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インタビュー

【ONE】養蜂家からプロ格闘家に転身、元2階級王者アウンラ・ンサンの新たな旅路「誰にだって挫折や敗北はある。それをどう受け止めて挑戦するか」=7月30日(金)シンガポールで再起戦

2021/07/30 11:07
 2021年7月30日(金)シンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE:BATTLEGROUND」で、元ONE2階級世界王者アウンラ・ンサン(米国/ミャンマー)が再起戦に臨む。  ミャンマーの英雄ンサンは、コロナ禍の2020年10月と2021年4月にライニア・デ・リダーとミドル級とライトヘビー級の2つのタイトル戦で対戦。初戦でリアネイキドチョークで敗れ、再戦では判定負けを喫している。  連敗からの再起戦の相手は、レアンドロ・アタイデス。2018年5月にヴィタリー・ビグダシュを3R TKOに下し、2020年2月にンサンが2度敗れているライニア・デ・リダーに判定まで持ち込むも敗れているブラジルの強豪だ。  ンサン対策としてデ・リダーとも練習を積んできたというアタイデスを相手にンサンは、米国のサンフォードMMAでローリー・マクドナルドらと練習。技と技を繋ぐトランジッションに磨きをかけてきた。  養蜂家として全米を渡り歩いた生活から、MMA一本に賭けて母国のヒーローとなったが、「自分のことをヒーローだとは思っていない」という。1月に生まれた愛娘や妻のために「父親として、夫として、自分の人生をただシンプルに生きようとしている。誰だって失敗するし、誰にだって挫折や敗北はある。でも、それをどう受け止めて挑戦するのかが大事だ。ベルトを奪還することを約束するよ」と、元王者は落ち着いた表情で語った。 残りの数年で過去最高の自分になって、ファンのためにエキサイティングな試合をすることが一番。誰かに何かを証明するつもりもないし、自分がやっていることにベストを尽くしたい ──米国からシンガポールへの渡航、コンディションはいかがでしょうか。 「シンガポールに戻って来れて嬉しいね。(フライトは)ドーハで2時間くらいのトランジットだったので特に問題はない。体調はとても良く、ファンタスティックだ。好きなことが出来るのは素晴らしいことだね」 ──髭を伸ばしているんですね。 「ベルトを獲り返すまで伸ばすつもりだよ」 ──相手のアタイデス選手が『アウンラは僕の打撃を甘くみている。以前より改善できているし、打撃で仕留めるよ』とコメントしていましたが、これはただのトークだと思いますか。それともそういう試合になると思いますか。 「彼を甘くみたことなんて一度もない。彼はパワーがあるよね。ただ、みんな知っている通り、僕はストライカーだ。試合をしてみないと分からないけど、僕の過去の試合を見れば、彼がそのゲームプランで最後まで逃げ切れるとは思わないね」 ──この試合はどんな展開になると思いますか。フィニッシュを狙っていますか、それともどんな形でも勝利することが優先でしょうか。 「まずは、何よりも勝ちたい。どの試合でもフィニッシュを狙っているし、この試合では相手にプレッシャーをかけ続ければフィニッシュ出来ると信じているよ」 ──フィニッシュはノックアウトですか。サブミッションですか。 「ノックアウトだろうね」 ──先週、米国のサンフォードMMAでローリー・マクドナルド選手と練習していましたよね。元世界王者でアウンラ選手のように経験豊富な彼との練習はどんな時間でしたか。 「ローリーは素晴らしい。彼のトランジションスキルは最高だよ。彼は色んな動きを混ぜるのが得意で、僕は打撃は打撃、グラップリングはグラップリング、レスリングはレスリングって分けてトレーニングするタイプなので、たまにトランジションを忘れがちなんだ。でもローリーはとてもスムーズで、トランジションに長けています。彼は僕より少しだけ体格が小さいけど、動きは僕より速い。彼に色々と助けられているよ」 ──再びタイトルを獲るためにタイトル戦を早く行いたいですか。それとも目の前の試合に集中していますか。 「もちろん目の前の試合に集中している。いつでもアクティブでいたいんだ。より良い格闘家でいたいし、良いパフォーマンスをいつでもファンに見せたいです。誰かに証明することは特になくて、より良い試合をファンに見せること。それが今やるべきことだと思っているよ」 ──前回のライニア・デ・リダーとの試合に敗れてライトヘビー級タイトルを失ったことは、この試合に対するプレッシャーになっていますか。 