ガッツの、誰もが乗り越えたいと願うことに立ち向かい努力するところに親近感を抱いていた
──5月6日には、三浦建太郎氏が亡くなりました。あなたは『ベルセルク』のファンでもありましたね。
「あれほどの厳然たる闇をもって、ハイ・ファンタジー(架空の世界のファンタジー)からグノーシス・ホラーへと融合させているところが好きだった。超自然的な側面においては、古い『アブラハムの宗教』における密教的な部分や、そのほか数多の超自然的な神話が由来となっているのだろう。そしてこのような信仰の体系を描くことによって(クトゥルー神話として知られる)ラブクラフチアン的な要素を生み出している。中世(ヨーロッパ)の戦いや、鎧や武器のディテールなど、全体にまさしくヘヴィメタルな雰囲気を纏っていた」
──どんなシーンが印象に残っていますか。
「チューダー騎士団からキャスカを護りぬいたガッツの100人斬りは、とてつもなく衝撃的だった。ガッツは自分の愛する者を守るために戦ったわけだが、それだけではなく、彼が何よりも愛すること──それはつまり彼自身の信念によって、彼自身の剣をもってして生死を分けて戦い抜いた。それから、ガッツが鷹の団を離れて独立する時が来たことを決意した際の、雪の中でのグリフィスとの戦いも好きだ。この戦いは、ガッツとグリフィス、2人の意志というものが肉体的に描き出されていて、ガッツの純粋な行動がグリフィスの利己的な行動に打ち勝つ様子や、グリフィスが、自分の縄張りすべてを支配できるわけではないと悟ったことによる落胆が描かれていて、とても印象的なシーンだ」
──ファイターとして彼の作品からも影響を受けた。
「そうかもしれない!『ベルセルク』の哲学的で、隠喩的な側面がとにかく好きで、ある種ニーチェ的な要素を、とりわけガッツについては多分に含んで描かれていると思う。ガッツという人物、そして彼が抱く苦悩に関して、ストーリーのなかで文字通りに描かれているように、また誰もが乗り越えたいことに立ち向かい努力することの喩えとして捉えているところがあって、そこに親近感を抱くよ。それに、ガッツに対しては個人的にも共感するところがある。だからインスピレーションを与えてくれるようなものはなんであれ、自分の行動に対して影響しているんじゃないかと思う」

【写真】素手のボクシングにも挑戦し勝利したジョシュ・バーネット(C)Genesis
──30年以上にわたり執筆した三浦氏に追悼の言葉を。
「あなたの想像力を我々みんなに共有してくださって、本当にありがとうございました。個人的に、自分に喜びを与え、関心を抱かせてくれたことに心から感謝申し上げます」



