2021年6月13日(日)東京ドームで「Yogibo presents RIZIN.28」が開催され、メインイベントの66kg契約試合で、クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が朝倉未来(トライフォース赤坂)を2R1分51秒、三角絞めで絞め落とし、一本勝ちした。
試合後、会見に臨んだクレベルは、フィニッシュの三角絞めの瞬間を「(朝倉が)間違えてるから、自分が極めている」と、相手のミスを逃さずに極めたことを明かした。
また、朝倉がタップせずに失神したことについては、「本当にアサクラ、すごい漢。『タップしない』と言って、本当に彼、タップしない。自分は教えたよ。『彼がタップしないと壊れちゃう』と。彼が寝てる(失神した)。でも、彼は本当にスピリットある。サムライのスピリット。彼は本当の漢だよ」と、讃えた。
続けて、「柔術は力じゃない、テクニックが大事」というクレベルは、エリオ・グレイシーの言葉を引用し、「『柔術はオフェンスだけじゃなくて、セルフディフェンス(護身)』」と言うと、それを磨くために、「毎日練習。『1日、1時間』じゃない。3時間~4時間が柔術の練習。それが、私の柔術やサトシの柔術で、すごくオートマチックで、あまり考えずに動ける」と、極めの極意を語った。
14歳で家族と来日し、リーマンショックで家族が帰国。それでも日本に残り、“デカセギ”として工場で働きながら柔術を学び、プロとなり、家族を再び呼び寄せた。
「ヒクソン・グレイシーやヴァンダレイ・シウバ、ミノタウロ(アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ)の時代では、向こうから選手として、日本にはショーの試合をやりにきた。私とサトシ先生は、最初に日本に来たのは会社員として工場にきた。私たちは、彼らと比べられないけど、日本にボンサイ柔術の名前を、格闘技を信用してくれるように、やっていきたいと思う」と、日本に根を張り、戦う意味を語ったクレベル。
1カ月前に「コイケ」の名をもらった祖父がコロナで亡くなった。その祖父に勝利を捧げたいという。
「『リョウジ・コイケ』の名前の御祖父さんで、名前をもらっているから。彼が日本人で、でも彼が死んじゃって、自分の近くにいることができなくなって、すごい寂しい。今日勝ってることは御祖父さん、たぶんすごい嬉しいと思うね」──クレベル・コイケとの一問一答の全文は以下の通りだ。
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アサクラがいなければ、私もここまでできていなかった
──試合を終えた率直な感想を。
「あぁ、嬉しいなあ……メチャ嬉しいです」
──対戦した朝倉選手の印象をあらためて教えてください。
「まぁ、ショックじゃないの? ハハハ、すごい練習、すごい信じてる。自分が最初に彼と試合する(となったときから)、わたし絶対勝つ(って)」
──試合のプランは?
「ずっと言っていた、アサクラの(打撃の)プレッシャー、わたしは寝技。自分の柔術のスタイルを今日みんな見てる、それは間違いないプラン」
──東京ドーム大会のメインを務めた感想は?
「まあ、ずっと、信じ(られ)ないねー(笑)、すごい嬉しい。なので、こんな大きい大会ですごい素晴らしい。もったいないのは、全員お客さんが入らないこと。でも、ちょっとだけのお客さんでもめっちゃ嬉しいです」
──次に戦いたい相手は?
「斎藤裕選手とタイトルマッチを、次の試合で、よろしくお願いします。私、待ってるで。『あなたは今日怪我したのか、分からないけど、ゆっくり治して。待ってるから、100%(の状態)で、試合お願いします。わたし待ってます』」
──朝倉選手は、『クレベル選手には思ったより組み力が無かったから安心した』と言ってました。それは相手を油断させたのでしょうか?
