MMA
インタビュー

【ONE】青木真也「お互い別人。新しい勝負になる」vs.フォラヤン「シンヤ対策は今のところうまくいっている」=4月29日(木・祝)シンガポール

2021/04/27 20:04
 2021年4月29日(木・祝)朝にシンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE on TNT 4」で、エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)との3度目の対戦に臨む青木真也(日本)が、現地から囲み取材に応じた。  当初、青木と対戦予定だった元UFCのセージ・ノースカットが、新型コロナウィルス感染症の治癒後の後遺症により欠場。また、フォラヤンと対戦予定だった秋山成勲も怪我により欠場したため、今回、青木とフォラヤンが対戦することになった。  青木とフォラヤンは1勝1敗。  初戦は2016年11月にONE世界ライト級王者としてフォラヤンの挑戦を受けた青木が、3Rに跳びヒザを受けてダウン。さらに追撃のヒザ蹴り・パウンドでTKO負け。青木が3度目の防衛に失敗し、王座から陥落した。  2度目の対戦は、2019年3月。王者フォラヤンと打撃で渡り合った青木が、1Rに右で差して腰に乗せてテイクダウン。パスガードから肩固めを極めてフォラヤンに失神一本勝ち。王座を奪還している。  ラバーマッチに向け、青木は「そういう星の下に生まれている。オファーがきたら誰とでもやる」と覚悟を語り、フォラヤンは、この試合で調子を取り戻し、再び王座に挑戦するチャンスとし、ライト級4位の青木とのライバル関係に決着をつけたいと意気込んでいる。 青木「とにかく一生懸命に向き合いたい」  当初、セージ・ノースカット(米国)との試合が予定されていた青木だが、ノースカットが新型コロナウィルス感染症の治癒後の後遺症により欠場。急遽、エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)と3度目の対戦に臨むことになった。  北米の元UFCファイターとの対戦に向けて調整していた青木だが、フォラヤンに変更の影響について、「普通に毎日練習をしているので、特に影響はないんじゃないかな」と語る。  欠場したノースカットについては「チャンスがあればやりたいと思いますが。まずは元気になってもらって。大変だと思うので」と気遣った。  そして、3度目の対戦となるフォラヤンについて、「強いと思いますよ」と最初に評した青木。ノースカット欠場で、記者陣から同じく3度目の対戦の可能性もあったエディ・アルバレスとの試合について問われると、「望んでいないよ。フォラヤンとの3度目も別に望んでいた訳じゃないし、そういう星の下に生まれているんですよね」と答えた。  望んでいない試合も、望まれたらやるしかない、という。 「俺たちの試合は、全部、オファーがきたら誰とでもやるんだよ、ってことですよね。やるしかないし、勝負するしかないし、戦うしかない」  これまで、ヨアキム・ハンセンとは3度戦ったことがある青木だが、今回のフォラヤン戦も「一試合、一試合、別ですよね。格闘技って一期一会なもんだし。全試合別ですからね」と、それぞれに変化があり、違う試合になるという。 「お互い、別人ですよね。状況も違いますし。だから何が変わったって訳ではないですが、お互い歳をとって変わったってことじゃないでしょうか。互いに歳をとって衰えもあるけれど、その分、経験もあって、また2人で新しい世界観で、新しい勝負になるから。厳しい試合が待っているんじゃないかなと思います」と、試合経験や練習も含めた人生経験を重ねたことで、新たな戦いは「厳しい試合になる」と語った。  青木は、2016年11月のフォラヤンとの初戦で跳びヒザ蹴りを受けて、3R TKO負け。ライト級のベルトを手放した。そして1年後にベン・アスクレンを相手に、今度はウェルター級王座に挑戦も1R TKOと2連敗を喫した。  しかし、青木はその後、再び自身を高め、挑戦を続けている。  ラスール・ラキャエフに三角絞めから腕固めを極め、シャノン・ウィラチャイをヒジでパウンドアウト。イブ・タンを肩固めに極めると、2019年3月にはフォラヤンとの再戦で1R、肩固めで一本勝ち。4連勝で再びONEライト級のベルトを腰に巻いている。  そして連勝中の新鋭クリスチャン・リーを挑戦者に指名した。  腕十字を極めかけながらも、2Rにスタンドで逆転のTKO負けを喫したが、現在ライト級絶対王者のクリスチャンを同級で最も苦しめた選手として記憶される。  その後もクリスチャンは負け無しで、2021年4月に強豪ティモフィ・ナシューヒンをTKOに下し、6連勝を飾っている。そして青木もまた、クリスチャン戦後にホノリオ・バナリオ、江藤公洋、ジェームズ・ ナカシマを相手に3連勝を飾って来た。  ナシューヒンを秒殺したクリスチャンについて、青木は「(22歳で)若いですよね。若いし強くなっている。僕がやったのは2年くらい前(2019年5月)ですけど。強くなるなあと思って。