2021年6月13日(日)の『RIZIN.28』(東京ドーム)「RIZIN JAPAN GRAND-PRIX 2021 バンタム級トーナメント」の1回戦で、前DEEPバンタム級王者の元谷友貴(フリー)と対戦する岡田遼(パラエストラ千葉)が5月24日、同門の扇久保博正と公開練習&囲みリモート取材に応じた。
マススパーリングでは、UFC世界ミドル級王者イズラエル・アデサニヤの公開練習にインスパイアされたというプロレスムーブを岡田が扇久保に打診。「無茶ぶりされた」と苦笑する扇久保を相手に、武藤敬司ばりのスペースローリングエルボーからのフェイスクラッシャーでピンフォールを奪った。
その扇久保とは、GPで同門対決の可能性もあるが、扇久保は「お互いに“決勝で戦う時は、全力で戦おう”と話し合っていますし、そこは覚悟しています」と言う通り、岡田も「もしも当たることになれば、鶴屋代表から教わった自分たちのMMAでたくさんの方が楽しんでくれればいいと思っています」と、PRIDE GP2005でのヴァンダレイ・シウバとマウリシオ・ショーグンのように双方納得済みであることを語った。
東京ドームのイメージを「ヴァンダレイ・シウバ対吉田秀彦」と言った扇久保に対し「読売ジャイアンツです」と語る岡田は、千葉大学大学院修士課程修了という院卒ファイター。
「東京ドームで試合をすることが、僕の人生であると思ってなかったので、一生に一回の機会なので楽しみながら、しっかり結果を出そうと思っています」と“楽しみ”と同時に気負わず戦うことが重要とした。
「大舞台ということに気負わないこと。いつも通りで、いつもの修斗の後楽園ホール大会で、メインイベントで防衛戦するそのままを東京ドームでやろうと思っています。特に東京ドームだから、RIZINだから変えるというのは全く無く、いつも通りに平常心で、会場がどこでも自分の試合をするだけです。それが良いパフォーマンスに繋がると思います。
技術はパエストラに来て15年近く積み上げてきた過去があると信じているので、あとは試合当日に怪我をしないで、良い精神状態、良い体調で臨めば、結果は絶対についてくると思うので、技術よりコンディショニングを結構大事に思っています」
試合まで3週間。61.0kg契約のバンタム級戦に向け、トータル10kgの減量を行うという岡田は、すでに「残り6kgくらい」。練習は1日2度、「クリーンな食事とサプリを大量に摂っている」。
大会延期もあり、新たな試合日に向けコンディションを作り直す必要があったが、「修斗の防衛戦が3月の後半(20日に大塚隆史に判定勝ち)にあって、5月(23日)に試合だと試合スパンが短かかったのですが、(6月13日に延期され)防衛戦で負っていた怪我も治って、万全の体調・コンディションで試合に挑めるなとプラスに捉えています」と、プラス面が大きいという。
ワンマッチながらトーナメントを勝ち上がるためには連戦が待っている。
「ちょうど今日、扇久保さんから練習前に『今年の1年は長いから、もうちょっと抜き目で大丈夫だよ』と話しをされたので、詰めすぎず良いコンディションを当日に持っていけるように、頑張りすぎないようにちょっとブレーキ掛けながらやろうかなと思います」と、『今年1年』のGPを戦い抜く構えだ。
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元谷選手はムラがあって時々ポカしちゃう。相手のミスは見逃さない(岡田)
GP1回戦の対戦相手は、前DEEP王者の元谷友貴。この10年間で、対日本人では21戦17勝。敗れたのは強豪のみで、堀口恭司、扇久保博正、和田竜光に判定負け、そして昨年末に井上直樹に一本負けを喫している。
5月末に店頭に並んだ『ゴング格闘技』本誌のインタビューで元谷は、岡田について「リスクを追わない堅実なタイプ」と印象を語り、一方で自身は「リスクを負ってもフィニッシュを狙ってアグレッシブに行く」と宣言している。