「それは自分のいつもの試合で、みんながいつも言うこと。自分でも、あんまり力じゃないなあ。でも、柔術それが大事。力じゃない、テクニックが大事。分かる? 自分がやってることにはそれが影響(してる)」
──明日から人生が変わりますか。
「まあ…、ハハっ、みんな絶対『今日から変わる』と言うけど、なんか……私の場合、自分はあまり変わらないかもしれないなあ。自分はいつもシンプルで変わらない、分かんないけど。でも、自分は嬉しい、めっちゃ嬉しい。それだけです」
──序盤、朝倉選手の打撃を受けてピンチを迎えました。あのときは効いてましたか。
「それがタイミングで、自分のパンチと一緒で彼が殴って、私、ちょっとバランス(崩した)。あとで全部コンビネーション入ってるけど、でも、あんまりびっくりしない。普通。試合でいつもやってることだから、私なんでも心配ない。問題ない」
──フィニッシュの三角絞めは、コーナーに詰まらされてスペースが少なかったです。あれは極める自信がありましたか。
「自分あれでいつも極めてる、信じてるから、スペース無いけど、私がいつも言う(ように)、彼がちょっとだけ間違えてれば自分が一本勝ちできるよ。今日、みんなもう一回見たら、スペースあるない、なんでも、殴る・殴らない、(朝倉が)間違えてるから、自分が極めているよ」
──現代MMAで下になることは不利とされていますが、なぜ極まるのでしょうか。
「私のイメージは昔、いま柔術ってすごい変わってるけどフリースタイルでほんとスタイルが汚い。ラペラ(道衣の裾などを使った技)ばっかり、50/50(フィフティ・フィフティ=モダン柔術の代表的な技)で、楽しくない。でも、自分いつも大事なのは、柔術のビースト(野生)が一番大事。
自分のMMAでいつも言うのは、一番の大事はビーストじゃん、なあ。すごいベーシック(基本)で、三角、腕十字、オモプラッタとか、寝技……昔の柔術でエリオ・グレイシーが言ってる。『柔術はオフェンスだけじゃなくて、セルフディフェンス(護身)』。それが大事。自分の相手が、パンチでコントロールとか、相手は間違えてるから三角(が極まる)。自分はいつもそれを考えてる。もう一個秘訣で、毎日練習。それ。いつも練習で毎日。『1日、1時間』じゃない。3時間~4時間が柔術の練習。それが、私の柔術やサトシの柔術。すごくオートマチックで、あんまり考えない(で動ける)。見たらチャンスあるから、やる。それね」
──朝倉選手に対して対戦相手として感じたこと。日本でトップの選手と感じましたか。
「逆にアサクラがこのチャンス与えてくれてありがとうございました。アサクラがいなければ、私もここまでできていなかった。『いつもYouTuberばっか』と伝えたけど、兄弟ふたりともすごい有名人で強くなって、日本のMMAをみんなが見るようになった。アサクラのおかげで私がここまでこれた。アサクラ兄弟本当にありがとうございました」
──斎藤チャンピオンとの試合やベルト獲得に向けてのプランを教えてください。
「私が思うには、“斎藤さん、間違えちゃいけない”。彼はアサクラと戦ったとき、3Rやってテイクダウン取ることもできたけど、極められなかった。今日も、ムサエフの友達の人(ケラモフ)と戦って、ミスあったと思う。私とやったら一回のチャンスだけで私は一本勝ちできたと思います」
──リング上で、コロナで御祖父さんが亡くなったと言っていました。いつでしたか。
「1カ月前、自分のおじいさん、お父さんのお父さん、苗字が『コイケ』の御祖父さんが、死んじゃった。これが1カ月前でコロナで。すごい一番大変なこと、いつも、これが勝つことに影響した。『リョウジ・コイケ』の名前の御祖父さんで、『コイケ』の名前をもらっているから。彼が日本人で、日本以外のブラジル人(の祖父)もいるけど、でも彼が死んじゃって、自分の近くにいることができなくなって、すごい寂しい。今日勝ってることは、御祖父さん、たぶんすごい嬉しいね。なので、まだ家族と、名前を、アップ(上げることができた)。ここまでじゃないな」
──東京ドームで朝倉選手に勝つことができて人生どう変わるでしょうか。
「変わるのは変わると思うけど、私が一番信じているのは、人のモチベーション。私の生徒たち、私のジム、私の家族に、私の生徒のみんなのおかげで、私もここまで来ることができたので、みんなもそれが出来ると思う。ヒクソン・グレイシーやヴァンダレイ・シウバ、ミノタウロ(アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ)の時代では、向こうから選手として、日本にはショーの試合をやりにきた。私とサトシ先生は、最初に日本に来たのは会社員として工場にきた。私たちは、彼らと比べられないけど、日本にボンサイ柔術の名前を、格闘技を信用してくれるように、やっていきたいと思う」
──最後に、今回の試合でタップしなかった朝倉選手について、どう感じましたか。
「まあ本当にアサクラ、すごい漢。『タップしない』と言って、本当に彼、タップしない。自分は教えたよ。『彼がタップしないと壊れちゃう』と。彼が寝てる(失神した)。でも、彼は本当にスピリットある。サムライのスピリット。彼は本当の漢だよ」