間違っていなかったなと思いますね」と、挑戦者として指名した見立てが間違っていなかったと語る。  さらに、5月28日に開幕する女子アトム級ワールドグランプリに挑む、後輩の平田樹がどこまで勝ち上がれるか、という問いにも、「期待からすると上には行って欲しいけれど、そんなに甘くないと思うんですよね、格闘技って。なので、割と厳しい結果が待っているんじゃないかなと思います」と、歯に衣を着せぬ言葉で語った。  2003年11月のデビューからプロ生活18年半を数える。5月9日に38歳になるなど、キャリアを積み重ねているが、今回も“AGE IS JUST A NUMBER(年齢はただの数字に過ぎない)のTシャツを纏う青木は、「まあ、今別に終わりだとも思っていないし、3年~5年くらい前に(解説の)ミッチ・チルソンから『あなたはもう終わりだと皆んなが言っているけど、格闘技を続けている理由はなんですか?』って聞かれた時、“いや、大きなお世話だな”って思ったんだけど……好きだからずっとやっているだけで、別に今がベストだとも思わない」と、現役生活を語っている。  その“好き”が誰よりも深い。  年齢を重ねても強くいられる秘訣を問われると、「ずっと練習することと、いいご飯食べて、いい練習して、よく寝ること。その基本をただ当たり前にしっかりやることではないでしょうか」とシンプルに語り、「とにかく一生懸命に向き合いたいですね」と、相手とも格闘技とも、自身とも“一生懸命に向き合う”ことが大事だと語った。 [nextpage] フォラヤン「勝てば批判的な人を黙らせることができる」  一方で、青木との2度目の試合で王座陥落し、以降1勝4敗と負け越している37歳のフォラヤンは、公式インタビューで、3度目の対戦で“レジェンド”青木に勝つことで、王座への再挑戦のきっかけになること、そして「自身のレガシーになる」と語る。  フォラヤンは、「アオキとの3戦目は期待していたけど、こんなに早く実現するなんて思いもしなかった。アオキはここのところ絶好調だが、自分はスランプの最中だ。だから期待はしていたけど、こんなに早くとは思っていなかった」と、秋山成勲(※怪我で欠場)戦からの急な変更に戸惑いを隠さない。  と同時に、「アキヤマが欠場して、アオキが相手になると聞いた時はもちろん興奮した。アオキがこの階級でどのような位置につけているか分かっているから、自分のキャリアにとっては非常に重要な試合だ。もし勝てれば、ラバーマッチの勝利ということのみならず、世界タイトルへの再挑戦にも弾みがつくかもしれない」と、気持ちを切り替えている。  チーム・ラカイ陣営は、今のところ青木対策が「うまく行っている」という。 「正直に言うと、調整は大変だ。長い間、アキヤマ戦に向けて集中していたのに、急にアキヤマとはまったく違うスタイルのアオキに目を向けることになったからね。アキヤマは柔道がベースだけど、スタンドで打ち合ってくる相手として想定していた。それが、あらゆる意味で純粋なグラップラーであるアオキになった。これは自分たちにとって大きな動きだが、今のところうまくいっている」  2019年3月の前戦では、青木の左の蹴りに、フォラヤンも左前足で蹴り返した足を掴まれ、組み技の展開からテイクダウン、肩固めに敗れた。 「自分のキックを容易に考えすぎていた。シンヤにそれを利用されて、マットに寝かされた。彼と対戦する時は、寝かされたくはないのに、そうなってしまった。この展開は避けたい。シンヤは、チャンスが巡ってきたら、すごい相手だということを見落としてはいけない。彼が両手をロックした瞬間に、試合は終わる」と、青木の強いグラップリングを警戒する。  初戦同様に青木のテイクダウン狙いを切り続け、打撃のチャンスをいかに掴むか。グラウンドを避けること、グラウンドになったときにどう対処するか、その対策のディテールを練ってきたという。しかし、受け身になることは相手に組みのチャンスを多く与えることにもなる。 「シンヤのプランに対して、対策を練っているけど、彼のことだから、できるだけ早くグラウンド戦に持ち込もうとするんじゃないか。我々はグラウンド戦を避けるための策を練っているけど、万が一そうなってしまった時もどうすればいいかも具体的に考えている。また、スタンドになった時に、シンヤを攻撃する方法も考えている。フィニッシュのチャンスがあれば、できるだけそこを狙っていくのは間違いないけど、非常に予測不可能な競技だから、常にさまざまな状況に備えようとしている」  フォラヤンにとって、青木に勝利することは、単にレジェンド越えに収まらない。 「この試合は大きい。この競技のレジェンドで多くの人に慕われている相手との3戦目で勝てれば、自分のレガシーにとって大きな意味がある。それに加えて、シンヤがまだこの部門のトップ5に入っていることを考えると、勝てば、自分に批判的な人たちを黙らせることができるし、うまくいけば再び世界タイトル挑戦へ勢いづかせてくれるだろう」。
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