「いつだってプレッシャーはあるよ。前よりももっと良い試合をするという意味では。でも、僕はプレッシャーをうまく扱うことが出来るから、とにかく試合でベストを発揮することさ。誰にだって、どの試合に出ている選手にだってプレッシャーはあるものだと思う。今回の大会の1試合目からメインまで、どの選手にもプレッシャーはあるものだよ」 ──前回の試合からこの試合に向けて、どんなトレーニングキャンプを過ごしてきましたか。 「レスリング、グラップリングの練習を色んな体格のファイターたちとしてきた。サンフォードの最高のメンバーたちがサポートしてくれて、夜遅くでもトレーナーやコーチにも協力してもらったんだ。さっきも言ったように、とにかく前よりも良いパフォーマンスをすることが一番。前回の試合では負けたけど問題ない。その負けから学んで改善できるようにトライしているから。この試合で、ハイレベルのパフォーマンス、より良いパフォーマンスを発揮するだけなんだ」 ──ご自身が所属のサンフォードMMAでどんなことに重点を置いてトレーニングしていますか。また、ジムには素晴らしい選手がたくさんいる中で、この試合に向けての練習相手には誰を選びましたか。 「爆発的なパワーがあって強い選手たちを選んで練習してきたよ」 ──逆にアタイデス選手はライニアー・デ・リダー選手と練習していたようですね。それはンサン選手にとってモチベーションになっていましたか。そのアタイデス選手を倒して、ライニアーに再び挑戦しベルトを獲り返すというような意味では。 「真剣な話、そうだと思うよ。コンテンダーとして、ライニアーを追い込んだ男として。ライニアーが何を教えたかは知らないけど、アタイデスの体格はライニアーとは違う。(彼らが一緒に練習していたことは)全然関係ないと思う。練習していたとしても、彼がやりたいことをすればいいだけさ」 ──2試合連続で同じ相手と戦って、残念ながらベルトを失ってしまいました。現在の目標はどこに設定していますか。ミドル級のベルトでしょうか、それともライトヘビー級でしょうか。 「自分の体格のことを考えると、ミドル級がベストの階級だと思う。この階級でベストバージョンの自分を発揮して、ファンに良いパフォーマンスを見せること。そしてベルトを獲り返すこと。誰にだって挫折や敗北はあるもの。誰だって失敗する。でも、それをどう受け止めて挑戦するのか。ベルトを奪還することを約束するよ」 ──同じ相手と別のベルト(ミドル級とライトヘビー級)を懸けて戦ったことについて、それは必要だったと思いますか。 「いや、元々はその予定ではなかったんだ。元々はビタリー・ビグダシュとの3戦目のはずだった。でも、ビタリーがコロナか何かで試合が出来なくなってしまい、相手が変わった。でも、これまでもこれからも試合のオファーを断わることはないので、誰が相手だって、いつだって戦うよ。僕にとっては(相手が変更になったことは)仕方ないこと。誰にでも相性が悪い対戦相手っているよね。僕にとってはそれがライニアーなんだ。ただ、彼は、僕がやってきたことをしなければいけない。タイトルを奪ったら、僕がやって来たように、何度も守らないといけない。僕は自分に集中して、弱点を克服して、良い総合格闘家になること。そしてファンに良い試合を見せること。それが今の一番の目標だ」 [nextpage] アバゾフも岡見も僕との試合を望んでいる。良いマッチアップはたくさんある ──ビタリー・ビグダシュ選手との試合(2020年と2021年4月)がキャンセルになったと仰っていましたが、その試合はいつ組まれると思いますか。 「たぶん、この試合の後じゃないかな。それは本当にONE Championship次第だから、誰が次でもいい。ONE Championshipで14試合戦ってきたけど、一度もオファーを断ったことはあないんだ。誰が相手でも戦うのが自分だ。僕は、『この選手と戦いたい』ってあまり言わないけど、チャンピオンだった時は色んな選手が僕とやりたいって声を上げた。そうやって試合が組まれることもある。次がビタリー・ビグダシュとの3戦目でもいい。とにかくアクティブでいたいし、より良い状態でいたいんだ」 ──いつものアウンラ選手の試合は動き溢れる試合でしたが、過去2戦は違うように見えました。 「確かに過去2試合はディフェンスばかりの試合だった。グラップリングマッチみたいになってしまって、本当に面白い試合ではなかったと思う。この試合では、レアンドロと良い試合にできるようにしたいね。