意識しなくても田渕の姿が目に見えてくるという小林。気を晴らすためには勝つしかない (C)RISE
2021年4月17日(土)東京・後楽園ホール『RISE 148』にて、田渕涼香(拳聖塾)の挑戦を受けるRISE QUEENフライ級暫定王者・小林愛三(NEXT LEVEL渋谷)が公開練習を行った。
小林は2015年2月にプロデビューすると、2018年7月にシュートボクシングの試合でイリアーナ・ヴァレンティーノに敗れるまで13戦無敗を誇った。同年12月には伊藤紗弥を判定で下し、2019年4月にイリアーナと『KNOCK OUT』で再戦してリベンジに成功。さらに11月にはWPMF世界女子フライ級王座を奪取。2020年9月の「初代RISE QUEENフライ級(-52kg)王座決定トーナメント」1回戦ではKOKOZを3-0で破り決勝へ進出。12月には陣内まどかと決勝戦を戦う予定だったが陣内の負傷欠場により暫定王者に就いた。
しかし、試合前に暫定王者として認定されて臨んだその12月大会のワンマッチで初参戦の伏兵・田渕にダウンを奪われ判定負け。今回は正規王座を懸けた(小林が勝った場合、正規王者となり同時に初防衛となる)リベンジマッチに挑む。
得意のミドルキックを中心に、突進力のある田渕対策のためか前蹴りを多用したミット打ちを披露した小林。2月18日には25歳の誕生日を迎え、「年をひとつ重ねたことですし、少しは考えて行動しないといけないと思います」と大人の自覚を持ちたいとした。
田渕との再戦を振り返り、「トンカチのように痛い、鋭い感じたこともないパンチをもらって。もちろんトンカチで殴られたことはないですけれど(笑)。殴られたらこんな感じだろうなって拳の硬さでした。しっかり拳を握ってナックルを当てるというのはこういうことかと身体で感じました。痛いというよりは痛みを感じる前に膝が落ちましたね。振り返ると、何だろうあの感覚はって意味でトンカチが思い浮かびました」と、田渕のパンチはまるでトンカチで殴られたかのようだったという。
「悔しいけれど、このままではダメだと痛感しました」と自分を見直すきっかけにもなったとする。「何も考えず突っ込んで戦うのは通用しない。前と同じことを続けていたら上には通用しないと自覚したので、新しい自分、今まで出していなかった引き出し、攻撃を出すのがポイントだと思います」と、今まで以上の自分にならないとこの先は勝てないと感じたようだ。
当初は陣内まどかとトーナメント決勝戦(王座決定戦)を争う予定だったのが、陣内の怪我で延期となり、最終的に怪我のため陣内が引退を余儀なくされて田渕とのワンマッチという形になった。メンタルの部分で整理できなかったことも影響したのではと聞くと、「なかったと言えば嘘になります。試合はどうなるか分かりませんが、絶対に勝つって気持ちで最後まで気持ちを切らさないって決めてリングに上がりたいと思います」と、影響はあったと認めながらも次は気持ちを切らさずに臨みたいとした。
「そもそものスタイルは本能で戦っているんですが、それだけでは勝てないと痛感しました。人間なので頭で考えて身体を動かすことが必要。身体が大きい人に小さい人が挑むのには考えて戦うのと同じで、真正面から突っ込んで倒せる相手じゃないのはあります。これから上に行くにも自分で考えて動くのが大事だと考えて練習しています」と、頭を使って冷静に戦うように心掛けているとした。
田渕に敗れて以来、なんと「嫌でも目の前に出てくるんですよ。意識しなくても目の前に。スパーリングをしててもあの試合の感覚が忘れられなくて、ふとした時にもう1回見たらそこに(田渕が)いるんですよ(笑)。嫌なんですけれど、頭の中には嫌でも出てきます」と、田渕の幻影に悩まされているという。
「意識していないのにいるんです、自分の中に。それを取っ払いたいです」と田渕に敗れたことが頭から離れない状態。それを払しょくするためにはどうすればいいかと聞くと「試合が終わった後、私が勝って田渕選手がめちゃ悔しそうな顔をしていたら気も晴れると思います」と小林。珍しく“黒い”部分が出ていますねと突っ込まれると「最近こんな感じなんです」と笑った。
田渕は2月大会でRISE QUEENミニフライ級王者・寺山日葵と対戦し、判定で敗れている。この試合は参考になったかと聞くと「こういう戦い方もあるという意味では参考になりましたが、私も1回戦っているので自分の試合が一番参考になります。最初はなかなか冷静に(映像が)見れなくて。私は周りに恵まれているので先輩やトレーナー、ジムの会員さんが試合を見てくれて、これがこうだったと分析してくれるんです。それと自分の感覚を照らし合わせて対策を考えました」、スタイルが違う寺山との試合よりも前回の試合をもとに研究した。
小林はこれまで、初黒星を喫したイリアーナに再戦で勝利、引き分けた田島はるにも再戦で勝利と再戦での強さを発揮している。「再戦は苦手ではないと思います」ときっぱり。
「嫌なんです。田渕選手がベルトを巻く姿を想像するのが。絶対に嫌なんです。だから今は頑張れています」と、絶対にベルトは譲らないと小林。「まずはシンプルに田渕選手から勝ちを獲る、自分がRISE QUEENのベルトを巻く、その姿を見て欲しいです。その日のためにどれだけ積み重ねてきたかを、見ている人が感じ取ってもらえるような試合にしたいですね」と必勝を誓った。