してねえよ、と。どっこい、修斗は生きています」 ――そして「VTJ」Tシャツにも長蛇の列が出来ると……。 「ハハハ(笑)。でもそれもずっとは売れないですよね。あのブームが続くとも思っていなかったです。目新しいことなんてそんなにないから、やっぱりきちんとこの競技が何なのかを根本から考えてやれないと続かない。そこにドローンを飛ばしてみたって変わらないです」 ――おっと(笑)。では格闘技を見せるって一体どういうことだと考えていますか。 「選手で言えば、格闘技って、そいつ自身が剥き出しになる。そのときに、何を背負ってその時を迎え、どう自分を見せるか。僕はいつも選手に言うんですけど、とにかく後悔がないように──“ああしておけば良かった”とか“たられば”って試合前に済ませておくもので、試合後にその悔いは健全じゃないと言います」 ――興行もそうですか? 「興行ももちろんベストを尽くすこと。同時に、継続していくこと。主催のサステインは、サスティナブルから来ていますが、持続していくためには、大怪我をしないように、きちんと土台を作ることが大事だと考えています。“怪我をしない“丈夫な土台を作るために、投資も冒険もします。選手がいい練習を続けて、コンスタントに試合をするためには大怪我をしないことが大事ですよね。でも今回はVTJですからドカンとやってやります。ただ修斗は各地域の人たちと協力しあって、アマチュアも含め、日々、大会を開催することで、常に土台を作っている。今回、VTJと修斗の2部大会で、そこからどんな戦いが生まれて更に繋がっていくのか。何年後かに語り継がれるような大会にしたいですね。期待してください!」
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