2021年6月13日『RIZIN.28』東京ドーム大会のメインイベントで、朝倉未来(トライフォース赤坂)に2R、三角絞めで一本勝ちしたクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が、自身のYouTubeチャンネルを開設。一時は引退を示唆した朝倉に「諦めないで続けてください」と現役続行を希望し、「また将来、もう一度、最高の舞台でリングの上で向かい合いましょう」と再戦を呼びかけた。
6月18日夜に「はい、みんな、こんにちは。私、コイケ・クレベルです。これからYouTube始めるよ」と、予告篇に続く第1回をアップしたクレベル。
「朝倉のこと話したい。でもまだ日本語上手じゃない。とりあえずポルトガル語で(話します)。通訳入れるから心配しないで」と、ポルトガル語で、東京ドームのメインで戦った朝倉未来について、語り始めた。
「まず最初に、この東京ドームのメインイベントでの戦いに、私を選んでチャンスを与えてくれたことに感謝します」と、朝倉に感謝の言葉を述べたクレベル。
その理由について、「おそらくこれは私たちファイターにとって非常に重要なことで、日本のMMA(総合格闘技)にもう一度、パワーが戻ってきて、長い期間、私たち格闘家が“シンブン”の一面を飾るようなことはありませんでした。私たちの試合が新聞の表紙を飾り、この試合がいかに大変なことだったのかが分かりました」と、世間的にも大きな反響を呼んだことを挙げた。
そして、その反響が自身の力ではなく、YouTuberとして、幅広い世代から支持を得ている朝倉との試合だったからこそ、注目を浴びたとした。
「これはすべて朝倉未来選手のおかげだと思っています。なぜならあなたは日本の格闘技界に革命を起こしました。あなたはSNS、YouTubeなどを駆使し、日本のMMAの人気をトップに押し上げました。あなたたち朝倉兄弟の仕事により、子供から大人まで一般の人が格闘技に興味を持つようになり、日本のMMAのエネルギーが戻ってきたことを感じました。あらためて、未来選手の仕事に感謝しています」
その上で、クレベルは試合後の会見で引退を示唆した朝倉に対し、敗戦の厳しさへの共感と、その敗戦が自身を強くしてきたこと。引退せずにファイターを継続することで、再び拳を交える機会があることを語った。
「朝倉選手の引退について、私は試合に負けた時がいかに辛いかを経験上、よく知っています。私はそれを何度も経験し、ファイターの人生とはまさにこれのことで、勝つ日もあれば負ける日もあり、それがファイターの日常です。しかし、諦めないで続けてください。そして、私たちはこれからも戦い続け、また将来、もう一度、最高の舞台でリングの上で向かい合いましょう。
未来選手、あなたに送りたいメッセージは、さらに仕事を続けてください。勝利した時よりも負けた時の方が大きく成長することを私はよく知っています。私は敗戦の味がいかに苦いかをよく知っています。しかし、私たちはさらに仕事を続けましょう」
朝倉未来は、試合4日後の17日に、「YouTubeを辞めて格闘技だけをやればいいってのは当事者じゃないから言える綺麗事。社長として人生を変えてしまった仲間を守っていく責任もある。メンバーは辞めてもいいと言うけど、その選択はないし、この環境で俺は復活する」と、引退を撤回。
翌19日には、「俺は負けない事に必死になりすぎていた。あと何試合出来るかわからないけど、また負けるかもしれないけど、次からは勝ちに行く」と、クレベルの寝技を警戒するあまりに、自身の持ち味である打撃で最後の詰めを躊躇し、KOのチャンスを逸したことを反省点に、再起を誓っている。
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私からのお願いは、朝倉選手に顔を上げてもらい戦い続けてほしい
試合では、スタンドで優位に立つ朝倉が、クレベルの組み・引き込みを断ち切り、消耗を誘いながら打撃をヒットし始めていた。そんななか、2Rに朝倉の右目を大きく腫らせたクレベルのコーナー際でのヒジ打ちは、クレベル陣営の鈴木博昭が授けた作戦だった。
クレベルにどうしてもテイクダウンされたくない朝倉は、相手の脇を差し上げるために腕を下に置くことになる。その顔面が空く瞬間をクレベルはヒジ打ちを狙っていた。
伸びきるような打撃。上体は浮くが、たとえ相手に組まれても引き込めばいい。朝倉としては、その引き込みが効力を発揮しにくい、コーナー下に落とすことで、下からの動きを制限するつもりだったが、その少ないスペースのなかで、前に出してきた腕をクレベルは巧みに逃さず三角絞めへ。予告通り、1回の相手のミスを勝利に繋げた。
すべてが高いレベルで出来た上で、さらに突出した武器を持つのが現代MMAのトップレベルだ。その意味では組みに不安を持つ朝倉と、スタンドとレスリングに難があるクレベルの両者ともに、ウェルラウンダー同士の戦いではなかった。その得意な部分と苦手な部分での競り合いの勝負で、クレベルの殺傷力が上回ったと言える。
「おそらく私たちの戦いは長い格闘技の歴史に語り継がれていくでしょう。私からのお願いは、様々な人のモチベーションのためにも、朝倉選手に顔を上げてもらい、仕事を続け、戦い続けてほしいということです」と、クレベルは激闘を越えた盟友に語る。
そして、心身ともに追い込まれたがゆえの失神した相手への咆哮は、「いろいろな人から、試合で朝倉選手を極めた直後に何を言ったのか聞かれます。実際の話、あなたとの熱い戦いでアドレナリンが出ていて、熱くなってしまって何を言ったのか覚えていなくて、でもあなたの気分を害するつもりは全くなく、もし変なことを言ってしまっていたとしたら、朝倉選手に申し訳なく思います」と謝罪した。
続けて「私がしたいのは、チャンピオンになるため、ファイターとしての仕事をするという、ただそれだけです」と、あらためてRIZINフェザー級のベルトへの想いを語った。
チャンピオンベルトを持つ斎藤裕もヴガール・ケラモフとの激闘を制し、「年内にクレベル選手と防衛戦をやりましょう」と語っているため、次戦はいよいよタイトルマッチとなるか。
週1回くらいでファイターとしての日常やトレーニング風景などを投稿していく、というクレベルの今後にも注目だ。
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