負けを認めることが必要。負けたくないから全部できるようにしたい
【写真】2017年4月、日本人史上最年少の19歳でUFCと契約したときの井上直樹。
豊橋出身の井上魅津希&直樹、朝倉未来&海の兄弟。浜松・磐田出身ボンサイ柔術のホベルト・サトシ・ソウザとクレベル・コイケ、ヤマニハらと、製造業が盛んな東海地方のファイターが活躍していることは興味深い。
井上は小学1年生の夏、7歳で地元豊橋の空手道白心会に入門、格闘技を始めた。その理由は、喧嘩で上級生に「どこかに落とされて、いつかやり返してやろう」と思い、空手を始めたという。大人しいが、内に秘めるものがある。
バンタム級GP優勝候補に挙げられる朝倉海と井上直樹は、ともに空手出身。さらに、愛知県立豊橋工業高校の先輩・後輩にあたり、同じ電気科卒業だという。
異なるのは、27歳の朝倉海に対し、井上直樹はまだ24歳。2017年に一度、日本人史上最年少の19歳でUFCと契約していることだ。
縮小方向にあったUFCフライ級戦線でわずか1敗でリリース後は、日本のバンタム級に戦場を求め、コロナ禍もあり帰国して新たな練習環境を整えたが、「アメリカに短期でも行って試して技術を習得してまた日本に戻る、そういう形でもいいのかな」という。
米国では、現UFC世界バンタム級王者のアルジャメイン・スターリング、同級10位のメラブ・ドバリシビリ(9.25 マルロン・モラエスと対戦)らが練習仲間だ。
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— UFC (@ufc) June 23, 2018
プロ18戦中2つの黒星は海外でのもの。ひとつはUFCでの最終試合のマット・シュネル(現フライ級9位)戦でのスプリット判定負け。もうひとつは2019年2月、CFFCでフライ級王者のショーン・サンテラと対戦し、0-3の判定負けだった。井上戦後もサンテラは2勝1分と負け無しの強豪だ。
サンテラ戦では、「BJJ(ブラジリアン柔術)の得意な相手に打撃でそのまま行っていたらよかったのに、寝技でつきあって、ずっとトップ、バックを取られて自分の力が出せなかった。一番ダメなパターン」と振り返り、「負けを認めることが必要。負けたくないから全部できるようにしたい」という。
「アルジャメインやメラブとのレスリング、マット・セラ、ヘンゾのジムで(グラップリングでは)ボコボコにされるから。結局、自分がどうしたいか。足りないものを補うこと、得意な部分をもっと伸ばしたいのか、自分でいろいろ考えることが必要」と、米国に残りUFCで戦う魅津希と語る。
RIZINバンタム級トーナメントを制し、目指すはUFCバンタム級での再挑戦だ。
「UFCの同じ階級の試合はもちろん見ます。フライではなくバンタムでやってみたい。1回リリースされていますから、いまどれくらい出来るのか分からないので、アルジャやメラブとの練習で試したい。24歳で、いまやっぱり(格闘技が)楽しいですね」と目を輝かせる。
試合後の無言のフリップは、「那須川天心選手と永末“ニック”貴之トレーナーが考えた」もの。「口下手だからどうしよう」と相談したところ、「無口でやるのがいいんじゃないの」とスケッチブックでのめくり芸を提案され、「結構直前までどうしようかなって考えてたんですけど、やるかってなって。直前に水垣選手が急いで書きました」。
“デスノート”と化したキラー井上の決まり手予告は「チョーク」だったが、実際にはサッカーキックでのTKO勝ち。実は自身初のTKO勝利だった。
「2試合連続でチョークで極めてたんで、判定になってもKOでも『チョーク』と書いたままで行こうと。チョークなら“おおっ”となるし、チョークじゃなくても笑いになる。試合後のマイクは緊張して周りの声が聞こえないから、シャットアウトしてスケッチブックをめくることに専念していました」と苦笑する。
「試合中の方が周りの声が聞こえる」という。内気で寡黙な“王子”は、何より試合内容で雄弁な“キラー”ぶりを発揮する。
会見の最後に「優勝する自信」を問われた井上は、「まだ(今後の組み合わせが)どうなるか分からないんで、次を勝って、年末の準決勝・決勝が1日になるかもしれないので、怪我とかも注意していけたら」と淡々と言い、最後に「全然大丈夫かなという感じですね」と、語っている。
俺にはスパーしてるときはこう見えてる。。。 pic.twitter.com/H8pFDbXe44
— Takeya Mizugaki (@takeya_miz) June 12, 2021