2021年5月1日(日本時間2日)米国ラスベガスのUFC APEXで開催される「UFC Fight Night: Reyes vs. Prochazka」の前日計量が1日に行われ、メインのライトヘビー級で対戦する、同級3位のドミニク・レイエス(米国)と、元RIZINライトヘビー級王者のイリー・プロハースカ(チェコ・5位)がともに計量をパスした。
ライトヘビー級(-92.98kg)戦のメインイベント。先に秤に乗った同級3位のドミニク・レイエス(米国)は93.21kgでパス(※王座戦以外は1ポンドオーバーまで可)。ガッツポーズ後に両手を合わせて一礼。
続けて、ムエタイのモンコンをイメージしたという弁髪姿で秤に乗ったプロハースカは92.53kgでパス。右手を拳にし左手の手のひらに合わせる「抱拳礼」後、両手を広げてから頭上で合掌。そのまま胸の前で祈りを捧げるようにしてから、最後にもう一度、両手を広げてスケールを降りた。
フェイスオフでは、後ろ手に組むプロハースカに、ゆっくりと歩み寄るレイエスは、14秒近く視線を逸らさず。互いに闘志をぶつけ合った。
当初、2月27日(同28日)のUFCのメインイベントで行われる予定だったこのカードは、レイエスの体調不良により延期。約2カ月を経て今回、実現となった。
RIZINでベルトを巻き、オクタゴンに参戦した28歳のプロハースカ(27勝3敗1分)は11連勝中。27勝のうち23勝がKO勝利で、2回は一本勝ちという強力なストライカーであり、フィニッシャーだ。
2020年7月のUFCデビュー戦では、当時ライトヘビー級7位につけていたオーズデミアを相手に2R KO勝利を収め、パフォーマンスボーナスを獲得している。
対するレイエスは“The Devastator(破壊者)”の異名を持つトップアスリート。幼少期からレスリングとアメリカンフットボールを始め、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校時代にはディフェンシブバック(セイフティ)として1年からスタメン入り。キャプテンも務めている。
MMAは12勝2敗で、ジャレッド・キャノニア、ヴォルカン・オーズデミア、クリス・ワイドマンら名だたる強豪を打ち負かし、2020年2月にUFCライトヘビー級ベルトをかけてジョン・ジョーンズに挑戦も判定負け。同年9月には空位のライトヘビー級王座をヤン・ブラホビッチと争い、初のTKO負けを喫した。今回が再起戦となる。
UFC2戦目に挑むプロハースカは、会見で、オクタゴンデビューとなった前戦のオーズデミア戦の勝利について「初戦の1Rは危険だったと思っている。(ノーガードから)拳を上げ、正確な動きができるようにアップデートをしてきた」と語り、今回の王座挑戦経験もあるレイエスとの対戦に向け、「立ち技にこだわりがあるけれど、テイクダウンも狙う彼と組み合う準備も出来ている」と、自信を語っている。
世界王座に2度挑戦しているレイエスにプロハースカが勝てば、タイトル挑戦の可能性も高まるメインイベント。それぞれの強みはどこにあるのか。
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レイエスの下がりながらの左ストレート、プロハースカのスイッチ左ハイ、右ストレートに注目
身長193cmでリーチは196cmのレイエスに対し、プロハースカは身長193cmでレイエスと同じながら、リーチでは203cmと上回る。
サウスポー構えのレイエスは、バックステップをしながら、あるいはサイドステップで相手をかわしながら後ろ手の左ストレートでダウンを奪うなど、得意の左ストレートをカウンターで打つことに長けている。さらに近距離でのコンパクトな左アッパー、左ミドル、廻し蹴りなど多彩な攻撃を誇る。
強い腰は主にテイクダウンデフェンスに力を発揮するが、UFCデビュー戦のジェレミー・キンバル戦では、ケージ際で体を入れ替え、自らシングルレッグテイクダウン。バックから4の字に足を巻いてエルボーで削り、最後はリアネイキドチョークで極めるグラウンドワークも見せている。ストライカーのプロハースカを相手にテイクダウンを織り交ぜた攻撃も見せるか。
