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インタビュー

【ONE】ゲイリー・トノン戦の敗北から1年7カ月、12戦無敗の強豪と対戦する中原由貴「一番は“知ること”だったので、ジョン・ダナハー先生のところへ行きました」=3月5日(金)

2021/03/01 20:03
 PANCRASEフェザー級2位のランカーとして、ONE Championshipに挑戦した中原由貴(マッハ道場)。  2019年2月大会でエミリオ・ウルティアとの打撃戦を左ストレートKO勝ちで制したが、5月のゲイリー・トノン(米国)との戦いで、1R 55秒、ヒールフックで一本負けした。  3週間、松葉杖をついた生活後、向かったのは、米国NYでトノンが所属するヘンゾ・グレイシーのジム。そこでジョン・ダナハーコーチから、直に自身が極められたレッグロックシステムを学んだ。  一度は辞めようとした現役生活。コロナ禍のなか、気持ちを切り替え、“張り詰めた練習生活”に戻り、1年7カ月ぶりのマットに向かう。対戦相手は12勝無敗のルスラン・エミベック(キルギス)だ。  厳しい相手を前に、中原は「格闘技を10年やって、初めて自分で自信を持っている」と語った。中原の試合は、3月5日(金)21時30分から、ABEMA格闘チャンネルにて放送予定だ。 ――シンガポールでの隔離生活はいかがですか? 「思ったよりは気楽に過ごせています」 ――食事面とかも、これまで経験した選手たちから現地の状況を聞いて用意している感じですか。 「そうですね。いろいろ入る前とかにも連絡をいただいて想定していたのと、普段日本であんまりゆっくりできないので、逆にシンガポールについてゆっくりできてありがたいなという感じです。わりとリラックスして、部屋でやりたいことをやって過ごしていますね」 ――今回の試合に向けて、前回の2019年5月のゲイリー・トノン戦の敗戦から時間が経ってしまって、その間はご自身でどのようにモチベーションを保ちながら練習してきましたか。 「モチベーションという面では、1回、辞めてしまおうかなと思うまで落ち込んだこともあって……。前回が2019年の5月で、その前にずっと試合のオファーが無くて、オファーがいつ来てもいいように張り詰めて、気持ちを高めつつやっていくんですけど、2020年4月にオファーいただいて、コロナで流れちゃったんです。そのときに気持ちが……“別になんかそんなに自分は試合求めてないかも”と思ってしまって……そのときに、“俺ファイターとしてやっていけるのかな”と、いろいろ考えたら負のスパイラルにハマってしまいました」 ――それでも続けたのは……。 「それでも休まずに練習していたのは、やっぱり格闘技が好きだなって。そういった意味では、2カ月くらいで切り替えられた感じです。コロナの隔離期間もあって、1回、格闘技から離れざるを得なくなった。そこでリセット出来てからは、もういつ来てもいいようにずっと張り詰めた状態で練習を保てました」 ――緊急事態宣言もあって、そのときに気持ちを切り替えることができたと。 「はい。休まざるを得なくなって、うまくリセットされた感じはあります。試合をするということ──結局、練習だと全力で戦えない──それが一番大きかったです。自分がどれだけ強くなったかとか、結局試したくなっちゃうんですよね。それで戦うしかないんだって」 ――それは「強くなっている」という手ごたえを得た練習が出来ているということでもありますね。前回の試合がゲイリー・トノン戦で、その後トノンは松嶋こよみ選手にも判定勝利するなど、実力を発揮しています。その後、中原選手としてはどのような課題を持って取り組んできましたか。 「やっぱり一番は“知ること”だと思ったので、まずは彼の先生、ジョン・ダナハー先生のところにあの後すぐ行って。ニューヨークでひと月ちょっと練習はしてきました。自分の短所を知り、長所を伸ばすべく、いろいろ試行錯誤をしながらやってきました」 ──敗れた相手のジム、名将ジョン・ダナハーがいるヘンゾ・グレイシーのジムに出稽古に向かったと!? 「はい。自分に何が起きたのか、詳しく知るべきだと思って。ただ、3週間くらいは杖をついた生活をしていたので、1回日本に帰って病院に通いました。足首の靭帯とヒザが骨挫傷、骨がぶつかっていたようで血が溜まっていて全治1カ月と診断されました。  ただ、シンガポールでの試合直後にトノンに、『足が治ったら、あなたのジムに練習行っていいかな?』と聞いたら、『ああ、もちろん、来なよ』と話をしてくれたので、治りかけの時点で飛行機のチケットを取って、ちょっと足は怖かったですけど、動きに問題が無くなったくらいであっちへ行きました」 ――まだ新型コロナウイルスの影響が無かったときとはいえ、そうすべきだと考え、実行に移したのですね。トノンとも練習はできましたか 「いや、トノンがちょうどそのとき腕を怪我をしていて。なので、彼の周りとか、彼の先生から直接教わることはできました」 ――ダナハーから直に教わった。いかがでしたか。 「かなりいい経験になりました」 [nextpage] 最後は身体を回して逃げる、トノンはそれを出来ないように足を使ってきた ――あのとき、トノンは中原選手との試合で、MMAでは初めて見せた形でヒールフックを極めました。それまで封印していたヒール。