ファンを興奮させる試合をしたい」 ──この試合で勝った場合、ライニアー選手との再戦を希望しますか。 「ONE Championshipが何て言うか次第なので、あまり気にしていない。もしやるなら、彼との試合のためにしっかり準備をするよ。そうじゃないとしても、良いマッチアップはたくさんあると思う。ONEウェルター級世界王者のキャムラン・アバゾフも僕との試合を望んでいたし、レジェンドのユーシン・オカミ(岡見勇信)も僕と試合をしたいって言っていたのを分かっている。良いマッチアップはたくさんあるじゃないか。ビタリー・ビグダシュとの3戦目だってある。僕はとにかくファンのために良い試合をしたいんだ。残りの数年で、過去最高の自分になって、ファンのためにエキサイティングな試合をすることが一番で、誰かに何かを証明するつもりもないし、アンチに証明することもない。今やっていることに嬉しく思うし、自分がやっていることにベストを尽くしたいんだ」 ──ウェルター級に落としてアバゾフと戦うということでしょうか。 「いや、彼がミドル級に階級を上げてという話さ。彼もそう言ってたよね。僕はライトヘビー級のために身体作りをしていたから、もうウェルター級には落とせないよ」 ──プロの格闘家である以前に、アウンラ選手は養蜂家でもありましたし(かつて米国フロリダ州フェルダのEisele Honey and Bee Pollination社で養蜂家としても働いていた)。それに、母国に帰った時は、学校を訪れたり、チャリティーにもとても積極的です。母国のヒーローであることに関して、どのように捉えていますか。 「養蜂をしていたときは、ほとんど毎日蜂に刺されていたけれども楽しかった。外での作業もはちみつ作りも、受粉作業も好きだった。受粉のためにいろんなところに行ったよ。カリフォルニアではアーモンドを、ウィスコンシンではクランベリーを、ミシンガンではブルーベリーを、フロリダではオレンジを受粉した。そういった移動型のライフスタイルはすごく自由に思えた。養蜂の仕事は安定していたけど、格闘技への思いが深まり、養蜂の仕事を辞めてMMAに向かった。  僕は普通の人間で、自分で自分のことをヒーローだとは思っていないんだ。ソーシャルメディアをチェックしたり、物事を調べることを心がけたり、良い人間でいられるようにトレーニングしている普通の人間で、自分のことをヒーローって思うのは好きじゃないんだ。父親であり、夫であり、自分の人生をただシンプルに生きようとしているだけ。そういう中で自分の周りにいる人たちをできる限り助けていきたいと思っているよ」 ──最後に、ご自身が思うこの試合の予想を教えてください。 「3Rのどこかで試合が決まると思う。この試合は、プレッシャーと興奮が溢れる試合になる。みんながこの試合を楽しんでくれることを願っているよ。たくさんの応援、サポートに感謝しています。ありがとう!」 【関連記事】 レアンドロ・アタイデス「ンサンは寝技を練習してきただろう。それでも彼の弱点は、いまだにグラウンド技術だと思うよ」 澤田龍人「シンガポールでフィジカルや技術面で成長。メンタルも日本にいるときより強くなっている」=7月30日(金)元五輪レスラーと対戦 “レジェンド”サムエーがV2戦「僕はオープンフィンガーでの試合に慣れているし、どう使うべきかを熟知している」 サムエーに挑む超絶テクニシャンのプラジャンチャイ「コンパクトに守り、左側からの攻撃には十分に注意しなければならない」 [nextpage] ONE: BATTLEGROUND 全カード 2021年7月30日・午後9時30分~ONE SUPER APP、ABEMA「格闘チャンネル」にてライブ配信 ▼ONEストロー級ムエタイ世界タイトルマッチ サムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)王者プラジャンチャイ・PK・センチャイムエタイジム(タイ)挑戦者 ▼ミドル級 5分3Rアウンラ・ンサン(米国/ミャンマー)レアンドロ・アタイデス(ブラジル) ▼ストロー級 5分3R澤田龍人(日本)グスタボ・バラート(キューバ) ▼アトム級 5分3Rリトゥ・フォガット(インド)リン・ホーチン(中国) ▼バンタム級 5分3Rチェン・ルイ(中国)ジェレミー・パカティウ(フィリピン) ▼アトム級 5分3Rビクトリア・リー(米国)ワン・ルーピン(中国)
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