2021年3月19日、UFC世界ライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア・32歳)が、UFCのダナ・ホワイト代表と会食し、2ショットをSNSにアップ、以下の通り、正式に引退を発表した。また、空位となったライト級王座を、8連勝中の3位のシャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)と元Bellator王者で4位のマイケル・チャンドラー(米国)が、5月15日のUFC262で争うことも発表されている。
ヌルマゴメドフは、「素晴らしい人たちと楽しいディナーのひとときを過ごせました。自らを証明する機会を与えてくれた、ダナとUFCチームのみんなに感謝しています。
ダナ -自分のためにしてくれたことは決して忘れない。亡くなった父も忘れなかったし、私の息子たちもあなたのことを決して忘れないだろう。今日は本物の男同士の本気の会話ができたね。
また、すべてのチーム、スパリングパートナー、そしてすべてのファンにも感謝しています。私の決断を受け入れ、それを理解してくれることを願っています」とinstagramに投稿。
同時にダナ・ホワイトUFC代表もツイッターで「彼は100パーセント引退した。君の試合はいつも信じられない光景を見るようだったな。ハビブ、なにもかもありがとう。これからすることがなんであれ楽しんでくれ。友よ」とメッセージを送っている。
ヌルマゴメドフは、2020年10月24日(日本時間25日)に開催された『UFC254』メインイベントのUFC世界ライト級タイトルマッチで、挑戦者のジャスティン・ゲイジー(米国)に三角絞めで一本勝ち。
統一王者として、オクタゴンの中でベルトを腰に巻いたヌルマゴメドフは、グローブをマットに置き、「父がいなければ戦えない。これが自分の最後の試合だ。父がいなくなり、ここに来るなんて考えられない。父がいなくなって(戦った試合は)今回が初めてだ。母に3日間相談し、『お父さんがいないと出来ないから、もう辞めてほしい』と言われたけど最後だからと約束し、試合をした」と、突然の引退を表明していた。
続けて「父の夢だから格闘技をやれた。今日がUFCでの最後の試合になる。ダスティン(ポイエー)とコナー(マクレガー)が1月に戦う。僕はその2人からチョークで勝ったんだ。ほかに何が? もうなんの興味もない」と、父の死とともに戦うモチベーションが失われたことを語っていた。
そして最後に、「自分がUFCに求めることはひとつ。パウンド・フォー・パウンドの1位を僕にすること。それだけのことはやってきたし、無敗のライト級王者なんだ。UFCで13勝、13勝0敗。MMAキャリアは通算29勝だ。自分にはそれが相応しいと思っている」と名実ともに、全階級を通じて最も優れたファイターとして、UFCの記録に残りたいと希望していた。
ダナ・ホワイト代表は、試合後会見でヌルマゴメドフについて、「この男が経験してきたこと、今夜彼の試合を見ることができたのは幸運だ。陣営によれば、彼は3週間前に病院にいて、足の指が2本も折れていたのに、いつものように仕事をこなした。彼はそのことを誰にも言ってなかったんだ。前日計量や今日の様子を見てヤバいんじゃないかと思ってた。彼が彼じゃないように見えた。呼吸も荒かった。だが結果は衝撃的だった。彼は地球上で最もタフな人間の一人であり、世界No.1のパウンド・フォー・パウンド・ファイターだ。真面目な話、他の誰かが“GOAT”(Greatest of All Time=史上最高)だと言っても、彼を“GOAT”の地位に上げなければならない」とPFPの改定を示唆。さらに引退を思い留まるまで待つ、と語っていたが、今回の会談で最終的にハビブの意思を尊重したことになる。
試合後に望んだ通り、ヌルマゴメドフは「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」の1位にもランクされていた。
ヌルマゴメドフは、100万ドルで買収したロシアのEagle FC(Gorilla FCから改称)の試合をUFC Fight Passで配信させる交渉にも臨んでおり、すでに後進の育成とプロデューサー業に舵を切っていた。