その言葉に岡田は「元谷選手はリスクを負ってフィニッシュに行く反面、戦績を見てみれば分かると思いますが、フィニッシュもされている訳じゃないですか。僕はフィニッシュされる試合は少ないし、実は俺もちょこちょこフィニッシュしているんですよ。リスクを負わず堅実に攻めているんですけど、相手がミスしたらそこは見逃さない。チャンスが有ればフィニッシュします」と、巧みにブレーキとアクセルを利かせながらバランスよく戦う自身のスタイルとの違いを語った。
7連勝の米山千隼を1R腕十字に極め、敗戦後の2021年2月には昇侍を1R リアネイキドチョークで極めるなど、どんな相手でも“常在戦場”とばかりにフラットに戦うことが出来るのが元谷の強みだ。
しかし、「MMAは5教科7科目の勝負」を信条とする岡田は、「僕の感じている元谷選手は、ムラがあると正直思っています。昇侍戦や米山戦では良いパフォーマンスだったんですけど、時々ポカしちゃうじゃないですか。ちょっともったいないところもあるかなと思います」と、元谷に穴があるとし、その穴を突いていくという。
リングでの試合は2016年3月の徹肌ィ朗戦での判定勝ち以来、5年3カ月ぶりだが、「個人的には金網の方が好きですし、金網のほうがやりやすいしっていうのはありますが、今日も公開練習前にこのリングで試合形式でやっていて、リングでロープでやるのがかなり久しぶりなんですが、感覚を思い出してきて、試合までには特に問題ないのかなと思っています」と、ロープを背に語る。
これまで元谷との接点は無いが、PARAESTRA TOKYO-BAYでの出稽古で肌を合わせた選手、そして何より2019年7月にスプリット判定で元谷との接戦を制した扇久保から「(元谷選手は)こんな感じだよ」という情報はもらっています」という。
「注意すべき点は極めが強いところ。そんな技があるんだとこっちが勉強になるような技をたくさん使ってくる」と警戒する岡田だが、「僕が勝っているところは、相手の嫌なところで戦い続けられる性格の悪さ」と、緻密な戦略とそれを実行できる点で、元谷を上回る自信も持つ。
我慢の勝負を仕掛け、“相手の嫌なところで戦い”ミスを突く岡田に対し、自力で勝る元谷が飲み込むか──そんな見形もできる大一番だが、先輩の扇久保は本誌の取材に「僕は(元谷と岡田の)どっちとも組んでるので、組んだ感じは岡田くんの方が全然強い。そこは元谷選手もビックリすると思います。焦って変に打撃で来た時も岡田くんはしっかりボクシングもできるし、そこでも倒せると思う」と、打撃でも組みでも岡田が優勢と背中を押している。
本誌インタビューでの元谷の「自分がDEEP、修斗王者には負けたくない」という言葉に、岡田は「DEEP対修斗なので見ていてください。何か一つに執着するのではなく、全てが流れていくようにして戦っていくのが修斗の理念なので、僕はそういうふうなMMAファイターを目指しています。“どういうのが修斗なんですか?”と問われたら、『俺と扇久保さんの戦い方が修斗です』と言います」と、「『打て』という“打”ではなく『投げろ』という“投”ではなく『極めろ』という“極”ではない」を掲げる修斗の戦いを、RIZINでも見せたいとした。
GP注目カードのひとつとして挙げられる「修斗王者vs.前DEEP王者」のカードについて、青木真也がスカパーの『RIZINで逢えたら』で元谷有利を唱えているが、岡田は、「誰かの言葉や誰かの評価でモチベーションが左右されることは全くないです。誰かがどっちが勝つと言っても何とも思わない。元谷vs.岡田のカードだけ『元谷の格が違う』と言っているならありがたいですね。プロモーションにもなるし」と、予想を歓迎した。
「2回戦で、僕は扇久保博正以外の強いやつと。井上直樹選手と石渡伸太郎選手の勝者か、朝倉海選手とやりたいです。6月13日、東京ドーム大会、僕と扇久保さんの試合を楽しみにしていて下さい!」──GP屈指の好カードに注目だ。