2021年3月13日、東京・新宿FACEにて『skyticket presents DEEP TOKYO IMPACT 2021』が開催された。
メインイベントは、いま注目のフェザー級。横山京亮(恭典)と平田直樹が3R制で対戦した。
平田樹の兄・直樹は、2020年2月のDEEPフューチャーキングトーナメントを制し、11月の「DEEP98」で修斗新人王の星野豊に2R 腕十字で一本勝ち。2020年12月には「朝倉未来1年チャレンジ」で連勝中だった畠山祐輔(トライフォース赤坂)にも判定3-0で完勝している。直樹にとって初の3R戦。妹の樹が2月22日に1年ぶりの試合で一本勝ちで4連勝を飾っており、兄妹揃って勝利となるか。
対する元KRAZY BEEの横山京亮(恭典)は、2015年ネオブラッド・トーナメントフェザー級優勝者。2017年8月の「PANCRASE対DEEP 5VS.5対抗戦」の次鋒戦で大原樹里と対戦し、2R、ローブローによるノーコンテストとなって以降、DEEPに主戦場を移し、6勝2敗。DJ.taiki、牛久絢太郎には判定負けも、窪田泰斗、大澤茂樹、小川顕広、巽大祐に勝利し、2020年3月の前戦の巽戦では3R 肩固めにより一本勝ちをマークしている。組み技の強いストライカーで、堀口恭司出身の一期倶楽部でも練習経験を持つ。
現在2連勝中で、牛久戦ではタイトル戦まであと一歩だった横山にとっては、ベルトにからむためには落とせない試合。MMA9年目の経験の差を見せられるか。ここまでプロ2戦ながら柔道を軸にMMAでの強さを発揮している平田にとっては、一気に上位進出が望めるマッチアップだ。
▼メインイベント DEEPフェザー級 5分3R ×横山京亮(フリー)66.0kg[3R 3分50秒 TKO]※マウントからのパウンド◯平田直樹(K-Clann)66.25kg
1R、ともにオーソドックス構え。右のカーフキックを打つ横山。左右を振って前に出ると、そこに平田は片ヒザ着きのダブルレッグに入り、ボディロックからすぐに脇を潜りバックテイク。スタンドで横山の背後につくと、横山はコーナーまで歩き壁レスリングさながらに正対して突き放す。
横山が右ストレートの飛び込み、応戦する平田に左フックを合わせるが、平田はダブルレッグダイブから両ヒザを着きながらも立ち上がりドライブ。ボディロックのまま腰に乗せず足車的に崩してテイクダウン。
横山に両手を着かせると、すぐさまバックに跳び乗り、右足をかけに行く。しかし、両足は組めていないなか横山は立ち上がると、なおもボディロックの平田はサイドに崩すが、横山がコーナーで正対し、離れる。
横山は右ミドル、左インロー。平田も右ローを打つが横山はヒザを外に向けて受ける。平田は再びダブルレッグ狙いから一瞬片ヒザを着きながらもボディロックしてドライブして前へ。
ここも脇を潜ってスタンドバックにつく平田は、立ち上がる横山を背後から大内刈テイクダウン。すぐにコーナーで立ち上がる横山。ゴング。
2R、平田のミドルに横山がカウンターの左フック。平田は両ヒザを着く低いダブルレッグもバービーして切ろうとする横山にボディロックから脇潜りバックから崩しへ。
そこに尻餅着きながらスイッチを狙う横山はシングルレッグへ。片足を取られながらバックに回ろうとする平田とテイクダウンで上を取ろうとする横山。尻餅を着かされた平田だが、横山もクラッチを外してそこから立ち上がり。
すぐに詰める平田は、引き手と釣り手を掴み、足払いテイクダウン! 横山の立ち際を首を抱えてギロチンチョークへ! ガードの中の横山が頭を引き抜く。立ち上がった平田は、左で差して押し込み四つから今度は右も差して両差しに。
そこから脇を潜り、またもスタンドバックに。横山もコーナー使い正対しブレーク。
互いに右の打ち合いから、遠間から右フックを当てる横山だが、平田は低いダブルレッグへ。バービーで切る横山は立ち上がる平田に左ストレート! ここも連打をもらわないようダブルレッグに入る平田。右で小手に巻く横山にバックに回ろうとする平田の攻防。コーナーで横山が正対し、ゴング。
3R、ロングレンジから左ボディストレートを突く横山。かわす平田に右カーフキック! 平田も右カーフを蹴るが、そこに右ストレートをカウンターで突く横山。
続く左フック、右ストレートを掻い潜った平田はダブルレッグへ。いったんはヒザをマットに着くが、そこからドライブしてロープまで押し込み両脇を差して回してテイクダウン! サイドを奪うと、身を起こして亀から立ち上がろうとする横山をがぶり。立ち上がる横山とコーナー際で四つの攻防も膠着ブレーク。
