本来持っている身体能力をフルに活かすためウエイトトレーニングを再開した安保(C)K-1
2021年9月20日(月・祝)神奈川・横浜アリーナ『K-1 WORLD GP 2021 JAPAN~よこはまつり~』にて行われる「K-1 WORLD GP第2代ウェルター級王座決定トーナメント」(1回戦から決勝までを1日で行うワンデートーナメント)。
同トーナメントに出場し、1回戦でアラン・ソアレス(ブラジル/ブラジリアンタイ)と対戦する第4代K-1 WORLD GPスーパー・ライト級王者・安保瑠輝也(CLUB es/team ALL-WIN)が公開練習を行った。
「瞬発的な動きなどは普段のミット打ちでも涼しい顔でできているんですけど、同じ動きを続ける・そういう攻撃を継続する力が自分にはなかった」と自身の弱点を分析する安保。「強い選手はどのジャンルでも心技体が揃っているというじゃないですか。僕でいう二段蹴りや胴廻し回転蹴りといった華麗な“技”も、土台である“体”がなかったら出しても一流の選手には効かない。それで“体”をしっかり作ることに力を入れています」とウェルター級転向にあたってフィジカル強化に着手している。
安保のフィジカルトレーナーを務めるのは、スポーツ各分野のトップアスリートを指導する秀島正芳トレーナー。安保とのトレーニングは2年前からスタートしたのだが、2019年12月にゲーオ・ウィラサクレック戦に勝利したあと「自分がやりたくないことなのでどこかしら避けてた部分があった」(安保)と、フィジカルトレーニングから離れてしまう。年が明けた2020年3月の不可思戦こそ勝利したものの、9月の山崎秀晃戦では山崎の強打を浴びて屈辱のKO負けを喫した。
この敗戦を機に安保はウェルター級への転向、そしてフィジカルトレーニングの再スタートを決意する。秀島トレーナーは「彼は普通の選手とバネが違う。身体のポテンシャルが高い。ジャンプ力、スピード、動き一つとっても全く違う」と、安保の身体能力を高く評価。その一方でスーパー・ライト級までの減量が試合時のパフォーマンスに大きく影響していたと話す。
「安保選手はしっかり練習して減量も含めたコンディショニングが整えば負ける要素はない。トレーニングが空いた期間の試合を映像で見ていたんですけど、明らかに減量に失敗して身体が細すぎました。それで『階級が合っていないんじゃないか?』と言わせてもらったところからもう一度トレーニングを見ることになりました。もともと骨格や身長を考えるとスーパー・ライト級で戦うのには無理があったと思うし、安保選手にとってはウェルター級の方が合っていると思います」
こうして秀島トレーナーのトレーニングを再開した安保は幸輝戦でウェルター級仕様の身体を作り上げ、CLUB esで磨いているボクシング技術を存分に発揮。「幸輝戦は秀島さんに見てもらっている土台の身体があったからこそ、ずっとやってきたボクシングの技術を出して倒すことができた。秀島さんのトレーニングは間違いない」と手応えを掴んだ。
秀島トレーナーによれば、幸輝戦後は筋肉量を増やすことを意識したメニューだったが、試合が近づくにつれて「身体をどんどん動かせるような、もともと持っているバネを最大限に出せるようなトレーニングをやっています」と身体のバネ・瞬発力を伸ばすメニューに変わった。
「技術力は日々練習しているわけですから、体のバネと瞬発力を落とさなければいくらでも倒す・勝つチャンスがある。逆にいうとそこ(身体のバネ・瞬発力)が落ちてしまうと、安保瑠輝也が安保瑠輝也ではなくなってしまう」と安保が持っている技を最大限に発揮できる体作りに計画的に取り組んでいる。
フィジカルトレーニングは「身体的に一番きつい、自分との戦い」という安保。フィジカルトレーニングを終えた数日間はジムワークの動きが悪くなるというが「筋肉を壊しているのでどうしても動きが悪くなるのはしょうがない。でもトレーニングの目的は試合で勝つことであって練習で相手を倒すことじゃない」と試合当日にベストコンディションを作ることが目的であり「最後はトレーニングを抜いて作り上げた身体を癒す・自分の身体に馴染ませる期間を作るので、そうすれば試合で100%の動きができると思います」と総合的なトレーニングの効果を実感しつつ、試合に向けた自信にも繋がっている。
安保にとっては2階級制覇がかかるウェルター級王座決定トーナメント。安保は「安保瑠輝也が出場することによって助けられているトーナメント」と断言し「他の選手はプロ意識がない」と切り捨てた。
「他の選手を見ていると、プロ選手としての発言や意識、それで本当にご飯食べていく意識があるの? と思います。例えばトーナメントの会見。みんな会見が終わって、家に帰ってからSNSで自分のことを発信している。なんのために主催者が会見をやって、マスコミの人たちを呼んで、マイクを用意して、あの場を設けているのか。なんで会見の席があんねん、と。面と向かって言いたいことも言えないで、あとでSNSで言うくらいだったらSNSごとやめたら? って感じです。結局、みんな自信がないんじゃないんですか? 自分に自信があったら公の場で発言できると思うので。自信=大口を叩いて自分を追い込んで逃げられなくするパターンもありますけど、そもそもプロとしての意識も含めて、みんな自信がないのかなって印象です」
安保が2階級制覇とともにトーナメントのテーマに掲げるのが打倒・野杁正明。安保・野杁がトーナメントを勝ち上がれば、決勝戦で2人の対戦が実現する。安保自身も「絶対に決勝戦で当たる」と予想するように、ファンからも実現が期待される注目カードだ。
安保自身も「決勝まで勝ち上がるのは当たり前だと思ってるのでプレッシャーはない。ファンも俺が勝ち上がる以外のシナリオを求めていないだろうし、逆ブロックからは99.9%、野杁正明が上がってくる」と決勝での野杁戦を見据え「野杁正明に勝つ、その結果がベルトだと思う。だからベルトどうこうは考えていなくて、野杁選手に勝つこと=ベルトだと思う」と野杁に勝ってトーナメントを制覇することに意義を感じている。
そのうえで安保は「安保は本当にやれるのか? 結局、杁選手が優勝するトーナメントじゃないか? という声も大きいですけど、俺が100%野杁選手を倒してウェルター級のベルトを獲ります。K-1、格闘技の顔は俺だと思っているので安保瑠輝也に期待してください」と絶対の自信と共にトーナメント制覇を宣言した。