試合が終わった時、もの凄く価値のある一戦になっている
──1月の内藤太尊戦での勝利、環太平洋タイトル初防衛おめでとうございました。
「ありがとうございます。周りの皆さんからも『獲るより守る方が難しい』とか『気を引き締めろ』とか色々お言葉を頂きました。でも自分の中ではどの試合も同じ気持ちで挑むように心掛けています。もちろん今持っているタイトルへの想いもありますが、気持ちを変えずに試合に臨んでいます。どの試合でも同じ、腹を括って試合をしています」
──ジンクスとかは気にしない?
「全然気にしないです(笑)。ネガティブなジンクスは気にしないようにしています。内藤戦も落ち着いて試合に臨めました。プランとしては、相手は簡単に諦めない印象だったので、パウンドアウトよりしっかりサブミッションさせるというものでした。絶対に3Rに息を吹き返すと思っていたので、2Rにフィニッシュできたのは良かったです。作戦を立てて一つずつ潰していくような戦いになりましたね」
──これで大怪我から復帰以来6連勝となりました。とても大怪我をしていたとは思えない活躍です。
「長かったですもんね(苦笑)。2015年の全日本選手権決勝で右手前腕の尺骨を折りました。バックハンドブローで折って。その時は治ったのですが、次にデビューから2戦目の直前にまた同じ所を折って。折れた腕のまま試合に出て、そのどちらも相手が飯田健夫選手という(笑)。そこから2戦、右手は折れたままで左手一本で戦っていた状態でした。
2016年の年末から治療に入るのですが、そこからが長かったんです。人工骨を入れる手術を受けたんですが、復帰後すぐにまた同じ箇所を折ってしまって。その後は固定具を入れて、ひたすら休ませるようにしました。完全に骨が安定するまで休ませて。安定させるまでに約2年7カ月かかりました」
──その間ずっと修斗スタッフから「焦るな、休め」と言われていましたね。
「言われてましたね(苦笑)。怪我をしている間、チームメイトの黒部(三奈)さんがベルトを獲ったり、同級生の榎本明が有名選手に勝ったりとか、そういう姿を見て自分の中でも焦りがあって休まなかった……休めなかったんですね。それで長引いてしまった所もあります。21歳の時かな、それくらいの年齢の時って、肉体的にも精神的にも大きく成長する時期だと思うんです。そこで焦りを加速させてしまった。若かった自分には精神的にキツかった」
──諦めそうになったことはなかったですか?
「ありました。でも辞められなかったですね。何も出来なくてもずっとジムには来ていたんです。シャドーだけでもやりに来ていました。そしたら来る度にジムの会員さんたちが声をかけてくれて、それで救われました。弘中(邦佳)代表が作ったジムのカラーというか、みんなが家族みたいに仲が良くて。それが心の支えになりました」
──その支えがあったからこそだとは思いますが、復帰後はその思いが一気に爆発するような活躍で6連勝を飾ります。
「ありがたいことです。結果として勝てていますが、弘中さんからも常々言われている事で、連勝して調子の良い時こそ気を引き締めるよう心がけています。もちろん嬉しい気持ちはありますが、連勝中でも気を抜く事はなかったです。もっと上を目指すならば、さらに勝ち星を重ねなければならないし、次に求められる事はもっと高い内容になります。僕はみんなの期待、想像を超える選手にならないといけないと考えています」
──さらなる高みを目指し、いよいよ世界チャンピオン決定戦のオファーが届きました。対戦相手はこちらも7連勝中の工藤諒司選手です。
「工藤選手とは必ずどかかのタイミングで当たると思ってましたので驚きはありませんでした。もっと早いタイミングで当たると思っていました。うん、“ようやく来たな”という感じです」
──工藤選手にどういう印象をお持ちですか?
「危険な匂いがする選手。技術、メンタルを超えた所で強い、生物的な強さを感じています」
──物静かで感情が読み取れない部分を感じます。
「言葉も交わした事がないので、性格的な事は分からないのですが、試合を見てるだけで強さは感じています」
──打撃で押して組み勝って、トップを取ってパウンド……スタイル的に2人は似ている部分が多いと感じます。
「それはよく言われます。似ているかもしれませんが、お互いベースが違うので、質の違いは感じています。僕は柔道がベースだし、工藤選手はレスリング。タイプは似ていても、中の技術は全然違うものです」
──その中で勝負のポイントになる所はどこになると感じていますか?
「一発の破壊力は向こうが勝ってると思うので、僕はその一発をいかにもらわないようにするか。一瞬でどんどん状況が変わるような展開になると思います。僕の強みはグランドでもスタンドでも勝負できる所です。穴を見つけたら、そこをどんどん突いていきます」
──短期決戦になるか、長期戦になるか……。
「向こうは序盤から飛ばしてくるでしょうね。でも僕は長く戦うつもりでいます。僕は後半にかけて調子を上げていくタイプ。しんどい勝負もどんと来いという気持ちでいます」
──今回ばかりは本当にしんどい勝負になりそうですね。
「際の上手い選手なので、少しでも集中力を欠くとやられるんじゃないかと思います」
──見ている側としてはとてもゾクゾクする試合です。
「そう言って頂けるのは嬉しいです。多くの方に、この試合が見たかったと言われます。皆さんが『楽しみだ』と言って頂けるのが嬉しい。勝敗はどっちに転ぶか分からないですが、試合が終わった時には、もの凄く価値のある一戦になっていると思います」
──そしてSASUKE選手といえば勝った後のマイクパフォーマンスにも注目が集まっています。
「最近はマイクのハードルも上がってますよね(笑)。もちろん抜かりなく準備しますよ」
──SASUKE選手の後押しをするように、当日は大応援団が来場されますね。
「ありがたい限りです。チケットの完売がなければもっと増えていました。皆さんから温かい言葉が力になります。感謝してもしきれないです。当日は声は出せませんが、皆さんの気持ちが爆発するような試合をお見せしますよ。しっかり準備はしてきたので、皆さんの期待と想像を超える勝負を見せて、世界チャンピオンになります。時期的にオリンピックと被りましたが、修斗に来て良かったと思ってもらえるような試合をお見せします。当日は第1試合からメインまでをストーリーとして見て頂きたいです。絶対に後悔はさせません」
──今大会は当日券の販売もなく、完全完売となりました。会場に来れない方はABEMAでの生中継でお楽しみ頂くようになります。
「今はABEMAさんのご協力があるからこそ、修斗の大会も行えてると思います。格闘技を広める為に凄く尽力頂いてます。ぜひこれからもABEMAさんで格闘技を、修斗を見て楽しんで頂きたいと思います。僕の試合は画面越しでも何かを感じてもらえる試合になると思います。ABEMAを見て楽しんでいただけたら、次回はぜひ会場に観に来てください!」