トノンが前足にシングルレッグに入って、引き込む形で後転して外掛けに左足をかけてきた。そのとき中原選手はインサイドサンカク、サドルロックを組まれないように相手の右足を手で防いでいましたが、外ヒールを極められた。あれはなぜ……。 「向こうに着いて、一番最初にそれを聞いたんですけど、あれ、まず外からかかっている足もそうなんですけど、内側の足で僕の肩を押さえているんです。要は、最終手段で捻られている方向に身体を回して逃げる、それを出来ないように、僕の右肩を足で押さえていた。まず自分はその蹴っていた足の動きを知らなかったし、もしそれを外しても、結局フィフティ/フィフティから、両足を外で絡めた状態で最後まで捻り切ることが出来る。  だから、その前の段階で動かなきゃいけなかったというのもあるんですけど、そもそもキャンプの時点で後転しながら足関節に来るという動きを想定してなかった。これまで通り、1回引き込んでから足関節の形を作ってくるという想定だったので。そこでやられていましたね」 ――それを実戦でやってきた。でもMMAであの入り方を見せたのは、中原選手を脅威に感じていたからだという見方も出来ます。 「そうかもしれませんが、もしあそこで極まらなくても、どこかで極められる可能性がある。やはり知るべき技術で、それを現地で教わることが出来たのは、ほんとうに大きいです」 ――ダナハーチームは、ニューヨークがコロナウイルスの影響により練習がままならないなか、プエルトリコに行くことを決めましたね。 「そうですね。ゴードン・ライアンとか、あの周りのクレイグ・ジョーンズとかも、僕が出稽古に行っている時点で、みんなほとんど『移住する』と言ってました」 ――ダナハーコーチと、制限なく練習が出来る環境を求めて、国を越える……。グラップラーがそれで生活できる経済環境にあるということでもありますね。 「自分もまたプエルトリコも行こうかなって思っています。僕のセコンドについてくれている石川(卓広)さんが、元々ヘンゾの所属なので。だからトノンと試合するときは、僕のセコンドは違う人に入ってもらったんです。今回の試合は石川さんにまた入っていただきます」 ――さて、そのトノン戦から1年7カ月ぶりの試合のオファーが来たときは、どのように感じましたか。 「この試合のオファーが来たときは、もう“やる”一択でしたね。最初にいついつ試合あるけどいけますか? と聞かれたときに、ちょっと減量幅とかもキツかったんですけど、2021年中に試合をやっておきたいという気持ちがあったので“ああ、やります”という感じでした」──対戦相手のキルギスのルスラン・エミベックはONE初参戦でONEの試合ビデオはありませんが、ほかの試合はご覧になられましたか。 「一応、YouTubeに転がっているのは何試合か見たんですけど、ちょっとエミベックの対戦相手が微妙で、あまり参考にならないな、というのが正直なところでした」――とはいえ、12勝無敗でACAで戦っている。弱いわけがないという相手です。 「そうなんですよね。きれいなレコードで。ACAの試合をイメージに置きながら、向こうもたぶん1年くらい試合をしていないので、そこの伸びしろとかも考えつつ、想定はしています。 ――キルギスということもあって、強振のなかにレスリングも混ざっている。どこが一番強いというふうに捉えていますか。 「やっぱり状況に応じてすぐに打撃から組みに転じれる部分ですね。しっかり振るときは振るんですけど、ふとしたタイミングでレスリングで勝負をしてくるというのもありますし、レスリングもけっこう強いのかなという印象はあります」 ――そこも踏まえて練習もしてきたということになるのでしょうか。 「ただ、試合が決まってから時間がそんなになかったので、この4週間、映像を見て、こんな感じかというのをやりつつ、それ以上は準備のしようがなくて、練習パートナーを用意したりした時間はそんなに取れなかったので、もうとにかくイメージしつつ、“自分の動きをいかに出すか”にフォーカスをしてきました」 ――マッハ道場に加え、出稽古も。大塚隆史選手とも練習をしていましたね。 「普段から出稽古中心なので、そこで周りの方に相談しつつ、という感じでやっていました。大塚さんにレスリングや、組みの攻防は指導をいただいています。11月に大塚さんはあんな試合(安藤達也を1R TKO)をしてみせて。けっこう自信がありそうだったのですが、まさかあんなにサクッと決めちゃうとはさすがだなと思います」(※大塚は3月20日の修斗でバンタム級王者・岡田遼と対戦) ――相手の伸びしろも想定しつつ、中原選手自身も強くなってきている手応えはいかがですか。 「そうなんですよね。試合でそれを見せられたら一番いいので。格闘技をもう10年くらいやっているんですけど、初めて自分で自信を持っていますね。相手より強いとかじゃなくて、自分自身がある程度のところまで来たんじゃないかなという、自分の中だけのものさしで、初めて自信があります」 ――なるほど。最後にファンにメッセージをお願いします。 「久々の試合なので、“誰だこいつ?”という人もいると思うんですけど、そんな方にも、中原由貴という選手として、印象に残るような試合がしたいなと思うので、最後まで手に汗を握りながら、応援してください。よろしくお願いします」
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