「毎日、安達選手のことしか考えてません。彼に連勝してチャンピオンになります!」
工藤が王座決定戦に進出するには、KOでも判定でも、とにかく勝利しなければならない。そして勝てば、安達との4回目の対戦が待っているということになる。その状況で彼が思うこととは?
──今回の安達浩平戦はリーグ戦の最終試合ということになります。リーグ戦はいろいろありましたが……。
「コロナでいろいろあってモチベーションが落ちたり体重管理ができなくなったことは、僕も実際にコロナ鬱みたいになったのもあって、みんな大変な思いをしたのは分かるんですけど、離脱した3人に関しては正直『オマエら、ふざけんなよ』というのが本心です。例えば会社で与えられた仕事を投げ出してるのと同じじゃないですか。普通の会社だと、こんなのあり得ないじゃないですか」
──まあ、結果としては。
「僕と安達選手と響波選手は、『人数が少なくなったからチャンスだ』って言われるんですよ。でもそれって違うなあと思ってるし、リーグ戦も後楽園でできなかったり、あんまり注目されてないじゃないですか。それは感じるんですよ。こういうことがあるからキックボクシングが舐められるんですよ。キックボクサーとして、社会人として、もっと自覚を持ってほしいというのが正直、ありましたね」
──なるほど。先ほど「コロナ鬱」という話もありましたが、工藤選手自身はそんな中でどうモチベーションを保ってきたんですか?
「僕もモチベーションは保ててなかったですよ。正直、去年2月の響波戦で負けた後にすぐコロナで自粛期間になっちゃったので、キツかったです。試合に勝ってればまだよかったですけど、正直3月、4月頃は逃げ出したいという気持ちがメチャメチャあったんです。でも、6人でやると決められたプロジェクトから、僕だけ逃げるのはみっともないし、ジムにも迷惑がかかるし、応援してくれる人にも何も言えないじゃないですか。だからそこだけは何が何でもやろうという気持ちでいました。それで月日が経って試合が決まったら、2人抜けたと。その時はイラッときましたね。『俺だってそうしたかったよ』みたいな。それぞれ理由があるのは分かりますけどね。でもそこで耐えて学んだから、10月の前田伊織戦で勝てたのかなと思います」
──では、最終的にはいい方向に転換できたわけですね。確認ですが、今回の安達戦での得点状況は把握できてますよね?
「はい。僕は勝てば王座決定戦に進めるわけですよね」
──ですね。安達選手とは今回が3回目の対戦になるわけですが。
「そんなに意識してないんですよね。『3回目だから僕が勝てるだろう』みたいな(笑)。もちろん、最後にやったのは2年ぐらい前なので、前回よりは確実に強くなってると思います。実際2回やっているし、12月の彼の試合も見ていたので、初対戦の選手よりはイメージは作りやすいでしょうけど。ただ全く負けるつもりはないので、何回目とかいう意識はないですね」
──過去2回で感じた印象や、今回気をつけたい部分は?
「彼は根性もあるしけっこうしつこいので、こっちの印象が悪い感じでラウンドが終わるんですよ。向こうが蹴って終わり、みたいな感じで、印象を作るのがうまいんですよね。そこは気をつけないといけないというのと、プラスアルファ、この2年で僕が持っているイメージの1.25倍ぐらいは強くなっていると思ってます」
──そういう相手に、どう勝ちたいですか?
「判定で勝ちたいです」
──判定で? KOは狙わないということですか?
「僕は、倒そうとしたら力んじゃうところがあって。前回の前田戦は結果的にKOできたんですけど、自分としては全く判定狙いだったんですね。その方が楽に戦えるので、力を抜いていこうかなって感じです」
──今回、工藤選手が勝って王座決定戦に進出すると、そこで安達選手と4回目ということになりますね。
「そうなんですよ。ここまで1敗1分けなので、まずここで1回、僕が勝ちます。そしたら1勝1敗1分けになってキリがいいので(笑)、4回目は白黒ハッキリつけようぜってことで」
──なるほど。それはそれでいい流れですね。しかし同じ選手とは3回当たることすらなかなかないと思います。選手によっては、再戦すらイヤという人もいますが……。
「そういうとこも『しつこい』って感じですよ。僕はいいけどお客さんがどうかなあと思いますし。でも今回僕が勝てば、1勝1敗1分けからの4回目は面白いじゃないですか。しかも僕らお互い33歳だし、これが最後になるので、そこで決着という感じですね。ここで勝てなかったら、『結局勝てなかった』で終わっちゃうんですけど、僕は勝つので」
──4回目も必ずあるぞと。
「安達選手のファンからしたらつまらないかもしれないですけど、僕を応援してくれる人たちには、けっこう楽しめるんじゃないですかね」
──ということは、ここから安達選手に連勝すればチャンピオンになれるということになります。
「チャンピオンになれるのはうれしいです(笑)。まだベルトを巻いたことがないので、ここで巻けば選手生活も悔いなく終われますから」
──チャンピオンになれば、その先も見えてくると思いますが。
「そうですね、考えてることもあるんですけど、まずは一番近くの試合に勝たないといけないので。今言うと夢物語みたいになってしまうし、今は本当に毎日、安達のことばかり考えてるんで」
──では目の前の安達戦で、勝つのに一番必要なものは何でしょう?
「戦略ですね。過去の試合でも印象の部分で負けてきたし、次はどうせカーフキックとか蹴ってくると思うので、その対策が大事かなと。そこはしっかりやってます」
──今回の試合で、一番見てほしい点は?
「下がらない、気持ちの強さですね。昔から言ってるんですけど、『うまい』選手って多いじゃないですか。僕はそういう選手じゃないので、気持ちの強さで勝負します。古臭いですけど」
──そこは最初の師匠であるファイヤー原田さんから受け継いだものですか。
「そうですね。ファイヤーさんにはいつも言われてましたし、一番学んだところなので。アバラが折れても何しても絶対下がらない人でしたからね」
──そこから、現在はTEPPEN GYMに所属されてますよね。TEPPEN GYMで一番学んだことは何ですか?
「みんな練習が真面目なんですよ。自分は年上だし、しっかりやらなきゃいけないと思わされますね。技術的には、もらわないで当てるとか、攻撃されたらすぐ返すとか、そういうことを重点的に教わってます。TEPPEN GYMの中ではそういうのがうまい方ではないんですけど、自分にとってはすごくプラスになってますし、練習に取り組む姿勢も変わりました」
──では最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
「最後まで折れないところを見せて勝つので、楽しみにしててください」
──ありがとうございました!