朝倉海(トライフォース赤坂)が17日、自身のYouTubeを更新。大晦日、堀口恭司戦での筋断裂の怪我からの回復が順調と報告しながらも、3月21日のRIZIN名古屋大会は回避し、4月の復帰を宣言。しかし、4月RIZINで開幕予定のバンタム級トーナメントについては「1年間、拘束されることになるので、出場するかどうかは考える」と保留した。
堀口のカーフキックを受けて全治1カ月半と診断された海。その怪我の回復状況について、動画の冒頭で「練習はスパーリング動画で見せた通り(収録時の)2週間前くらいから再開しているけど、結構いい。ただ、ちょっとまだ痛みがある。屈伸したときに痛みがあるのが心配なところで、正直言って、まだまだ完全ではない」と報告。
続けて、「3月21日に名古屋でRIZINが発表されましたけど、まあ、そこ地元だし、ちょっと“俺が出て盛り上げなきゃな”っていう思いはあったんですけど、たぶんそこの試合は出ないと思います。状態的に間に合うとは思うんだけど、やっぱり負けられないしね、完全な状態でやりたいんで、そこはちょっと見送ってもいいのかなと、自分のなかで思ってるので、3月はお休みしますね。4月には絶対に間に合います」と、2021年のRIZIN開幕戦出場は回避し、4月大会から復帰することを宣言した。
3.21 RIZIN名古屋に続く大会は、4月に「東京ラウンド」とされており、榊原信行CEOは会見で、4月から大晦日まで8カ月をかけてバンタム級日本GPの開催を発表。「堀口恭司に届こうとするなら、朝倉海も含めて、この日本人16人にラインナップしてくるしかない」と、前バンタム級王者の朝倉海にも、参加を呼びかけていた。 このCEOの発言に、海は「4月に大会があると。それもバンタム級、俺の階級ですね。16人トーナメントをやります、みたいなことを社長が会見で言ってたんですけど……正直、俺は何も聞いていません。なので何も分かっていなんですけど、まあ、正直な感想としましては、何で? っていう感じですよ。ぶっちゃけ。社長は俺が出る、みたいなことを勝手に言っていたけど、何でそこに出ないといけない? って感じは正直してる」と、納得がいかないとした。
その理由は、1年間というスパンの日本人GPに拘束されることで、希望する海外進出に支障をきたすからだという。
「16人トーナメントで勝ち進んでいったらずっと縛られる。ほかの試合に出られないってことでしょう? 1年間は(トーナメント以外の)試合が出来なくなる。今年、海外で、Bellatorとかで試合がしたいなと思っていた。それも出来なくなる」と、2017年6月の韓国「ROAD FC 39」以来となる海外での試合の実現が困難になることを危惧した。
海は「4月には絶対に間に合う。その復帰戦をぜひ見に来てほしい」としながらも、バンタム級日本GPについては、「拘束されることになるので、まず(トーナメントに)出場するかどうかは考える」と、保留するとした。
「何でそこに出ないといけない?」という思いは、前王者として、コロナ禍でRIZINが存続の危機のなか、2020年を牽引した自負があるからだろう。2020年下半期に海は、8月(扇久保博正に1R TKO勝ち)、9月(昇侍に1R TKO勝ち)、12月(堀口に1R TKO負け)と、その都度、追い込みを行い、連戦を戦ってきた。
一方で、世界的に盛り上がりを見せているバンタム級で、日本でもタレントが揃ってきていることを肌で感じている。逡巡する海は言う。
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27歳、朝倉海の選択は──
「でも実際、バンタム級に選手が多いのは事実で、その階級でトーナメントやったら盛り上がると思うっていうのはあるんで、ちょっと流れを見て、もし参戦するなら絶対優勝しますよ。もちろんね」と、GP参戦と海外試合のバランスを考えたいとした。
榊原CEOは、バンタム級日本GPへの前王者の参戦について「朝倉海とも話をしたのか」と問われると、厳しい口調で、「いやしていない。嫌なら出なければいい。堀口に届かないだけなので。負けるってそういうことだから。特別扱いはないので。だけど、そのGPにしっかり勝てばもう一度チャレンジ──堀口にも『ここまでやったんだからやれよ』という説得力はあるでしょう。これが一番、海にとっては近道だと思います」と、GP優勝が堀口へのリヴェンジへの「近道」にして関門だと語っていた。
