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【RIZIN】“キラーか王子”か、恐るべき24歳・井上直樹「次は朝倉海選手と。誰かに獲られる前に自分がやりたい」

2021/06/22 14:06
【RIZIN】“キラーか王子”か、恐るべき24歳・井上直樹「次は朝倉海選手と。誰かに獲られる前に自分がやりたい」

(C)ゴング格闘技/若原瑞昌/RIZIN FF

 2021年6月13日『RIZIN.28』東京ドーム大会のバンタム級トーナメント1回戦で、石渡伸太郎(CAVE)を1R 1分58秒 TKOで下した井上直樹(セラ・ロンゴ&ワイドマンMMA)が、2回戦の相手に朝倉海(トライフォース赤坂)を指名。「もし次も抽選会になるなら、朝倉海選手の横に(座る)。誰かに獲られる前に」と、ターゲットを定めた。

 練習先の横浜SONIC SQUADでは、その風貌と物腰柔らかく言葉少ない立ち振る舞いから“王子”と呼ばれる井上だが、サラリと語る言葉のなかに“キラー”ぶりを覗かせるのも、いまのファイター井上直樹の充実ぶりを表している。

 試合後の会見で、2回戦について「誰でもいいですけど、本当に強い選手とやりたい」と、石渡に続いて強豪との試合を望んでいた井上。試合後には、自身と姉の魅津希のYouTube大沢ケンジのチャンネルにも出演し、石渡戦の勝利や今後について語った。

 2017年のRIZINバンタム級トーナメント準優勝者である石渡を相手に、当初は5分3R=15分を戦い抜いて判定で勝つつもりでいたという。

 試合後の取材では「もっとガンガン来るのかなと思ったけど、結構落ち着いてくるんだなと感じた」という石渡に対し、序盤は、距離をキープして「足から蹴って行こう」と考えていた。

 オーソドックス構えから、サウスポー構えの石渡に対し細かくスイッチして前足でローキック、さらに右足でインローと、相手の前足をコツコツと蹴っていった。カーフキックは、水垣偉弥との練習で試していたという。

「距離を取って足が届くところで戦おうと。ローキックでバランスを崩していたので、これは下に意識が行っているなと思い、途中でハイも蹴って、いろいろ散らして組み立ててはいました」と序盤の蹴りの距離を振り返る。

 前後・左右、どちらもステップワークに長けている井上にとって、石渡戦でのスタンドでのポイントは「距離」と「立ち位置」だった。「やっぱり左のパンチずっと気をつけて」石渡の左ストレートを警戒し、そして前手のフックをステップバックでかわした井上は、喧嘩四つで、相手の外足を取ることにしていた。

 サウスポーにとって、相手の外を取るか内を取るかは選手によって、場面によって異なる。オーソドックス構えの井上の前足は左足。サウスポー構えの石渡は得意の左を真ん中に打ち込むために井上の前足の外に右前足を置いてくるだろう、それをさせないために井上が外足を取ろうという作戦だ。

「もっと(外)を取りに来るかなと思っていたけど、外は取れていた」という井上は、カーフを狙いつつ、「あれで向かってくるようだったら関節蹴りとかも考えて練習もしていた」と、キラーな動きも用意していた。

 石渡の左右をかわした井上は、圧力をかけてコーナーに追い込む。コーナーの水垣が「足の位置取りな」と声をかけたときに、井上は右の前蹴りに続いて右ストレートに。それを右に回ってさばいた石渡は、大きく右足を外に踏み出すと右フックをヒット。それを首筋にもらった井上は片ヒザをマットに着いた。

 会見でその瞬間を井上は「いや、ぜんぜん自分は効いてないなと思った」という。「よく見ると(顔に)当たってないと思います。自分もそのときに右ストレートを当てているんですけど、あの時は石渡選手の右足が自分の左足の外側を取られていて、なんかラリアットみたいに押されるような感じで(倒れた)」