対するプロハースカは、前戦でノーガードのスタンドに危うさを見せたものの、その低い手の位置からの打撃は出どころが分かりにくく、頭を上下にしたレベルチェンジからの右ストレートは相手のレンジを越えて伸びてくる。そして基本はオーソドックス構えながら、オーズデミアをぐらつかせたスイッチからの左ハイ、そして詰めての跳びヒザも大きな武器だ。上下の動きが多く、スタミナ面に難があるが、オッズではランク5位のプロハースカがフェイバリットで優勢となっている。
果たして、プロハースカがUFC2連勝で一気に王座戦線にからむか。それともレイエスが元RIZIN王者をも破壊するか。
会見でのプロハースカとの一問一答は以下の通りだ。
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僕はUFCという旅路をすごく楽しんでいる
──今回対戦するドミニク・レイエスにどんな印象を持っていますか。
「対戦相手を個人的には知らないけど、いい人なんじゃないかなって。素晴らしいアスリートで、良いストライカーだと思っている。初戦でイージーに思っていた部分もあったけど、今回はいかに自分がプロフェッショナルとして振る舞えるかを含めて真剣に考えている」
──ランキング3位のレイエスがあなたとの試合を受けたことには驚きもありましたか。
「大変光栄だ。彼をリスペクトしているし、とても名誉なことだと思っているよ、こんなビッグネームと戦えて。でも自分は彼の何倍も戦ってきているという風に思うし、対戦の準備は整っていて、そして僕が勝つんだ」
──どんな試合展開を予想していますか。
「僕は戦う姿勢としては立ち技にこだわりがあるんだけれど、彼は僕用の作戦として、テイクダウンするような作戦に変えてくるだろうね。けれども僕としては彼と組み合う準備もしてきているよ」
──ファイトキャンプでは前回からどのような修正を行ってきましたか。
「キャンプでは自分のスタイルを……前回(2020年7月のヴォルカン・オズデミア戦)のようにならないように、というのは初戦の1Rは危険だったと思っているのだけれど、拳を上げ、正確な動きができるようにアップデートをしてきた」
──今回の対戦相手のレイエスが、ジョン・ジョーンズ、ブラホヴィッチに敗れて、それを背負って試合に臨むことが、あなたにとってプレッシャーになる部分はありませんか。
「いや、相手のことは考えないというのか、さっきも言ったけど個人的に知っているわけじゃないし──こう考えるんだ、彼はきっと素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるだろう──と。そのことが自分をよりプロとして引き締めてくれるというのかな」
──どんな勝ち方をイメージしていますか。
「常に、フィニッシュしたいと思っている。きちんとこの手で終わらせることこそが勝利を掴み取るということだ」
──9月に対戦予定のライトヘビー級王者ヤン・ブラホヴィッチと1位のグローバー・テイシェイラの勝った方とベルトを賭けて戦いたいという考えもありますか。
「それは今考えるようなことではない。何て言うか、自分はUFCという旅路を歩んでいくのをすごく楽しんでいて、1試合後なのか、2試合後なのかに、タイトル戦があったとして、そのこと自体はそんなに重要じゃなくて、この大会で常に自分のベストを尽くすということが大事なんだ」
──ところで、映画『モータルコンバット』の前で写真を撮ってましたが、どう感じましたか。
「面白かったけど、映画よりゲームのほうが好きかな。ゲームだとファイターたちがすごくスムーズに、良い動きで正しい、正確な動きというのを選び取ることができて、あのデンジャラスな感じって、ちょっとおかしいところもあるけど、それも含めてああいう戦いが自分のモチベーションになってる部分っていうのもあるよ。まあ映画のほうは、ここにいる間のお楽しみタイムというような感じかな」
──これまでチェコのGCFや、日本のRIZINで戦ってきたあなたが、米国のファンに試合を見てもらうことの意味は?
「自分のファイトスタイルというものを見せられることをすごく重要に思っていて、自分のファイトスタイルをシェアしたい、自分のベストを見せたい、自分の格闘技のなかにある“美しさ”のようなものを、見せたいと思っている」
【動画】現Bellator世界ライトヘビー級王者ワジム・ネムコフとの2015年年末のRIZINでの死闘。