2021年4月の「ONE on TNT 3」で、難敵リース・マクラーレンを相手に判定3-0で勝利を掴み、4連勝をマークした若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)。試合後、ONEフライ級ランキングは3位にランクアップした。
その上には2位のダニー・キンガッド(フィリピン)、1位のデメトリアス・ジョンソン(米国)、そして王者アドリアーノ・モラエス(ブラジル)を残すのみ。
4月にはトライフォース赤坂に出稽古を敢行し、朝倉海とも練習していた若松だが、5月末から、米国フロリダ州にあるメガジム、サンフォードMMAにて、1カ月の期限付き“武者修行”を行っている。2週間が経ち、折り返し地点を越えた心境を若松が語った。
日本には、こういう男がいるんだぞって、代表してきている気持ちが自分の中にはある
──UFCファイターの佐藤天選手も所属するサンフォードMMAでのキャンプも2週間が経ちました。調子はいかがでしょうか。
「行くまでずっと体調が良かったんですけど、出国の日にピンポイントで体調を崩してしまって。大丈夫かと思いましたが、まあ、無事に着いて最初の4日とかは咳や鼻水が止まらなくてしんどかったですね。でも、今は調子良いです」
──どんなスケジュールで過ごしていますか?
「月火木が朝10時からと夜6時からの練習です。基本スタートは朝10時からだけど、水金土は早く終わるので、リカバリーに時間を使ってますね。マッサージしたり、ストレッチしたり、プールに入ったり、お風呂入ったりしながら、次の練習に備えている感じです」
──それでは、日本にいるときとは、時間の使い方が結構違いますか?
「独身で子供がいない時は、たぶん時間はいっぱいあると思うんですけど、僕の場合、日本にいるときは子供がいるんで。今こっちでは1人なんで、休憩中はすごい休めていますね。けど、ただ寝たりするんではなくて、ケアしたり。昼に寝ちゃうと夜寝れなくなっちゃうので、何かしらやっています。プールに入ったり、料理したり、練習の動画見たりとか、何かしらやっていますね」
──渡米前に、「日本語が通じないところで、日本とは全く違うところで、色んな人と混ざって技術を盗んでいきたい、学びたい」と話していました。ここまでは希望通りでしょうか。
「2週間経って、だいぶ環境には慣れたし、スケジュールにも慣れましたね。ただ、やっぱり英語を理解するのがちょっと難しいところはあります。ちゃんと1対1で話したら、何となく言っていることは分かるんですけど、クラスで技をやるときとかは、理解できない時があります。そこがちょっと慣れないというか。タカシさん(佐藤天)にも頼りすぎないようにしていて、大体自分で解釈して、それを自信満々にやっていますね。大体それで合っているし、違ったら違うって教えてくれるんで。
それか(あらためて)聞いてOKもらったりとかです。一生懸命やっていれば、全然大丈夫という感じですね。それと、日常生活とかはタカシさんにたくさん教えてもらっているんで、いてくれて良かったなと思います。自分、英語も全然喋れないし、いきなり1人で乗り込んじゃったら、練習どころじゃなくなると思うので、タカシさんがいてくれて良かったなって思います」
──フロリダで過ごしていて驚いたことは?
「(ジムについては)人数がめちゃめちゃ多いこと。(練習が)始まる頃にはめちゃめちゃ人がいて、それこそ40人くらいいるんですかね。(練習場所に)最初着いた時は、6、7人だったのが、どんどん集まってきて。それで練習が始まる感じ。基本自分より小さい人はいないですね。フェザー級が半分、残りの半分が重い階級でした。人数は多いと聞いていたけど、実際に来て改めてデカくて、広いジムだなって驚きましたね。
【写真】元ONEライトヘビー級&ミドル級王者のアウンラ・ンサンと。
あとは、道が左側通行だったり、車のハンドルが日本と逆だったり、家のデカさとか、家にプールがついていたりとか、スーパーマーケットもデカいし、そういうのも驚きました。初めてアメリカに来たので、そういう日常の生活の方が驚きました。あと、レストランに皆んなで行って、コースみたいなのを頼んだんです。日本だとコースって、格闘家の大人じゃ足りないくらいだから、心配してたんですけど、こっちでは前菜でお腹いっぱいになるくらいでした。デリバリーとかを注文しても、めちゃめちゃ多くて1回じゃ食べきれないんです。それも驚きましたね」
──そちらで過ごしてみて、自分に自信持てたことはありますか?
「アメリカに1人で来れて、もちろん他の人からの手助けがたくさん合ったんですが、いち父親として、プラス、ファイターとしてちゃんと出来ている。ここで練習できているし、邪魔にならずに練習できているっていうのが自信になっていますね。あとは、日本と変わらずやっていること、例えば朝早く起きてストレッチや準備をして、試合や練習に向かう。僕の仕事に対しての姿勢が、正解だったんだなって。僕の生活とか、格闘技に対する情熱とか合っているのかなとか、こっちの人たちはどうなんだろうって思ってたんですけど。
僕は、全てが自分の試合に出ると思うんですよ。こうやってアメリカで練習を出来ていることも、練習前や練習後にストレッチしたり、この違う環境に慣れるってことは、試合の時も一緒じゃないですか。5日前に入って、試合を迎えるっていうのと。だからこういう日頃やっていることを、違う場所に来ても出来ているっていうのも、自信に繋がっています。
【写真】ギルバート・ドゥリーニョ・バーンズが企画したサバイバルゲームにも参加。
自分にはこの『修行』に対しての自分なりの取り組み方があって。そのモットーは、ただ単にアメリカに来て楽しむんじゃなくて、この限られた1カ月の中で、出来るだけのことをする。(練習中の)ムービーを撮ったり、最後まで他の選手より学ぼうっていう気持ちだったり、誰よりも早くジムに行って、シャドーしたり……これも戦いだと思っているんです。俺はアメリカの選手より、格闘技が好きなんだっていう気持ちで取り組んでいるし、それはどんな環境でも自分はやってきたので。子供がいて、(会員さんに)指導してとか。そんな中でも日本でやってきたので。それをこっちにきても変わらずやっている。
かつ、皆んなが良くしてくれているんで、それってやっぱり、自分がちゃんとした大人になれているってことだから。自分がただ単に遊びに来ただけのガキだったら、みんな、何だコイツって、練習も教えてくれないと思うんで。日本、ONEを代表して来ているような、本当に試合に来ている感覚です。日本には、こういう男がいるんだぞって、代表してきている気持ちが自分の中にはあるので、そこが自信になっています。常に進化しないといけない、と思っているので(ここでの生活は)これで良いんだ、という確信に繋がっています」
──その力強い気持ちを保つモチベーションは?
「自分は一家の大黒柱なので。あとはTRIBEのキャプテンなので。今回は、長南(亮・代表)さんからの許しをもらって来ているので、やっぱり遊んでいるだけじゃなくて、何か持って帰らないとっていう思いと、金稼ぐためには嫌なこともやらないといけないと思うし、人より何倍もやらないといけないと思う。それは、格闘技に対しても一緒だと思います。一般的に稼ぎたいなら、普通にやっていればいいと思うんですけど、やっぱりチャンピオンになりたいとか、大社長になりたいなら、人よりやらないといけないと思うんで。なんか使命感もあるので頑張っちゃいます」(後編に続く)