スタンドで優勢の横山は遠間から右ストレートで平田をコーナーまで詰めると、左の三日月蹴りも。平田の右ローを外受けする横山は右ストレート狙い。そこにカウンターの右をヒットさせた平田! 前に出る横山だが軸がぶれている。そこに平田は右ストレートをヒット! 前のめりに倒れた横山が足を手繰りに来たところに中腰で左右のパウンドを連打! さらにサッカーキックも。
しかし立ち上がる横山もダメージがありながら右フックを振り前へ。打ち合いの中で後退する平田はロープに詰まりながらもダブルレッグへ。左足を掴みテイクダウンしバックに回った平田は、ついに両足をかけてバックマウントからパウンド! 正対した横山にマウントからヒジを顔面に叩き落とし、レフェリーが間に入った。
リング上で平田は「今回も前回に引き続きメインで使ってくださりありがとうございます。こんなコロナで大変な時に応援に来てくださってありがとうございました。なんとか白星でスタートできたので、今年も全勝します」と、力強く挨拶した。
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平田直樹の「心の強さ」
打撃の危うさを持つ平田、その打撃によるダウンを奪ってからの強い組みからのフィニツシュ──実力者を相手に、進化を見せながらも「やれない」ことより「やれる」ことの強みが上回っている。それは妹・樹にもいえることだ。
初の3R戦で、1Rに自身の蹴りを横山に巧みにスネ受けをされて足を痛めたが、序盤から厳しい組みの展開を厭わず、最終ラウンドを「勝負のラウンド」と試合前から想定し、それを実行した。横山の出稽古先のロータス世田谷代表で、セコンドについた八隅孝平は、試合後、自身のnoteで平田のハートの強さを称えている。
「試合自体は、お互いのやりたい事の押し付け合いで一進一退でしたが『心の強さ』で平田選手に上回れられそのままやられてしまいました。相手の全ラウンド組み伏せる力よりもっと神経を疲弊させ、もっと手詰まりにさせ、最後は勝つ! と考えていましたが、平田選手がそれを上回る勝つ気持ち、そして神経や疲れに心が折れず前に出て来ました。正直完敗です。“現場”で『心が強い』部分を出せるっていいですね」(八隅)
試合という本番で、「心の強さ」を出せるほどの日々の積み重ね、そして試合“現場”で実際にそれを発揮できるファイターとしての素質が、23歳の平田直樹にはある。これでプロ負け無しの3連勝。数年後には、フェザー級の中心人物になっているかもしれない平田に試合後、話を聞いた。
──初の3R戦で、フィニツシュしての勝利でした。
「今回、初めての3R戦でサッカボール(キック)も踏みつけもありだったので、やられるリスクもあるけど、使ってみたいと思って、やってみようと思っていたことができました。パウンドをずっと練習していて、いつもポジションが悪くてなかなかパウンドが打てていなかったんですけど、今回、しっかりポジションを取って、ヒジも打てたので次に繋がったと思います」
──序盤から、組みで力の入る攻防を続けていました。スタミナに不安は無かったですか。
「作戦は組んで組んで、ひたすらしがみついて、しがみついて、3(R)でどれだけいけるか。判定を想定していました。3Rでキツいとは思っていましたが、3Rが勝負と思っていました。スタミナにはそこそこ自信がありましたし、1、2やって、どれだけ3でがむしゃらにやれるか、だと思っていました。3Rでフィニツシュ出来たのは一番、収穫になったかなと思います。だから、今日初めて、ガッツポーズを出しました。柔道でも出したことが無いです。嬉しかったです。フィニツシュ出来て」
──柔道の足払いが一度、それ以外はすべてダブルレッグなど下半身へのタックルでした。
「最近はレスリングメインです。ちょっと足をかけたりもしますが、どんどんいろいろな技を勉強していきたいです」
──何度も脇を潜りバックテイクまでは行けても、横山選手に巧みに正対されました。フィニツシュに繋がったのは、最終ラウンドのカウンターの右ストレート、右フックでした。あの打撃は覚えていますか。
「がむしゃらでした。自分も1回飛んでいたので。初めて当たって、相手がフラッとなったので、本当は打撃で仕留めたかったんですけど、相手選手も寝技もすごく研究してきたので、自分がやりたいことを相手のセコンドが先に言ってきてすごくやりにくかったですけど……なんとか勝てて良かったですね」
──MMA3戦目だった平田選手にとって、MMA13勝7敗の横山選手との試合は、いまの力量を測る実力者との対戦でした。どんな思いでしたか。
「はい、ここはもうすごく勝負でした。相手の方が経験豊富で、ここで勝つか負けるかで違うし、メインでフィニツシュ出来たことも嬉しいです」
──もう“平田樹のお兄ちゃん”の呼称は失礼だと感じました。
「うーん……まだですけど、これからが楽しみです!」