ミオシッチのinstagramより
2021年3月27日(日本時間28日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて「UFC 260」が開催され、メインイベントのUFC世界ヘビー級タイトルマッチで、王者スティペ・ミオシッチ(米国)と挑戦者フランシス・ガヌー(カメルーン)が対戦。2Rにガヌーの左フックを受けたミオシッチがKO負けで王座陥落した。
2018年1月以来のガヌーとの再戦でリベンジを許したミオシッチ。「96馬力」を記録するガヌーの、意外にもコンパクトな打撃で後方に崩れた際に、憧れのミルコ・クロコップがオクタゴンで喫した時と同じように、足首がマットに残る危険な倒れ方をしたが、試合後、自身のinstagramに無事を報告している。
「さて、まず何より、僕は大丈夫だよ。あの倒れ方は、自分における“最も優雅に倒れる姿”ではなかったと思うけれども、僕は意識を失っていたので、まあそういうこともある」と綴ると、「僕の家族・友人やファンの皆さん、特にクロアチアとクリーブランドへ……愛しているし、ごめんなさい。みんなを失望させるのは嫌だ」と地元のファンに、敗戦を謝罪した。
米国オハイオ州ユークリッドでクロアチアから移民した両親の間に生まれたミオシッチは、クリーブランド州立大学とトレヴェッカ・ナザレン大学で三塁手として活躍し、メジャーリーグベースボールのスカウトからも声がかるほどのスポーツエリートだった。
2006年8月にアマチュアMMAデビューし、2010年のプロデビューから24戦を戦い20勝、今回で4つめの黒星となった。
ミオシッチは、「チームの皆へ、ありがとう。僕自身とまるで同じように、すべての敗北を感じてくれていることが分かる。僕たちはファミリーとして勝利し、ファミリーとして負ける」と、「強力型戦闘隊」と漢字で背中にタトゥーを入れるほど愛着を持つ所属ジム「ストロングスタイル・ファイトチーム」の面々に感謝の言葉を記している。
最初にダウンを奪われたのは、オーソドックスに構えたガヌーの右から左の“ツーワン”だった。ミオシッチの足が止まったところにシャープな左ストレートを受けて、腰を落とした。パウンドを受けながらもすぐに金網を背に立ち上がり、ガヌーの左の強振をかわして、逆襲の右をヒットさせたが、前に出て左を伸ばしたところをガヌーにカウンターの左フックを打ち抜かれた。
いつもは得意のジャブからテイクダウンを織り交ぜ試合を作るミオシッチにとって、ピンチからの逆転を狙い、軸が崩れたまま打ち合いに行った勝負の動きだった。
「残念ながらゲームプランから外れてしまった。2R目に入ってからはすごくよくて、計画通りに進み始めていると感じていた。彼がとても疲れ始めていたことで熱が入りすぎ、無防備になってしまった。打撃を受けられるような良い姿勢ではなく、彼はその隙を突いて、偉大な格闘家ならば当然やることをやってのけた。あれは自分の失敗であると受け入れて、2度と起こらないようにしたい」と、ミオシッチは回想する。
心身ともに痛みを伴う敗北は苦いが、それが格闘技をするということで、勝利も敗北も人生の一部だと、ミオシッチは言う。