4月に復帰を望む海。「16人のなかに入るしかない」と1回戦から出場を求めたCEO。堀口恭司、マネル・ケイプと1勝1敗。佐々木憂流迦、扇久保博正を1R TKOに下している海は、ほか選手と同列に並ぶのか。隔離期間もある海外試合を挟むとなれば、ワンマッチから復帰し、シード参戦も考えられる。
また、Bellator選手との対戦を望むのであれば、Bellatorから必要とされる存在になるか、日本にBellatorファイターを招聘するか、だ。
(C)Bellator
現在、Bellatorバンタム級では、5月7日に現Bellator世界バンタム級王者のフアン・アーチュレッタ(米国)が、元UFCフライ級1位で現在Bellator2連勝中のセルジオ・ペティス(米国)を相手に初防衛戦を行うことが発表されており、堀口はその勝者との対戦を視野に入れている。
そのほか、Bellatorバンタム級戦線には、UFC世界王者ピョートル・ヤンと1勝1敗のマゴメド・マゴメドフ、UFC5勝2敗のブレット・ジョーンズ、元NCAAディヴィジョン2王者にしてMMA15勝1敗のラフィオン・スタウツ、堀口恭司と激闘したダリオン・コールドウェル(フェザー級GP準決勝敗退)、元ACBのマテウス・マトス(ブラジル)、元谷友貴に一本勝ちしたパトリック・ミックスら、これまでにない強豪が揃いつつある。
かつてパトリック・ミックスの名前を対戦したい相手として挙げていた海だが、ケージで強豪グラップラーと戦うための課題はどこまで克服できているか。また、バイアコムCBS傘下の「Showtime」との独占テレビ契約を締結したBellatorにとって、どんなメリットを感じさせることが出来るかも、実現の鍵になる。
堀口恭司のUFC参戦は2013年10月、23歳になったばかりだった。その2年3カ月後にKRAZY BEEからアメリカン・トップチームに移籍。2015年4月にはフライ級王者デメトリアス・ジョンソンと対戦している。
1993年10月31日生まれの海は、1年後に28歳になる。最終的に目指す世界最高峰の舞台UFCは、オーバー30との契約に積極的ではないが、実績ある王者には門戸を開いている。
海を破りRIZINバンタム級のベルトを巻いたマネル・ケイプは26歳でUFCと契約し、フライ級に階級を落とした初戦でランキング5位のアレッシャンドリ・パントージャに判定負けを喫した。世界の頂は高いが、そこを本気で目指す者にしか扉は開かれない。
3月21日のRIZIN開幕戦では、バンタム級相当の61.0kg契約で、田丸匠vs.渡部修斗、祖根寿麻vs.獅庵が決定。
そのほか、バンタム級日本GP出場候補選手としては、RIZIN出場経験を持つ選手では、“バンタム級四天王”扇久保博正、石渡伸太郎、佐々木憂流迦、元谷友貴、さらに元谷に一本勝ちした井上直樹、修斗で安藤達也にTKO勝ちした大塚隆史(3.20 修斗で岡田遼と対戦)、一度は引退を表明している金原正徳、昇侍(※2021年2月21日「DEEP100」で元谷と対戦)、瀧澤謙太、金太郎、倉本一真、魚井フルスイング(3.20修斗 vs.後藤丈治)らの名前が挙がる。
また、未参戦の強豪として、修斗バンタム級では田丸のほかに、現修斗世界王者の岡田遼(vs.大塚)、PANCRASEバンタム級では、1位のアラン“ヒロ”ヤマニハの動向も注目される。さらに、2017年11月以来、試合を行っていないZST王者の柏崎剛、2020年9月に獅庵に判定勝利し、GRACHANバンタム級王者となった伊藤空也、GLADIATORバンタム級王者の竹本啓哉も、ベルトを巻く国内王者だ。
4月復帰を決めた海は、日本GPで頂点に立つことができるのか。それとも新たな再起ロードを進むのか。
「格闘技の方は本気で、マジで集中したいんで、YouTubeの方は(チームに)結構、任せますんで、本気で練習するわ。俺、マジで頑張る」と、決意を新たにした海は、「4月にまだ試合を確実に誰とやるとかは決まってないですけど、決まったら報告します。ぜひ見れるなら会場で見てほしいですね。完全に強くなった姿を見せるんで、また応援よろしくお願いします」と、意気込みを表している。
このほかYouTubeでは、海の格闘技への思い、新たなアマチュア大会の開催、YouTubeでの目標、そして将来についても語られている。