2021年7月31日(日本時間8月1日)に、米国ロサンゼルスのザ・フォーラムにて有観客(ノーマスク)で「Bellator 263: Pitbull vs. McKee」が開催され、メインで「Bellator世界フェザー級選手権試合&フェザー級ワールドGP決勝」(5分5R)が行われた。
優勝者に100万ドル(約1億1千万円)の賞金が与えられるフェザー級級GPの決勝戦は、同級王者のパトリシオ・フレイレ(ブラジル)に、AJ・マッキーJr(米国)が挑戦するタイトルマッチを兼ねて行われた。
試合は1R 1分57秒、AJが左ハイを効かせて左右ラッシュ、最後はギロチンチョークを極めて一本勝ち。二階級王者のパトリシオはフェザー級のベルトを手放し、GP準優勝となった。
ロングビーチ出身のAJのホーム、パトリシオにとっては完全アウェイのなかでブーイングも受けた“ピットブル”だが、試合後の会見では「彼が最高だったということ。おめでとう。今や彼がチャンピオンだ」と、素直に勝者を讃えた。
2017年4月から7連勝。ダニエル・ストラウス、ダニエル・ウェイチェル、エマニュエル・サンチェス、マイケル・チャンドラー、フアン・アーチュレッタ、ペドロ・カルバーリョ、2度目のエマニュエル・サンチェス戦に勝利、そして今回のAJ戦での敗北。すべてが「タイトルマッチ」という心身を削られる戦いのなかで、パトリシオは、「いつだってハングリーだけれど、今はちょっとだけ休むことが必要だ」と、休息を示唆している。
ブラジルから米国入りし、妻、息子らとともに決勝の大一番に臨んだ。
家族の目の前で王座陥落の姿を見せたが、愛息には『息子よ、今日は最悪の日だけど、それは人生の一部なんだ』と伝えたという。幼な子は父の敗北をまだよく理解していないものの、「でもこのことを思い出す日が来る。家族とともにいて、カオスに巻き込むことになっても、やっぱり愛し合っている」と、敗北も人生の一部として受け入れ、「もっと強くなって戻ってくる」と、再び立ち上がる姿を見せたいと語った。
試合後の会見での一問一答、そして母国の英雄アイルトン・セナの言葉を引用したパトリシオのコメントは以下の通りだ。
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再戦? いいことだ。自分がライト級のベルトを持っていて、世界チャンピオンなんだ
──AJとの試合を終えてどのように感じていますか。
「彼の夜だった。彼は素晴らしかった。頭を蹴られてほとんど自分はKO寸前で、最後にはフィニッシュされた。つまり、彼が最高だったということ。おめでとう。今や彼がチャンピオンだ」
──彼の速さや強さ等、印象として驚きや発見はありましたか。
「いや。分かっていたこと。あれはミステイクだった。よくやってしまうこと。そして彼が完璧だったということ。試合を見返して、自分は落ちて(失神して)いないし、腕をこう振っていて、最後まで戦い抜きたかった。それが自分の思っていたことだ」
──今後について。145ポンド(フェザー級)でやるのか、155ポンド(ライト級)王座についてはどうするのでしょうか。
「負け知らずでたくさんの不安を抱えるようになっていた。今日は自分にとって新しい日だ。何と言うか、違う感覚がある。もっとラッシュしたいかなと思ったり、(息子の頭を撫でながら)息子や、妻との時間を楽しみたいなと思ったり……ともあれ、もっと強くなって戻ってくるよ。それは自分でも分かってる」
──この敗戦で火がついて、この先へのモチベーションが高まったりもしますか。
「自分はいつだってモチベーションは高い。2004年にデビューして、ものすごくたくさんの戦いに身を捧げてきて、今回もそうだ。いつだってハングリーだけれど、今は休み……、いやちょっとだけ休むことが必要だ」
──息子さんの目の前での敗戦について、どのように語りましたか。
「息子にはすでに伝えていることとして、『息子よ、今日は最悪の日だけど、それは人生の一部なんだ』って。自分にとって、彼がハッピーでいることが……、つまりね、彼はまだよく何が起きているか分かっていないんだけど、でもこのことを思い出す日が来る。家族とともにいて、カオスに巻き込むことになっても、やっぱり愛し合っている。それは素晴らしいことだよね」
──フェザー級のベルトを奪った相手と、ライト級でも戦ってやろうという気もありますか。
「彼がそういうようなことを言っているよね? いいことだ。彼はフェザー級で俺を倒した。彼は体格があるから減量が大変なのも分かるし。まあ考えてみるよ。自分が(ライト級の)ベルトを持っていて、自分は世界チャンピオンなんだ」
(ここでマネージャーのエリック・アルバラシンが割り込んで)
エリック 彼は10年以上、このBellatorでやってきて、“チャンプ・チャンプ”であり、偉大なファイターであるにもかかわらず、なぜ彼が挑戦者のホームタウンで試合をしなきゃならない? Bellatorで生まれ育ったマッキー父子がホームでやって、99%が彼らに肩入れするに決まってる。だから次は、ブラジルでやろうぜ。1回くらい、チャンピオンのためにブラジルで開催してみてほしいものだ。
──いまの言葉を受けてパトリシオは?
「そういうもんだって分かってるから、自分は気にしてないよ」
エリック 36時間かけて米国に来ているこちらの苦労を味わってもらう機会があってもいいだろう……。
「彼が自分のコーチである理由がこれだ。賛成するよ、ありがとう」
──最後にパトリシオ選手からメッセージを。
「応援してくれたみんな、ありがとう。母は泣いていたし、最悪な日になったけど、このスポーツをやり続ける。またやろう」
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アイルトン・セナの言葉を借りれば、「私たちは取るに足らない存在だ。どんなに人生を計画しても──」
その後、パトリシオは自身のSNSを更新。以下のようにファンにメッセージを送った。
「私は負けるようにプログラムされていませんでした。負けた時には、これまでのキャリアを通じて、ミスの可能性をすべて修正し回避しようと、何度も調整を繰り返してきました。
成熟して経験を積むことで、アイルトン・セナの言葉を借りれば、『我々は取るに足らない存在だ。どんなに人生を計画しても、すべてが変わり得る可能性がある』。
とはいえ、人として向上する機会を与えてくれた神に感謝しています。私のチーム@pitbullbrothers の献身的な努力にも感謝します。皆さん、愛情のこもった言葉や励ましの言葉をありがとうございました。良い時も悪い時も、私を支えてくれる家族に感謝しています、愛しています。私はまた戻って来ます」。
また、兄のパトリッキー・フレイレは、弟の敗戦に「誰もが持つことのできる最高の兄弟であり、彼の階級では史上最も偉大な存在だ。パトリシオが残した功績は誰にも消すことができない。すべてのMMAファイターは、彼のようになることを夢見ている」と勇気づけ、「残念ながら毎晩が喜びの日ではないけど、私はパトリシオのことをとても誇りに思っている。ファイターとしても人間としても素晴らしい例だ。彼はもっと強くなって戻ってくると確信できる」と、再起を信じているとエールを送っている。