 大きく踏み込んできた石渡に外足を取られ、右を出したところにカウンターで外から前手の右フックでなぎ倒されたが、ダメージはなかった。

 大沢ケンジから「組みに行くことは考えなかったか」と問われた井上は、「その後も左右に足が動けてますし、当てられた瞬間に組みに行くことも考えなかったです。効かされていたら(クリンチで)組んでいたかもしれないですけど、(右は力が)乗っている感じはしなかった」

 ダメージはなかったが、イメージは悪かった。

「(石渡のパンチで)会場が沸いていたので、“ああこれ効いてないけど印象は悪いな”と感じていました。ヒザも(マットに)着いちゃってたから効いてるように見えるな、と」

 そこを詰める石渡は右ジャブもヒット。一瞬頭が上がった井上を見て、石渡は頭を下げて左をフック気味に低い位置に振るが、その打ち終わりに、井上はシャープな右ストレート! 足に効かされた石渡をすかさず詰めて右アッパー、左ストレート、右の連打でダウンを奪い、石渡の立ち上がり際に右のサッカーキックも打ち込み、レフェリーを呼び込んだ。

 フィニッシュの前にもらった右ジャブも「あれもそんなに、という感じで、ポンともらったと同時に僕の右も入っているんです。そのときにちょっと(石渡が)与太ってるのが見えて、“あっこれ効いたのかな”と思ったんですけど、それでも向かってきてたんで“オオーッ”という感じで。もうカウンターに徹してたという感じですね。カウンターを取ってやろうと」

 石渡の左は脅威だが居つくことがある。その左の打ち終わりに右をジャブのように突き、フィニッシュまでのコンビネーションの最後は立ち上がって来た石渡にサッカーキックを打ち込んだ。

「しっかり拳に当たった感じはした。当たったなと。すごいヨタヨタってしてたんで、ここは攻めるべきだと。右アッパー、左、右と畳みかけて、サッカーキックはみんなも練習していると思う」

 水垣とのミットでは、打たせて倒れ込んだ水垣がグラウンドでもミットを構え、そこに蹴り、そして立ち上がり際にもミットにサッカーキックを打ち込む練習をしてきた。そしてシャープな右は、「志朗選手(RISE DEAD OR ALIVE 2020 -55kg優勝)との練習で成長したと思います。カウンターは練習していました」と、井上は語る。

 118秒 TKO勝ち。短期決戦となったが、「3Rの消耗戦になる準備もしてきました。あそこで石渡選手が攻めてきてくれたから、ああいう展開になった。カウンターをもらっても前に出てきた。石渡選手とだからこそ出来た試合かなと思います」と、1回戦屈指の“潰し合い”のカードを振り返った。

 石渡にコーナーに詰められたとき、セコンドの安田けん(SONIC SQUAD代表)は「王子、出ろ!」とコーナーから出るように指示している。

「最近、ジムで普段から“王子”って呼ばれて、最初は恥ずかしかったけどだんだん慣れて来て……慣れって怖いな」と苦笑する井上だが、シャイな中にも感情を爆発させるときがある。それは共に練習する仲間と勝利を分かち合うときだ。

 勝利にコーナーに体ごと飛び込んでハグをする。その勢いを魅津希に指摘されると、「前回は安田さんが口を切って、今回は水垣さんがリングから落ちそうになった」と、笑顔で語った。

 試合翌日に大好きなパンを解放。「食パン一斤食べながら、SNSのコメントを見て、それだけで1日終わった」と幸福を反芻するが、「もうちょっと(試合を)やりたかった」ともいう。

 渡部修斗、元谷友貴、石渡伸太郎をいずれも1Rでフィニッシュ。GP制覇に向け、怪我無く勝ち上がることは重要だが、「それ以上に練習をやっていたから、試合ではどうなるか分からないから、やってみたいというのはあった」と、本番で試してみたいことがあったようだ。

 2回戦は9月が濃厚だ。ライバルたちの1回戦を見た井上は、誰との対戦を望むのか。

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